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Gaia・ガイア 動物の世界コミュの[画像図鑑]ハクジラ亜目マッコウクジラ上科

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★[画像図鑑]へのコメントはご遠慮下さい。コメントは下記の各コーナーへお願いします。
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ここへのコメント文は大変申し訳ありませんが転記させて頂きます。

★[画像図鑑]ヒゲクジラ亜目
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=22804804&comm_id=1873677
★[画像図鑑]クジラ目ハクジラ亜目マイルカ上科
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=22845108&comm_id=1873677


●ハクジラ亜目(歯鯨亜目、Odontoceti)は鯨偶蹄目クジラ類の亜目の1つ。イルカは分類学的にはこのハクジラ亜目に含まれる。

■上科・科・亜科
かつてはカワイルカを総括するカワイルカ上科 Physeteridae を置くことがあったが、側系統であることがわかり分割された。

マッコウクジラ上科 Physeteroidea
マッコウクジラ科 Physeteridae
コマッコウ科 Kogiidae
アカボウクジラ上科 Ziphioidea
アカボウクジラ科 Ziphiidae
インドカワイルカ上科 Platanistoidea
インドカワイルカ科 Platanistidae
ヨウスコウカワイルカ上科 Lipotoidea
ヨウスコウカワイルカ科 Lipotidae(絶滅?)
アマゾンカワイルカ上科 Inoidea
アマゾンカワイルカ科 Iniidae
ラプラタカワイルカ科 Pontoporiidae
マイルカ上科 Delphinoidea
マイルカ科 Delphinidae
マイルカ亜科 Delphinae
シワハイルカ亜科 Stenoninae
セミイルカ亜科 Lissodelphinae
ゴンドウクジラ亜科 Globicephalinae
シャチ亜科 Orcininae
ネズミイルカ科 Phocoenidae
イッカク科 Monodontidae

■属・種
●マッコウクジラ上科
■マッコウクジラ科
マッコウクジラ属 Physeter
マッコウクジラ Sperm Whale Physeter macrocephalus
■コマッコウ科
コマッコウ属 Kogia
コマッコウ Pygmy Sperm Whale, Kogia breviceps
オガワコマッコウ Dwarf Sperm Whale, Kogia sima
■アカボウクジラ科
★アカボウクジラ亜科
アカボウクジラ属 Ziphius
アカボウクジラ Cuvier's Beaked Whale Ziphius cavirostris
★ツチクジラ亜科
ツチクジラ属 Berardius
ミナミツチクジラ Arnoux's Beaked Whale, Berardius arnuxii
ツチクジラ Baird's Beaked Whale (North Pacific Bottlenose Whale), Berardius bairdii
タスマニアクジラ属 Tasmacetus
タスマニアクジラ Tasman Beaked Whale (Shepherd's Beaked Whale) Tasmacetus shepherdi
★トックリクジラ亜科
タイヘイヨウアカボウモドキ属 Indopacetus
タイヘイヨウアカボウモドキ Longman's Beaked Whale (Indo-Pacific Beaked Whale, Tropical Bottlenose Whale), Indopacetus pacificus
トックリクジラ属 Hyperoodon
キタトックリクジラ Northern Bottlenose Whale, Hyperoodon ampullatus
ミナミトックリクジラ Southern Bottlenose Whale, Hyperoodon planifrons
オウギハクジラ属 Mesoplodon, Mesoplodont Whale
ニュージーランドオウギハクジラ Hector's Beaked Whale, Mesoplodon hectori
アカボウモドキ True's Beaked Whale, Mesoplodon mirus
ヒガシアメリカオウギハクジラ Gervais' Beaked Whale, Mesoplodon europaeus
ヨーロッパオウギハクジラ Sowerby's Beaked Whale, Mesoplodon bidens
ミナミオウギハクジラ Gray's Beaked Whale, Mesoplodon grayi
ピグミーオウギハクジラ Pygmy Beaked Whale, Mesoplodon peruvianus
タイヘイヨウオウギハクジラ Andrews' Beaked Whale, Mesoplodon bowdoini
バハモンドオウギハクジラ Spade Toothed Whale, Mesoplodon traversii (Bahamonde's Beaked Whale, Mesoplodon bahamondi)
ハッブスオウギハクジラ Hubbs' Beaked Whale, Mesoplodon carlhubbsi
イチョウハクジラ Ginkgo-toothed Beaked Whale, Mesoplodon ginkgodens
オウギハクジラ Stejneger's Beaked Whale, Mesoplodon stejnegeri
ヒモハクジラ Layard's Beaked Whale, Mesoplodon layardii
コブハクジラ Blainville's Beaked Whale, Mesoplodon densirostris
ペリンオウギハクジラ Perrin's Beaked Whale, Mesoplodon perrini
■インドカワイルカ科
カワイルカ属 Platanista
インドカワイルカ(スースー) Ganges and Indus River Dolphin, Platanista gangetica
ガンジスカワイルカ Ganges River Dolphin, Platanista gangetica gangetica
インダスカワイルカ Indus River Dolphin, Platanista gangetica minor
■ヨウスコウカワイルカ科
ヨウスコウカワイルカ属 Lipotes
ヨウスコウカワイルカ Chinese River Dolphin, Lipotes vexillifer
■アマゾンカワイルカ科
アマゾンカワイルカ属 Inia
アマゾンカワイルカ Amazon River Dolphin, Inia geoffrensis
■ラプラタカワイルカ科
ラプラタカワイルカ属 Pontoporia
ラプラタカワイルカ La Plata Dolphin, Pontoporia blainvillei

●マイルカ上科
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=22845108&comm_id=1873677

コメント(33)

■ハクジラ亜目マッコウクジラ科 Physeteridae
マッコウクジラ属 Physeter
マッコウクジラ Sperm Whale Physeter macrocephalus


●マッコウクジラ(抹香鯨、Physeter macrocephalus、シノニムPhyseter catodon)はハクジラ亜目マッコウクジラ科のマッコウクジラ属に属する水棲哺乳類。1科1属の種である。マッコウクジラはハクジラの中で最も大きく、歯のある動物では世界で最大であり、巨大な頭部とその形状が特徴的である。ハーマン・メルヴィルの『白鯨』に出てくるクジラ「モビー=ディック」は、このマッコウクジラである。

■分類
コマッコウ科コマッコウ属のコマッコウ (Kogia breviceps) 、オガワコマッコウ (Kogia sima) とは近縁であり、様々な分類法がある。 1998年以降、よく知られている分類としては、以下が挙げられる。

全3種(マッコウクジラ、コマッコウ、オガワコマッコウ)を一つの科Kogiidaeとする[Mead]。
Physeteridaeを科とし、KogiinaeをPhyseteridaeに属する亜科とする[Mann]。
Physeteroideaを上科とし、Kogiidaeを科とする。
PhyseteridaeとKogiidaeとの独立した2科とする[Rice(1998)]。

■形態
種小名 macrocephalus は、ギリシャ語で「大きな頭」を意味する。これは頭部の長さが体長の3分の1(オス)に達するという、クジラ類の中でも例外的に巨大であることに由来する。脳は、おそらくすべての動物の中でも最も大きく重いもので、成体のオスでは平均 7kg に達するが、身体サイズに比べれば決して大きな脳をもつとは言えない。背中の色は一様に灰色だが、日光下では褐色に見えるかもしれない(『白鯨』に登場するモビー=ディックは白変種あるいはアルビノであると思われる)。背中の皮膚は通常でこぼこで、他の大きなクジラのほとんどが滑らかな皮膚をしているのとは対照的であり、ホエールウオッチャーたちはこの背中の様子をプルーンに喩える。呼吸孔(鼻)の位置は、頭部正面に集中しており、遊泳方向に向かって左側にずれている。そのため、潮吹きは前方に向かった特徴的なものとなる。背ビレは背骨に沿って前から3分の2の場所に位置し、通常は短い二等辺三角形の形状をしている。尾は三角形で非常に厚い。クジラが深い潜水を始める前には、尾は水面から非常に高く引き上げられる。

■生態
主食であるヤリイカやダイオウイカを食べるために歯は不必要(飲み込むため)だと考えられており、歯の存在理由ははっきりとはわかっていない。また、歯をもたないにもかかわらず、健康に太った野生の個体も実際に観察されている。現在では、同種のオス同士で争う際に歯が使用されるのではないかと考えられている。この仮説は、歯が円錐形で広い間隔を空けて配置されている理由も説明できる。上あごの中にも未発達の歯が存在するが、口腔内まで出てくることはまれである。余談だが似た食性のハナゴンドウ(マイルカ科だがマッコウクジラと酷似する部分が多い)も同様に下あごにのみ歯がある。 近年の研究により、子を海面へ残したまま深海へ餌を取りに行った親が子の餌としてくわえたまま持ち帰る姿が確認されている。映像に納められているものはダイオウイカで、一匹丸ごとではなく、一部だけを持ち帰ってきた。これにより、歯の存在理由が餌をかみ切ること、深海から海面へ運ぶときの滑り止め等としての仮説も出てきた。

家族の絆がとても強い。子供は生まれてすぐ深海に潜ることはできない。母親は子供が深海へもぐることができるようにするため、しばしば訓練をするが子供がなかなか潜ろうとしない場合は、母乳を飲ませつつ潜る。最近の研究では頻繁に深海と海面を行き来することがわかっている。生涯の3分の2は深海で過ごす。マッコウクジラは軽く2000メートルは潜ることができ、集団で狩りをすると考えられている。シャチが天敵である。光の届かない深海においてはイルカ等に代表されるエコーロケーションを用いている。また、家族同士での会話も音を利用していると考えられている。

日本では、小笠原に定住している。普通は回遊することが多く、これは特異な事例である。
■ハクジラ亜目マッコウクジラ科 Physeteridae
マッコウクジラ属 Physeter
マッコウクジラ Sperm Whale Physeter macrocephalus


●マッコウクジラは、すべてのクジラ類のなかで最も大きな性差をもつ。標準的なオスの体長は16〜18mであり、メスの12〜14mと比べて30〜50% 大きく、体重はオス50tに対しメス25tと、ほぼ2倍の差異がある。なお、誕生時は雌雄いずれも体長4m、体重1tである。マッコウクジラの潜水能力は群を抜いている。ヒゲクジラ類の潜水深度は200~300メートル程度とされているが、最近の研究によって、マッコウクジラの場合は、全身の筋肉に酸素を蓄えるために、1時間呼吸することなく潜ることができる。息継ぎをするために水面に上がるうちの約20分程度、約1000メートル近くの深海にまで潜水、捕食等の活動が行われていることがわかっている。3000メートルを潜ったとする記録もある。このため、原子力潜水艦と衝突したり、海底ケーブルに引っかかった死体が見つかったりした実例がある。原子力潜水艦との衝突の場合、船体を破損させることはないが、ヨットや木造船とぶつかった場合多大な損傷を与えることがありうる。 深く潜るのは、浅海での生存競争に敗れ、深海に潜るしかなかったためと考えられている。マッコウクジラは、低い出生率と遅い成熟と長命を獲得している。メスは4歳から6歳で成熟し、メスの妊娠期間は少なくとも12か月、最長で18か月。そして、子育ては2〜3年続く。マッコウクジラの家族は、母系家族でメスが中心となる。オスは単独行動を取る。オスの繁殖適齢期は10歳ごろから20歳ごろまでの約10年間続き、40歳を超えても成長は止まらず、約50歳で最大のサイズに達する。5年に一度しか出産しない。

■龍涎香
和名のマッコウクジラの由来は、まれに腸内にから発見される瘤(こぶ)から、龍涎香(りゅうぜんこう)とよばれる抹香に似た香りのする香料が採れるため。

■鯨蝋
鯨蝋とは頭部から採取される白濁色の物質(脳油)の別名である。脳油は精液に似ているため、精液と誤解されていたことが有り英語では spermaceti と呼ばれている。英名の sperm whale はこのことに由来する。
鯨蝋(脳油)は、マッコウクジラの体温下では液状であるが、約25℃で凝固する事が知られている。鯨類学者クラークはこの性質に着目し、潜水の際には鼻から海水を吸い込み冷やすことで脳油を固化させ比重を高め、浮上の際には海水を吐き出し血液を流し温めることで液化させ比重を小さくすることで急速な潜水および浮上を可能にしているという説を唱えている。潜水、浮上はほぼ垂直にかつ急速に行われることが確認されているが、潜水病に陥ることが無いことも確認されている。

