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日記ロワイアルコミュの初めてのクリスマスプレゼント

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(はあ。また今年もバイトか)

中小企業で営業をしている私は12月24日の朝

目覚めて大きくため息をついた。


昨年から、一年に一度だけバイトをすることになった。

いきさつはこうだ。


昨年の12月初め
居酒屋のカウンターで一人飲んでいると、隣にいた見知らぬ老人に声をかけられる。


自分はもう年だから、どうしてもやりたい仕事ができなくなった。

健康そうな若者を探していたら、たまたま私を見つけたらしい。


『一年に一晩だけでいいんです。
何とかお願いできませんか?』

よりによってクリスマスイヴ

しかし大した予定もなく、一人寂しく家にいるならバイトしてもいいかな。

くらいの軽い気持ちで承諾した。

そのバイトとは・・・





サンタクロースになることだった。


昨年からある財団がボランティアで企画したもの。

地域ごとにサンタをバイトとして雇い、プレゼントを配って歩く。

子供の夢を壊さぬよう

と、よりリアルに、トナカイと車輪付きのそりまで派遣され配るのだ。


昨年が初めての試みで三度ほど不法侵入で通報されそうになった。

そりゃこんなメガネをかけた中年がサンタクロースだと誰も信じまい。


時給も安く、割に合わないバイトだ。

義理で今年もやるが、来年は断ろう。

そう思い、仕事が終わって疲れた身体にむちうち

私は支給されたサンタクロースの服に着替えた。



★★★★★★



子供一人に一つだけ

ネットで財団にアクセスし、子供の欲しいものを書く。

そのデータを元に、プレゼントが小分けされた袋が我々に渡された。


本来は煙突からなのだが、最近の家に煙突などないので、普通に玄関から入る。

鍵はポストに入っているのは暗黙の了解だ。

トナカイに乗り込み、まずは南から順々に進んだ。


時間は深夜の12時を過ぎた。


静かな街並みを私はそりに乗り走った。

今年の冬はいっそう寒く、手がかじかみ、身体は震える。

しかし今回で最後だから

と使命感にかられ私はプレゼントを配った。

一軒、また一軒と住所と名前を確かめながら、枕元にプレゼントを置いていく。

小雪が降りだし、いっそう寒さは増す。

それと共にそりに乗りながら昔を想いだし、心まで冷たくなってきた。


そういえば・・・


★★★★★★


私の父親は厳格だった。

「クリスマスはキリスト教が祝うもんだ。

仏教のうちには関係ない」

と言い張りプレゼントどころか、ケーキすらなかった。

過去、彼女も何人かいたが、クリスマスになると決まって一人。

クリスマスプレゼントは生まれてこのかたもらったことがない。

そんな私がサンタクロースになりプレゼントを配っているのだ。

(因果なものだな)

自動販売機でホットコーヒーを買いぐっと飲み干す。

それと同時に大きなため息がもれる。

(とりあえず早く終わらせよう)


私は、黙々とプレゼントを配った。



★★★★★



「たけしくん」
と書かれた小さな袋を持ち、マンションの一室に向かった。


確か去年、絵本をプレゼントに置いた記憶がある。

白い袋を持ち、たけしくんの家に入る。


他の子供と同様にそ〜っと部屋に入り、枕元にプレゼントを置こうとした。


枕元に小さな蛍光灯が点いており、手紙があるのに気づく。


三割くらいの子供は手紙を置いている。

いつも読まずに持ち帰り、本部に渡すのだが、この手紙の表にはこう書いてあった。




サンタさんへ

いますぐよんでください。



袋を小脇に置き
私は手紙の入ったディズニーの封筒を開ける。

蛍光灯の灯りを頼りに、かじかむ手にふぅふぅと息を当てながら、手紙を読んだ。




サンタさんへ


きょねんはすてきなえほんをありがとう

いまでもまいにちよんでいます

サンタさんはみんなにプレゼントをくばってる。

でもサンタさんはプレゼントもらえるの?

