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日記ロワイアルコミュの俺の嫁は同級生

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キンと冷えた缶を冷蔵庫から取り出し

プルトップを引く。

そして泡立つ金色の液体を

喉の奥へ流し込む。

枝豆を口に放り込み、もう一口流し込む。

全身に染み行くアルコールにより

疲れから開放されるこの瞬間はまさに至福。


となるはずだったが

缶を開けた直後、携帯が鳴った。

聞こえない振りをして缶に口を付けようとしたが

体に刻まれた恐怖がその手を止めた。


この着信音は・・・

嫁だ。


もしもしと出ると、「雨。迎え」

それだが聞こえ電話は切れた。

通話時間2秒。

まだホワイトプラン適用の時間帯だと言うのに・・・

行くと返事さえしていないのに・・・

私は雨に濡れて帰ってきたのに・・・

のにのにのに・・・・

言いたいことは山ほどあったが、ビールの代わりにぐっと飲み込むと

開けてしまった缶を冷蔵庫に戻し駅へと車を走らせた。


無言で車に乗り込む嫁に「おかえり」と声を掛けたが

返事はなかった。

よほど仕事で嫌なことがあったのだろう。

人命に携わる看護師の仕事は平凡なサラリーマンである私のそれより

遥かにストレスフルだってことはわかってはいるつもりだが

迎えに来た旦那を無視してよい理由にはならない。

アクセルを踏む足に力が入りそうになるのを堪えながら

今日こそは・・・

今日こそは言ってやる!

例え、夜更け過ぎに雨が血に変わろうとも!!!