■捕鯨
鯨蝋は高級蝋燭や石鹸の原料、灯油、機械油として利用された。とくに精密機械の潤滑油としては代替品がなく、1970年代まで需要があった。かつてはこの鯨蝋を目的に、大量のマッコウクジラが乱獲された。 特に米国では18世紀から19世紀にかけて、盛んにマッコウクジラを捕獲した。米国が日本に開国を迫った理由のひとつに、捕鯨船の中継基地の設置があげられるが、アメリカ大陸近海のマッコウクジラを捕り尽くし、日本に近い西太平洋地域に同じマッコウクジラの大規模な群れがあるのを発見してのことである。今でも同海域には数万頭のマッコウクジラがいるといわれる。
■ハクジラ亜目コマッコウ科 Kogiidae
コマッコウ属 Kogia
★コマッコウ Pygmy Sperm Whale Kogia breviceps


●コマッコウ科(小抹香科、Kogiidae)はクジラ目ハクジラ亜目の科の一つ。 1属2種で構成される。また、コマッコウ属(小抹香属、Kogia)はコマッコウ科の属の一つ。 2種で構成される。

■分類
マッコウクジラ科マッコウクジラ属のマッコウクジラ (Physeter macrocephalus) とは近縁であり、様々な分類法がある。 1998年以降、良く知られている分類としては、以下が挙げられる。

全3種(マッコウクジラ、コマッコウ、オガワコマッコウ)を一つの科Kogiidaeとする[Mead]。
Physeteridaeを科とし、Kogiinaeをマッコウクジラ科に属する亜科とする[Mann]。
Physeteroideaを上科とし、Kogiidaeを科とする。
PhyseteridaeとKogiidaeとの独立した2科とする[Rice(1998)]。

いずれの分類でも、属としてはマッコウクジラ属 Physeter とコマッコウ属 Kogia の2属があり、マッコウクジラ属はマッコウクジラ1種、コマッコウ属はコマッコウとオガワコマッコウ2種という点に関しては共通しており、広く認められている。


■コマッコウ科 Kogiidae
コマッコウ属 Kogia
コマッコウ Pygmy Sperm Whale Kogia breviceps
オガワコマッコウ Dwarf Sperm Whale Kogia sima
●コマッコウ(小抹香、Kogia breviceps)はハクジラ亜目コマッコウ科コマッコウ属に属する小型のクジラである。海上で観察されることは珍しく、多くの研究は座礁した個体や漂着した試料に基づいてなされているに過ぎないため、不明な点も多い。

■分類学
コマッコウ (Kogia breviceps) とオガワコマッコウ (Kogia sima) の分類については、長い間議論が行われてきた。 以前はこれらは単一の種であるとされることが一般的であったが、1966年、スミソニアン博物館の生物学者により別々の種であるという結論が出され、今日では同属の異なる種として扱われることが一般的である。 分類に関してはコマッコウ科も参照されたい。 コマッコウは、1838年、フランスの動物学者Blainvilleによって、新種として報告されている。

■身体
コマッコウはクジラとしては最も小さな部類に属し、イルカと比べてもさほど大きくはない。 産まれた直後の体長は1.2m程度であり、成長すると体長3.5m、体重400kgとなる。 大雑把に言うと、腹側はクリーム色あるいはピンクがかっており、背側および側面は青っぽい灰色であるが、これらが混ざったような体色であることもある。体長に比べて頭部は大きく、横から見ると膨れているように見える。 下顎は上顎に比べて非常に小さい。 20本から32本の歯を有するが、全て下顎に生えている。 噴気孔は左右の中心ではなく、若干左側に位置している。 背びれは非常に小さく、湾曲しており、背びれの大きさの違いによってオガワコマッコウとの識別を行うことができる。 眼の後方(尾側)に、偽鰓(ぎえい)と呼ばれる鰓に似た模様がある。 ハクジラ亜目としては最も巨大なクジラであるマッコウクジラとは近縁であり、コマッコウもマッコウクジラと同様に、前頭部から鯨蝋を採取することが可能である。 腸には暗赤色の液体を含む袋状の器官があり、怯えた際にはその液体を噴出することが知られている。これは捕食者を混乱させ、方向を見誤らせるためであると考えられている。

行動は非常に地味である。 音をほとんど立てずに海面からゆっくりと上昇し、しばらくの間、その態勢を保つという行動を行うことがある。 そのため、日本では「浮きクジラ」 (Floating Whale) と呼ばれることもある。 潜水も地味なもので、単に海面から見えなくなる、といった風情である。 人間の乗っている船には近付いてくるというよりも、むしろ、逃げていくことが多い。 ブリーチング(ほぼ垂直にジャンプ して身体を水面上に表した後、身体を横に倒して体側で着水する行為)は観察された例はあるが、あまり行わない。
単独で行動することが多いが、最高6頭の群が観察されている。 主食はイカやカニである。

■生息域と生息数
コマッコウ生息域コマッコウは、海上において観察されることが非常に稀であるため、正確な生息域や回遊などについては不明な点も多い。 座礁した個体や漂着した試料に基づいて研究されることが多い。 一般的には太平洋、大西洋、インド洋の温暖な海域に棲息し、外洋性であり比較的沖合を好むと考えられている。 全生息数は不明であるが、通常は稀少な種であるとされている。 しかしながら、多数の個体が集団で海浜に座礁する現象(マス・ストランディングス)が時折報告される事から、従来考えられているよりも多数が棲息している可能性もある。

■人間との関り
コマッコウが大規模な捕鯨の対象とされたことはない。 インドネシア、日本、小アンティル諸島においては小規模な捕獲がなされていた。 流し網による混獲の被害も知られている。 座礁した個体の腹部からビニール袋が見つかることもあり、懸念点の一つである。 これらのことがコマッコウの生息に対し、長期的に影響を与えるかどうかは現時点では明確ではない。
●オガワコマッコウ(小川小抹香、Kogia sima)はハクジラ亜目コマッコウ科コマッコウ属に属する小型のクジラである。
海上で観察されることは珍しく、座礁した個体や漂着した試料に基づいて研究されることが多いため、不明な点も多い。
和名のオガワは、日本の鯨類研究家である小川県三にちなむ。

■分類学
オガワコマッコウ (Kogia sima) とコマッコウ (Kogia breviceps) の分類については、長い間議論が行われてきた。 以前はこれらは単一の種であるとされることが一般的であったが、1966年、スミソニアン博物館の生物学者により別々の種であるという結論が出され、今日では同属の異なる種として扱われることが一般的である。 分類に関してはコマッコウ科も参照されたい。オガワコマッコウの学名は、Kogia sima ではなく、Kogia simus と表記されている場合もある。 ラテン語のKogiaは女性名詞であることから、形容詞であるsimusも女性名詞用に変化させてsimaを使うのが、ラテン語としては正しい[CMS Whales and Dolphins]と考えられる。

■身体
オガワコマッコウは成長しても体長2.7m、体重250kg程度であり、クジラとしては最も小さく、一部のイルカよりも小さい。 行動は非常に地味であり、海面から上昇する際も、音も水しぶきも立てずにゆっくり動き、海面でじっとしていることも多い。 そのため、海面が穏やかな状態でないと観察することは困難である。

同じコマッコウ属に属するコマッコウ (Kogia breviceps) とは、外見が似通っているだけではなく、行動面においても類似が多い。 オガワコマッコウとコマッコウの識別は近付いて観察しないと困難ではあるが、オガワコマッコウの方が若干小柄で、背びれは体長に比べて大きく、若干前方(頭側)に位置しているという違いがある。

全身は青みがかった灰色であり、腹側はより明るい灰色である。 腹側には黄色い静脈のような筋状の模様が見られる。 眼の後方(尾側)に偽鰓(ぎえい)と呼ばれる鰓に似た模様がある。 胸びれは短いが幅広である。 下顎は小さく、上顎側が前方に飛び出している。 歯は長くて鋭く、湾曲しており、上顎には0本から6本、下顎には14本から26本ある。 歯の特徴から、英語では "the Rat Porpoise in Lower Antilles"(小アンティル諸島のネズミのようなイルカの意)とも呼ばれる。

マッコウクジラ科のマッコウクジラ、コマッコウ科のコマッコウと同様に、頭部に鯨蝋と呼ばれる脳油を有する。 またコマッコウと同様に、腸に暗赤色の液体を含む袋状の器官があり、怯えた際にはその液体を噴出する。これは捕食者を一瞬ひるませ、自分の身を守るためであると考えられている。
群を成さず単独で行動することが多いが、小規模の群を成して行動することもある。 主食はイカやカニである。

■生息域と生息数
オガワコマッコウ生息域オガワコマッコウは外洋性であるが、コマッコウよりは若干沿岸側に棲息する。 ちょうど大陸棚の沖側あたりを好むとされる。

様々な地域で座礁(ストランディング)が報告されている。 大西洋における報告例としては、西大西洋ではアメリカバージニア州、東大西洋ではスペインにおけるものがある。南限はブラジル南部、南アフリカあたりである。 インド洋に関しては、オーストラリアの南側をはじめ、南アフリカからインドネシアまでの広範囲の海岸において座礁が報告されている。 太平洋に関しては、日本やカナダブリティッシュコロンビア州などで報告されている。全生息数は不明である。東太平洋における生息数としては、約11,000頭という報告がある。 IUCNのレッドリストでは「低リスク−軽度懸念」 (LR/lc : Lower Risk-Least Concern) に分類されている。

■人間との関り
オガワコマッコウは、以前は日本やインドネシアにおいて商業捕鯨の対象となっていたが、近年は日本は捕獲を行っていない。 コマッコウに比べると沿岸側に棲息しているために、捕鯨の対象にされやすく、また化学物質による影響も受けやすいと考えられている。 しかし、これらがオガワコマッコウの持続的な生存に悪影響を与えるかどうかは、現時点では明確にはわかっていない。

●アカボウクジラ科(赤坊鯨科、Ziphiidae)は、クジラ目ハクジラ亜目に属する属の一つ。 アカボウクジラ科に属するのは比較的小型のクジラが多く、約20の種から成る。

大型哺乳類としては最も不明な点が多い種類の一つである。 一部の種はここ20年ほどの間に発見されたばかりであり、まだ発見されていない種も存在しているだろうと考えられている。


■分類
アカボウクジラ科は6属で構成され、それらは伝統的には3亜科に分けられる。
■アカボウクジラ亜科 Ziphiinae
アカボウクジラ属 Ziphius
アカボウクジラ Cuvier's Beaked Whale Ziphius cavirostris
■ツチクジラ亜科 Berardinae
ツチクジラ属 Berardius
ミナミツチクジラ Arnoux's Beaked Whale, Berardius arnuxii
ツチクジラ Baird's Beaked Whale (North Pacific Bottlenose Whale), Berardius bairdii
タスマニアクジラ属 Tasmacetus
タスマニアクジラ Tasman Beaked Whale (Shepherd's Beaked Whale) Tasmacetus shepherdi
■トックリクジラ亜科 Hyperoodontinae
タイヘイヨウアカボウモドキ属 Indopacetus
タイヘイヨウアカボウモドキ Longman's Beaked Whale (Indo-Pacific Beaked Whale), Indopacetus pacificus
トックリクジラ属 Hyperoodon
キタトックリクジラ Northern Bottlenose Whale, Hyperoodon ampullatus
ミナミトックリクジラ Southern Bottlenose Whale, Hyperoodon planifrons
オウギハクジラ属 Mesoplodon
ニュージーランドオウギハクジラ Hector's Beaked Whale, Mesoplodon hectori
アカボウモドキ True's Beaked Whale, Mesoplodon mirus
ヒガシアメリカオウギハクジラ Gervais' Beaked Whale, Mesoplodon europaeus
ヨーロッパオウギハクジラ Sowerby's Beaked Whale, Mesoplodon bidens
ミナミオウギハクジラ Gray's Beaked Whale, Mesoplodon grayi
ピグミーオウギハクジラ Pygmy Beaked Whale, Mesoplodon peruvianus
タイヘイヨウオウギハクジラ Andrews' Beaked Whale, Mesoplodon bowdoini
バハモンドオウギハクジラ Spade Toothed Whale, Mesoplodon traversii (Bahamonde's Beaked Whale, Mesoplodon bahamondi)
ハッブスオウギハクジラ Hubbs' Beaked Whale, Mesoplodon carlhubbsi
イチョウハクジラ Ginkgo-toothed Beaked Whale, Mesoplodon ginkgodens
オウギハクジラ Stejneger's Beaked Whale, Mesoplodon stejnegeri
ヒモハクジラ Layard's Beaked Whale, Mesoplodon layardii
コブハクジラ Blainville's Beaked Whale, Mesoplodon densirostris
ペリンオウギハクジラ Perrin's Beaked Whale, Mesoplodon perrini

■身体
食餌は吸引方式 (suction feeding mechanism) で行う。 すなわち歯で獲物を捕まえるのではなく、口腔内に海水ごと獲物を吸い込む。 自在に動かすことが可能な舌を有しており、口を開けると同時に舌を急速に引っ込めることで口腔内の圧力を低下させ、海水と一緒に餌となる獲物を吸い込む。
アカボウクジラ科のクジラは体長3.6mないし約13mであり、体重は1tないし15tである。 識別は体長、体色、頭部の形状、口吻の長さなどの微妙な違いを用いて行い、野生下での種の同定はかなり困難である。
●アカボウクジラ科(赤坊鯨科、Ziphiidae)は、クジラ目ハクジラ亜目に属する属の一つ。 アカボウクジラ科に属するのは比較的小型のクジラが多く、約20の種から成る。

