ダンテス・ダイジコミュのakira_robertの部屋

ニューヨーク公演でのできごと。
「一座がステージ後方で客席を向いたまま停止したとき、グルジェフが命令を下した。すると、踊り手全員がフットライトと観客に向かって全速力で走りだしたのである。誰もが「イスト」つまり凍結運動の完璧な演出が見られるものと思っていた。ところが、凍結の指示を与えるどころか、グルジェフは平然と背を向けて、タバコに火をつけた。まったく従順な踊り手たちは、全員フットライトを超え空中へ飛びだし、オーケストラを超えて床に落ち、手足を四方八方に向けて折り重なったのである。そこには完全に静止、沈黙した肉体が雪崩のように横たわっていた。
グルジェフは振り向くと、彼らを眺めてもうよしと合図した。観客は呆然としたまま、信じられない様子であった。だが、誰も骨を折らず、事実、誰ひとりかすり傷さえ受けた様子
のないことがわかると、少々けげんそうであったが、どっと拍手した。この訓練はあまりにも劇的であった。」

以上『20世紀の神秘思想家たち』より引用