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日記ロワイアルコミュの「ローソンランプの明かり」

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(実話です)

高校時代、マドンナと呼ばれる同級生がいた。
さほどの美人ではなかったが、モテた。
顔を赤くした瞬間が可愛いとか、素直な性格が素敵とか、彼女を好きな男性にはみな各自なりの理由があったが、要するに彼女には魅力があって、それに男は参っていた。

彼女とは同じ中学の出身だった。
私たちがの高校は県内では有名な進学校だったが、中学のほうはごく普通の公立中学だった。
それで同じ中学の仲間はかなり貴重で、彼女とは仲が良かった。
好きだったわけではないけれど、すごくステキな子だと、いつも思っていた。

もう一つ彼女と仲が良い理由があった。
彼女は二卵生の双子だった。
彼女には双子の兄がいて、彼と私はとても仲が良かった。
彼の家に遊びに行っては妹と顔を合わせていたから、私たち3人は思春期特有の気恥ずかしさを乗り越え、仲が良かった。
そんな友だちはほかにいなくて……それで私はいつも彼女をひいきにしていた。

そんな双子の誕生日が近づき、私は彼女に気さくに聞いた。
「欲しいもん、言いなよ☆」

すると彼女は照れ臭そうに、

「等身大のローソンランプが欲しい(^O^)/」
と、言った。

ローソンランプ…ローソンの例の牛乳ビンみたいな看板マークの、等身大バージョンのやつだ。
ナイトランプとして使えるとかいう話だ。
その頃ローソンで買い物をするともらえるスクラッチで当たるという話だった。
あー、なんとかなるだろ。
うん。

「任せろ」
と請け負い、すぐに友だちに入手方法を聞いた。

「あれ、手に入れるの超大変だよ」
「マジ?」

友人に聞いた話をまとめると、こういうことだった。
1.ローソンで500円以上の買い物をする。
2.クイズ付きスクラッチハガキがもらえるので、それについている4問のクイズにすべて正解する。
3.最後にある「ジャンケンスクラッチ」を削り、ジャンケンに勝つ(確率3分の1)。
4.ジャンケンに勝利したら、商品が分かる。そこに「特賞:ローソン等身大ランプ」と書かれていたら、当たり(確率不明)。

頭がクラクラした。
いったいいくつの関門を乗り越えなきゃならないんだ?
だが、高校時代から私は、一度言ったことを引っ込めるのは嫌いだった。

それに、あいつの喜ぶ顔を、見たいと思った。
見たいと思う気持ち。
子どもの頃からの友だちに対する気持ちには、特別なものがあった。

やろう。
やるしかない。

私はとりあえずいつもつるんでいる仲間3人(ハル、カズ、タカ)を集めて、知恵を借りた。
「そりゃ普通の方法じゃあ無理だよ、杉本」
1人がそう言った。

「確率から言って、ローソンハガキが少なくとも1000枚は要るだろ」
「50万円以上かかるな」
「そんな金ねぇよ。知恵をくれ」
「普通の方法じゃ無理だろ」
「別に普通の方法じゃなくてもいい」

ハルが悪そうな笑みを浮かべて、つぶやいた。

「じゃあ、ローソンの店員を抱き込むしかないな」
しかし、進学校の私たちにはコンビニの店員は知り合いにいなかった。
今ほどコンビニがたくさんある時代でも、なかった。

「無理だな。知り合いにコンビニの店員とか誰もいないだろ」
「じゃあ、どうする?」
誰かが、言った。
「人海戦術でいこう」

高校生のノリで、私たちは合意に達した☆
私たちはローソンランプ団を結成し、学年中に「マドンナのためにローソン懸賞ハガキが欲しい」旨を伝えた。
ただし、双子にだけはヒミツで。
予備校や中学時代のツテを使って、他の高校生にも呼びかけて協力者を募った。

タカのアイディアで、ハガキのスミにくれた人の名前を書いてもらった。
ローソンランプが当たった場合、ハガキをくれた人にはお礼をすると言っておいた。
同い年の高校生たちの善意と面白半分のノリのおかげで、ビックリする数のハガキが集まった。
タカは頭の切れる男で、同時にローソンで買い物した際にもらうレシートを、ハガキと同時に集めていた。