私は固い決意をした。


赤信号で止まると

不意に嫁が呟いた。

「こんな時間なのに視聴覚室まだ電気ついてる」

ありがとうもただいまも言わずに

ようやく口を開いたかと思えば視聴覚室ってなんだよ・・・

と思いながらも嫁の指さす方へ目をやると

まもなく22時になると言うのに

かつて通っていた中学校の校舎の一室が煌々と輝いているのが見えた。

「いや、あれは音楽室だし」

「馬鹿じゃないの。あれ3階だよ。音楽室は4階じゃん」

「違うって・・・」

こんなやりとりをしていると

嫁と同級生だったことを改めて実感する。



嫁と出会ったのは中学校3年生の4月だった。

名簿順で座らされた席の隣にいたのが彼女だった。

第一印象は「デブ」だなと思った。

それだけだった。

それまではっきりと誰かを好きになったことはなかったし

ましてやぽっちゃりは好みではなかった。

しかし、彼女は女子に対して免疫ゼロの私の心をくすぐった。

自己紹介をして数分後には顔がくっつきそうな距離で話しかけてきた。

箸が転がっても笑う年頃だったのか

私がボソっと何かを呟くだけで爆笑してくれた。

笑顔は少しかわいかった。

咳をすれば「風邪?」と言いながら

額に手をあててきたり

教師に腹を立て怒りを露にしていると

眉間を指でグリグリしてきたり

とにかくボディタッチが多かった。

そして、巨乳だった。

また彼女の友達と私の舎弟が付き合っていたため

4人で過すことが多かった。

それまでは女子とは無縁のヤンキー道まっしぐらだった

私にとってそれは楽しくて新鮮な毎日だった。


ある日彼女がクラスの他の男子と楽しげに話しているのを見かけた。

私と話す時ときよりも顔が近かったように見えた。

刹那に胸がキュっと締め付けられた。

ナンダコノキモチ・・・

以降、気づけば彼女の姿を目で追っていた。

朝、教室に入るとまず彼女を探した。

授業中も

給食中も

掃除中も

放課後も

ずっと見つめた。

彼女のちょっとした態度に一喜一憂した。

学校から帰っても彼女のことばかりが頭に浮かんだ。

毎朝使うジェルの量が無駄に増えた。

今日の運勢を気にするようになった。

勝手に相性占いをした。

ホットドッグ・プレスを読むようになった。

ヤンキーの自分が恋をしているなんて

恥ずかしくて中々認めたくなかったけれど

自分に嘘がつけないくらい彼女の存在は日増しに大きくなって行った。

一学期が終わる頃には

彼女が大好きになっていた。


夏休みに入るとヤンキーのくせに塾の夏期講習に通った。

通い始めた理由は進学を真面目に考えたなんて殊勝なものではなくて

彼女がその塾にいたから。

40日も彼女と会わない生活なんて無理だった。

塾に行きたいと言うと母親は涙を流して喜んだ。

思いがけず親孝行が出来て良かった。

頭の良かった彼女とは違うクラスだったが

終わる時間は同じだったため、よく一緒に帰った。

途中コンビニに寄り親の財布からくすねたお金で

アイスを奢るのが日課だった。

ガリガリ君を美味しそうに頬張る彼女を見つめながら

たわいもない話をする時間が幸せだった。

彼女の気持ちはイマイチ掴めなかったけれど

側にいられるだけで十分だった。


そんな幸せの時間は長くは続かなかった。


夏期講習も終わり休みも残り数日となったある日。

久しぶりに舎弟の家に4人で集まった。

舎弟の家は共働きだったため私たちのたまり場になっていた。

集まったと言ってもヤンキー中学生にありがちな

飲酒や喫煙をする訳でもなく

ただゲームをやったり漫画を読んだり

各々が自由な時間を過ごしていた。

しばらくすると舎弟カップルがコンビニへ行ってくると部屋を出た。

それまでは特に意識していなかったが

突然密室で二人きりになると彼女の存在をリアルに感じた。

ありえないくらいドキドキし始めた。

もしかして彼女も同じ気持ちかも。

同じベッドに横たわっていた彼女にチラリと視線を向けると

目が・・・

あわない。

彼女はこんな状況でも意に介さず漫画を読み耽っていた。

それにしても彼女との距離は近い。

僅かでも動けばその柔らかなそうな肢体に触れてしまいそうな距離だ。

ベッドの上に投げ出された彼女の白くて太い足が魅惑的だった。

私は思った。



膝 ま く ら が し た い 。



ついこの間までは側にいるだけで幸せだったはずなのに

急に私の中の「男」の部分が目覚めてしまった。

まだ何も知らない中学生の私にとって膝まくらは大きな憧れだった。

膝まくら=地上の楽園だと思っていた。

おっぱいを揉んだら子供ができると思っていた。

もちろん楽園に入るには守るべき順序があるのはわかっていた。

でも、ちょっとくらいなら・・・自分なら・・・夏休みだし・・・

何だかいけそうな気がした。

私は思い切ってダイブした。



楽園だと信じていた場所は期待以上の特別なものではなかったが

ひんやりとした彼女の太ももはそれなりに心地よかった。

しかし、何より不思議だったのは

彼女がノーリアクションだったこと。

彼女にとって膝まくらなんてものは取るに足らないものだったのだろうか。

それとも漫画に夢中で気づいていないのだろうか。

もしかしてそれ以上を許すサインかもしれない・・・

彼女の表情を伺うべく見上げるとそこには目を疑う光景があった。



彼 女 泣 き そ う 。


慌てて飛び起き謝罪したが、彼女は首を横に振るばかりで

取りつく島もなかった。

慌てふためく間に

彼女は目にいっぱいの涙を溜め部屋を飛び出した。

頭の中が真っ白になった私は追いかけることすらできなかった。


やがて戻ってきた二人は彼女がいなくなった部屋を見て

怪訝な顔をした。

ありのままを話すと舎弟の彼女がキレた。

そんなことをさせるために二人きりにしたのではないと激昂した。

馬鹿、死ね、カスと罵られた。

唯一の味方だと信じていた舎弟は終始無言だった。

居た堪れなくなった私は逃げ帰った。


独りよがりの行動により