■生息域、生態
世界中のほとんどの海域に棲息しているが、浅瀬はあまり好まず、大陸棚よりも深い海域を好む。 海底の山脈、渓谷、斜面、あるいはアゾレス諸島、カナリア諸島などの大洋上の島々の近くなどを特に好む。判っている限りにおいては、海底あるいは海底近くで餌を捕獲する。 主にイカ、魚類、甲殻類などを食べる。 非常に優れた潜水能力を有し、20分から30分程度の潜水を行うことが多い。 80分もの長い潜水の記録もあり、潜る深さもほぼ間違いなく1,000mを超えているものと考えられている。 家族による小規模の群を成して行動することが多い。アカボウクジラ科は海洋性であることと、長時間の潜水を行うことから、観察することが困難であり、多くの種について不明な点が多い。 一部には、正式な記録も名前もまだなかったり、死骸は確認されているものの、生体の観察例はない、といった種もある。 約20種のうち、3種ないし4種は、かつては捕鯨の対象であったため、比較的良く知られている。本項の人間との関りを参照されたい。

■人間との関り
アカボウクジラ科のクジラは海洋性であるため、捕鯨の対象であった一部の種を除き、人間との関りは少ない。 ツチクジラ Berardius bairdii とアカボウクジラ Ziphius cavirostris は主に日本によって捕鯨の対象とされ、ツチクジラの捕鯨は捕獲頭数の上限を自主的に設定した上で現在でも行われている。 キタトックリクジラ Hyperoodon ampullatus は19世紀末から20世紀初頭にかけて、北大西洋の北部海域において、多数が捕獲された。近年、座礁して死亡した個体の調査から、新たな問題が発生していることがわかってきた。 一つは脂肪中に含まれる有毒な化学物質の濃度の増加傾向である。 猛禽類の鳥類と同じく、アカボウクジラ科のクジラたちは食物連鎖の頂点にいるため、このような化学物質の蓄積が懸念される。 二つ目の問題は、ビニール袋などのプラスチック製品を飲み込んでいる例が多く見られることである。これらは消化されずに消化器中に留まるため、致命的なこともある。 また、20世紀末からタラの漁獲量が減少したことによって、遠洋における底引き網漁が盛んになったため、底引き網による混獲による被害が増加しているという問題もある。 餌となる魚類などの減少を懸念する指摘もある。

ミナミツチクジラ Berardius arnuxii、ツチクジラ Berardius bairdii、キタトックリクジラ Hyperoodon ampullatus およびミナミトックリクジラ Hyperoodon planifrons の4種については、IUCNのレッドリストでは「低リスク(保全対策依存)」 (LRcd : Lower Risk - Conservation Dependent)に分類されている。 その他の種については、情報が不足しているため、分類されていない。

■古代史
アカボウクジラ科の最も古い化石としては約2千万年前の中新世のものが発見されており、ハクジラの中ではマッコウクジラ科に続き初期に分化したグループの一つであると考えられている
●アカボウクジラ(赤坊鯨、Ziphius cavirostris)はハクジラ亜目アカボウクジラ科アカボウクジラ属に属する中型のクジラである。 アカボウクジラ科の中では最も広範囲な海域に棲息する。 1804年にフランスで発見された頭蓋骨の一部に基づき、1823年、フランスの動物学者キュヴィエによって新種として報告された。種小名のcavirostrisはラテン語の cavi(穴・くぼみ)+ rostris(嘴・吻)に由来し、英名のCuvier's Beaked Whale(キュヴィエのアカボウクジラ)はキュヴィエの名前に由来する。英名としてGoose-beaked Whale(ガチョウのようなくちばしのクジラ)があるが、これはアカボウクジラの口吻の形状がガチョウのくちばしに似ていることに由来する。 事実、中世におけるアカボウクジラの目撃例は、魚のような胴にフクロウのような頭を持つ怪物として伝えられている。
和名のアカボウ(赤坊)はアカボウクジラの顔が「赤ん坊」(ヒトの個体であって、誕生から十分な時間が経過していないものの通称)に似ているからであるとされる。 別の和名としてカジッポという呼び名もある。

アカボウクジラ属 (Ziphius) はアカボウクジラ科に属する属の一つで、アカボウクジラただ1種のみが属する。 学名はギリシア語の ziphos(ξίφος:剣)で、アカボウクジラの雄がもつ円錐形の歯の形に因む。

■身体
アカボウクジラの口吻はアカボウクジラ科の他の種に比べると短い。 雄は下顎の先端に円錐状の歯を1対のみもち、雌は歯をもたない。 メロンのある前頭部は若干膨らんでおり、色は白あるいはクリーム色であり、背びれに向かって2/3程度の位置まで白い線状の模様がある。 その他の部分の体色は個体による違いが大きいが、大雑把には濃い灰色あるいは赤褐色である。 また多くの個体はダルマザメ (Cookiecutter shark) に咬まれた跡である白い傷跡や斑点を有する。 背びれの形状は三角形あるいは鎌状である。 尾の部分の長さは体長のほぼ1/4である。 成体の体長は約7m、体重は2tから3tである。 寿命は約40年である。海上において、オウギハクジラ属のクジラとの識別を行うことは困難である。

■生息域と生息数
アカボウクジラ生息域アカボウクジラの分布は主に座礁(ストランディング)の記録に基づいて理解されており、大西洋、太平洋、インド洋に広く棲息している。 個体が観察された北限はシェトランド諸島、南限はフエゴ島である。 水深の深い遠洋を好み、冷たい海域でも、温暖な海域でもどちらでも良い。 深所に生息する魚類や頭足類などを食べ、時に甲殻類も餌にするとされる。 頻繁に見られる場所というわけではないが、スペインとフランスにまたがるビスケー湾における研究が有名である。海上における識別が困難であるため、全生息数は不明である。

■保護
日本においては、かつてはアカボウクジラは捕鯨の対象であった。 他のクジラ目のクジラやイルカと同じく刺し網などによる混獲の被害に遭う個体が多数いるものと考えられている。 また、アカボウクジラは雑音に対して敏感であると考えられている。地中海のような騒々しい海域において、座礁(ストランディング)が多数記録されている。

●ツチクジラ属(槌鯨属、Berardius)は、クジラ目ハクジラ亜目アカボウクジラ科に属する属の一つ。 ミナミツチクジラとツチクジラの2種が属する。

★ミナミツチクジラ(南槌鯨、Berardius arnuxii、Arnoux's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、南半球に棲息する大型のクジラである。ミナミツチクジラとツチクジラはアカボウクジラ科の中では一番大きいクジラである。 大きさもほぼ同じで、外観も非常に似通っている。 そのため、一部の動物学者は同一の種が変異して別々の種に分かれたという説を唱えている[McCann(1975)]。

ミナミツチクジラは、ニュージーランドで発見された頭蓋骨に基づき、1851年、Duvernoyによって新種として報告された。 属名の Berardius は、この頭蓋骨をニュージーランドからフランスに運んだ船の船長であるBerardに由来する。 種小名の arnuxii および英名のArnoux'sは同船の船医Arnouxに由来する[www.cetacea.org]。

■分類
■ツチクジラ属 Berardius
ミナミツチクジラ Arnoux's Beaked Whale, Berardius arnuxii

■身体
ミナミツチクジラとツチクジラの外観は非常によく似ている。 生息域が重なっていないため海上で識別する必要はないが、もしも生息域が重なっていたならば、識別は非常に困難になっていただろう。 身体の大きさは若干異なっており、ミナミツチクジラの方がツチクジラよりも少し小さい。 海上で観察された最も大きなミナミツチクジラの推定体長は12mであるが、標本として入手できているものはそれよりもかなり小さい。両種とも、アカボウクジラ科の中でも比較的長い口吻を有する。 下顎が上顎よりも長く、口を閉じた状態でも下の前歯が見える。 頭部メロンは、アカボウクジラ科の中でも特に膨らんだ形状を持つ。 体型は細長く、胴回りは体長の50%程度に過ぎない。 体色はほぼ一色であり、個体による違いがあるが、明るい灰色から黒である。 胸びれは小さく、丸くなっている。 同じく背びれも小さく、丸くなっており、全長の3/4くらいの位置にある。 両種とも全身に白い引っかき傷がある。 この傷の個数は加齢とともに増えていくため、各個体の年齢の大雑把な見積もりに使用することができる。 また、両種とも性による外観の違いはほとんどない。

■生息域、生息数
ミナミツチクジラとツチクジラの生息域は重なっておらず、完全に分かれている。ミナミツチクジラは南極海に棲息する。 ニュージーランドやオーストラリアの海岸への座礁が少なくないことから、これらの国の南部海域から南極大陸までの海域においては、比較的一般に棲息しているものと考えられている。 サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島や南アフリカなどにも棲息しているため、南極海の広い海域に棲息していると考えられている。 また最北端の座礁の報告例は南緯34度であるため、極地に近い寒冷な海域だけではなく、温暖な海域にも棲息すると考えられる。

■生態
ミナミツチクジラの生態はほとんどわかっていないが、ツチクジラに似ているものと考えられている。
ツチクジラは、通常は3頭から10頭程度の群を成して行動するが、稀に50頭程度の群が観察される。 群の構成は良くわかっていない。 雌の方が雄よりも若干大きいので、捕獲の困難さに雌雄の差がないならば、雌の捕獲頭数の方が雄よりも多いことが予想されるのだが、実際には全捕獲頭数の2/3が雄であるため、調査捕鯨の結果からも群の構成は良くわかってはいない。 主な餌は魚類、頭足類などである。

■人間との関わり、保護
ミナミツチクジラは捕鯨の対象となったことはない。 不明な点もあるが、おそらく絶滅の惧れはあまりないものと考えられている。
●ツチクジラ属(槌鯨属、Berardius)は、クジラ目ハクジラ亜目アカボウクジラ科に属する属の一つ。 ミナミツチクジラとツチクジラの2種が属する。

★ツチクジラ(槌鯨、Berardius bairdii、Baird's Beaked Whale)はツチクジラ属に属し、北半球に棲息する大型のクジラである。

ミナミツチクジラとツチクジラはアカボウクジラ科の中では一番大きいクジラである。 大きさもほぼ同じで、外観も非常に似通っている。 そのため、一部の動物学者は同一の種が変異して別々の種に分かれたという説を唱えている[McCann(1975)]。

ツチクジラは、ベーリング海で発見された試料に基づき、1883年、Stejnegerによって新種として報告された。 種小名の bairdii および英名のBaird'sは鳥類学者・魚類学者でありスミソニアン博物館の副館長も務めたBairdに由来する。
和名のツチ(槌)は、頭部の形状が稲藁を叩く槌に似ているからとされる。

■分類
■ツチクジラ属 Berardius
ツチクジラ Baird's Beaked Whale (North Pacific Bottlenose Whale), Berardius bairdii

■身体
ミナミツチクジラとツチクジラの外観は非常によく似ている。 生息域が重なっていないため海上で識別する必要はないが、もしも生息域が重なっていたならば、識別は非常に困難になっていただろう。 身体の大きさは若干異なっており、ミナミツチクジラの方がツチクジラよりも少し小さい。 ツチクジラは成長すると12mから13m程度に達する。両種とも、アカボウクジラ科の中でも比較的長い口吻を有する。 下顎が上顎よりも長く、口を閉じた状態でも下の前歯が見える。 頭部メロンは、アカボウクジラ科の中でも特に膨らんだ形状を持つ。 体型は細長く、胴回りは体長の50%程度に過ぎない。 体色はほぼ一色であり、個体による違いがあるが、明るい灰色から黒である。 胸びれは小さく、丸くなっている。 同じく背びれも小さく、丸くなっており、全長の3/4くらいの位置にある。 両種とも全身に白い引っかき傷がある。 この傷の個数は加齢とともに増えていくため、各個体の年齢の大雑把な見積もりに使用することができる。 また、両種とも性による外観の違いはほとんどない。

■生息域、生息数
ミナミツチクジラとツチクジラの生息域は重なっておらず、完全に分かれている。 ツチクジラは北太平洋、日本海、オホーツク海の南部などに棲息する。 大陸棚の端近くの沿岸側あたりを好むと考えられている。 北限はベーリング海、南限は東側はバハ・カリフォルニア半島、西側は小笠原諸島である。 ツチクジラの全生息数の見積もりは3万頭オーダーである。