さらに私たちは、高校からわずか50メートルのところにある顔なじみのローソンに行き、店長にいま行っている「ローソンランプ作戦」を、話した。
私は得意の話術で、店長を抱き込みにかかった。

「店長、私たちはその子のために、高校の中でもかなりの数の人間、さらにはその家族や他の高校の人たちにもローソンで買い物してくれるようお願いしています」

「ありがとうございます」
と、店長。

「そこで店長にお願いがあります」
「なんでしょう」
「ローソンスクラッチ、いただけないでしょうか」

そう言いながら、私は袋に入れてきたレシートをバサバサと取り出し、店長に見せた。
タカが集めようと言った、例のレシートだ。

「ここにあるのは、全部ローソンで買い物をしたレシートです。けっこうな規模で、たくさんの人に協力してもらっているんですよ。もし、私たちに協力していただけるなら、この店舗にももっとたくさんの高校生が買いに来るはずです。」

店長は大人な態度のまま、私たちに訊いた。
「何枚必要ですか?」

私は(大人ってすごいなぁ)と思いながら、答えた。
「100枚ください」
「分かりました」

本当にもらえると思っていなかった私は、正直ビックリしていた。
それでも平静な様子で「ありがとうございます」と答えた。
あのときはありがとうございました、店長!


私たちは作戦終了の4週間前までに、トータルで600枚近いハガキを手に入れた。
しかし、私たちの前に巨大な問題が立ちはだかっていた。
クイズが有り得ないほど難しかったのだ。

3択のクイズが4問並んだスクラッチなのだが、たとえば、
「ミルチャ・エリアーデの『時間と神秘性』に関する主要な著作は何か。」
のような、皆目検討のつかない問題が並んでいる。
いまのようにインターネットのあった時代ではない。

クイズをどうするか。
懸賞クイズの締め切りはわずか4週間後。
しかも、首尾よくクイズに答えても、その後のジャンケンスクラッチに勝てなければならない。
私たちは頭を抱えた。
光に透かして答えが見えるか確認したが、紙が焦げるほどの光量を当てても中は透けない。
特殊な加工をしてあったのだ。

みな、頭をひねった。
「1.500円につき1枚」の難関をくぐり抜けたものの、「2.4問のクイズ」でつまづいてしまった。
しかも、その後には「3.ジャンケンに勝つ」「4.特賞を出す。」が控えているのだ。

困った。

4問のクイズを解いても、ジャンケンスクラッチで勝てる可能性は3分の1。
その中で特賞を出せるのは、どのくらいの確率なのだろう?


物事が進まないまま、2日が過ぎた。
家でゴロゴロしながら、私はローソンの問題文を眺めていた。

解ける問題はどのぐらいあるだろう?
ふとそう思い、問題文を順番に読んでいた。
50枚ほど問題文を読んだとき、ふとあることに気づいた。

「あれ、この問題、さっき見た別のハガキになかったか?」


10枚ほどハガキを戻ると、そこの2問目の問題は、今見ていたカードの3問目と同じだった。

「ああ、同じ問題もあるよな、そりゃ」

私は体を起こした。

「待てよ、ということは……ある程度の枚数をムダにすれば、クイズの答えが分かるんじゃないか?」

「いや……でも、その『ムダにしたスクラッチ』の中に特賞があったらイヤだなぁ……」






頭に稲妻が走った。


「先に、『ジャンケンスクラッチ』を削ったらいいんじゃないか?」

逆転の発想だった。


ジャンケンスクラッチを削り、ジャンケンで負けたハガキ。
この「ムダになったハガキ」のクイズ部分をはがしとり、クイズの答えを確認する。
その答えを一覧表にしてゆく。
ハガキのクイズはバリエーション豊かだったが、さすがにこれだけたくさんのカードがあれば、同じクイズもたくさんあった。
このアイデアを皆に話すと、みな大はしゃぎで賛成した。
行ける。
これしかない!!


