ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

たのしい特別支援教育研究室コミュの 【実践報告】 「おかわりちょうだい!」 − 自発的コミュニケーションとPECS −

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【実践報告】 「おかわりちょうだい!」 − 自発的コミュニケーションとPECS −


「PECS」について

「PECS」とは
The
Picture
Exchange
Communication
System
の頭文字を並べたもので日本語的には「ペクス」と呼ばれている「絵カード交換式コミュニケーション・システム」のことを指す。
日本語版の『絵カード交換式コミュニケーション・システム トレーニング・マニュアル(第2版)』(ロリ・フロスト,M.S.,CCC-SLP アンディ・ボンディ,Ph.D.  イラスト:レイナ・ボンディ 監訳:門 眞一郎 2005年12月28日 初版第1刷発行 2009年9月30日 改版第3刷発行)が「ピラミッド教育コンサルタントオブジャパン」から発行されている。
この本は正式な「PECSベーシックトレーニング ワークショップ」に参加すると資料として手に入れることができる。私が受けたワークショップは2010年6月19日-20日和歌山市で開催されたものである。

当時私が勤務していた特別支援学校における「PECS」視覚的支援について

当時私が勤務していた特別支援学校は「研究テーマ」として「自閉症児に対する指導」を掲げて全校あげて取り組んでいた。
自閉症児がものごとを理解する時「視覚的支援が有効である」という考えから、校内のそれぞれの時別教室に「視覚的支援」のためのシンボルの絵(たとえば「木工室」ならのこぎりやかなづちのシンボルの絵)などが入り口脇に貼られていたりして「何をする部屋」なのかを分かりやすく伝える工夫をしたりしていた。
また特に「小学部」の教室には「スケジュール」が絵カードや写真カードなどを多様して示されていたりして「AAC教材」を工夫してみんなの財産として使えるようにしようということで研究部が中心となってそれぞれの個人が工夫した教材の写真や使い方を学校内のサーバーに専用のフォルダを作って誰でもが見たい時に見れるというような形が作られていた。(あまり積極的に活用されていたとは言いがたい面もあったが・・・)
しかし、全校的に「PECS」など先進的な指導法に関する関心が高く、和歌山市で開催された「PECSベーシックトレーニング ワークショップ」には参加費が4万円以上したにもかかわらずなんと20名以上が同じ特別支援学校から参加して学んだのである。それまでにも既にワークショップに参加していた教師もあったため全教職員の3割近くが正式の「PECSベーシックトレーニング ワークショップ」に参加して学んでいるという極めて希な環境の中で日々の実践研究が進められていた。

そのような環境であるから当時の勤務校の小学部に入学してきた児童で「自閉的傾向」がありコミュニケーションに課題があると思われる子どもは入学すると同時に「その子ども専用のPECSのブック」が作られて日常的に持ち歩くという姿が当たり前になっている。学校生活のあらゆる場面で「PECS」を使ったコミュニケーションが積極的に用いられている。
教室は不必要な刺激が入りにくいようにするための「パーテーション」で区切られていたり、視線の高さを意識した位置に「視覚的援助のスケジュールボード」が貼られていたりする。
また、それぞれの授業において最初にスケジュールが視覚的援助をしながら示される。
たとえば音楽なら「1番・挨拶 2番・今月の歌・たんぽぽをうたう 3番・合奏「ドレミの歌の合奏」 4番・鑑賞タイム(「夢」というNHKテレビで放映されていたクラシック音楽にアニメーションがついたビデオをよく見た) 5番 終わりの挨拶」といった感じでスケジュールボードに示され、1つ活動が終わるごとにそのカードが外され(ホワイトボードに書いてあるだけの場合はその部分が消され)て1つ1つの活動が終わり、今どんな活動をしているのか、あとどれくらい活動すれば終わるのかが一目で見て分かるような形で示されていた。
このように「終わりが見える」ことによって見通しの持ちにくい子ども達も落ち着いて授業に参加できる助けになっていたように感じる。


私が初めて「PECS」を教えたKちゃんについて

2010年に「PECS」のワークショップには参加したものの当時高等部2年生を担当しており、1から「PECS」を導入するに適当な生徒を担当していなかったこともあり「PECS」は机上の学問となっていた。(既に中学部の時からPECSを使っていてブックを持っていたTちゃんとは時々ブックに入っているカードを使ってのコミュニケーションは行っていた。)
さて、今年度2012年度の春の人事異動で転勤となり、10年前にいた元の学校に戻る形となった。自宅から車で10分くらいの近い学校にまた勤務することになった。

今年担当することになったのは「高等部3年生」。卒業学年である。1年勝負。
昨年は高等部1年生から3年生まで持ち上がった「高等部3年生」の担当だった。2年連続卒業学年の担当である。修学旅行も2年連続。昨年度は北海道、本年度は沖縄と日本列島の北端、南端を制した。
進路先に向けての「現場実習」も2年連続。今年は一般企業2カ所、福祉作業所3カ所(うち1カ所は違う生徒で2回行った)、まだ一般企業就労を目指している生徒の進路が決まっていないので2月終わりまでにまだ最低1カ所は引率で行くことになると思う。