彼女の信用を一瞬で失った。

それだけでなく、彼女の友人と言う強力な恋のサポーターまで失った。

なんであんなことをしてしまったのだろうか・・・

いくら後悔しても

覆水盆に返らず。

楽しかった中学校生活は

一転して暗黒時代となった。


二学期が始まった。

ありったけの勇気を振り絞り彼女に「おはよう」と言ったが無視された。

胸がズキズキ痛んだ。

次の日も勇気全開で挨拶したけど無視された。

心にヒビが入る音がした。

そのまた翌日も更に次の日も何とか会話のきっかけを掴みたくて

声を掛けたが尽く相手にされなかった。

かつての私だったらその辺の男子を小突いて気を紛らわすことが出来たかも

しれないが、今のクラスには彼女がいる。

何か問題を起こしてこれ以上彼女に嫌われることだけは避けたかった。

やり場のない胸の痛みを抱えながら過ごす日々はまさに地獄だった。

そんな中、私は一つの決意を固めた。


そ う だ 告 白 し よ う 。


こんな最悪の状況下で告白してもうまく行くはずがない。

それでもしようと思ったのは何とか彼女をモノにしたいと思うよりむしろ

ハッキリと彼女にNOを突きつけられることにより

つらく切ない恋の呪縛から開放されたいと思ったからであろう。


決戦は金曜日。

授業が終わると真っ先に自転車置き場に走り、彼女を待ち伏せた。

9月の太陽はまだまだ熱く、ただじっと立っているだけでも

ジリジリと肌を焼き額からは珠のような汗が滴り落ちた。

覚悟を決めたものの

心臓が飛び出しそうだ。

どうにかして落ち着こうと

父親の部屋からくすねたキャスターマイルドに火を点けた。

すっと煙を吸い込むと激しくむせた。

仄かに甘い香りがした気がするが

うまいとは思えず直ぐにもみ消した。

一口で気持ち悪くなった。

煙草を吸うと落ち着くと言っていた隣のクラスのヤンキーたちは

後でしめようと思った。


15分くらい経っただろうか。

ようやく彼女が校舎の影から現れた。

一人だった。

チャンスだと思ったのも束の間

私の存在に気づいた彼女は警戒心を露にし

その場に立ち止まった。

MAXだと思っていた緊張は更に高まりを見せた。

恐らくこの瞬間、右心房は口から出ていたと思う。

逃げたかった。

それでも行かなければ・・・

一つ大きく深呼吸をすると

彼女に駆け寄り、そして言った。



「この前はひじゃま・・・」



いきなり噛んだ。

耳までジンジンと紅潮するのを感じた。

かつての彼女だったら

大爆笑間違いなしの噛みっぷりだったが

彼女の表情は決して緩むことはなかった。

この間まではすぐそばに感じた彼女の心が

遥か彼方に行ってしまったことを実感した。

心が折れそうになるのを堪え

ひじゃまくらしたことを謝り、告白した。


「すっ、好きです・・・付き合ってください」


「ごめん・・・」


小さな声でそれだけ言うと

目の前から走り去った。


生まれて初めて告白し

生まれて初めて振られた。

僅か数秒のやりとり。

あっけなかった。

結果はわかっていたはずなのに

心が押しつぶされそうな程痛んだ。


結局告白しても

心が解放されることはなかった。

教室で毎日彼女と顔を合わせる度に胸が裂けそうになった。

他の男子と少し話すのを見るだけでイライラした。

すぐそこにいる彼女がすごく遠かった。

忘れようにも忘れようがなかった。

だからと言ってどうすることも出来ず

ただただ耐えた。

弱っている姿を彼女にもクラスメイトにも見せたくなくて

今まで以上に明るく振舞った。

体育祭、合唱コンクール、文化祭。

全ての行事にもヤンキーのくせに参加した。

参加しただけでなく、自ら中心となって懸命に動いた。

その甲斐あって孤立したヤンキーだった私の周りに

人の輪が出来た。

少しはいいところを見せられたはずなのに

彼女と話す機会は訪れなかった。

二人の関係は何も変わらないまま

2学期は終りを迎えた。


2学期が終わり直ぐにやってくるもの。

それはクリスマス。

しかし、大好きな彼女と話すことすらままならない

私にとっては無縁のイベント・・・

のはずだった。


12月24日。

受験生の冬休みとは言え

ヤンキーが勉強などする訳でもなく

ゴロゴロして過ごしていた。

夕刻になって見かねた母親から

遊んでいるくらいならチキンでも買いに行って来いと

指令が下された。

面倒だなと思いつつも

チキンがないクリスマスはどこか寂しい。

私は重い腰をあげてスーパーへ向かった。

店に入ると直ぐにあるものに目が留まった。

それはチキンでもクリスマスケーキでもなく

小さなサボテンだった。

花屋の店先に並んだそれはクリスマスカラーに

デコレートされたかわいらしいものだった。

衝動的に手に取ると値札を確認した。

2980円。

中学生の私には決して安いものではなかった。

しかし、財布には先ほど母親から預かった3000円がある。


彼 女 に あ げ よ う 。


即決した。


綺麗にラッピングされたサボテンを自転車のカゴに入れると

彼女の家まで約20分の道のりを全力で漕いだ。

12月の向かい風は肌が切れそうなほど凍てついていたが構わず漕いだ。

怠けた生活のせいで直ぐに太ももはパンパンに張ったがそれでも漕いだ。

漕いだ。

漕いだ。

恋だ。

数ヶ月抑え込んでいた気持ちが一気にこみ上げた。

告白するつもりはなかったが

プレゼントを手渡し

「メリークリスマス!」

と彼女にどうしても言いたかった。


息を切らせ彼女の家にたどり着いた時には

辺りは既に暗くなり始めていた。

夢中でここまで来たものの

彼女の家の明かりを見た途端勢いを失った。


ピ ン ポ ン 押 せ な い 。


冷静になって考えてみると

自分の行動の異常さに気付いた。

好きでもない男が突然家まで来て

「メリークリスマス!」

と言われたらどう思うだろうか。

恐らく


薄 気 味 悪 い 。


そして、サボテンって何だ?