■生態
ミナミツチクジラの生態はほとんどわかっていないが、ツチクジラに似ているものと考えられている。
ツチクジラは、通常は3頭から10頭程度の群を成して行動するが、稀に50頭程度の群が観察される。 群の構成は良くわかっていない。 雌の方が雄よりも若干大きいので、捕獲の困難さに雌雄の差がないならば、雌の捕獲頭数の方が雄よりも多いことが予想されるのだが、実際には全捕獲頭数の2/3が雄であるため、調査捕鯨の結果からも群の構成は良くわかってはいない。 主な餌は魚類、頭足類などである。

■人間との関わり、保護
ツチクジラは、20世紀、主に日本によって捕鯨の対象になっていた。 日本は1986年の商業捕鯨モラトリアムまでに約4,000頭を捕獲した。 最も多いのは1952年の年間300頭であった。 ソ連、カナダ、アメリカも頭数は少ないが捕鯨を行っていた。 ソ連は1974年に捕鯨を中止するまでに176頭のツチクジラを、カナダ、アメリカは1966年に中止するまでに60頭のツチクジラをそれぞれ捕獲した。
現在日本は、自主規制による頭数制限(ツチクジラはIWCの管轄外)に従ってツチクジラを捕獲しており、その肉は日本の市場で流通している。 現在行われている程度の捕鯨頭数が種としての存続を脅かすことはないと考えられている。
●タスマニアクジラ(タスマニア鯨、Tasmacetus shepherdi)はハクジラ亜目アカボウクジラ科タスマニアクジラ属の珍しいクジラである。 海上における確かな目撃例もほとんど報告されておらず、座礁(ストランディング)による個体が28体報告されているのみである。 ほとんど研究されていないため、不明な点が多い。

タスマニアクジラ属 (Tasmacetus) はアカボウクジラ科に属する属の一つ。タスマニアクジラ属に属するのはタスマニアクジラ1種のみである。

■身体
タスマニアクジラは先端が細くなっている長い口吻を持つ。 頭部のメロンは垂直に切り立ったような形状である。 アカボウクジラ科の中では噛むのに役立つ上下の歯を持つ唯一の種である。 体長は7m程度であり、鎌に似た形状の背びれが前から2/3くらいの位置にある。 体色は、背側は濃い茶色あるいは黒、側面には斜めに明るい模様(パッチ)があり、腹側は明るい色である。

■生息数と生息域
全生息数は不明である。
2003年までに27個体の座礁が報告されている。 27個体の内訳は、ニュージーランドが20、アルゼンチンが3、Juan Fernándezが2、オーストラリアとサウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島がそれぞれ1である。 2004年3月5日、ニュージーランドのワイタラ (en:Waitara)北部のタラナキ海岸 (coast of Taranaki) において、28例目となる座礁したタスマニアクジラがサーファーによって発見された。 この地点は1933年に最初の座礁が報告された海岸の近くである。

海上における生体の観察例は2例(ニュージーランドとセーシェル)が報告されている。

■生態
群の大きさ、潜水のパターン、回遊の有無など、情報が不足しているために全て不明である。 情報が不足している理由であるが、人間を避けているのか、生息数が僅かなのか、それとも両方なのか、それも不明である。

■保護
捕鯨の対象とはなっていない。 混獲の被害に遭っているという報告もない
●タイヘイヨウアカボウモドキ(太平洋赤坊擬、Indopacetus pacificus)はハクジラ亜目アカボウクジラ科タイヘイヨウアカボウモドキ属に属するクジラ目の中で最も珍しい種の一つである。 ロングマンオウギハクジラという和名を提唱する研究者もいる。 アカボウクジラ科に属する1属1種のみである。 同じアカボウクジラ科のオウギハクジラ属、トックリクジラ属に似ており、3属をトックリクジラ亜科 (Hyperoodontinae) とすることも多い。

■分類
1955年にソマリアのダナネ (Danane) 近くの海岸に打ち上げられた個体は、ほぼ全身が肥料として処分されたものの頭蓋骨が残されており、生物学者ムーア (Joseph C. Moore) はこの頭蓋骨を用いて新種であることを示した。 この種がオウギハクジラ属 (Mesoplodon) に属するか否かについては激しい議論が交わされた。1968年にケニヤで見つかった頭蓋骨、1976年と1992年に南アフリカで見つかった未成熟な2個体、2000年にモルディブで見つかった個体である。 このうち、モルディブで見つかった個体は妊娠中の雌で、胎内から胎児も見つかっている。 Daleboutらの遺伝子解析によって、独立した属とすべきであろうということも示された。 現在ではタイヘイヨウアカボウモドキ属 (Indopacetus) として独立した属とすることでほぼ決着している。外観的な特徴も明らかにされ、インド洋や太平洋で稀に見られるTropical Bottlenose Whaleは別の種であると従来考えられていたが、実は同一の種であることもわかった。2002年7月、日本の鹿児島において当初はツチクジラと思われたクジラが打ち上げられたが、後日タイヘイヨウアカボウモドキであることがわかった。

■身体
タイヘイヨウアカボウモドキの外見はオウギハクジラ属やトックリクジラ属によく似ており、生物分類が混乱する原因にもなっていた。 未成熟な個体の口吻はトックリクジラ類のように短いが、成熟した雌の個体の口吻はむしろ長く、あまり明瞭ではない頭部メロンにめりこんだような形状である。 背びれは成体ではトックリクジラよりも大きく三角形に近い形状であるが、未成熟な個体ではむしろ小さく鎌に似た形状である。 雄の成体の座礁例はないため不明な点もあるが、海上での観察によると、頭部メロンは膨らんでおり、口吻の先端に2本の歯があり、体表には歯による引っかき傷もある。 ダルマザメによる引っかき傷があることも珍しくないようである。未成熟な個体の体表の模様は特徴的であり、そのことはタイヘイヨウアカボウモドキと Tropical Bottlenose Whale が同一の種であるとわかった要因でもある。 背側については、噴気孔の後では暗い黒であるが、尾側にかけて明るい灰色から白に変化していく。 眼のあたりは背中よりは明るい灰色であり、眼のすぐ後には明るい斑点があり、胸びれにかけて濃い灰色の筋状の模様がある。 口吻の先端も濃い色である。 雌の模様はもっと単純であり、口吻と頭部が茶色である以外は全身が灰色がかっている。 同じ種であっても個体間での模様の違いが大きいとも考えられている。モルディブで見つかった雌の成体の体長は約6mであり、日本で見つかった同じく雌は約6.5mであった。 海上における観察では若干それらよりも大きく7mから8m程度である。 オウギハクジラ類よりは少し大きく、トックリクジラ類と同程度である。 モルディブで見つかった雌の胎内にいた胎児の体長は1mほどであった。 体重、妊娠期間などは不明である。

■生息数と生息域
漂着例からは、生息域はインド洋についてはアフリカに近い南西部からモルディブにかけて、太平洋についてはオーストラリアから日本にかけての海域と考えられている。 しかし海上における目撃例をふまえると、生息域はもっと広くアラビア海やメキシコの西岸などにも棲息していると考えられる。 メキシコ湾における目撃例も報告されているため、大西洋の熱帯海域にも棲息すると考えられる。ハワイ沖における目撃例が最も頻繁である。 ハワイの海岸へ打ち上げられた例は報告されてはいないが、比較的ありふれた存在であり、2002年の調査では766頭の棲息が確認されている。 他の海域についての生息数は不明である。

■生態
タイヘイヨウアカボウモドキは、他のオオギハクジラ類と比べると大きな群を成して行動する。 10頭から、多いときには100頭程度の群を成すが、典型的な群の大きさは15頭から20頭程度である。 群の結束はかなり堅い方である。 コビレゴンドウやハンドウイルカの群と混ざって行動することも少なくない。
ブリーチング(水面上にほぼ垂直に跳躍した後、身体を倒して側面を海面に打ちつけるように着水して水しぶきを上げる行動)を行うことは知られているが、低めの跳躍である。 潜水時間については18分から25分という報告がある。
●トックリクジラ属(徳利鯨属、Hyperoodon)はハクジラ亜目アカボウクジラ科に属する属の一つである。 同じアカボウクジラ科のオウギハクジラ属、タイヘイヨウアカボウモドキ属に似ており、これら3属でトックリクジラ亜科 (Hyperoodontinae) を構成する。

トックリクジラ属に属するのはキタトックリクジラ(北徳利鯨、Hyperoodon ampullatus)とミナミトックリクジラ(南徳利鯨、Hyperoodon planifrons)の2種のクジラである。

■概要
キタトックリクジラとミナミトックリクジラはともに比較的寒冷な海域に棲息する。 従来はこれら2種は身体的な類似点が多いとされていたが、近年ではむしろ違いが大きいことがわかってきている。 キタトックリクジラは19世紀から20世紀初頭までノルウェーとイギリスによって大規模な商業捕鯨の対象とされていた。 ノルウェーは1973年にキタトックリクジラの捕獲を中止した。 一方、ミナミトックリクジラは滅多に観察されることもなく、捕鯨の対象とされたこともなく、南極海において最も多数棲息しているクジラであろうと考えられている。

和名のトックリ(徳利)は頭部の形状が徳利に似ていることに由来する。属名はギリシャ語で「上・超」を意味する「hyper- (υπερ-)」と「歯」を意味する「 donti (δόντι)」 を合わせたもの。本属の上顎に歯は無いが、1798年のBaussardという学者による「上顎に小歯がある」という記述を信じたLacépèdeが属名を付けたもの。この「小歯」は実際には上顎の骨質のシワを「歯」と誤認したものとされる。


■分類
トックリクジラ属 Hyperoodon

模式種は Hyperoodon butskopf Lacépède, 1804(= Hyperoodon ampullatus キタトックリクジラ)(単模式)

キタトックリクジラ Northern Bottlenose Whale, Hyperoodon ampullatus
ミナミトックリクジラ Southern Bottlenose Whale, Hyperoodon planifrons

■身体
トックリクジラは2種とも成体の体長は8mから10mに達し、全体的に丸っこい体型である。 特に頭部メロンは丸く、前方に飛び出している。 口吻は長く、雄は白、雌は灰色である。 背びれは30cmから38cmで体長の割には小さく、背の中央よりも後側(尾側)に位置し、鎌状に曲がっていて、先端は尖っている。 背側の体色は、キタトックリクジラは灰色、ミナミトックリクジラはやや明るい灰色である。 2種とも腹側はより明るい灰色である。 また雄の方が雌や子供に比べると濃い灰色であり、多くの雄が濃い灰色から黒に近いのに対し、多くの雌や子供は明るい灰色から白に近い。


■生息数と生息域
キタトックリクジラは北大西洋に固有な種である。 デーヴィス海峡、ラブラドル海、グリーンランド海、バレンツ海などの寒冷な亜北極圏の海域に棲息する。 水深の深い海域を好む。 全生息数不明であるが、およそ数万頭であると考えられる。 カナダのノヴァスコシア州の東沖にあるザ・ガリー (en:The Gully) と呼ばれる巨大な海底渓谷には130頭ほどが定住している。

ミナミトックリクジラは南極海に棲息する。 生息域の南限は南極大陸の極近くまで、北限は南アフリカ、ニュージーランド北島、ブラジル南部あたりである。 全生息数はおそらく50万頭を超えるだろうと考えられている。

熱帯や亜熱帯における目撃例も報告されているが、おそらくタイヘイヨウアカボウモドキ(同じトックリクジラ亜科に属する珍しいクジラ)の間違いであろうと考えられる。 他のアカボウクジラ類との関係はまだ明らかにされていない。


■保護
ミナミトックリクジラについては特に懸念点はない。

キタトックリクジラは、商業捕鯨が盛んになる以前には大西洋に4万から5万頭が棲息していたと推測されている。 1850年から1973年までに8万8千頭が主にノルウェーとイギリスによって捕獲されたため、生息数はかなり減少したと考えられる。 捕鯨は1973年に中止されたためその点に関する懸念はなくなったが、ザ・ガリー (The Gully) 付近における石油や天然ガスの開発が新たな問題として浮上している。
●ニュージーランドオウギハクジラ(新西蘭扇歯鯨、Mesoplodon hectori)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型の珍しいクジラである。 南半球に棲息する。 2002年時点において、生きている個体の観察例は報告されていない。

種小名のhectoriおよび英名(Hector's Beaked Whale:ヘクターのオウギハクジラ)は、スコットランドの地質学者でありニュージーランドのウェリントンにある植民地博物館 (colonial museum) の創始者でもあるジェームズ・ヘクター卿 (en:James Hector) に由来する。

アメリカのカリフォルニアにおいて、ニュージーランドオウギハクジラの座礁や目撃が報告されたことがあるが、全てぺリンオウギハクジラ (Mesoplodon perrini) の誤認であったことがわかっている。


