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日記ロワイアルコミュの日々のちいさな幸せ。

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美希と悠介が出会ったのは、2人が23歳の頃。

ランチに利用する定食屋さんで顔を合わせるうちに話す様になり、付き合う事になった。

そして美希が26歳になった日に、悠介はプロポーズをした。

プロポーズの場所は遊園地の観覧車のてっぺん。

実にロマンティックなプロポーズだった。



3年間愛を育み、めでたく家族となった2人。

ささかやながらも結婚式も挙げ、仕事も順調で、新居での生活もとても楽しいものだった。



やがて1年、2年と月日が経った。

相変わらず仲も良く、幸せな2人であったが、一つ気がかりな事があった。

子どもが大好きだった美希の要望もあり、プロポーズを受けてからすぐ避妊をすることをやめたのだが、未だに子宝に恵まれないのだ。

毎月落ち込む美希を見て検査を受けることを提案したのは悠介だった。

「ホルモンバランスが原因の不妊症です。
今のままでは卵子が大きく育たないために受精ができません。」

医者の言葉を聞くなり美希は泣き崩れてしまった。

「泣くのはまだ早いですよ。
今後妊娠する可能性ももちろん残っています。
それに、奥様と同じ状態から治療をして授かった方はたくさんいます。」

「じゃあ治療してください!
赤ちゃんが欲しいんです!
私、赤ちゃん産みたいです!」

美希は泣きながら医師に訴えた。

「不妊治療は高額です。
治療は2人でよく話し合って方針を決めてから開始しましょう。」

悠介は、2人で生きて行ければそれでも良いという考えだったが、それを伝えても美希は納得しなかった。

話し合いの結果、とりあえずは期限を定めずに出来る限りの治療を行なっていくことにした。



不妊治療は2人が想像していたよりもずっと厳しいもので、貯金はあっという間に底をついた。

子どもが欲しいという思いが強い美希は精神的に病み始め、仕事をやめてしまった。

それでも治療を中断したくないという美希の強い希望を尊重し、親にお金を借り、保険を切り崩し、治療を続けた。



ある日、悠介が仕事から帰ると、部屋の電気はついておらず、いつもいるはずの美希がいなかった。

「コンビニにでも出かけてるのかな?」

美希の携帯に電話する悠介。

するとお風呂場の方から聞き慣れた着信音が聞こえた。

「携帯置いて行ったのか…」

そう思いながら音のなる方に向かうと、そこには信じられない光景が広がっていた。

美希は風呂場で自殺をはかっていたのだ。

「…!美希っ!」



どれほどの時間が経っただろうか。

美希はようやく目を覚ました。

「ゆ…すけ…?」

「美希?!気が付いたのか?!

「ごめん…なさい…私…」

「俺の方こそごめん。
美希がそこまで追い詰められてるなんで知らなかった。 
もう治療はやめよう。」

「え…!嫌だ…私…赤ちゃんが…」

「俺は赤ちゃんより美希が大事なんだ。
赤ちゃんはおまけだよ。
俺だって赤ちゃんが欲しくないわけじゃない。
でも美希が笑顔でいてくれることの方がずっとずっと大事なんだよ。」

悠介のいうことはわかるが、ショックだった。

美希にとっても悠介は一番大事な人だが、子どもが欲しい気持ちはなくならない。

「でも…赤ちゃんが欲しいの!」

美希は泣き続け、そのまま疲れて眠ってしまった。



その夜、美希は不思議な夢を見た。

小さな女の子が泣いている。

「どうしたの?」

声をかけると、美希を見つめ、こう言った。

「もっと大事にして。1人で悩まないで。今の幸せを感じて。一番大事なことに気が付いて。」

「あなたは…」

「早くそっちに行きたいの。お願い、ママ…」

女の子がそう言い終えた瞬間、美希は目を覚ました。

「あの子は…私の…私が…ママ…」

まだ夜中だったが、そこから寝付くことができず、美希は思い体を引きずってロビーに向かった。

ジュースを飲みながら夢の内容について考えてみた。

「もっと大事に…悠介のことかな。
ずっと子作りのことばっかりだったから…。
それとも自分の体のこと?
自殺なんてバカな真似したから…。
今の幸せってなんだろう。
悠介がいてくれることかな。」

ふと気配を感じ顔をあげると、何時の間にか隣に老婆が座っていた。

思わず声をあげてしまいそうなくらいびっくりしていると、老婆はいきなり話しだした。

「そうだよ。愛する人が自分を愛してくれることは、奇跡的なんだよ。
もちろん、それだけじゃない。
あなたには家族もいる。
温かい寝床がある。
美味しい食べ物が食べられる。
日々生活に必要なお金だってある。
これ以上何を望むんだい?」

初めて会う老婆に今の自分のことを言い当てられて固まってしまったが、美希はちょっと考えてこう言った。

「赤ちゃんが欲しいん…」

「今のあなたじゃ赤ちゃんを授かっても幸せにはなれないよ。」

美希が言い終える前に老婆はまた話しだした。

「足りないものにばっかり目を奪われてる間はいつまで経っても幸せにはなれない。
欲に限りなし、地獄に底なし。
今を幸せと思えない人に何を与えても幸せとは思えないのよ。」

老婆のいうことはもっともで、美希の心に大きく響いた。

頬を温かい涙がつたった。

「お婆さん、ありがとう…あれ?」

何時の間にか老婆の姿は消えていた。



それから美希は変わった。

不妊治療は一度やめ、体調が良くなってからは仕事にも復帰した。

小さな幸せに感謝し、笑顔で過ごした。

悠介は突然の変化に初めは少し戸惑っていたが、いきいきしている美希を見て安心していた。



そんな何気ない幸せな日々を送っていたある日。

美希が体調を崩し、仕事中に倒れたとの連絡を受け、悠介は病院に向かった。

「美希っ!」

病室に入ると優しく微笑む美希の姿が…

「悠介…私、ママになったよ。赤ちゃん、来てくれたよ。」

2人は抱き合い、喜び合った。



それから数ヶ月間、辛い悪阻すら赤ちゃんが育ってる証拠だと喜び、幸せな妊婦生活を送った。

そして、元気な女の子を無事出産。

「ママ、やっと気付いたよ。
悩んでばかりいたけど、本当は毎日幸せだったんだよね。
気づかせてくれてありがとう。
遅くなっちゃったけど、やっと会えたね。ママの所に来てくれてありがとう。」



長い人生、いい事ばかりではない。

辛い事、苦しい事ももちろんある。

しかし、そこにばかり気を取られていたら幸せな事も幸せと感じられなくなってしまう。

【人生楽ありゃ苦もあるさ】

どんな状況でも幸せを見つけられるようにならば、きっと生涯幸せな人生を送れるだろう。

美希のように…。

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