ぼくのことしのクリスマスプレゼントは

サンタさんへのプレゼントをプレゼントにします。



ぼくにはえほんがあります。

だからサンタさん

ぼくからのクリスマスプレゼントをもらってくださいね。


さむいのにありがとう

これからもがんばってね。



すべて平仮名でガタガタの字

一生懸命書いたのだろう。



プレゼントは私へプレゼントすること。

と書いてあるが、どういうことなのだろう?


私はたけしくんのクリスマスプレゼントをそっと開けてみた。


そこには白いマフラーが入っていた。

そしてそのマフラーには赤い字でこう書いてある。



『メリークリスマス』


私は涙が溢れてきた。

大粒の涙が左手に持った手紙に落ち、みるみる字がにじんできた。


寒いだろうと、私にマフラーをプレゼントしてくれたのだ。



ぽっかりと穴の開いた私の心は
優しさと思いやりで埋め尽くされた。

まるで焚き火のように温かな気持ちに包まれ、涙は止まらない。


ありがとう
ありがとう


涙声で私は知らず知らずのうちに呟いていた。

すやすやと寝ているたけしくんの手をそっと握り

私は何度も頭をさげた。


ありがとう
ありがとう



この時私は初めて

プレゼントの本当の意味を知った。



どんなに高価なものよりも

どんなに貴重なものよりも

心を揺さぶるプレゼント。



オモチャは飽きたら捨ててしまう。

しかし

この気持ちは一生の宝物。



わくわくしたり
何をもらえるのか楽しみで寝れなかったり

そんな気持ちを味わうことこそが本当のプレゼント。


物はいつかなくなってしまう。
しかし私は、何よりも代えがたいプレゼントをもらった。


気持ちがこもったこのマフラーは

どんな宝石より価値がある。



私は白いマフラーを首にしっかりと巻いた。


そして走ってそりに戻り、予備のお菓子全てをたけしくんの枕元に置いた。


ありがとう
ありがとう


産まれて初めてのクリスマスプレゼント


それは私にとって

小さな少年の大きな気持ちのこもった
最高の贈り物とだった。



「メリー
クリスマス」


たけしくんの耳元で囁き、私は次の家に向かった。



夜はまだまだ長い


一人一人

メリークリスマス

と心で言いながら、プレゼントを置く。


子供たちの喜ぶ顔を想像すると
私まで嬉しくなり、何だか幸せな気持ちになった。


また来年も頑張ろう。

一人一人に心を込めてプレゼントを渡そう。


そう心に誓い

私は小雪降る街並みに

そりを走らせた・・・






30年後


私は白いマフラーのサンタクロース

と呼ばれ最年長サンタとして有名になった。

また今年もボロボロになった白いマフラーをしっかりと首に巻き

小雪降る中そりを走らせる。


今年も子供たちに幸せを届けるために



そんな中、一軒の新築の家の玄関をくぐった時。

「さやかちゃん」と書かれたプレゼントを手に持っている私を、この家のお父さんが出迎えてくれた。


「ご苦労様です。
コーヒーでも一杯飲んでいってください」


私は首もとの白いマフラーを弛めコーヒーをご馳走になった。

さやかちゃんのパパは静まりかえったリビングでココアを飲みながら言った。


「プレゼントって

もらえるのも嬉しいですが、本当はあげるほうが嬉しいのかもしれませんね。

幸せを配ることで
自分も幸せな気持ちになれる。

私、五歳の時にサンタさんにプレゼントをしたことがあります。

その時、夢の中でサンタさんは言いました。


ありがとう
ありがとう

と。

その言葉は今でも耳に残っています。

喜びを与える喜び

プレゼントって
どんな物をもらったか!
ではなく

気持ちの交換

喜びの共有

だと思うんです。


明日、娘の喜ぶ顔を見るのが楽しみで、私は寝れません。

朝も娘より早く起きてその笑顔を見たいと思ってます。


幸せをありがとう。」



『たけしくん』

と叫びそうになった自分を止め、私はただ一言言い家を後にした。




『メリー


クリスマス』






この日記を

全国のサンタクロースに贈ります

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