■身体
オウギハクジラ類としては典型的な体型であるが、オウギハクジラ属の中では小柄な種類である。 雄の特徴である三角形の歯が下顎の先端に2本生えており、口を閉じている時でもそれらの歯が見える。 体色は全体的に灰色であり、背側は濃い灰色、腹側は明るい灰色である。 上顎や眼の周囲は濃い灰色であるが、下顎は白に近い灰色である。 雄の体長は少なくとも4mであるが、雌の体長は不明である。 生まれた直後の体長は2m以下であると考えられている。

■生態
生態は不明であるが、おそらくイカを食べるだろうと考えられている。

■生息域、生息数
おそらくニュージーランド周辺に多く棲息するだろうと考えられている。 タスマニア、南アメリカ、フォークランド諸島、南アフリカにおいて座礁例が報告されている。 生息数は不明である。

■保護
捕鯨の対象となったことはない。 漁具による混獲の犠牲になったという報告もない。 IUCNのレッドリストにおいてはDD(Data Deficient−情報不足)に分類されている。

●アカボウモドキ(赤坊擬、Mesoplodon mirus)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 生息域は北大西洋と南インド洋とに分かれており、別の亜種として分類される可能性もある。
和名のアカボウモドキ(赤坊擬)は外観がアカボウクジラ (Ziphius cavirostris) に似ていることに由来する。 英名のTrue's Beaked Whale(トゥルーのアカボウクジラ)はアカボウモドキを新種として報告した生物学者のトゥルー (en:Frederick W. True) に由来する。


■身体
アカボウモドキはオウギハクジラ類としては典型的な体型であるが、胴部は太く、尾びれ方向に向かって細くなっている。 雄の特徴である2本の歯は比較的小さく、下顎の先端部に位置している。 頭部のメロンは比較的ふくらんでおり、口吻は短い。 噴気孔の後に窪みがあり、背の背びれ付近には鋭い隆起がある。 体色は、背側は灰色あるいは茶色がかった灰色であり、腹側はより明るい灰色である。 口吻、眼の周囲、背びれの周辺は濃い灰色である。 頭部から背びれにかけて濃い灰色の模様を有することもある。 青みがかった黒色の背、背びれと尾びれの間が白、下顎から喉にかけては明るい灰色、さらに黒い斑点を持つ、という雌の個体が南半球で見つかったことがある。 雄の個体はダルマザメに噛まれた跡などの引っかき傷があることが多い。

成体の体長は5.3m程度、体重は雌が1,400kg、雄が1,000kg程度である。 産まれた直後の体長は2.2mほどである。

■生態
比較的小さな群を成して行動することが多く、イカを食べると考えられている。 その他のことについてはあまりわかっていない。

■生息域、生息数
生息域は北半球の北大西洋と南半球の南インド洋とに分かれており、これらはおそらく遺伝的に異なるものと考えられている。 南大西洋や北インド洋には棲息しておらず、熱帯の海域にも棲息していない。

大西洋については、西大西洋のカナダノヴァスコシア州、東大西洋のアイルランド、南はフロリダ州、バハマ、カナリア諸島において座礁が報告されている。

インド洋については、南アフリカ、オーストラリアにおいて座礁が報告されている。

全生息数は不明であるが、おそらく少数であろうと考えられている。 IUCNのレッドリストでは「情報不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■保護
捕鯨の対象となったことはない。 漁網などによる混獲の被害の報告もない。
●ヒガシアメリカオウギハクジラ(東アメリカ扇歯鯨、Mesoplodon europaeus)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 2002年時点では生体が見つかった例は報告されておらず、非常に珍しいクジラである。

種小名のeuropaeusは「ヨーロッパの」の意味である。 和名のヒガシアメリカ(東アメリカ)は生息域がアメリカの東海岸沖の大西洋であることに由来する。 英名のGervais'はこのクジラを新種として報告したフランスの古生物学者であるポール・ジェルベー (Paul Gervais) に由来する。他の英名としてはAntillian Beaked Whale、Gulf Steam Beaked Whale、European Beaked Whaleなどが知られる。

■概要
ヒガシアメリカオウギハクジラの座礁(ストランディング)が初めて報告されたのはイングランドの海岸である。 その後、アイルランド、カナリア諸島、西アフリカ、アセンション島などで座礁が報告されている。 2001年8月にはブラジルのサンパウロ州における座礁例が報告されており、これが最南端の座礁例である[Santos 2003]。アメリカの大西洋側海岸において、アカボウクジラ類として最も座礁数が多いのがヒガシアメリカオウギハクジラである。 1992年から1998年の間に、アカボウクジラ類の座礁は49頭が報告されているが、うち28頭がヒガシアメリカオウギハクジラである[CMC]。

■身体
ヒガシアメリカオウギハクジラはオウギハクジラ類としてはすらっとした細身であり、前後方向に延びているような印象を受ける。 雄の特徴である下顎の2本の歯は比較的小さいためあまり目立たない。 上下の唇の形状は、雄の場合でも直線的であるという特徴を持つ。 頭部は小ぶりでメロンはほとんどなく、口吻方向に向かって細まっていく形状であり、口吻は明確ではない。体色は全身が灰色であり、背側は濃い灰色、腹側は明るい灰色である。 雌の場合、眼の周囲に濃い灰色の輪状の模様や、生殖器周辺や頭部に明るい色の斑点状の模様を持つことがある。 若い個体の体色は明るい灰色を基調とするが、成長にするに従って暗い色に変化していく。成体の体長は雄が4.5m、雌が5.2m程度であり、体重は1,200kgを超えると考えられる。 産まれた直後の体長は2.1m程と考えられる。寿命は不明であるが、座礁した個体について48歳という調査結果が報告されている。

■生息域、生息数
北半球を中心とする大西洋の温帯から熱帯にかけての海域に棲息する。全生息数は不明であるが、おそらく少数であろうと考えられている。 IUCNのレッドリストでは「情報不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■生態
外洋性である。 座礁の状況からの推測では比較的小さな群を成して行動すると考えられる。 イカを食べると考えられている。 その他のことについてはあまりわかっていない。

■保護
捕鯨の対象となったことはない。 漁網などによる混獲の被害の報告は少ない。
●ヨーロッパオウギハクジラ(ヨーロッパ扇歯鯨、Mesoplodon bidens)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 北大西洋に棲息し、オウギハクジラ属としては最初に新種として報告された種である。

種小名のbidensは下顎にある特徴的な2本の歯に由来する。 当初はヨーロッパオウギハクジラに固有の特徴であると考えられていたが、現在ではオウギハクジラ類一般に見られる特徴であることがわかっている。 英名のSowerby'sは、このクジラを新種として報告したイギリスの博物学者であるサワビー (James Sowerby) に由来する。 他の英名としてはNorth Atlantic Beaked Whale、North Sea Beaked Whaleなどが知られる。

■身体
ヨーロッパオウギハクジラはオウギハクジラ類としては典型的な体型である。 雄の特徴である下顎の2本の歯は、口吻の先端から30cmほどの奥まった場所に位置している。 口吻はやや長く、頭部のメロンは少し膨らんでいる。体色は全身が灰色であるが、腹側は明るい灰色である。 ダルマザメによる噛み傷や、雄の場合には別の雄と争った際の歯の跡などがあることも多い。成体の体長は雄が5m、雌が5.5m程度であり、体重は1,000から1,300kgである。 妊娠期間は約1年であり、産まれた直後の体長は2.4〜2.7m、体重は190kgほどである。

■生息域、生息数
北大西洋のやや寒冷な海域、西側はアメリカマサチューセッツ州のナンタケット島 (en:Nantucket) からカナダのラブラドール (en:Labrador) にかけて、東側はマデイラ諸島からノルウェー海にかけての海域に棲息する。 水深200mから1,500m程度の海域を好む。全生息数は不明である。 IUCNのレッドリストでは「情報不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■生態
雄、雌、子供で構成される8頭から10頭程度の小さな群を成して行動することが多い。 集団座礁(マスストランディング)することも知られている。主にイカを食べると考えられているが、解剖によってタラを食べることもわかっている。
30分近く潜水可能であることが知られている。

■保護
以前はノルウェーによって少数が捕鯨の対象となっていたが、近年では捕獲されていない。 漁網などによる混獲の被害の報告が少数あるが、種の存続を脅かすほどの影響はないと考えられている。
●ミナミオウギハクジラ(南扇歯鯨、Mesoplodon grayi)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 オウギハクジラ類としては比較的良く知られている種 (生物)である。 群を成して行動することが多く、集団座礁(マスストランディング)の報告例もアカボウクジラ類としては比較的多い。 他の多くのアカボウクジラ類とは異なり、ミナミオウギハクジラはオウギハクジラ類としては唯一、アカボウクジラ類としてはタスマニアクジラ属のタスマニアクジラを除けば唯一、多数の歯を有している。

種小名の grayi および英名の Gray's はイギリスの動物学者であるグレイ (en:John Edward Gray) に由来する。 和名のミナミ(南)は南半球に棲息することに由来する。 他の英名としては Haast's Beaked Whale、Scamperdown Whale などが知られる。

■身体
ミナミオウギハクジラはオウギハクジラ類としては非常に細身の体型である。 頭部メロンは僅かに膨らんでいる程度であまり目立たない。 口吻は非常に長く、唇の線は直線的である。 雌雄とも上顎に歯茎から僅かに出ている17から22対の歯を有する。 雄の下顎の中ほどには三角形の小さな歯がある。全体的な体色は灰色であり、背側は濃い灰色、腹側は明るい灰色である。 雌雄とも口吻は白い。 雌の背は雄よりも明るい灰色であり、生殖器の周囲に白い模様がある。 雌雄ともダルマザメによる噛み傷があり、雄の場合には別の雄と争ってできた傷跡があることも多い。成体の体長は雄が5.7m、雌が少なくとも5.3mであり、体重は1,100kg程度である。 産まれた直後の体長は2.4mほどであると考えられる。

■生息域、生息数
南半球の南緯30度から45度の海域に生息する。 集団座礁(マスストランディング)の多くはニュージーランドにおいて報告されているが、オーストラリア、南アフリカ、南アメリカ、フォークランド諸島などにおける報告例もある。 マダガスカルの沖や南極海における群の目撃例も報告されている。 変わった例として、遠く離れた北半球のオランダにおける座礁例が知られている。全生息数は不明であるが、それほど少数ではないだろうと考えられている。 IUCNのレッドリストでは「データ不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■生態
集団座礁(マスストランディング)することが珍しくない。 多くは5頭から8頭程度の集団座礁であるが、一度に20頭が座礁した例も知られている。
上述の通りアカボウクジラ類としては珍しく多数の歯を有する。 上顎に生えている歯は獲物を捕食する際に使用されるかもしれないが、小さな歯であるため実際に役に立っているかどうかは不明である。

■保護
捕鯨の対象とされたことはなく、漁網などによる混獲の被害の報告も知られていない。

●ピグミーオウギハクジラ(ピグミー扇歯鯨、Mesoplodon peruvianus)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 ペルー沖など東太平洋の熱帯海域に棲息し、オウギハクジラ属の中では最も小型である。 1991年、新種として報告された。 1991年以前、東太平洋の熱帯海域において Mesoplodon sp. A(オウギハクジラ属の一種A)と呼ばれる未同定のオウギハクジラ類が20例以上報告されていたが、それらはこのピグミーオウギハクジラであったと考えられている。 1990年、メキシコのバハ・カリフォルニア州で採取された腐敗しかけた個体に基づいて、ピグミーオウギハクジラの身体的な特徴が初めて報告されている。

種小名の peruvianus は「ペルーの」を意味する。 和名および英名はピグミーに由来する。 別の英名としては Peruvian Beaked Whale(ペルーのオウギハクジラの意)、Lesser Beak Whale(小型のオウギハクジラの意)などが知られる。 和名でもペルーオウギハクジラと呼ばれることもある。

■身体
ピグミーオウギハクジラの体型はオウギハクジラ類としては典型的な紡錘形であるが、尾の部分はがっしりしている。 頭部メロンは若干膨らんでおり、口吻は短い。 下顎には2本の歯が生えているが、上顎には生えてはいない。全体的な体色は灰色であり、背側は濃い灰色、腹側は明るい灰色である。 特に下顎、喉、生殖器の周囲などが白に近い灰色である。 雄の背中には山形の模様があることも多い。成体の体長は3.4mから3.7mである[CMS]。 産まれた直後の体長は1.4mから1.5mである。

■生息域、生息数
目撃例や座礁例から推測すると、東太平洋の熱帯海域であるメキシコのバハ・カリフォルニア州からペルーまでの近海に棲息すると考えられる。 ニュージーランドにおける座礁例が報告されているため、西太平洋にも棲息する可能性がある。
全生息数は不明である。 IUCNのレッドリストでは「データ不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■生態
ほとんど不明である。 小さな群を成して行動する様子が観察されている。 多くのアカボウクジラ類はイカなどの頭足類を捕食することが知られているが、少なくともある個体の胃からは魚類が見つかっているため、魚類を捕食する可能性もある。