今年担任したKちゃん、なんと10年前に私が小学部2年生の時に担任した生徒だ。「10年は一昔」と言ったりするが、すごく成長したような印象を受けた。
何事にもおどおどした様子が感じられた小学部2年生当時から比べると、ずいぶん一つ一つの行動に自信と余裕が感じられる。

Kちゃんはダウン症である。内言語が豊富でこちらの言っていることはほとんど分かっているように感じられるが構音上に問題があるため言葉をうまく発音することができない。
言葉と物とはかなりつながりが分かっている。
「自立活動の抽出訓練」で「言語訓練」「運動訓練」「作業訓練」と3つも抽出で訓練を受けている。個別に抽出で3つも訓練を受けているのは全校でもKちゃんだけである。保護者の「特別な支援」へのニーズがすごく高い。お兄さんとお姉さんは大阪府で特別支援学校の教員をしているという家庭である。
そんな抽出訓練の中で「言語訓練」では「マカトン法」をかなり上級まで習得し、訓練担当の先生とは「マカトン法」を通じてかなり会話のようなこともできている。「マカトン法」で使う絵カードを見て手話のような感じで動きを伝えたりすることもでき、絵カードと具体物もほとんどつながっている。

しかし、せっかく伝えたいことがありいっぱい内言語を持っているのに「マカトン法」が分かる人にしかKちゃんの思いが伝わらない。もったいないなあ・・・
「そうだ、卒業まであと3ヶ月くらいしかないけどPECSを教えよう!」
と思い立ち、言語訓練担当の先生に伝えた。僕より10歳くらい若い女性の先生である。
幸いその先生も「PECS」のワークショップに参加された経験がある方だったので二人でコミュニケーションパートナーとプロンプター役を問題なくこなすことができ、スムーズに「フェイズ?」まで3回で進むことができた。

「好子」は最初「ポッキー」を使った。
カードの位置をだんだんと離していき、コミュニケーションパートナーが後ろを向いていたり、部屋から出たりしてもうまくコミュニケーションをとることができた。
お菓子ばかりじゃなくおもちゃなども「好子」に使えないかと「好子アセスメント」をしていく中で「ピンポンブー」という「○」・・・・「ピンポーン」、「×」・・・「ブー」と鳴るおもちゃを使ってみたが、明らかにいならいだろうと私が勝手に思い込んで用意した「Tシャツ」ばかりを取る。
「4ステップエラー修正」を試みても「Tシャツ」ばかりを取るので他の「スプーン」や「お皿」などの絵カードも入れてやってみるとどうやら「Tシャツ」が好きな様子だったので「Tシャツ」を「好子」として使ってみるとうまくいった。勝手にこちらが「好子」はこれだろうと思い込んで最初は押しつけようとしたのだが、「もしかしたらこっちの方が好きなのかも?」と予想変更をしてやった「Tシャツ」がうまくいった。常に子どもに問いかけながら進めていくことが大切だと感じた1コマだった。


「おかわりちょうだい!」

「フェイズ?」まで進んだ2回目が終わった後の給食の時間にすごいことが起こった。
なんと「自発」が飛び出したのだ。

Kちゃんは中学部時代に肥満になってきて食事制限をしてやっと今の活動しやすい体型になってきたということがあり、「食事制限」でもないが食べ過ぎないように給食のおかわりは基本的にさせないということで指導を進めてきていた。それでもおかわりを欲しがるので、最初にKちゃんに配膳する時のごはんやおかずを少なめで入れておき、Kちゃんが「おかわりをして欲しい」と要求してきた時に最初に取り分けていた分を「おかわり」として入れてやり「一人分でおかわりもした」というようなだましのような方法でやりくりをしていた。

僕に「おかわりちょうだい」と言ってもなかなか応じないか、応じても少ししか入れてもらえないと分かっているKちゃんは若い女の先生に向かって空になったお茶碗を指さししたりして「おかわり」を要求することが多かった。

「フェイズ?」まで進んだ2回目が終わった後のこの給食の時間にすごいことが起こった。
よほどお腹が空いていたのだろうか?
最初によそってあった分を軽く平らげた後、周りに何人も先生がいたにも関わらず、自分でお茶碗を持って「ご飯を入れてあるコンテナ」の所に自分で入れに行ったのだ。
それを見ていた周りの先生達、
「先生、Kちゃん(勝手に)自分で入れに行ったで!!」(いつも誰かにおかわりが欲しいと要求するのに、止めなくてもいいの?)
と僕に言った。

僕はその様子を見ていて、
「凄い!! Kちゃん、自発が出たあ!!!」
って感動した。

それでKちゃんのそばに行って、
「そうやなあ、おかわりが欲しかったら自分で入れに行ったらええんやなあ。」
とKちゃんに声をかけながらいつもより少し多めにごはんのおかわりを入れてやった。

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

たのしい特別支援教育研究室 更新情報

たのしい特別支援教育研究室のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング