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日記ロワイアルコミュのアガヒモロ(※怖い話)

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一年前の夏の出来事です。


仕事中に携帯電話を拾ったんです。

富山県をレンタカーで移動中、綺麗な小川に架かる橋の上で――

最初は、財布だーー!とか思いながら慌てて車をおりたんですが


財布じゃなかったんです。


残念なことに財布じゃなくて、それは携帯電話でした。

「なんだよ携帯かよ」と思った私は川に投げ捨てようかと思ったんですが、そこは心の綺麗な私のこと、流石に思い留まりました。

いや、よく考えるとある意味財布よりも貴重だと思ったんです。

だって落とし主が誰とどんなメールのやり取りをしているか、誰と連絡を取っているかがわかるんです。
アラームをみれば何時に起きているか、学生なのか、人妻なのか、ブックマークをみればどんなサイトを見ているか、どんな買い物をしているか、アルバムを見れば顔だってわかるかもしれない――

落とし主がどんな人なのか、どんな生活をしているかがわかるかもしれないんです。

それぐらい今の人妻は携帯電話に依存しています。

私は考えれば考えるほど凄いものを拾ったんだとわかりました。
高鳴る気持ちを抑えて携帯電話をポッケナイナイすると、ホテルに戻りました。

携帯電話は電池が切れていましたが、幸いにも私の充電器と相性がばっちりでした。
早速充電器に繋ぐと、充電中を示す赤いランプがつきました。


安心した私はテレビをつけて、とりあえずシャワーを浴びようと服を脱ぎ始めました。
テレビでは夕方という時間帯もあって、その日起こったニュースをやっていました。


『――身体がバラバラに見つかっていることから、猟奇的な殺人事件と見て、警察は捜査を――』


何気なく聞き流していたんですが、その日残酷な事件が起きていることを知らされました。
そして、そのすぐ後に北陸の天気予報が流れたことから、割と近くでその事件があったということを知ったのです。

嫌な世の中になったな、そんな風に思いながら、私は服をベッドの上に脱ぎ捨てました。

枕元には赤く光る充電中のランプ

私は何気なく携帯電話を手に取ると、電源ボタンを押してみることにしたんです。


暫くすると、画面が明るくなり、

Please wait... Now Loading... の文字


そして、信じられないことに電波までも入ったんです。
拾った携帯の電波が。私のスマホは圏外なのに。

とりあえずは操作してもすぐに電池が切れてしまうと思った私は、シャワーを浴びることにしました。

だってもう素っ裸でしたし。

シャワーを浴びてる最中も、携帯電話のことで頭がいっぱいでした。

電波が入るということは、当然ですが電話もメールもできるということ。
本人に代わって誰かとメールのやり取りだってできるし、もしSNSをやっていれば本人になりすまして行動を起こすこともできる。

