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日記ロワイアルコミュのおめでとうさん、これでとうさん

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保育園に娘を迎えに行く。
俺が娘を見つけるより早く、俺の姿を見つけて駆け寄ってくる1歳6ヶ月、額には赤い痣。
申し訳なさそうに保育士さんがこちらに声をかける。

「すみません・・・お友達と積み木を取り合ってて・・・」

積み木ごときを取り合ってしまうそれは、果たして誰のお友達なのだろうか。
どちらにしろ子供社会の競争も楽じゃなさそうだ。

「ああ、いいんですよこんなの、子供ですもん」

な?と額を撫でると、娘は思い出した様に「イタイイタイ」と両手で頭を抑えたが、残念ながら見当違いの場所を抑えていたので、はいはい飛んでけ飛んでけー、となだめて保育園を後にする。

後部座席のチャイルドシートに娘を乗せて、対角線上、バックミラー越しに話しかける。


「どうしても欲しかった?積み木」

「アー」

「喧嘩してもいいけど、するなら負けちゃだめだよ」

「ウンー」

「相手が男の子でも絶対に負けるな、いい?」

「ハイッ」

「・・・勝てないくせに、強気だな」


両手を上げて勇ましく返事をしていたけど、同年代の子より体の小さなうちの子は、喧嘩したってまたきっと負けるんだ。



1年と6ヶ月、あっという間に過ぎた月日は、見る見る大きくなった娘と一緒に、初心者マークをぶら下げていた様な父親をも多少は成長させたようだ。

転んだ、ぶつけた、落っこちた。
そんな日常茶飯事な事柄の全てに過剰に反応して、必要以上に心配したり手をかけたり、過保護にする事も無くなった。

良い父親にならなければと気負う事もまた同じく。

そもそも無理をして通すには、父親なんて仕事は任期が長過ぎるのだ。
なるべく自然体で、嘘は吐かずに、楽にいようと心がけるようになった。

正解なんてないんだろうし、どうやったって大なり小なり後悔するんだろう。
でも子育てなんてみんな試行錯誤しながら、それぞれのやり方を見つけなきゃいけない。きっと。今はその途中、のんびりやるんだ。

縁側でアイスをかじりながら、蟻を追い掛け回して踏みつける遊びに夢中な娘を眺めて、ぼんやりと想う。



「蟻さん天国に逝っちゃったねー」

嫁が視界の端っこからやってきて、踏んづけた蟻を不思議そうに見ている娘に笑顔で話しかけていた。

・・・天国、ね、浮かばれねえ。

ここものんびり見ていていいところなんだろうか。
親として命の尊さを語るべきか、いや、既に片親が余計な事を吹き込んでしまっている。
頬杖ついてどうやって突っ込んでやろうかと考えていると、メール着信。



『前略、結婚するハメになった』


実弟からだが、はて。
ハメられたのか、ハメたのか。


RE:

『おめでとうくらいすっきり言わせろこの兄不幸者』

RE:RE:

『ついに妊娠発覚』

RE:RE:RE:

『そういうのは固い意思で拒否してこなかったお前にこそ責任がある』

RE:RE:RE:RE

『いや、固かったんだけど』

RE:RE:RE:RE:RE:

『俺は意思の話をしている』



結婚なんてまだ早いだろうと、そう思ったけど、弟は気が付けば俺が結婚した歳と同じ25歳。
うん、早いには違いないのかも知れない。

年上の彼女が結婚を望んでいると、前々から聞いてはいた。
避妊しないのも彼女の意向らしい、強行策ここに実ったり。
妊娠は結婚する理由にはならないと思うけど、きっかけにはなるのかも。

経緯はどうあれ、彼女の親御さんにはきちんと話をしなければならない。
しかし困った事に、両親であった人達が離婚後に片や蒸発、片や縁切りな俺達には、挨拶に連れて行ける親がいない。

電話で弟と話をして、俺が挨拶に行く事にする。


「で、どんな土下座すればいいの?」

「謝らなきゃいけない事は何一つない」

「実際の話は別、向こうの親からしたら、嫁入り前の大切な娘に何してくれやがったこの腐れ天然パーマが、って思ってるかも知れないよ」

「俺には真実を語る準備がある」

「分かった、居たたまれなくなるから、とりあえず大人しくしててくれ」


その後、しばらく話をした。
自堕落な両親をもった俺達は、それでどれだけ理不尽な苦労をしたか覚えている。
子供を作るのは容易いかも知れないけれど、親になってそれを続けていくってのはまた別の話だ。

1年6ヶ月先輩として、同じ苦労をして育った兄弟として、保護者として兄として、能書きを垂れていると「何を偉そうに」と、嫁が俺の前を横切りながらやれやれといった感じで呟いたので、まぁその辺で勘弁してやった。

そして弟の話を聞けば、子供が生まれてくるのを楽しみに待っている事だって分かった。
最初のメールがあんなのだったから心配してた。まぁ不安もやっぱりあるみたいだけど。



電話をしながら、畑の方に走って行った娘を目で追うと、ブルーベリーを木から直で貪り食っていて、あまりの一心不乱さに思わず笑った。

「もしもし?人が真面目な話してんのになんで笑ってんのよ」

「いや、うん、大丈夫だよ、大丈夫、頑張れな」

弟に話しているつもりが、大丈夫だよって、自分に言い聞かせているような、なんだか妙な気分になった。

熟していない実を食べたのだろう、しかめっ面で戻ってきた娘を迎えて電話を切る。



大人になって、色んなものを諦めたり、結婚したり、子供ができたりして。

年ばっか食うな。

良い親を持てなかった俺達には、手本なんて無いし、上手には出来ないかも知れない。
それに親と子の血の繋がりに意味が無い事なんて、身をもって知っているけれど。
でも悪くないよ、自分の子供がいるってのは。天然パーマとかそんな負の遺産でさえきっちり受け継いで産まれてきちゃったりしてさ。

もちろん楽しい事ばかりじゃないけど、大丈夫、頑張ろうな。

子供達が大きくなっても、お互いにずっと子供達の親でいられるように。

コメント(213)

先日、初の子どもが産まれました。
グッとくるものがありました。
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片親ですが、がんばりますわ。一票!
私…多分 私を産んだ‥だけの親のもと育ちました。今 子供?人 孫?人 旦那?人 犬?頭 幸せです♪

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私も親には恵まれず(>.<)
娘達は可愛い♪
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『育児は育自』。子供に教わる事もたくさんあったりしますね(^_^)
一票ぴかぴか(新しい)
1票!
大人にさえなれば自分で幸せはつかめますものね。

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