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日記ロワイアルコミュの桜

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※4月1日に作成した日記です。

「4月1日」は何の日かを思いながら読んでみてください♪


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一体どれほどの悲しみを与えてくれたことだろう


一体どれほどの喜びを与えてくれたことだろう








俺は季節の中で春が大嫌いだ


特に、桜が嫌だった



春は出会いと別れを演出してくれるけど


桜が満開になればなるほど

花が綺麗に咲けば咲くほど

それが散ってゆく姿が嫌でも別れを想起させる




今日、4月1日に


俺の子供が産まれた


女の子だった



嫁、家族、その他親戚が喜んでいる姿を横目に


俺はどこか胸が詰まる思いで自分の子供の誕生を喜びきれずにいた


親や親戚は、


「名前とかどうすんだ?」

「春に産まれたんだし、”春奈”とかどう?」

『あ〜…、まだ決めてないし、もう少しじっくり考えるよ』


そう言って、適当に流した



そして、時間が経ち、少し落ち着いてきたのを見計らって、


『わりぃ、ちょっと出かけてくるわ。夕方までには戻ってこれると思うから』


と申し訳なく嫁に言ったら、嫁は察したような様子で、


「うん、大丈夫。ゆっくりしてって平気だから」


と笑顔で見送ってくれた



車で運転してる中、ラジオでは「エイプリルフール特集」がされていた


「嘘」という言葉を聞くといたたまれなくなり、ラジオを切った


思えば、昔の俺は嘘に疎かった


言われた言葉をそのまま鵜呑みにしてしまっていた


もし、あの時、あの嘘に少しでも気付けていたら、今とは違った現在があったのだろうか





1時間ほど車を走らせて目的地に到着した



陽光台霊園



そこで俺はある人の墓の前で止まった


佐々木綾子


途中、買ってきた花を添えて、しばらく合掌していると、人が来る気配があったので振り向くいた


今、目の前の墓石で眠る女性のお母さんがいた


軽く会釈を交わした後、お互いの近況を話し合った


今朝、女の子が産まれたことを報告すると、お母さんは非常に喜んた様子で、


「まあ、それはおめでたいことですわね」


俺は、ありがとうございます、とだけ謝意を伝えると、


「この子もきっと天国で喜んでると思うわ。

…それにしても、もう3年も経ったのねぇ。

未だに、この子が死んだ、っていう実感がわかなくてね。

ほら、今日ってエイプリルフールじゃない?

もしかしたら、このことが全部嘘で、また綾子が「お母さ〜ん」って帰ってくるような気がしてね」



嘘…か


お母さんの言葉を聞きながら、俺はあの時のことを思い出していた



「大丈夫だよ」



それは今から3年半前


俺と綾子が付き合っていた時


バーで綾子と一緒にいた時だった


『でさ〜、聞いてくれよ。部長がいまだに俺に見合い相手を紹介してくんの!

