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日記ロワイアルコミュのブライダルスタッフの決断

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スマホに変えてやっと文字制限が無くなりました☆ヾ(≧∇≦*)/やったー♪

.....と、言うわけで結構な長文となっておりますのでお気を付けくださいませ。

―――――――――――――










本日は快晴なり。

…ただし、午前中だけ。




――――――――――


毎日テレビや携帯ニュースで天気予報をチェックするのが日課になっている

お客様の式は晴れるのだろうか

何回もしつこく予報を見るが午後からの降水確率は無情にも90%

溜息混じりで携帯の画面を閉じる

私のお客様の式は15時スタート

10時からの式のお客様は無事に終えられて、満足そうにガーデンでフラワーシャワーを浴びていた

温かな日差しが差し込む、絶好の結婚式日和な筈なのに…遠くの方に見える雲は真っ黒だ。

【午後からは雷を伴う強い雨が降り出すでしょう】

予報はどうやら外れそうに無い

毎度の事ながら雨の日の結婚式は胃が痛くなる

そろそろ新婦様が御来館される時間だ…、まぁまだ雨は降っていないんだから望みはある。

………と信じたい。

――――――――――

新郎新婦様の来館を、担当プランナーと共に待ち構える

「雨…降りそうですね……」

ポツリと漏らすプランナーの表情は空と同じく陰を 落としている。 そりゃそうだ、このプランナーは新人さんでまだ両 手で足りる数ぐらいしか担当していない。 しかも今までの担当の式はずっと晴れていたらしい

もしかしたら今日初めての雨が降るかも知れない。

「そうやねぇ……。…と、言うか…降って――」

ガラガラガラピシャーーン!!!!

「――きた、ね。」

私達二人を嘲笑うかのように雷鳴が轟き、バケツを ひっくり返したような雨が降ってきた

更に運が悪く、雨が丁度降り出したぐらいに新郎新婦様が来館されたので二人は濡れまくっていた

プランナーは慌てて二人をサロンまでお連れし、私はタオルを持ってくるべく全力ダッシュで衣装室へ と駆け出した。

【前途多難】とは正にこの事

何やかんやで取り敢えず新郎新婦様には着替えに行って頂き、新郎様の濡れたジャケットを乾かすべく衣装室でドライヤーを当てる。 その間にも雨は止みそうに無く、式後にガーデンに 出るのは諦めた方が良さそうだと自分を無理矢理納得させた。

着替えが終わりそうな時間を見計らい、ウェディングドレスのチェックをすべく新婦着付け室へと足を 運ぶ

「雨が降ったもんは仕方ない…、何とか元気出して 貰わないと」

不意に目についたティッシュペーパーをおもむろに丸めて私はてるてる坊主を作った、

急拵えなので若干形はいびつだけど…まぁ無いよりマシだろう

着付け室をノックする

「失礼します」

目の前には純白の衣装に身を包んだ綺麗な花嫁様。

――その部屋の窓に1体のてるてる坊主があった

「これ、プランナーさんから頂いたんです」

そのてるてる坊主はピンクのリボンが巻かれて可愛らしくニッコリ笑っている

……先を越されたらしい。

「どうしましょう、こんな可愛いの作られたら私の出し辛くなっちゃいましたよ」

苦笑しながら私が作ったてるてる坊主を隣に吊してみた

「雨が降ってきたからちょっと落ち込んでたんですけど…皆さんのお気遣いで少し元気が出てきまし た。本当に有難うございます」

スタッフの私達からしたら最高の賛辞を頂き、新婦様の笑顔に心が温かくなった

逆に何だか慰められちゃったみたいだなぁ

「チャペルでお待ちしております。今のうちに緊張ほぐしておいて下さいね」

ニコニコ笑う新婦様に軽く手を振ってから扉を閉めた。

後、一時間。

止まないかなぁ…なんて、軽く願ってみたけれど私 達が作ったてるてる坊主の効き目はどうやらなさそうだ

―――――――――――

新郎新婦入場まで、後15分。

雷を伴う激しい雨…と、まではいかないものの、パラパラと弱々しい雨は降り続けている

「止みそうやのになぁ…」
「止みそうなんですけどねぇ」

私とプランナーと二人並んでガーデン横の廊下から空を見上げながら、ぼやく。

少ししてからチャペルエスコートから無線連絡が 入ってきた(因みに式担当のスタッフは全員無線式のインカム を所持しています)

どうやらタイムリミットらしい。そろそろ入場するからスタッフは全員チャペルへ収集された

私はプランナーの背中をポンポンと叩いて共に階段を上る。

彼女は今から辛い仕事が待っているのだ。

新郎新婦様へ、雨が降っているのでガーデンには出られない事、そしてそれに伴ってフラワーシャワー は室内の階段、もしくは宴中にて行う事…そして ガーデンある幸せを呼ぶ鐘・平和の鐘、幸福の象徴 だとされてきた【カリヨンの鐘】が鳴らせない事を 伝えなければいけない

