ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

日記ロワイアルコミュの僕が警察官をやめた理由

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この作品はフィクションであり、実在の人物・団体・事件等とは
一切関係がありません。

ですが、私自身、元警察官であり、
多くの正義感あふれる警察官が、現場でくやしい思いをしていることを
ご理解していただければと思います。





後輩と交番にいたところ、無線機が何やら騒がしい。

「覆面パトカーがパトロール中、
 空き巣の指名手配被疑者(犯人)が運転している
 車を発見したので、気づかれないように尾行しようとするも、
 犯人に気づかれ、現在追跡中」

という内容であった。


覆面パトカーがサイレンを鳴らして、マイクで
「止まりなさい!」
と叫びながら追跡するも、犯人はいっこうに車を停止する様子はないようで、
無線機からは次々と
「現在、犯人は、○○交差点を通過し、南方向へ逃走中」
という内容が、サイレンの音とともにひびきわたる。


隣の警察署の管轄内での出来事ではあるが、
いつこちらの警察署の管轄内に、犯人が逃走してくるか分からない。

すぐにパトカーに乗って、隣の警察署との境目まで行き、
いつでも追跡できるよう体制を整えた。



僕はこの犯人のことを、以前から知っていた。

忘れもしない、3ヶ月前にもらった刑事部長賞。

それは、空き巣の現場で
僕が採取した指紋が、今回の犯人の指紋と合致していたことにより
もらった賞だったから。

犯人は、大胆な犯行手口で空き巣を繰り返しており、
県下の警察官の間では一躍有名人だった。

その犯人が、現在逃走中なのだ。


犯人は警察の捜査により、無免許であることが判明していた。

つまり、逃走している車両を停止させた時点で、
無免許で逮捕することができる。



隣の警察署では、県の中枢を担っている警察本部に対して、
逃走している犯人の車を停止させるために
あらかじめ、犯人が逃走するだろうと思われる道路上に
パトカーを何台もとめて、
その道を通りかかる全ての車が停止せざるをえないような状況を
作り出すために、
道路を一時的に封鎖できる体制をとってもいいか
無線機を通じて、許可を求めていた。

しかし、一向に警察本部からのGOサインは出ず
「しばらく待て」
との、頼りない返答しか帰ってこない。



今の日本では、車をぶつけてまで止めたらあとで非難されるし、
拳銃を撃つこともできないし、その上道路も封鎖できないんだったら、
一体どうやって逃走車両を止めたらええねん。

悪質な犯人ほど、可能な限り逃げようとしてしまう。

どうして徹底的につかまえようとしないんだ?



納得がいかないまま、無線を聞いていた。

何度こんなくやしい思いをすればいいのだろうか。

こんなに警察ができることが少ないだなんて、考えもしなかった。

警察はあまりにも無力すぎる・・・。


こんな風に思ったのは、1度や2度じゃない。

でも、やり場のない怒りを覚えるたびに、
少しずつ、ほんの少しずつ、
自分の中で、怒りがあきらめに変わっていくように感じる。

警察は、あくまでも取り締まりの実行部隊だ。

法律で決められている範囲内のことしかできない。

法律を変えようと思うなら、警察官をやめて政治家になるべきだ。

でも警察官をやめたら、
収入源がなくなり、嫁とわが子を守ることができなくなる。

今は・・・、今できることを、できる範囲で精一杯やるしかない。



無線の内容が変わった。

犯人の車はずっと南方向に逃走していたのだが、
Uターンをして北方向、
つまりこっちの警察署の管轄内の方向に向かってきた。

いつ僕のいるところに来ても、全然おかしくない。

無線の内容を一層注意深く聞き、今か今かと待ち受ける。




来た!!

黒いシールドを貼った車だ。

ナンバープレートの番号も間違いない。

後ろから追跡している覆面パトカーは、
パトライトを点灯させ、サイレンを鳴らしている。

その後ろに僕のパトカーも続く。

絶対に見失うわけにはいかない。

この機会を逃せば、犯人は、今後乗る車を変える可能性が高くなり、
さらにつかまえるのが難しくなってしまう。

だからなんとしてでもつかまえてやる。




だが、犯人の車は、一向に止まる気配がなかった。

信号無視を繰り返し、ふりきろうと必死で逃げる。

僕たちは、犯人をつかまえる具体的な術もなく、
サイレンを鳴らして追尾していく。

僕たちが見失わない限り、または
犯人の車が、行き止まりや踏み切りの遮断機が下りている状況に出くわすまで、
ガソリンがなくなって止まるまで、
あるいはもう1つの状況下におちいるまで・・・。