■保護、人間との関り
小規模な調査だけでも6個体が混獲による被害に遭っていることがわかっており、特にペルー近海に関しては刺し網による混獲の被害が懸念される。 しかし生息数に影響を与え得る規模の被害なのかどうかなど、詳細は不明である。
●タイヘイヨウオウギハクジラ(太平洋扇歯鯨、Mesoplodon bowdoini)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 不明な点の多いオウギハクジラ類の中でも最も不明な点が多い種の一つである。 2002年時点で、野生下での生体の観察例は報告されていない。種小名の bowdoini はアメリカ自然史博物館への援助で知られるジョージ・ボードン (George S. Bowdon) に由来する。英名の Andrews' はタイヘイヨウオウギハクジラを新種として報告したアンドルーズ (Andrews) に由来する。他の英名としてはDeep-crest Beaked Whale、Splay Toothed Whale が知られる。

■身体
タイヘイヨウオウギハクジラの体型は他のオウギハクジラ類よりもがっしりしている。 頭部メロンは小さく、口吻は短くて太い。 下顎の根元側の半分近くが上顎よりも外側にはみ出しており、下顎に2本だけある歯が露出している。 上顎には歯はない。雄の体色は背側は濃い灰色である。噴気孔と背びれの間に鞍のような模様がある。頭部側面には明るい斑点模様があることもある。 雌の背側は濃い青灰色であり、側面や腹側は白っぽい灰色である。 雄の体表には同種の雄と争った傷跡がある。 雌雄ともダルマザメによる噛み傷がある。生体の雄の体長は4.5m、雌は5m程度、体重は1,000kgから1,500kg程度である。 産まれた直後の体長は2.2m程度だと考えられる。

■生息域、生息数
生息域は南半球であると考えられるが、正確にはわかっていない。 座礁例が35例報告されており、場所はオーストラリア、ニュージーランド、マッコーリー島、フォークランド諸島、トリスタン・ダ・クーニャである。 主に南極に近い海域に棲息すると考えられるが、野生下における目撃例がなく裏付けはない。全生息数は不明である。 IUCNのレッドリストでは「データ不足」 (DD - Data Deficient) に分類されている。

■生態
生態はほとんど不明である。 主にイカやタコなどの頭足類を食べる。 ニュージーランド沖で、春から夏にかけて出産を行うかもしれない。

■保護、人間との関り
捕鯨の対象となったことはない。 漁網などによる混獲の例は報告されていない。
●バハモンドオウギハクジラ(バハモンド扇歯鯨、Mesoplodon traversii)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。

英名のSpade Toothed Whale(トランプのスペードのような形状の歯を持つクジラの意)は、1872年にニュージーランドのピット島 (Pitt Island) で見つかった下顎に由来する。 この個体は当時はヒモハクジラとして分類された。 1950年にはニュージーランドのホワイト島 (Whakaari/White Island) で別の個体が発見され、当時はイチョウハクジラとして分類された。 さらに1986年にはチリのロビンソン・クルーソー島で破損した頭蓋冠(Calvaria。頭骸骨の一部)が見つかり、この時には新種のバハモンドオウギハクジラ Mesoplodon bahamondi (Bahamonde's Beaked Whale) として分類された。 しかし、最近の遺伝子解析により、これらは全て同一の種であって Mesoplodon traversii として分類すべきであることがわかっている[van Helden et al. 2002]。 すなわち Mesoplodon bahamondi は Mesoplodon traversii のシノニムである。

バハモンドオウギハクジラは外見すら完全にはわかっておらず、不明な点が非常に多い。 大型哺乳類としては最も不明な点が多い種の一つであろう。

■身体
バハモンドオウギハクジラは、頭蓋骨および歯の解剖学的な知見以外は全く不明である。 他のオウギハクジラ属と比較すると、口吻の幅が比較的広いなどといった特徴がある。 最も際立った特徴は23cmほどもある大きな歯であり、大きさとしてはヒモハクジラの歯に近い。 ヒモハクジラの歯と比べると幅が広く、共に歯の先端に小歯状突起があるが、バハモンドオウギハクジラの方が目立っている、といった違いがある。
頭蓋骨の大きさから体長は5mから5.5m程度であろうという推測もある。

■生息域、生息数
東太平洋および西太平洋において発見されているが、中間部では発見されていない。
生息数は不明であるが、おそらく多数ではないだろう。

■生態
生きている状態のバハモンドオウギハクジラは見つかったことがないため、全く不明である。

●ハッブスオウギハクジラ(ハッブス扇歯鯨、Mesoplodon carlshubbi)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラである。 魚類学者カール・ハッブス (Carl Hubbs) によって発見された時にはタイヘイヨウオウギハクジラであると考えられたが、後に新種であることが示された。 種小名 carlshubbi はハッブスの名前に由来する。
歯生はオウギハクジラ属としては典型的であり、雄は上顎には歯はなく、下顎に2本だけ長い歯を有する。雌の場合には全ての歯は歯茎に隠れている。 ハッブスオウギハクジラの特徴は頭部に帽子のような白い模様と全身の傷である。
座礁により確認されている個体は31頭が知られており、野生下での目撃例は1例だけ報告されている。

■身体
ハッブスオウギハクジラの体型はオウギハクジラ類としては典型的であり、比較的丸っこく、先細りの紡錘形である。 口吻の長さは平均的である。 コブハクジラのように下顎の一部が上顎からはみ出たフェンス状になっているが、コブハクジラほどは極端ではない。 雄は下顎にのみ大きな2本の歯を有し、口外に露出している。

雄の体色は全身が濃い灰色あるいは黒であり、腹側に明るい色を持たない。 口吻と頭部メロンは白く、体表に多くある傷も白い。 雌や未成熟の個体は背側は明るい灰色で、腹側は白い。体長は5.4m、体重は1,500kgに達する。 生まれた直後の体長は2.5mであり、母親の体長の46%に相当し、オオギハクジラ類の中で最も大きな比率である。

■生息域、生息数
ハッブスオウギハクジラは北太平洋に生息する。西側は日本付近、東側はブリティッシュコロンビアからカリフォルニアにかけての海域に生息することが知られている。 その中間の海域にもおそらく生息すると考えられるが、目撃例は報告されていない。 推測されている生息域は狭いため、生息数は多くはなく珍しい種であると考えられるが、全生息数は不明である。

■生態
野生下での目撃例は1例が知られているのみで乏しいため、生態は不明であるが、おそらく他のオウギハクジラ類と同様に小さな群を成して行動すると思われる。 成体の雄の体表には同種の雄と争ってできた傷が多数あるため、他のオウギハクジラ類よりも同種の雄同士の争いが頻繁に行われていると考えられる。 主にイカを食べると考えられている。

■保護
日本では時々捕鯨船によって捕獲されることがある。 カリフォルニア沖では流し網による混獲の犠牲になることが知られている。

●イチョウハクジラ(銀杏歯鯨、Mesoplodon ginkgodens)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラである。珍しいクジラであり、あまり良く知られていない。 下顎に一対の歯を有し、その歯の形状がイチョウの葉に似ているために「イチョウハ」と呼ばれる。 オウギハクジラ類としては典型的な体型であるが、他のオウギハクジラ類の雄の全身には同種の雄同士が争ってできる噛み傷を有することが多いのに対し、イチョウハクジラにはそのような傷がないことが特徴の一つである。

種小名の ginkgodens は、イチョウを意味する ginkgo と歯を意味する dens に由来する。

■身体
イチョウハクジラの体型は他のオウギハクジラ類と比べるとがっしりしているが、その他については典型的な体型である。 下顎の中ほどが大きく盛り上がっており、そこにイチョウの葉に似た形状の歯を1対のみ有する。 その歯は大きいが、コブハクジラやタイヘイヨウオウギハクジラのように下顎の歯が上顎からはみ出すほどではない。 上顎には歯はない。 口吻の長さは平均的な長さである。

雄の体色は、全体は濃い灰色であるが、口吻の先端や頭部付近は明るい灰色で、尾の腹側に白い斑点を有するが、個体による差がある。 雌の体色は、背側は明るい灰色であり、腹側はより明るい灰色である。 成体の体長は雌雄ともに約4.9mに達する。 生まれた直後の体長は約2.4mである。

■生息域、生息数
座礁(ストランディング)の報告例は20未満であり、日本、カリフォルニア州、ガラパゴス諸島、ニューサウスウェールズ州、ニュージーランド、スリランカ、モルディブ、マラッカ海峡における座礁が報告されている。 生息域はインド洋と太平洋の熱帯域から温帯域にかけての海域であると考えられている。 生息数は不明である。

■生態
オウギハクジラ類の雄の成体は同種の雄同士で争った際にできる噛み傷を有することが多いが、イチョウハクジラにはそういった噛み傷がないため、同種の雄同士が争うことはないと考えられる。 主にイカなどの頭足類や魚類を食べる。 その他については不明である。

■保護
日本の沖と台湾の沖における野生下での生体の観察例が報告されている。 稀ではあるが捕鯨の対象となった個体も知られている。 流し網による混獲の例も知られている。

IUCNのレッドリストでは「データ不足」 (DD : Data Deficient Ver.2.3 (1994)) に分類されている。

●オウギハクジラ(扇歯鯨、Mesoplodon stejnegeri)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属する小型のクジラである。 他のオウギハクジラ属のクジラと同じく不明な点が多く、生態などはあまり詳しくはわかっていない。

最初、1885年にLeonhard Stejnerが頭蓋骨の標本に基づいて報告したが、その後、ほぼ1世紀の間、詳しいことが明らかにされることはなかった。 1970年代後半になって座礁(ストランディング)が数例報告されているが、損傷がひどくない個体に基づいて詳細な外観が報告されたのは1994年のことである。 雄の外観の一番の特徴は下顎から生えている非常に目立つ2本の牙である。 Saber-toothed Whale(サーベルのような歯を持つクジラの意)という英名も知られているが、この呼び名は牙の特徴に基づく。

他の英名としては Bering Sea Beaked Whale(ベーリング海のオウギハクジラの意)がある。

種小名の stejnegeri は前述のStejnerに由来する。

■身体
オウギハクジラの体型はオウギハクジラ属としては典型的で、長く、頭部と尾部が細くなっているという特徴を持つ。 口吻の長さはオウギハクジラ類としては平均的である。 唇の形状は弧状ではあるが、他種よりは直線的である。 頭部メロンはヘルメットのような形状である。

下顎に生えている雄の歯は、バハモンドオウギハクジラ、ヒモハクジラよりは短いものの、他のオウギハクジラ類よりは長く、若干前方に傾いて生えている。

体色は濃い灰色から黒に近く、腹側は若干明るい色になっている。 年齢とともに体色は濃くなっていくが、雌の尾の腹側には明るい模様があり、この模様は年齢とともに目立ってくる。 他のオウギハクジラ類と同じく、雄の体表には他の雄と闘ってできた噛み傷があることが多く、ダルマザメによる噛み傷は雌雄ともにある。

成体の体長は少なくとも雄は5.3m、雌は5.5mである。 産まれた直後の体長は2.1から2.3mほどであろう。

■生息域、生息数
太平洋のオウギハクジラ属としては最も北方に生息し、ベーリング海あたりまで生息している。 南限は西太平洋は宮城県の沖あたり、東太平洋はカリフォルニア州のモントレーあたりである。 冬季は南方に移動するかもしれない。

全生息数は他のオウギハクジラ類同様に不明である。 IUCNのレッドリストにおいてはDD(Data Deficient、データ不足)に分類されている。

■生態
通常は3頭から4頭程度の小さな群を成して行動するが、時々15頭ほどの大きな群を成すこともある。 群は年齢別や性別で別れて構成されているかもしれない。 成体の雄同士の争いは珍しいことではないようである。 顎の骨が骨折したものが自然治癒している個体も複数見つかっている。

■保護
日本ではかつて小規模な捕鯨の対象となったことがあり、刺し網などによる混獲の例も報告されてる。 これらが安定的な生息に影響を与えるかどうかは不明である。
●ヒモハクジラ(紐歯鯨、Mesoplodon layardii)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラである。 オウギハクジラ類としては大型の種である。

オウギハクジラ類の特徴は下顎の歯であるが、特にヒモハクジラの歯は牙のように長い独特の形状である。 和名のヒモ(紐)はこの特徴のある歯を紐に見立てたものである。 種小名の layardii および英名の Layard's は、ヒモハクジラの頭蓋骨を最初に報告し、 南アフリカ博物館 (South African Museum ) の館長としても知られるエドガー・レイヤード (Edgar Leopold Layard) に由来する。 他の英名としてはStrap-toothed Whale(紐のような歯のクジラの意)がある。