簡単に言えば「雨が降ってしまった為に諦めて下さい」と言う事

大概のお客様は承諾して下さる。「天気の事だから仕方がない」

でも「仕方がない」と承諾してくれた新郎新婦様の 少し残念そうな表情を見るのはスタッフとしてとて も切なく、…とても辛い

その言葉を告げて、その表情を一番始めに見るのは 誰でも無いプランナーである

挙式を控えた新郎新婦様とエスコートの新婦様のお 父様が待つ控え室へと向かった

扉を開ける前に「一緒に行こうか?」と声をかけた が、「大丈夫です、有難うございます」と笑顔で部 屋に入っていった

少ししてから、プランナーと新郎新婦様とお父様が 出てきた。スタッフ達は忙しなく準備に取り掛かる

プランナーは笑顔のまま。新郎新婦様は少し緊張で 顔が強張ってる。新婦様のお父様はガチガチに緊張していて右手と右足が同時に出ていた。

タキシードとウェディングドレス、お父様のモーニ ングの最終チェックを済ませてチャペルの扉の前に スタンバイして頂く

扉の向こうからオルガンの音色が聞こえてきた。 チャペルエスコートが両開きの扉を開ける

「行ってらっしゃいませ」

私達スタッフは恭しく頭を下げて、未来に向かって進んでいく三人を見送った。

顔を上げたプランナーからは笑顔を消えていて、切なく…とても辛い表情を浮かべていた

もう一度私はプランナーの背中をポンポンと叩いた

「割り切れ、って他の先輩からは言われるやろうけど…辛いもんは辛いよなぁ」

「辛いです…。やっぱり」

「上手く言えへんけど…辛い気持ちがあるから、お客様の為に頑張ろうって思えるんちゃうかな」

「そうですね」

私達は顔を見合わせて笑い合った。笑顔で頑張ろう、今日は私達の大切な大切なお客様の結婚式なんだから

気持ちを切り替えて披露宴会場に向かう途中、突然無線連絡が入った。



『 雨 が 止 ん だ ぞ ! 』




バンケットスタッフからの無線に私達はガーデンへと方向を変えて駆け出した

「雨、止んだって?!」

「さっき止んだばっかりや」

空を見上げると先程と同じ暗い曇り空だったけれど、確かに雨は止んでいる。

これはチャンスかも知れない!

「新郎新婦様が退場されるまで20分はあるから、今から急いで室内用から屋外用のフラワーシャワー に変更しよう!」

しかし私の提案に反対したのはバンケットスタッフや経験豊富なスタッフ達

「空の色を見ろ、また降り出すかも知れへん。フラワーシャワー中に雨が降ってきたらどうするんや」

「それに水溜まりも出来てる、着物を着ている列席者に迷惑や」

「今日の列席者には御年配の方も多い、特にガーデンは濡れてたから滑り安いし危険過ぎる」

「こんな状態で新婦様を外に出したらドレスも汚れる、裾が真っ黒に汚れた状態で披露宴に入場しても らうつもりか?衣装担当!」

「………っ、それは……」

正論中の正論。

私達スタッフは新郎新婦様だけで無く、列席者の 方々にも配慮しなければいけない。一時の感情だけで行動してはいけない。それは重々承知しているつもりだ

「でも…その最終判断はプランナーや。雨が降って濡れるリスクを承知の上でガーデンに出すか、安全で確実な屋内でフラワーシャワーをするか……どうする?」

ベテランスタッフがプランナーに話しかけた

この状況で究極の選択を突き付けるのはかなり酷な 話。しかしながらスタッフにベテランや新人は関係無い、あくまでもコスチュームアドバイザーやバンケットスタッフはプランナーの指示に従う

