日記ロワイアルコミュの恋愛と数学とチャーハンについて同時に考える。

＜恋愛＞

「俺、絶対にブロードウェイのトップダンサーになるから！」

そう言ってヒロシがアメリカへ旅立ってからまだ５か月しか経っていない。
それなのに既にヒロシ以外の男に心を寄せつつある私は薄情な女なのだろうか、と目の前で上品に食事を続ける城山さんを見ながら私は自分自身に問いかける。
城山さんは私が今勤めている会社の上司にあたる人で、社の若手では一番の期待株だ。落ち着いた雰囲気を持っていて、顔は玉木浩二に似ている。僕なんて平凡な人間だよと言いながら東大卒で、実家は新宿駅前の一等地に土地を持っていて、私に好意を抱いてくれていて、クラシック指揮者のオーマンディが好きなんてマニアックな趣味まで嘘みたいに一致していて、でも、多分私の心がヒロシから離れたのは城山さんの存在とは関係ないんだと思う。
きっと、ヒロシがその言葉を発した瞬間に全ては決まったのだ。

「だから、一緒に行こう」

そう言ってくれさえすれば、きっと私は何もかも投げうってヒロシに付いて行ったのだ。
会社を辞めて、親の反対も無視して、城山さんなんて眼中にも入れずに。
でも、現実はそうじゃなかった。だから――と、そこまで考えて苦笑する。
結局私は薄情なのかもしれない。本当にその気なら、無理やりにでも付いて行ったハズだから。

自嘲の笑みを浮かべた私を、城山さんが不思議そうに見つめていた。

＜数学＞

点ＡＢＣを頂点とする直角二等辺三角形のいずれか一辺が４ｃｍである。
このとき、三角形における他の２辺の長さとして妥当と思われる組み合わせを全て答えなさい。
また、それぞれの場合における三角形の面積もあわせて求めなさい。
更に、その三角形の各頂点を通る円の円周と面積を求めなさい。
なお、解答にはルート記号を使用せず、小数点第２位で四捨五入した値で答えることとする。
（配点３５点）

＜チャーハン＞

フライパンにサラダ油（大さじ２杯）を敷き、火を通します。
熱が通ったところで千切りにしたピーマン、玉ねぎなどを加えて炒めます。
充分野菜に火が通ったところで溶き卵と米を加え、米をほぐし卵と絡めながら更に炒めます。
最後に醤油と塩で味と香りを整えて、冷水に浸しておいたレタスを細かくちぎって加えると、ホラ、とっても美味しそうなレタスチャーハンの出来上がり！
是非ご家庭でお試しください。

＜出力結果＞

「俺、絶対に直角二等辺の三角形になるから！」

そう言ってヒロシが点Ａに旅立ってからまだ５か月しか経っていない。
それなのに既にヒロシ以外のフライパンに火を通してしまった私は三角形における他の２辺の長さとして妥当なのだろうか、と点Ｂで上品に食事を続ける城山さんを見ながら自分自身に問いかける。
城山さんは私が今作っているチャーハンのピーマン・玉ねぎなどにあたる人で、社にいる三角形の中で一番の面積の持ち主だ。いつも溶き卵と米を持っていて、顔はルート記号に似ている。僕なんて平凡な人間だよと言いながら充分野菜で、実家は一辺４ｃｍの土地を持っていて、醤油と塩で味と香りを整えてくれていて、円の円周と面積が好きなんてマニアックな趣味まで嘘みたいに一致していて、でも、多分私の心がヒロシから離れたのは（冷水に浸しておいた）城山さんとは関係ないんだと思う。
きっと、レタスがその言葉を発した瞬間に全ては決まったのだ。

「更に、その三角形の各頂点を通る円の円周と面積を求めなさい」

そう言ってくれさえすれば、きっと私は小数点第２位で四捨五入した値で答えたのだ。
ルート記号を使わず、小数点第２位で四捨五入した値で、（細かくちぎって加えた）城山さんなんて眼中にも入れずに。
でも、現実はそうじゃなかった。だから――と、そこまで考えて苦笑する。
結局私はレタスなのかもしれない。本当にとっても美味しそうなレタスチャーハンなら、無理やりにでもご家庭で試していたはずだから。

なお、自嘲の笑みを浮かべた私を、（小数点第２位で四捨五入した）城山さんが不思議そうに見つめていることとする。
（配点３５点）