しかし、私たちは運が悪かった。
特賞の当たりが、出なかったのだ。
数百枚削って特賞は1枚、しかしその1枚はジャンケンスクラッチで失敗してジャンケンに負けてしまった。

締め切りまであと3週間を切った週末、私は最後の切り札を切った。
子どものころ住んでいた街、電車で1時間30分の街に、週末を利用して、向かった。
小学校の頃の仲間たちに、声をかけに出た。
小学生のとき、すごくイヤだった「転校」。
でも、今はそれに頼りたい。

昔の仲間はすごく喜んでくれたが、それぞれ違う高校に進学していて、お互いにあまり会っていないという。
正直なところ、そのほうが都合がよかった。
7人の仲良しのうち、5人に会うことができた。
みんな、協力すると言ってくれた。

それから2週間。
新たに手に入れた80枚から、特賞が出た!
ジャンケンにも勝ち、あとはクイズを当てるだけだった。
600枚中1枚だった当たりが80枚中1枚、私たちの間に何となく釈然としない思いも広がったものの、とにかく大きな大きな前進を私たちは果たした。


私たちは大喜びでクイズに取りかかった。
しかし4問のクイズのうち、最後の1問が解けなかった。
月曜日の段階であと1問、締め切りは金曜日。
とりあえず、図書館で調べよう。
図書館は月曜日が休館日だったため、私たちはその日は解散した。


火曜日。
皆で図書館に行き、調べる。
見つからない。

水曜日。
本屋へ。
答えがない。

皆、焦りだした。
ハルもタカも、
「もうヤマ勘でいこうぜ」
と言う。

私もそう思いかけた。
しかし、カズが首を横に振った。
「この懸賞は当日消印有効だから、まだ2日ある。金曜日の午前中まで頑張ってみよう」

たしかに。
今すぐ削るのは、ラクになりたいだけ。
こういう時は必ず、粘らなくちゃ。
時間ギリギリまで、粘らなくちゃ。

木曜日。
巨大なチェーン店の本屋に勤める父親を持つ友人に、相談する。
「親父に聞いてみる。たぶん資料があると思う」
と、彼は言った。


そして、金曜日の朝。
本屋の息子が、話しかけてくる。

「言ってた資料だけどな〜、見つからなかったよ、、、」

落胆する私たちを、本屋の息子がニヤニヤした顔で眺めている。

「なかなか」

彼は1枚の紙きれを、私たちに渡した。


「マジ!?」
紙にはそう、私たちが探し求めた資料が書かれていた!!

私たちは喜び勇んで答えを確認した。
その答えは、私たちが3択のうち、「絶対にこの答えはないな」と考えていたものだった。
彼にジュースをおごり、それからドキドキしながらスクラッチを削った。
正解の文字があらわれる。
やった!!
やったぞコンチクショウ!!!!

盛大な盛り上がりの後、すぐにハガキを、出した。
もちろん締め切りには間に合ったo(^▽^)o

しばらく経ち、ランプが届き、私はそれをすぐに、小包でまた送った。

彼女の家に。

日付指定で。

もちろん、日付は彼女の誕生日。


誕生日が過ぎた後に双子の兄に聞くと、

「めちゃめちゃ喜んでたよ。どうやって手に入れたの?」

と、教えてくれた。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
良かった。

「偶然、当たったのさ」
そう笑って答えると、彼は口を曲げた。

「で、杉本。俺のプレゼントは?」
「あ!!」


兄貴へのプレゼントをすっかり忘れてたというオチ付きで、この話はおしまい。


今から16年と半年前の話です。
ローソン関係者の方とみんなのご協力に、この場を借りてお礼申し上げますm(__)m
今でもローソンはひいきのコンビニです(≧▽≦)

私と双子はずっと仲良くやりましたし、今でもときどき連絡を取り合います。
ハルとタカは東京でバーを開きましたが、今は別の仕事に就いたようです。
そこそこうまくやってるようです。
カズはシステムエンジニアになって、忙しくてお金の貯まる毎日を送っています。
俺は――まだ道の途中。
次に会う時は、みんなどんなだろう?


高校時代の思い出話、でしたっ(^O^)/

コメント(305)

その時にしか出ない勢い!
それが良い!
一票!!
読みながらドキドキワクワクさせてもらいました。
元ローソンクルーより。
1票。
最後まで
わくわく
どきどきして
読ませて頂きました(*^^*)
一票!!
読了後に読んだ爽快感が梅雨時期のうっとうしさを吹きとばしました。
一票です。

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