プランナーの表情は真っ青になっていた。

「新郎新婦様の事を誰よりも一番理解しているのは プランナーやろ。二人の為にどうするのが一番正しいと思う?」

無線で定期的に連絡が入ってくる

『新郎新婦様、指輪の交換が終わりました。後15分程で退場されます』

カウントダウンは始まっている


すると、プランナーは泣きそうな顔でゆっくりと口を開いた。

「……新婦様は、カリヨンの鐘を鳴らす事がずっと 憧れだったって言ってらっしゃいました。だから、 私は……新婦様の夢を叶えて差し上げたいです!」

プランナーの決断に、私達スタッフは即座に動いた。

「万が一の時の為にありったけの傘とタオルを持ってこい!」

「館内にいる全スタッフに雑巾とバケツ持ってくる ように伝えろ!ガーデンを拭いて水溜まりを無くす ぞ!」

「ドレスはどうするんや!何とか出来んのか!?」

「何とか、するっ!!!! 完璧な状態で新郎新婦様に入場して貰うわ!衣装担当なめんなよっ!」

多少の口の悪さはご愛嬌。

美容師と衣装室の皆に協力してもい、渇いたタオル と泥汚れを落とす為の薬剤、乾かす為のドライヤー 数個を新婦着付室に用意をしてもらった

準備の算段をしながら、ふとガーデンを見ると普段 は内勤のスタッフ達やパートのおばちゃん達がそれぞれの手にスポンジや雑巾を持ってガーデンに溜 まった水溜まりを無くそうと一生懸命頑張ってくれていた

ちょっとだけ泣きそうになった



『新郎新婦様、後5分で退場されます!』

こうしちゃいられない! 私も余っているスポンジを手に取り、制服の袖やズ ボンの裾を折り曲げて、地面に這いつくばりながら水溜まりと格闘した

「ちょっと!アカンやないの、お客様の前に出るの に汚れてしまうやんか」

「担当だからこそ、率先してやらないと皆さんに示しがつきませんからね!それに一番お客様と接するべき立場のプランナーが既にやってますから」

少し離れた所で同じように袖と裾をめくりながら這いつくばるプランナーの姿があった

『新郎新婦様退場されました!』

『少しだけ時間を稼げ!まだ列席者を外に出すな!』

『ガーデンのスタッフは全員急いで撤収しろ!』

―――タイムリミット。

私は水を含んだスポンジをバケツに入れて、渡された綺麗なタオルを手にプランナーに駆け寄った

「顔拭いて!そして急いで新郎新婦様の所へ行ってき!……新婦様にガーデンに出られます、カリヨンの鐘を鳴らせますよって伝えてきてあげな」

「……はい…、有難うございます!皆さんも有難うございました!行ってきます!」

駆け出したプランナーの背中を見送りながら、私も 顔や手に飛び散った汚れを拭きとった。

さぁ、私の仕事はここからが本番だ...

泥で汚れるであろう、ウェディングドレスを何事も無かったかのように完璧な状態で披露宴に入場して頂くこと。

みんな、自分の仕事を精一杯やっている。
私も負けられないでしょ!

―――――――――

新郎新婦、披露宴入場5分前。

新婦様の夢だったカリヨンの鐘は高らかに鳴り響き

フラワーシャワーを終えて列席者全員が披露宴会場に入るまで、雨が降ることは無かった。

懸念されていた、足元の水溜まりは複数名のスタッフの働きにより軽減され

それでも汚れてしまった列席者の方には、タオルを持ってスタンバイしていたスタッフによって泥汚れを拭きとってから会場にお入り頂いた。

雨が降っていたことなど、忘れてしまうくらいの
完璧な状態だった


「お待たせいたしました!」

会場の扉前で待ち構えるプランナーとバンケットスタッフに向かって声を張り上げた。

待ってましたといわんばかりに奥でスタンバイしていた新郎新婦様を迎えに行き、入場の準備に取り掛かる。
扉前でスタンバイする新婦様のドレスを凝視していたバンケットスタッフと目が合った

私は、どうだ!
と言わんばかりのドヤ顔

一点の曇りも無い、純白のウェディングドレス


雨なんて降ってませんでしたよ。最初から。

多少、手が薬剤臭いのは気のせいです。


『新郎新婦様の御入場です』

司会者のコメントの後に扉が一気に開く

「行ってらっしゃいませ」

私達スタッフは恭しく頭を下げて、暖かい拍手に包まれて祝福される二人を見送った。

顔を上げた私達は、みんな満面の笑み。

お互いの仕事を讃え合ってみんなでハイタッチ。

プランナーの勇気ある決断は大成功で幕を閉じた。


―――――――――――


本日は快晴なり。

…ただし、午前中だけ。

午後からは雷を伴う大雨になるでしょう。

しかし一部地域のみ、雨のち曇。

すっきりとしない天気ですが、
大勢のスタッフの働きにより
雨が降ったことなど忘れてしまうくらい心の中は澄みきった青空が広がることでしょう。

コメント(190)

他人の幸せの力になれるって素晴らしいハート
一票
水溜りを無くす…
そんな事までして下さるんですね泣き顔
一票!
一票!
こんな結婚式がしたい!
すんごくほんわかな気持ちになりました。
あれ、涙が止まらない。一票!
ステキなお仕事ハート
ステキです!こんなプランナーさん達に出会いたい!仕事に誇りを持ってする姿考えさせられました。一票。

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