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日記ロワイアルコミュの空の物語

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少年の小さな拳に、俺は拳を当てた。



『いいか?空。てめぇが惚れた女は、てめぇで守るんだ。』


『………。』


『わかったか?わかったなら言ってみろ。』


『はい。えと…てめぇ?』


『僕でいいぞ(笑)』


『僕が惚れた女の子は、僕が守る。』


『そうだ。それでいい。』





空が、一瞬光って見えた。






【空の物語】




その日も、俺はボクシングジムで働いていた。


夕方の四時、この時間は小学生や中学生が多い。


うちのジムは、少年達が非常に強く、勝率70%を誇る強豪ジムの一つだ。


サンドバッグを叩く音がジムを揺らす。


そんな中、子連れの母親が、ジムに挨拶に来た。


会長はミット持ちで忙しそうなので俺が対応する事に。


高価なブランド品のピアスをする母親は少し気が強そうな顔だ。




俺『こんにちは。見学ですか?』


母『急にすいません。この子、虐められてるんです。強くしたくて。』




本当に急だ(笑)


でもこんな事は最近珍しくない。


一緒についてきている子供はションボリ浮かない顔をしている。


一通り話しを聞いた後、入会の手続きを終わらせた。




俺『じゃあ手続きはこれで終了です。今日から動いていきますか?』


母『大丈夫ですか?』


俺『ええ。』


母『じゃあよろしくお願い致します。ほら空、挨拶しなさい。』




母親に強く言われると、空は少し怯えながら、上目使いで




『よろしくお願いします。』




と挨拶した。


準備体操をしながら年齢や住まいを聞く。


名前は空。小学5年生。


塾の合間に、ジムに通うようだ。


セミロングの黒髪に女の子顔、華奢な体は幼い頃の俺にダブって見える。


体操が終わる。




『空君。会長にボクシングを教えてもらいな?』




初めは大体会長の指導を受ける。


でも空は、あまり楽しそうにはしていない。


これが本当の上の空だ(笑)


会長はチラッと俺の顔を見たので、俺はニコっと笑った。


こういう子は昔から俺が面倒を見る。




『空君。こっちにおいで。』




俺は空を二階へ連れて行った。




俺『空君ちょっと俺と話しをしようか。』


空『はい。わかりました。』


俺『空君はさ、ニンテンドーDS持ってる?』


空『持ってます。でもお母さんが厳しいので、1日一時間しかやらせてもらえません。』


俺『そうか。俺はニンテンドーDSのマリオカートが好きでさぁ。』


空『あっ僕も好きです。』


俺『だったら今度、ここに持っておいでよ。みんなに内緒で一緒にやろうぜ。』


空『えっいいんですか?』


俺『おう。絶対内緒だぞ?練習をサッと終わらせて、マリカーで遊ぼーよ。』


空『わかりました。』




そういうと空は下に戻って行った。


次の日も空は四時にジムに来た。


一時間程度で練習を終わらせると後の30分は、話しながらマリカーをしていた。



空が来て三日目。


空『前から気になってたんですけど、仕事しなくて大丈夫ですか?』


俺『会長には、秘密の特訓って言ってあるからな。大丈夫だ(笑)』


空『………。』


俺『空はさ。ボクシング好きじゃないか?』


空『はい。あんまり。暴力は…嫌いです。』


俺『そっかそっか(笑)。空は将来何になりたいんだ?』


空『ん、ダンスの先生です。』


俺『ほほ〜。ダンサーじゃなくて、ダンスの先生なんだ。それはまたなんで?』


空『………。』


俺『内緒か?』


空『僕…。ここに来る前まで、駅前のダンス教室に通ってたんです。』


俺『ああ…。あのガラス張りの。綺麗なねぇちゃんがいんだよな。』


空『先生が凄い優しくて。先生になりたいなって。でも虐められたのが母親にバレて…。ダンスしてたかったのに、ここに…。』


俺『なるほどなぁ。空の母ちゃん怖そうだもんなぁ(笑)。もしや空、その先生が好きなんだろ?』




空の顔はリンゴのように赤くなった。




俺『なぁなぁ先生いくつ?美人か?』


空『22才です。綺麗ですよ。』


俺『俺と同い年かぁ。』(当時21才)


空『………。』


俺『よし!明日からダンスをジムでしよう!』


空『???』


俺『俺もダンスを踊れるし!それに、ステップなんてプロも顔負けさ。』


空『うん…。』




俺は次の日から、ステップを中心に教え始めた。


パンチは出さす、足のサバキのみ入念に叩き込む。


ダンスが好きなだけあって、飲み込みが早い。


空は、舞うように、リングを駆け巡る。


2ヶ月もすると、空のボクシングステップは、完璧に近いものになってきた。


そろそろ頃合いか…。


俺はちょこちょこパンチを教え出す。


しかしその度に空は嫌そうな顔をする。




俺『空。なぜパンチを覚えない?』


空『…。僕は人を殴りたくないです。』


俺『…。』


空『ごめんなさい。』


俺『空。俺、いつか空が言ってたダンスの先生を、最近毎日帰りに見てるんだ。』


空『そうなんですか?』


俺『帰り道だしな。あの先生美人だな。』


空『はい。先生のダンスはとても綺麗なんです。』


俺『俺さ、あの先生とキスしたいな。今度、帰りに待ち伏せしようかな。』


空『…。』


俺『いいかなぁ?』




空は下唇を噛んで、俺を睨みつけた。




空『やめてください。』


俺『どうしよう。』


空『ひどい。僕コーチの事…。ひどい。』


俺『やめて欲しかったら俺に勝ってみろよ。』


空『ん…無理です。』


俺『………。』


空『………。』


俺『ごめん。今のは冗談だ。空がどんな対応にでるか見たかったんだ。』


空『なぁんだ。』


俺『でもな、もし本当に先生に近づく悪い男がいたら、誰が先生を守るんだ?』


空『…。』


俺『空、俺の目を見ろ。』




空はまた上目使いで俺を見つめた。




俺『暴力は確かにいけない。俺も嫌いだ。』


空『コーチも?コーチなのに?』


俺『ああ。空と一緒だ。でもな。強くなる事は、決して悪い事じゃないぞ。』


空『………。』


俺『お前は誰よりも優しい子だ。俺は知ってる。でもさ、守りたいものを守れないのは悲しくないか?』




少年の小さな拳に、俺は拳を当てた。




俺『いいか?空。てめぇが惚れた女は、てめぇで守るんだ。』


空『………。』


俺『わかったか?わかったなら言ってみな。』


空『はい。えと…てめぇ?』


俺『僕でいいぞ(笑)』


空『僕が惚れた女の子は、僕が守る。』


俺『そうだ。それでいい。』


空『………。』


俺『………。』


空『コーチ。パンチ…。教えてください。』


俺『おう。一緒に強くなろう。』




空が握った拳は、なんだか固く見えて…。




空が一瞬光ってるように見えた。




【空の物語2】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1649711787&owner_id=32477660&org_id=1649710733

【空の物語ラスト】
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1649713223&owner_id=32477660&org_id=1649711787


【重要】票はこちらにお願いします。



つづく

コメント(181)

一票


泣きました。
守るものがあるからこそ強くなれるんだなぁ。

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