「いや、俺には今付き合ってる人がいるので」って言ってもしつこくってさ〜

ホント最悪だよ〜』


そんな他愛の話をしていると、綾子は少し悲しそうな顔をしていた


『綾子?』


そう語りかけると、綾子はすぐに笑顔になって、


「ん?ああ、ごめんね。そう、ケイちゃんも大変ね」


?なんか様子が変だな


いつもなら、


「ちょっとぉ、それでその子に手を出したら承知しないからねぇ!」


とか笑顔で言いながら、俺のほっぺをつねったりしてくるのに…


『綾子、大丈夫か? 何かあったのか?』


と訊くと、綾子は相変わらずの笑顔で


「え?うん、大丈夫だよ。私はまったく平気〜♪」


と返してきたけど、目がどこかもの悲しそうな感じだった


だけど、俺は、まあ本人も平気って言ってるし、大丈夫だろう、と軽く見ていた



『綾子、いつか俺ら、結婚しような』


「うん、そうだね」


その夜は、二人の将来についてずっと語り合った



その一週間後だった


俺は、綾子から振られた


『…え?』


突然の別れの言葉だった


「他に好きな人、できたの。

ケイちゃんより全然イケメンで、お金持ちだからさぁ

その人に告白されて即OKしちゃった

だから、ごめんね、さよなら」


それだけ一気に言うと、踵を返して去ろうとした


あれだけ、俺ら上手くいってて、将来のことまで語り合ってたのに…


納得できずに、走るように去る綾子の腕を掴んで問いただそうとしたが、


「触らないで!!」


と見向きもされず振り払われて


綾子はその場を去った






それからは数ヶ月、ずっと綾子のことを憎んだ


そして、ずっと言われ続けていた部長からの縁談を承諾した


相手はお得意様の役員のご令嬢で容姿も性格も素敵な娘さんだった


会社にとっても、自分にとっても、全く文句がなく、これから幸せな人生を送れる、そう思っていた


綾子のこともその時にはすっかり忘れていた




そのさらに数ヵ月後、そう、4月1日の日だった


綾子の親友から突然の電話がかかってきた


「綾子が……亡くなったの」


『…え? 嘘だろ?』


そうだ、今日はエイプリルフールだ!


どうせ、ドッキリかなんかなんだろ!?


「違う…ホントに亡くなったんだよ!!」


もはや、綾子の親友の声は嗚咽となり、それ以上は何も言えなくなっていた


『そんな…。

……でも、俺にはもう関係ない。

俺は綾子に振られたんだから。

他の男に心移りしたんだよ、綾子は。』


それだけ言うと、綾子の親友は怒り始めた


「…あんた!!

まだ綾子に振られたと思ってるの!!?

本当に綾子が他の男に目移りしてあんたを振ったと思ってるの!?

そんなの、嘘に決まってるじゃない!


綾子はね、癌だったの!

それで、あんたを傷つけないように、わざとそうやって別れたんだよ!」


何も言えなかった


それで、以前、バーで語ってた時、あんなに元気がなかったのか…?


だから、もう長くないからわざと俺を振った…?



そのまま、俺も綾子の親友と泣き崩れた







何故、気付けなかったのだろうか


あれから、ずっと後悔していた


そして、今も



あの後、部長からの縁談は断ろうとしたが、もう向こうは着々と準備を始めており、もう今更撤回はできないこと

そして、得意先の怒りを買うので、それはやめろと言われた



「啓太さん、よかったら少しうちにいらっしゃいませんか?」


綾子のお母さんはそう言うが、


『いえ、ちょっと嫁も待っていますので…』


と断ったが、お母さんからの粘り強い勧誘で、


『じゃあ、少しだけ…』


と言って、3年ぶりに綾子の家にお邪魔した



綾子の家はあれから何にも変わっていなかった


綾子は今の俺を見てどう思ってるだろう


綾子の嘘に気付きもせず、他の女と結婚して暮らしてると知って怒ってるだろうな


そんなことを考えていると、奥からお母さんが手に何か持ってやってきた



「啓太さん、実は、娘から手紙を預かっているのよ」


『え?綾子さんからですか?』


「ええ。これよ。」


俺は、渡された手紙の封を丁寧に切り、その手紙を読み始めた





ケイちゃんへ


やっほー♪ ケイちゃん、元気ー?

私?私は元気だよ!

あ…でも、今あの世にいるのか(笑)

じゃあ、あんまり元気とは言えないよね(笑)


私がいなくなってからも、ちゃんとご飯食べてる?

栄養の偏ったものばっかり食べてたりしてない?

ケイちゃん、肉ばっか食べるから、病気になっちゃうんじゃないか、それだけ心配。。


今ね、病院でこの手紙書いてるの。

実は、ずっと前から医者から癌の宣告をされたの。

あと数ヶ月、って言われて。


悲しくてずっと泣いてた。


でね、以前バーでケイちゃんと話してた時あったじゃない?