■身体
ヒモハクジラの体型はオウギハクジラ類としては典型的であるが、同属の他種に比べて大型であり、オウギハクジラ属の中では一番大きいと考えられている。

オウギハクジラ類の雄の特徴である下顎の歯は非常に長く、30cm以上になることもある。 この歯は後方に45度傾いており、さらに内側にも傾斜しているため、その歯が邪魔になって雄は口を完全に開けることができない。ただし、食餌の際の妨げになるということはないようである(CMS)。 その歯には小歯状突起があり、争う際に使用されるようである。 またその歯にフジツボが付着していることも多い。 なぜこれほど大きな歯を有するのかは不明である。

頭部メロンは幾分膨らんでいるが明瞭ではない。 口吻は長く、唇の線は比較的直線状である。 身体の配色は他のオウギハクジラ類に比べるとはっきりしており、全身はほぼ黒であるが、口吻の先端、喉、頭部後方、生殖器の周囲などが白い。 未成熟な個体の配色は異なっており、背側が濃い灰色で、腹側が明るい灰色である。 ダルマザメによる噛み傷や他の雄と争った時の傷を持つことが多い。

雄の体長は5.9mほど、雌は若干雄よりも大きく6.1mほどである。 体重は1,000kgから1,300kgに達する。 産まれた直後の体長は2.8m程度と考えられている。


■生息域、生息数
多くの座礁(ストランディング)の記録と僅かな海上での観察報告から、ヒモハクジラは南半球に生息していると思われる。

全生息数は不明である。 IUCNのレッドリストにおいてはDD(Data Deficient、データ不足)に分類されている。


■生態
群の大きさなどは不明である。 イカを食べることがわかっている。 雄は長く延びた歯のために、雌や未成熟な個体のように大きく口を開けることができない。 そのため雄が食べることができるイカの大きさは100g以下ほどに制限されてしまう。


■保護
捕鯨の対象となったことはなく、刺し網などによる混獲の被害も報告されていない。 他のオウギハクジラ類と比べれば生息数は安定していると思われる。

●コブハクジラ(瘤歯鯨、Mesoplodon densirostris)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラである。 オウギハクジラ類としては生息範囲が最も広汎であり、おそらく最も研究が進んでいる種だと思われる。

種小名の densirostris は高密度な口吻(dense beak。詳細は後述)を意味するラテン語である。

バハマの北東沖において多数の目撃例が報告されており、2002年頃より写真を用いた個体識別プロジェクトが始まっている。

■身体
コブハクジラの体型はオウギハクジラ類としては典型的であるが、同属の他種に比べて若干細長い。 雄の外観は非常に特徴的であり、他のオウギハクジラ類と同様に下顎の一部が上顎からはみ出してフェンス状になっている。 そのフェンス状のはみ出し部分は、下顎の付け根のあたりから口吻の中ほどあたりまで延びている。 またそのはみ出し部分にはフジツボが付着していることもある。 更に別の大きな特徴として、口吻を構成する骨の密度が非常に高い点が挙げられ、これは種小名 densirostris の由来でもある。おそらく同種の雄同士で争う際の防御の意味があると考えられている。

頭部のメロンは平らでありほとんど目立たない。

体色は背側は濃い灰色あるいは暗い青灰色、腹側は明るい灰色、頭部は褐色であることが多い。

雄の体表には雄同士で争った傷やダルマザメによる噛み傷があることが多い。

雄の成体の体長は少なくとも4.4m、体重は少なくとも800kg、雌の成体については体長は少なくとも4.8m、体重は少なくとも1,000kgである。 産まれた直後は体長は1.9m、体重は60kg程度である。

■生息域、生息数
世界中の熱帯から温帯の海域に生息し、生息域の経度は非常に幅広い。 座礁例はカナダのノバスコシア州、アイスランド、ブリテン諸島、日本、ブラジルのリオグランデ・ド・スル州、南アフリカ、チリ、オーストラリアのタスマニア州、ニュージーランドにおいて報告されている。 多くの目撃例はアメリカのハワイ諸島、ソシエテ諸島、バハマの沖において報告されている。 回遊は行わない。 水深500mから1,000mの海域を好む。

比較的良く知られた種であるが、全生息数は不明である。 IUCNのレッドリストにおいてはDD(Data Deficient、データ不足)に分類されている。

■生態
3頭から7頭程度の小さな群を成して行動する。 潜水時間は少なくとも22分以上に達する。 海面に浮上する際は非常にゆっくりであり、水をはねることもほとんどない。 おそらくイカなどの頭足類や魚類を食べる。

■保護
捕鯨された例はあるが、積極的に捕鯨の対象となったことはない。 集団座礁の例が報告されており、海軍の音響ソナーが原因として指摘されることもあるが、関連はまだ明らかにはされていない。
●ペリンオウギハクジラ(ペリン扇歯鯨、Mesoplodon perrini)はハクジラ亜目アカボウクジラ科オウギハクジラ属に属するクジラである。 2002年に新種として報告されており、オウギハクジラ類としては最も最近発見された種である(2007年3月時点)。

1975年、アメリカ合衆国カリフォルニア州の沖で発見された個体が最初の報告であり、1997年9月までに他に4個体が報告されている。 当時は、最初に見つかった個体はアカボウクジラ、他の4個体はニュージーランドオウギハクジラとそれぞれ考えられていた。 最近の遺伝子解析により、これらの5個体はアカボウクジラやニュージーランドオウギハクジラなどではない同一の別種であることが明らかになった。 1970年代、カリフォルニア州の沖合での複数の目撃例は、当時はニュージーランドオウギハクジラであると思われたが、おそらくペリンオウギハクジラであっただろうと考えられる。

ペリンオウギハクジラは、外観はニュージーランドオウギハクジラに良く似ているが、むしろピグミーオウギハクジラ(ペリンオウギハクジラに次いで2番目に新しく発見された種)に密接に関係している。

種小名の perrini はアメリカ合衆国の海棲哺乳類学者であるW. F. Perrinに由来する。

■身体
ペリンオウギハクジラの体型はオウギハクジラ類としては典型的であり、小さな頭部、長い胴部、幅広い尾を有する。 口吻は他のオウギハクジラ類(ニュージーランドオウギハクジラとペリンオウギハクジラを除く)よりも短い。 唇の形状は直線に近く、頭部メロンは膨らんでいる。 歯のサイズは比較的大きく、後側(尾側)に傾斜している。 また、喉溝 (throat groove) を有する。 雄の体色は、背側は濃い灰色で腹側は白で、臍の周囲や尾びれの腹側に灰色の斑点がある。 雌の体色については、唯一の雌の資料の状態が良くなかったため、不明である。 子供の体色は、背側は明るい灰色あるいは濃い灰色であり、下顎や喉を含む腹側は白である。 体表にはダルマザメによる噛み傷などを有することが多い。 成体の体長は雄が約3.9m、雌が約4.4mである。

■生息域、生息数
ペリンオウギハクジラはアメリカ合衆国カリフォルニア州のサンディエゴからモントレーまでの海域でのみ観察されている。 おそらく他の海域にも生息していると考えられるが、証拠はない。 生息数は不明である。

■生態
他のオウギハクジラ類と同じく、雄は同種の雄と闘うことがある。

■保護
不明な点が多く、情報不足である。

●カワイルカ科 (Platanistidae) はクジラ目ハクジラ亜目に属する科の一つ。 マイルカ科などに属するイルカよりも原始的な特徴を持つ哺乳類で、淡水から汽水域に生息する。

カワイルカ科はカワイルカ属 (Platanista) のみで構成される。カワイルカ属に属するのはインドカワイルカ、ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカである。スースーとも呼ばれる。

■分類学
元々は1801年にRoxburghによって、インドカワイルカ (P. gangetica, Ganges and Indus River Dolphin) として一つの種として分類された。ところが、1970年代になって、インドカワイルカの生息域はインドのガンジス川とパキスタンのインダス川に完全に分かれており、長い間、交雑していないことがわかった。 頭蓋骨の特徴などを調べた結果、別の種であるとして分類された。 すなわち、ガンジスカワイルカ (P. gangetica, Ganges River Dolphin) とインダスカワイルカ (P. minor, Indus River Dolphin) である。しかし、1998年、Riceはガンジスカワイルカとインダスカワイルカの形態的な差異は別の種として分類するには不十分であるとした[Rice98]。 このRiceの分類に従えば、種としてはインドカワイルカ(P. gangetica。英名はGanges and Indus River Dolphin あるいは Indian River Dolphin)1種のみが存在し、亜種としてガンジスカワイルカ (P. g. gangetica, Ganges River Dolphin) とインダスカワイルカ (P. g. minor, Indus River Dolphin) に分類される。 現在では、このRiceによる分類法に従うことが多い。

■Riceによる分類[Rice98](インドカワイルカ1種のみとする分類法)
■カワイルカ科 Platanistidae
■カワイルカ属 Platanista
★インドカワイルカ Ganges and Indus River Dolphin, Platanista gangetica
★ガンジスカワイルカ Ganges River Dolphin, Platanista gangetica gangetica
★インダスカワイルカ Indus River Dolphin, Platanista gangetica minor

■Rice以前の一般的な分類(ガンジスカワイルカとインダスカワイルカの2種とする分類法)
■カワイルカ科 Platanistidae
■カワイルカ属 Platanista
★ガンジスカワイルカ Ganges River Dolphin, Platanista gangetica
★インダスカワイルカ Indus River Dolphin, Platanista minor

■別名
ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカともに、スースーと呼ばれることがある。 英語ではBlind River Dolphin、Side-swimming Dolphin、 Susu、Bhulanと言った別名がある。
ガンジスカワイルカの英語での別名としては、Gangetic Dolphin、Ganges Susuがある。
インダスカワイルカの英語での別名としては、Bhulan、Indus Dolphin、Indus Susuがある。
●カワイルカ科 (Platanistidae) はクジラ目ハクジラ亜目に属する科の一つ。 マイルカ科などに属するイルカよりも原始的な特徴を持つ哺乳類で、淡水から汽水域に生息する。

カワイルカ科はカワイルカ属 (Platanista) のみで構成される。カワイルカ属に属するのはインドカワイルカ、ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカである。スースーとも呼ばれる。

■身体
ガンジスカワイルカとインダスカワイルカは外観はほぼ同一である。 他のカワイルカと同じく長く尖った口吻を有する。 口を閉じた状態でも、上下の顎の歯が露出している。 口吻は先端の方が太い。 眼には水晶体はなく、光の強さや方向がわかる程度で、ほぼ盲目に近い。 移動や食物探索は反響定位(エコーロケーション)を用いて行う。 褐色系の体色を有し、身体の中央部は大きい。 背びれはなく、三角形の小さな隆起があるだけである。 胸びれや尾びれは細く、体長と比較すると長い。 体長は雄が2mから2.2m、雌が2.4mから2.6mである。 寿命などは不明である。川底近くに棲息するエビや小魚を食べる。 現在では単独で行動する様子が観察されることが多いが、以前の個体数が多かった頃には群を成しての行動が観察されており、本来は数頭で群を成して行動するものと考えられている。

■生息数と生息域
ガンジスカワイルカはガンジス川だけでなく、インド、バングラデシュ、ネパール、ブータンを流れるBrahmaputra川、Meghna川、Karnaphuli川、Sangu川に棲息する。 インドのVikramshila保護区 (Vikramshila Gangetic Dolphin Sanctuary) や南バングラデシュのSangu川における生息数は比較的多い。 ネパールのKarnali川にはごくわずかの個体(おそらく20頭程度)が棲息する。 全生息数は不明であるが、少なくとも数百頭、おそらく数千頭規模だと考えられている。(「人間との関り」も参照)

インダスカワイルカは主にパキスタンのインダス川に棲息する。 19世紀における生息域は現在よりも約5倍も広く、インダス川の支流であるSutlej川、Ravi川、Chenab川、Jhelum川にも生息していた。 シンド省 (Sind Province) における生息数が最も多い。 WWFパキスタンが行った2001年の調査によると、インダスカワイルカの全生息数はおよそ1,100頭に過ぎない。

■人間との関り
両亜種とも、棲息流域の人間の行動による多大な悪影響を被ってきた。個体数の壊滅的な減少の原因の一つは漁網による混獲である。 脂や肉を塗り薬、性欲増進剤、ナマズの餌などとして使用するための捕獲は、現在でも行われている。 灌漑が原因となって、生息域における水位の低下も発生している。 工業排水に含まれる有害物質の排出や、農薬の河川への流出などによる水質悪化も個体数減少の原因となっている。 個体数激減の最も大きな原因は、棲息流域に建設された50基以上のダムだろうと考えられている。 ダムはカワイルカの生息域を完全に分断してしまう。 繁殖に関る個体数が減ることにより遺伝子の攪拌が減少し、生物としての力の低下が起こってしまう。インダスカワイルカについては、保護が適切であるならば棲息し続けることが可能であろうと考えられている集団は三つ存在する。両亜種ともIUCNのレッドリストにおいて、「絶滅危機」 (EN:Endangered) に分類されている。
●ヨウスコウカワイルカ(揚子江河海豚、Lipotes vexillifer)は、哺乳綱クジラ目ヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属に分類されるイルカ。本種のみでヨウスコウカワイルカ科ヨウスコウカワイルカ属を形成する。 揚子江(長江)に固有な種である。 Baiji(白鱀)、Beiji、Pai-chi、Whitefin Dolphin(白ひれイルカ)、Whiteflag Dolphin(白旗イルカ)、Yangtze Dolphin、Yangtze River Dolphinなどとも呼ばれる。 中国では「長江女神」、すなわち揚子江の女神とも呼ばれていた。

