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日記ロワイアルコミュの― 糸 ―

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中島みゆきは、縦の糸はアナタ横の糸はワタシ…
なんて愛と絆を唄うけど、俺は只の単体の糸でしかなくて縦も横もありゃしない、とある一本の縫い糸。


針を持つ女は、「なんて絡まり易い糸なの!」
などと文句をいうがオマエの使い方が下手なんじゃないか。


更に言う。

「なんて切れ易い糸なの!」


力が強いんだよ、お前、女の癖におおざっぱなんじゃ。
だいいち、ダ○ソーでたったの百円出して、どんだけ強くてぬいよい糸が手に入るとか夢みてんだアメリカドリームか。
俺はこの家に来て早々に不良糸のレッテルを貼られた。


キレ易く、すぐ絡み、役に立たない、なまっちろい不良糸。そんな糸を買った覚えはない!ってね。

そんなレッテルを貼られる為に生まれてきたわけじゃないと僕は言い、
「こんな糸だとは思わなかった。」と女は嘆いた。



ある日、女はヒステリーなのか忙しいのか生理前なのか知らないが、旦那と言われる男と喧嘩をした。
それはものすごい剣幕で眠っていた一人息子が起きて泣いたほどだった。可哀相に。

しかも喧嘩の理由が一人息子の教育方針についてなんだから聞いて呆れる。
どいつもこいつもキレ易くすぐ絡む。糸の事を責めてる場合じゃないだろ。


翌朝、ピリピリとした空気の中、無言で旦那は出勤し女はガチャガチャと食器を鳴らす。一人息子は怖ず怖ずと話しかける。

「ママ…せんせいが おぼうしのゴムをちゃんとつけてもらいなさいっていっ…」

「なんで早く言わないの!もう園バスが来るじゃない!!」

キィといいながらバタバタと女は裁縫箱を開けて針と俺を引っ張り出した。

針と糸と黄色い帽子とゴムとイライラ。
イライライライライライライライラ…ライララ ライララ ライララ ライララライライライらいらい!誰のせいでもなくて背中がとても…ってお前のせいだよっ!!!

がさつな女がさらに焦るから俺はいつも以上に早くブツリとキレた。
一人息子を悲しませたくはないのに呆気なくキレた俺はなんて短気なんだ…。


女は深いため息をつくと俺を畳にぶん投げて

「今日は仕方がないからこのまま行きなさい。」
と冷たく言い放った。



そして夜。


その夜もまた会話は無く、女は食器をガチャガチャ言わせ、男はテレビをむっつりと見るでもなく眺めていた。
一人息子は何か必死に考えて思いついたらしく俺を畳から拾いあげ、ハサミとテープを持って来た。
そうだ、帽子。
まさか一人息子は自分で帽子にゴムをつけるのか。テープで。

ビビッと言う音と共にテープが小さい手からちぎられ指紋でべたべたのセロファンテープに俺は貼付けられた。
生まれて初めてのセロファンテープの感触に戸惑ったが、優しい柔らかい幼い指はとても必死で懸命で体温は熱かった。
しばらくごそごそとした後、一人息子は完成した『それ』をガチャガチャ女とむっつり男に渡した。
それは帽子じゃなかった。
完成したそれは『紙コップの糸電話』


一人息子は涙をいっぱい溜めて声を絞り出した。


『パパ、ママ!はなれててもいいし、ひそひそはなしでもいいから、なかよく…してちょうだいよう!』


うわんと泣く一人息子。

ガチャガチャ女とむっつり男は一瞬で…


一瞬で、親の顔に戻った。

男と女と幼子との間に懸けられた縫い糸の俺は、そのとき生まれて初めて切れるものかと踏ん張った。

生まれて初めて…
誰かの為に強くなりたいと…願った。

コメント(648)

もともと他人、絡みあうことも
難しい…

あやとりぐらいなら出来るのかもしれない。
すげ〜ガチャガチャになるかもだが(笑)
一票です(´・ω・`)

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