その時には、もう痛みとか本格的に症状が出始めてて…。

そんでケイちゃん、部長さんからの縁談の話とかしてたよね。

その時ね、ケイちゃんは私がいなくなっても、きっと他の女の人で幸せになれるんだなぁ、って思うと嬉しくなる反面、だけどもうケイちゃんには会えないと思うと悲しかった


だけど、ケイちゃんは変に優しいところとかあるからね

きっと正直に言って別れても、きっと誰とも結婚することなく過ごしちゃいそうだったから、嘘を言って別れることに決めたの

身勝手でごめんなさい


別れを言った後、ケイちゃん、それでも走っておいかけてきてくれたよね

あれ、すっごく嬉しかったよ

だけど、その時はもうケイちゃんの顔、見れなかった


見たら、きっと泣いちゃうから


きっと、ケイちゃん、私のこと、憎んだよね


でも、それでもよかったの

それでケイちゃんが私のことを忘れて、他の女の人と幸せになって欲しかったから

もう長くない私のことでケイちゃんの幸せを奪いたくなかったの


それが、彼女としての、私の最期の役目


ケイちゃん

きっと本当のことを知って、悔やんでるでしょ


きっと優しいケイちゃんのことだから、

「忘れて」って言っても忘れられないよね

それはかえってケイちゃんを苦しめるだけになるから


だから忘れてとは言わないよ


代わりにお願いがあるの

私からの、最後のお願い


その新しい女性を大切にして

そして、その女性と幸せになって



ケイちゃんに会えて、私は幸せでした

たくさんの笑顔も涙も喜びも、みんな胸の中にあります

ケイちゃんと一緒にいられた時間が今までで一番幸せだったよ



あと…もし、私のワガママが一つだけ叶うなら


もう少しだけ、ケイちゃんと一緒にいたかったよ



本当に本当に、私はケイちゃんと付き合えて幸せでした



ケイちゃん


今まで本当に

ありがとう



綾子より








読み終わった時には、手紙は涙でビショビショだった




その後、俺はお母さんに丁寧にお辞儀をして、嫁のところへ帰った




「おかえりなさい。もう大丈夫なの?」


『ああ…もう終わったよ』


俺の嫁は俺の過去も、綾子のこともすべて知っていて、俺の綾子に対する想いも汲み取ってくれている


「そうそう、この子の名前も考えないとね」


『ああ、それならもうさっき決めたんだ』


「あら、何て?」


『「桜」にしようかと思うんだ、どうかな?』


嫁は少しビックリしたような顔をしたが、すぐに、


「いい名前ね」


と笑顔になった






なあ、綾子


見てるか



もし、聞いてくれるのなら、言いたいことがあるんだ


俺、バカだから綾子のこと、まったくわかってなかった


一人で死ぬ恐怖に怯えていたんだろうな


今まで、ごめんな

お前の嘘、わかってやれなくてごめんな

自分だけ、悲劇の主人公気取りでごめんな

一緒に泣けなくてごめんな




なあ、綾子


俺、これからもこの新しい人とそして新しく誕生したこの子と一緒に上手くやっていくよ



綾子、あと手紙の返事してなかったな



俺も、綾子に出会えて幸せだった

人生で一番幸せだったよ


本当にありがとな







『ああ、そうだ、まだ言ってない言葉があった』


「あら、なあに?」


『好きだよ』


「ふふ…それは今日がエイプリルフールだから?」


『そうだな、嘘言ってみた』


「えー、ひどい」


『っていうのも嘘さ、愛してるよ』


そうして二人、唇を重ねあった






桜…


これからも、今咲いている桜のように、綺麗な花を咲かし続けてくれな


天国にも届くように


そして、いつか俺らも天国に行ったら、4人で花見でもしようか


嫁もきっとわかってくれるだろう





桜、


お前の存在は決して嘘なんかじゃない


今、確かにここにいるんだよ












【完】

コメント(134)

朝から号泣。桜ちゃんが、綾子さんの分まで幸せになれますように。一票桜

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