現在は絶滅したと推定されている。

■分類学
ヨウスコウカワイルカは、1918年、Miller (en:Gerrit Smith Miller) によって新種として報告された。
■ヨウスコウカワイルカ科 Lipotidae
ヨウスコウカワイルカ属 Lipotes
ヨウスコウカワイルカ Chinese River Dolphin, Lipotes vexillifer

■歴史
ヨウスコウカワイルカは、約2万年前に太平洋から揚子江へ移動したことが、化石からわかっている。 前漢時代の辞典である『爾雅』にヨウスコウカワイルカに関する記述が残っており、それによると当時の棲息数は約5千頭である。 1978年、中国科学院 (en:Chinese Academy of Sciences) は、武漢水生生物研究所 (en:Wuhan Institute of Hydrobiology) の支所として、淡水海豚研究所(淡水海豚研究中心)を開設した。

■保護と個体数激減の歴史
もともと揚子江のみの固有種で個体数が少なかったヨウスコウカワイルカは、近年の中国の経済発展で揚子江沿岸が開発されるに伴い、急速に数を減らし続けている。飼育がきわめて困難で繁殖が難しいことも、大きな足かせになっている。

1979年 − 中国政府がヨウスコウカワイルカを絶滅危惧種に指定
1983年 − 法律で捕獲を禁止
1986年 − 個体数300頭
1990年 − 個体数200頭
1997年 − 個体数50頭以下(13頭確認)
1998年 − 7頭確認
2006年 − 0頭確認
棲息している個体数を見積もることは容易ではないが、目撃例は2004年9月以降絶えており、2006年12月に行われた大規模な調査でも1頭も確認することができず、現時点での棲息数はきわめて僅かであると考えられる。クジラ目としては最も絶滅の危機に瀕している種である。かつて雄の個体が捕獲され、淇淇(きき、Qiqi)と名付けられて、武漢水生生物研究所において1980年から2002年7月14日まで飼育された。淇淇は洞庭湖の漁師によって発見された後、東湖 (East Lake) 近くのヨウスコウカワイルカ水族館(白鱀豚水族馆)で飼育され、同水族館の最後の個体となった。淇淇の後に捕獲された個体は、石首半自然ヨウスコウカワイルカ保護区(石首半自然白鱀豚保护区、Shishou Semi-natural Baiji Dolphin Sanctuary)で、1996年から1997年までの1年間の飼育の後、死亡した。(同保護区には1990年から1996年までは飼育されているヨウスコウカワイルカはいなかった)1998年、上海の近くの崇明島 (en:Chongming) において、雌の個体が捕獲された。 しかし、給餌がうまくいかず、1か月で餓死してしまった。1996年12月、中国で最初の水棲動物保護組織として、武漢ヨウスコウカワイルカ保護財団(武汉白鱀豚保护基金会、The Baiji Dolphin Conservation Foundation of Wuhan)が設立された。 同基金は1,383,924.35人民元(約17万米ドル (170,000USD)、約2,000万円)を集め、ヨウスコウカワイルカ保護施設の維持や、試験管による細胞の保存などに使用されている。

IUCNの2006年版レッドリストでは、「絶滅寸前」 (CR : Critically Endangered) に分類(2005年)されている。 クジラ目の中では、コガシラネズミイルカ ( Phocoena sinus ) とともに、最も絶滅の危機に瀕している種であり、すでに絶滅している可能性も高い。 2003年から、(独)遠洋水産研究所・江ノ島水族館の協力により、日中共同で保護事業を開始している。
ヨウスコウカワイルカが絶滅した場合、クジラ目に属する科としての絶滅は、有史以来初めての出来事となる。

■最新の調査結果
2006年12月14日、中国・日本・アメリカなどの研究グループ(baiji.org foundation)により、ヨウスコウカワイルカは絶滅したといえると報道された。調査では同年11月から12月にかけて揚子江流域ののべ3,500kmに渡る大規模調査が行なわれたが、ヨウスコウカワイルカは1頭も発見することができなかった。人類が引き起こした鯨類の絶滅としては最初のものであり、1500年以降の哺乳類の絶滅としては4例目であると考えられている。2007年08月19日、ヨウスコウカワイルカの生息を確認できる動画が撮影されたことにより、再調査が計画されている。しかし一方で種の維持には50頭が必要とされている。
●アマゾンカワイルカ (Inia geoffrensis) は、哺乳綱クジラ目アマゾンカワイルカ科アマゾンカワイルカ属に分類されるイルカ。本種のみでアマゾンカワイルカ科アマゾンカワイルカ属を形成する。 Botoとも呼ばれる。南アメリカのアマゾン川水系(オリノコ川含む)に固有の種である。 カワイルカとしては最も大きい種類である。 生息域はマイルカ科のコビトイルカとほぼ同じであるが、外観が全く異なるのでアマゾンカワイルカと混同するおそれはない。 別名が多く、IUCNが挙げているものとしては、Amazon Dolphin(アマゾンイルカ)、Boto Vermelho、 Boto Cor-de-Rosa、Bouto、Bufeo、Dauphin de l'Amazone、Inia、Pink Dolphin(ピンクイルカ)、 Pink Freshwater Dolphin(淡水ピンクイルカ)、Pink Porpoise(ピンクネズミイルカ)、Toninaがある。

■分類学
アマゾンカワイルカは、1817年、Blainville (en:Henri Marie Ducrotay de Blainville) によって新種として報告された。
Riceの1998年の分類[Rice98]では、アマゾンカワイルカ属は1種3亜種である。
Rice以前の分類法では、I. g. boliviensisを別の種とするのが一般的である。
■アマゾンカワイルカ科 Iniidae
アマゾンカワイルカ属 Inia
アマゾンカワイルカ Amazon River Dolphin (Boto), Inia geoffrensis
I. g. geoffrensis - マデイラ川 (Madeira) 流域を除くアマゾン川流域に棲息
I. g. boliviensis - アマゾン川水域のマデイラ川流域に棲息
I. g. humboldtiana - オリノコ川流域に棲息

■身体
アマゾンカワイルカの体色は様々である。 明るいピンク、暗い茶色、灰色、クリーム色などがある。 成体の典型的な体長は2.5m、体重は150kgである。 胸びれは体長の割りには大きく、後方に湾曲している。 背びれはなく、背中には進化の痕跡として凸凹の瘤(こぶ)がある。 口吻は細長く、上下の顎には25から35対の歯がある。 前歯は鋭く尖っているが、奥歯は前歯よりも平らである。 前歯は餌を捕え、奥歯はそれをすり潰す働きがある。 川底に生息するカニや小魚を食べる。小さなカメを食べることもある。通常は単独ないし2頭で行動することが多く、3頭以上の群を成して行動することは少ないが、極めて稀に20頭程度の群を成すこともある。

他の多くのイルカとは異なり頚椎の骨が互いに固定されていないため、頭部を広範囲に動かすことが可能である。 眼は小さいが視力は良く、下方向を除いて(膨らんだ頬が視界を遮る)良く見渡すことができる。

■保護
カワイルカ上科に属する多くのカワイルカは、絶滅の危機に瀕している。 その中で、アマゾンカワイルカはカワイルカとしては最も安定して棲息している種である。 とはいえ、IUCNのレッドリスト(1994年版、2000年版、2006年版)では、「脆弱」 (VU:Vulnerable) に分類されている。 ヨウスコウカワイルカやインドカワイルカの生息域が急速に縮小してしまったのとは対照的に、アマゾンカワイルカの生息域は長期間に渡って比較的安定している。 生息域は熱帯雨林であって、近づき難いために完全な調査は行われてはいないが、全生息数は数万頭であると見積もられている。

アマゾンカワイルカは直接的には漁(捕鯨)の対象となったことはない。 しかし漁師が漁具を保護することを目的として、アマゾンカワイルカを時々殺すことがあったことは知られている。 ただしこの行為が群としてのアマゾンカワイルカの棲息を脅かすほどの影響があったかどうかは明確ではない。 この行為は、1988年以降は、ブラジルとボリビアの全域、ペルー、ベネズエラ、コロンビアの保護区においては法律的に禁止されている。

アマゾン川やオリノコ川流域における人口の増大は、アマゾンカワイルカの安定な棲息に対する脅威となりつつある。 アジアではダム工事などによってカワイルカをほぼ絶滅させてしまっているが、アマゾンカワイルカの棲息流域においても、同様の事業が提案されている。 環境保護主義者はこれらの事業に強く反対している。

一部のアマゾンカワイルカは水銀中毒によって死んでいる。 これは金鉱の近くで起こることが多い。 というのは、金を岩石から分離する目的で、水銀が広く用いられているからである。

■神話
アマゾン川流域において、アマゾンカワイルカにまつわる次のような神話が知られている。 夜中、アマゾンカワイルカはハンサムな若い人間の男性に化けて乙女に近づき、妊娠させて、朝になると元のイルカになって川へ戻っていく。 現在でも、アマゾンカワイルカが父親であるとする出生証明書を所持する人々が数百人もいると言われている。 アマゾンカワイルカの雄の生殖器は人間の男性の生殖器に似ており、このことがこの神話の基になっているという説もある。
●ラプラタカワイルカ(Pontoporia blainvillei)は南アメリカ南東部の大西洋岸に棲息するイルカである。本種のみでラプラタカワイルカ科ラプラタカワイルカ属を形成する。

■分布
ラプラタカワイルカの生息域はラプラタ川河口を含む、南アメリカの南東部の海岸である。 北限は南回帰線(ブラジルのウバツバ周辺)、南限はアルゼンチンのPenínsula Valdés周辺である。

■形態
ラプラタカワイルカは、成体では体長の15%にも及ぶ非常に長い口吻を持ち、これはクジラ目の中で体長比としては最も長い。 成体の体長は雄が1.6m、雌が1.8m、体重は50kgに達する。 体色は灰色がかった茶色であり、腹部はやや明るい。 胸びれも体長に比べて非常に大きく、幅も広い。胴との接続部は狭く、形状はほぼ三角形で、後側の縁はぎざぎざである。 噴気孔は三日月型であり、首の皺のすぐ前方に位置する。 背びれは下部は広く、先端は丸くなっている。

■生態
他のカワイルカが名前の通り淡水の河川に棲息するのに対し、本種は塩水である海洋および河口域に棲息する。本来棲むべき海洋へはほとんど行かず、ほぼ一生の間を河川で過ごす個体もいる。本種は非常に滑らかに、かつゆっくり泳ぐため、水面が穏やかでない限りは、目立たず、見つけるのが困難である。単独で、あるいは小さな群を成して行動する。15頭もの群が観察されたこともあるが、例外的なものである。

海底に棲息する生物を主食とする。 腸内容物の調査から、タコ、イカ、エビなどを含む、少なくとも24種類の異なる種を食べることがわかっている。 何を食べるのかは生息域によって異なり、その海域に多く棲息するものを餌としている。 逆にラプラタカワイルカの捕食者はシャチやサメの一種である。

妊娠期間は10ヶ月から11ヶ月である。 数年で成熟し、雌は早い個体では5歳で出産するようである。寿命は20年程度である。

■分類学
本種は、1844年、Gervais) とd'Orbignyにより新種として報告された。 種小名のblainvilleiはフランスの動物学者であるBlainvilleへの献名。 Franciscanaと呼ばれることも多いが、これは生息域であるアルゼンチンやウルグアイでの呼び名である。 同じく生息域であるブラジルではToninhaと呼ばれており、Cachimboという別名もある。

■ラプラタカワイルカ科 Pontoporiidae
ラプラタカワイルカ属 Pontoporia
ラプラタカワイルカ La Plata Dolphin, Pontoporia blainvillei

■保護
環境保護論者からは、毎年多くの個体が刺し網の被害になっており、種の安定的な存続を困難にしているという指摘がある。 1970年代の調査では刺し網による被害はウルグアイ沖で最も多いことがわかっているが、近年は南ブラジルとアルゼンチンの沖での被害が最も多いと考えられている。 これら三か国の生物学者は実態調査の必要性を表明し、調査に対する国際支援を訴えている[Reeves03]。 全生息数および生息数の変動は不明である。

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