――いや、そういう問題じゃないじゃない。

電波が入っているということは本人からかかってくるかもしれないし、よく考えたらGPS付きで場所が特定されてしまうかもしれない。

リ ス ク の 方 が よ っ ぽ ど 高 い

そう気付いた私は慌てて浴室を出ると携帯電話を手に取りました。


案の定、赤いランプが点滅していて、画面には留守電を知らせるマーク。

鼓動が一気に高鳴るのがわかりました。

血の気が引いて、足の底から まずいまずいまずい という気持ちがあがってくる。

電源を切らなければ、いやでも留守電を聞いてみたい、いや電源を切らなければ、いやでも聞いてみたい、いや切らなければ――思考がぐるぐるぐるぐると廻りました。


どのぐらい時間がたったでしょうか。


『――本日、富山県の笹見川で子供の遺体が発見されました。子供の遺体はバラバラの状態で発見され――』


テレビからはさっきと同じニュースが流れてきました。

ふと我に返った私は、留守電の再生ボタンを押して、ゆっくりと携帯電話を耳に当てていました。


「こちらは留守番電話センターです。新しいメッセージが一件あります。再生するには、1を――」

「最初の新しいメッセージです。10月11日、午後4時17分――

ピーーーー



オオオ…   アアア…   アアイエ…   ピーーーー


もう一度再生するには1を、メッセージを削除するには7を――」


私は携帯を耳から離しました。

サーーーーーっという雑音の後、かすかに何かがうなっているような声が聞こえたのです。
震える声で何かを訴えるような、かすかな声が。

私は1を押して、もう一度携帯電話を耳に当てました。


「最初の新しいメッセージです。10月11日、午後4時17分――

ピーーーー



オゴオ…   アラア…   アガイエ…   ピーーーー


もう一度再生するには1を、メッセージを削除するには7を――」


さっきよりかすかに聞き取れる気がしました。


『――なお、頭部と両腕しか見つかっておらず、警察は5人体制で付近の捜索を――』


テレビではまださっきのニュースが流れていました。
「笹見川で子供のバラバラ遺体発見」というテロップをボーっと見ながら、もう一度携帯の1ボタンを押して、左耳に意識を集中させる。


「最初の新しいメッセージです。10月11日、午後4時17分――

ピーーーー



ボゴオ…   アラア…   アガヒエ…   ピーーーー


もう一度再生するには1を、メッセージを削除するには7を――」


やはりさっきよりもはっきりと聞き取れる。

そしてテレビではまださっきのニュース。捜査体制が5人から7人に変わったというテロップ。
そう言えば携帯電話を拾ったとき、何気なく見たカーナビの画面に笹見川という名前があったような――

もう一度、1ボタンを押して携帯を耳に当てる。


「最初の新しいメッセージです。10月11日、午後4時17分――

ピーーーー



ボゴロ…   アラダ…   サガヒエ…   ピーーーー


もう一度再生するには1を、メッセージを削除するには7を――」


バックに流れる雑音は、よく聞いたら川の音に聞こえなくもない。テレビから捜査体制が8人に変わったというテロップ。バラバラになった胴体と足はまだ見つかっていない。
笹見川――そう、夕方カーナビの画面で見た川の名前は、間違いなく笹見川でした。

寒さに震えながら訴えかけるその声は、うまく言葉にならなかったのでしょう。

私の頭の中で一つの答えが見つかったのです。



そぼろ  サラダ  探して



声の主はベジタリアンだったのです。





いや何かが違う。

繰り返し流れるニュースを見ながら、私はもう一度留守電を頭の中で再生してみました。



ボゴロ…   アラダ…   サガヒエ…   ピーーーー


もう一度


ボゴロ…   アラダ…   サガヒエ…   ピーーーー


もう一度


ボグロ…   カラダ…   サガヒエ…   ピーーーー



ソボロ…   サラダ…   いや違う。もう一度



ボグロ…   アラダ…   サガヒテ…   ピーーーー



ボクノ……



その瞬間、私は全てがわかったのです。

あれは「ソボロ」ではなく、「僕の」と言っていたのです。


時を追うごとに事件の状況が詳しくわかってきました。見つからなかった遺体の一部はかなり離れた下流の川沿いの草むらから見つかりました。雑草生い茂る草の中、そこに胴体と足と膝は見つかったのです。その遺体は深い草に隠れて見つかりにくかったそうです。


携帯電話から聞こえたあの音声。悲痛な叫び、その声の主が訴えたかったものは



僕の  サラダ  探して



やはり彼はベジタリアンだったのです。

コメント(46)

プチモグーラーさんの作品ていつも面白いですね!
一票です!
今日の夕飯はそぼろサラダにしようと思いました、1票です!
探してあげてください。サラダ。
一皿、もとい一票。
一票www
ところでそぼろサラダって何?誰か教えてください。
久しぶりに読みたいと思って見たけど、
アガヒモロって捜し物の事かって気づいた!
一票!

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