こんなものを貰って喜ぶのは


メ キ シ コ 人 。


くらいではないだろうか。

インターフォンを押しても彼女が出てくるとは限らないし

家にいるかどうかもわからない。

彼女ではなく親が出てきたらどうする?

「娘さんにひじゃまくらをした関係のものですが、サボテンどぞー」

明らかに変質者だ。

やっぱり帰ろう。

いや、でももしかしたら彼女が出て来て喜んでくれるかもしれない。

どうするどうするどうするどうする・・・


や っ ぱ 無 理 。


私は逃げる道を選択した。

だからと言って買ったサボテンを持ち帰る訳にもいかず

彼女の家の庭先にそっと置いた。

後から考えるとこれが一番


気 持 ち 悪 い 。


余談ではあるが

手ぶらで帰った私は父親に生まれて初めて拳で殴られた。

父親は無類のチキン好きだった。


それからの数日

彼女から何かしらの反応があるかもしれないと

期待と不安の入り混じった時を過ごしたが

結局年が明けても何の連絡もなかった。


三学期が始まった。

彼女との関係は相変わらずで

二本引かれた平行線の様だった。

仄かに期待したバレンタインも何事もなく通過し

60日足らずの中学校生活は瞬く間に過ぎていった。

そして私たちは卒業した。


卒業式を終えた私たちは教室で別れの時を惜しんでいた。

2学期以降クラスの中心人物になった私の周りには

多くの仲間が集まった。

みんなで配られた卒業アルバムの裏にメッセージを書きあった。

写真も撮り合った。

そこにいた私はかつてのヤンキーではなかった。

第二ボタンを欲しいと言う女子は誰もいなかったが

いい中学校生活だったとしみじみ思った。

でも唯一心残りがあった。

最後にどうしても彼女と話がしたかった。

卒業アルバムと何本かのサインペンを手に

ありったけの勇気を振り絞って彼女の前に行った。


「なにか、きゃ、きゃいて」


極度の緊張をすると噛む癖があるようだった。

恥ずかしくて死にそうになったが

半年前のあの日と違い彼女は笑ってくれた。

心に温かいものが灯った。

鼻がツンとして思わず泣きそうになった。

私からペンを受け取った彼女は

アルバムの裏に何かを書き始めた。

彼女の手の動きから推測すると

それは一言だけじゃなかった。

書き終えた彼女はアルバムを閉じ私に手渡した。

そして「じゃあね」と言うと教室を出て行った。

逸る気持ちを抑えつつアルバムを開くと

彼女の似顔絵と共にこう書いてあった。


「あの日はアリガトウ。」





気付かれていた恥ずかしさよりも

わかってもらえていた嬉しさが込み上げた。

そして彼女がやっぱり大好きだと言う気持ちが溢れた。

私は無意識の内に彼女を追いかけていた。

下駄箱のところで彼女を見つけると叫んだ。


「好きだー!!!!!」


彼女はすごく嫌そうな顔をして

首を横に振った。


別々の高校に進学した彼女とはそれ以来会うことはなかった。

高校生活が楽しかったこともあり、彼女のことはすぐに忘れた。


卒業して15年が過ぎ私は30歳になったある日

体調を崩して訪れた病院で彼女と再会。

その日の内に飲みに行き

その日の内にSEXして

一ヵ月後に子供が出来たみたいと言われて入籍。

入籍の翌日に勘違いだったと言われたが

これも何かの運命かと諦めた。

初めはいい嫁を演じていたが

次第に不精な性格を露呈させ

大好きだった私と結婚できて幸せな

あんたがやればいいと

一切の家事を放棄した。

口ごたえをすれば直ぐに手が出る。

月末の度に給料が安い蔑まれる。

日に日に太っていく。

大好きだった彼女の面影はどこにもない。


嫁の一言がきっかけで色々思い出したが

やっぱり今の嫁は好きじゃないと悟った。


家に着くと少し気の抜けたビールを一気に飲み干した。

そして、脱いだ服も畳まず

下着姿でソファーに寝転がり

「飯」と言う嫁の前に

茶碗代わりの離婚届をそっと差し出した。

コメント(188)

一票ー!
結末予想を裏切られたのにスッキリw
一票!
・・・・・・・・・素敵!逆転劇

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