追走劇は、最悪の幕切れで終わった。

一瞬の出来事だった。

犯人の車が右折した際、横断歩道にいた男性を轢いたのである。

そう、もう1つの状況下とは、
事故をして、犯人の車が停止せざるをえない状況下におちいることであった。



犯人が、横断歩道に男性がいたことを知り、
ブレーキを踏んだときにはすでに遅かった。

男性は道路に横たわり、犯人の車はそのまま停止した。

助手席の後輩や、覆面パトカーの機動捜査隊員がかけつけて、
運転席にいた犯人を車から降ろす。

無免許運転で、現行犯逮捕した。



僕は、パトカーを道路端へ停車し、男性のところへ駆けつけた。

無線機で応援を呼ぶ。

「現在、△△交差点付近にて、犯人を確保。
 犯人が、逃走の際、中年男性を轢いた後、車両を停止。
 轢かれた男性は、意識不明の模様。
 救急車の要請よろしく」



男性は、身じろぎひとつもしなかった。

脈拍をとってみた。

脈をとれなかった。

僕は、医学的な知識をほとんど持ち合わせていなかったため、
「脈のとり方が、うまくなかったのかもしれない」
「もしかしたら、男性がまだ蘇生するかもしれない」
と思い、男性の体を動かすことなく、救急車が来るのを待った。



交差点は、大渋滞にみまわれたが、
文句を言ってくるドライバーはいなかった。



数分後、救急車が来た。

男性は、すでに息をひきとっていることが確認された。

僕はどうしていいやら分からず、
警察署から、刑事課や交通課の応援が来るまで
ただ呆然と立っていることしかできなかった。





犯人は、あれだけ無謀は運転を繰り返ししていたのに、
なぜ男性を轢いた後は、逃走することなく車を停止させ、
素直に警察官の指示に従ったのであろうか?

男性を轢いたことで、自分のしたことがこわくなったのであろうか?

僕は、最初そうだと思っていた。

だが、衝撃の事実を耳にした。



「ひき逃げは、罪が重い」

たった、これだけの理由だった。



空き巣をして逃走した場合、
素直につかまえられるのと比べて、
刑務所へ服役する期間が、2〜3年も長くなるわけではない。

だけど、その時にひき逃げをしてしまうと、
刑務所へ服役する期間がものすごく長くなってしまう。

すでに指名手配が打たれている犯人。

車のナンバーも警察に把握されているし、
その把握されている車でひき逃げをすれば、
いずれつかまってしまうことは自分でも容易に想像できたのであろう。

だから、ひき逃げの罪を犯さないためにも、すぐに車を停止させ、
素直に警察官の言うことに素直に従ったらしい。



つまり、もしこの国に、
空き巣などの犯行を犯して逃走した場合に
ものすごく罪が重くなるような法律があれば、
そして、
パトカーが犯人の車に、派手にぶつけてでもつかまえられることができれば、
道路を封鎖できていれば、
間違いなくこの男性が亡くなることはなかったのだ。



法律や制度は、そして警察は一体誰のためにあるのだろうか?

事件に全く関係がなく、何の落ち度もない男性が亡くなり、
犯人は生き残り、10年も経たないうちに刑務所から出てきて、
人生の再スタートを切ることができる。



これじゃ、完全に「やったもん勝ち」の社会だ。

どうすればいい?

一体どうすれば、この悲しすぎる現実を変えることができる?

願っても願っても、誰も変えてはくれなかった。

多分これからもずっと変わらないだろう。

だったら、僕が変えてやる!!

今すぐとはいかないけれど、近い将来、絶対に僕が変えてみせる!!



そう思わないと、やってられなかった。

納得いかなかった。

僕は数年前、もうこれ以上自分から逃げずに立ち向かうことを決意した。

その決意は今でもなんら変わっていない。



僕は目を閉じて、昔のことを思い出した。

いじめられていたときのこと
見て見ぬふりをしていたときのこと
薄暗いベットの中で、うずくまりながら、絶望を感じていたときのこと
初めて夢を見つけたときのこと・・・。



リスクなしにできることなんて、たかだか知れてる。

どんなに危険なことでも、こわいことでも、
絶対に逃げたらダメなことってあると思う。

そこから逃げてしまうから、だから人生が面白くないんだ。

他人事のような人生になってしまうんだ。



警察官になるとつぶしがきかない、とよく言われる。

他の職業と違い、資格が何も手に入らないから、
経験を活かしたキャリアアップをしていくことができないからだ。



そのため、一度警察官になって結婚してしまえば、
納得いかないことがあっても、一大奮起してやめることもできず、
ただひたすら警察官として頑張っていかざるをえない人たちを
これまでイヤというくらい見てきた。


僕は、絶対にそうはなりたくなかった。

みんながやめないからこそ、だからこそ挑戦してみる価値はある。

近い将来、僕は警察官をやめ、もっと根本から良くしていくために、
そして法律を良くしていくためにも、政治家になろう、そう心に決めた。

コメント(248)

信念を曲げない政治家になってください。
それが一般市民の願いです…

期待を込めて
一票
負けないで!
私も教育の場から
頑張ります!
一票
意志あるところに必ず道はあると思います。頑張ってください。一票
加害者を守る糞法律を是非変えて頂きたい。
フィクションだそうですが、話にリアリティがありました

被害者が本当に守られる、加害者が得をしてしまったり「やったもん勝ち」にならないような社会になってほしい、そういう社会にしてほしい、と強く思わされました

そして渡邊さんはこの日記に沿った形で実際に行動を起こしていらっしゃるから、言行一致していて素晴らしいです

1票

ログインすると、残り216件のコメントが見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

日記ロワイアル 更新情報

日記ロワイアルのメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。