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日記ロワイアルコミュの動かない時計

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先日、僕らのアイドルといっても差し支えのない田中教授(60)から「君の髭、卑猥だねぇ」とお誉めいただきました、卑猥な髭でおなじみのデイです、はじめまして。
てか卑猥な髭ってどんだけ!って思いましたが、友人曰わく、
「確かに局部に似てる」だそうです。残念極まりねぇ!
これでは髭剃って爽やかキャラになろうとしても「パイ○ン」って言われるのが関の山なんで、このさい思い切ってビンラディン氏を目指そうと思います。打倒アメリカ!

どうも日記を書こうとすると下ネタに走ってしまいますね。このままでは女性の方々に低レベルな奴だって思われてしまうので下ネタ抜きのの話にしましょう。



僕はアルバイトで時計の販売員をしているのでけっこう老若男女、色々な人とお話をします。
その中で僕が出会ったある一人の少女の話をします…。





「いらっしゃいませ、何かプレゼントをお探しですか?」
ある日曜日、一人の女の子が時計を見ていた。その子はシックな黒のワンピースを着ていてとても大人っぽい格好をしているけど、顔はまだ高校生くらいのあどけなさが残っていた。
僕は、高校の間ずっと付き合ってた大好きな彼氏と大学が別になってしまったから、せめて毎日思い出してもらえるように時計を贈るんだっていうストーリーを妄想して、勝手にその子の好感度を3割上げてた。むしろ超気にいった。もはやラブ。
で僕は声をかけたわけ。

「あっ、えっと…だ、大丈夫です」
その子の声は想像通りに透き通っててか細かった。


「なにか気になるのがございましたら、御試着もできますのでおこえかけ下さい。」

まぁ最初は大丈夫って言う人がけっこう多いからそのままほっといた。
でもその子の迷いかたや、熱心に一つ一つ時計を見つめる視線がなぜか痛々しいくらい必死だったから僕は直ぐにもう一度声をかけた。最初より砕けた話し方で。超笑顔で。

「彼氏さんへのプレゼントとかですか?どんな感じのが好きですか?」

彼女は僕の顔を見て、少しだけ何かを考えて口を開いた。

「動かない時計ってありますか?」

動かない時計?まがりなりにも時計屋でそんな時計があるわけなくね?って口には出さないけど顔には出てたようで、その子はか細い声ですぐに、
「ごめんなさい」
って言ってきた。

「あっすみません!どうして動かない時計を探してるんすか?」

彼女は少し俯いて、静かな声で話し始めた。





お父さんが死んだ。過労死だった。
そのことを聞いたのは深夜の2時過ぎにかかってきた電話をお母さんが取ったすぐあとのことだった。
電話のリリリリンって音が鳴り響いた時から不吉な予感がしていた。そしてお母さんが受話器を置いたあとに、その予感が正しかったことを知った。

お父さんはMRといって、医者に薬の営業をする仕事をしていた。
詳しいことはわからないけど、この仕事は接待の量が多く、とても疲れる仕事ということだけ知っていた。
お父さんは毎晩のように「麻雀のメンツが足りないから来い!」
「飲みに行くぞ!」
といった電話を受けて、毎晩のようにどこかに出かけていた。
お父さんは冗談が好きでいつも馬鹿馬鹿しいことを真顔で話していた。「お父さんは実は明智光秀の子孫なんだ」とか、「UFOを目撃して、アメリカの諜報部院に連れ去られそうになったことがある」とか、そんなことばっかり。
でも起承転結がしっかりあってメリハリのあるその話しは面白く、小さい頃はよく話をせがんでいた。
そんなお父さんだったからこそ、誘いは人より多かったに違いない。

そして、ついに倒れた。飲み屋のトイレで倒れた父はすぐ病院に運ばれたが、そのまま帰らぬ人となった。心不全だった。
お母さんも私も、放心したようにタクシーで病院に向かった。泣かなかったのは、多分まだ信じられなかったせいだと思う。

お父さんの亡骸を見た時に、何かの糸が切れたようにお母さんが崩れ落ちた。お母さんはお父さんの亡骸に覆い被さり、ただ、ただ、泣き続けた。ただ、ただ、お父さんの手を握りしめていた。
だらんとしたお父さんの手には時計が光っていた。
お父さんは時計が好きだった。自動巻きの時計を愛用していて、毎日朝にリューズを巻くことが日課だった。
でも私は、お父さんの時計が嫌いだった。時計を慌ただしく見ながらどこかに飛び出していく姿が、私は嫌いだった。
お父さんの時計を隠したこともあった。

そしてお父さんは時間に殺された。



医者が入ってきた。
その医者の顔に見覚えがあった。何回かお父さんが酔いつぶれたその医者をうちまで運んできたことがあったからだ。
私は、お前が父を殺したんだ!っていう意味を込めてそいつを睨みつけた。
その医者もそれを読みとったのか、視線をそらしながら、口を開いた。

「ご愁傷様です。本当に残念だと思っています。花園さんは本当に楽しくてユーモラスな方でした。
花園さんの娘さんですね?花園さんのポケットの中にコレが入っていました。倒れた時に少し潰れてしまったようですが…こんなときにどうかと思いましたが、お渡しします。」

その医者はプレゼント用に包まれたつぶれた箱を渡してきた。

中を開けてみた。そこにあったのは一枚の手紙と、時計。

ミミズが這ったような、下手くそだけど今となっては愛しい文字。そこにはこう書かれていた。

「楓、高校卒業おめでとう。楓は気に入らないかもしれないけど、父さんが好きな時計をあえて選んでみました。これを期に楓も時計を好きになってください」

涙が溢れた。お父さんっ!お父さんっ!渡せなかった最後の時計を握りしめながらそう叫んだ。






「だから私は、時計が好きだったお父さんに時計をあげたいんです、でも天国で急かされなくていいように、動かない時計を。」
語り終わった女の子は、ホッと一息をついて、顔をあげた。

僕は少しだけ考えた。

「それでしたらこちらの時計はいかがですか?こちらフォッシルというブランドの時計でして、アナログでもデジタルでもございません。日時計です。こちらの時計なら天国のお父様にものんびりしていただけると思いますよ。」








そして僕は思った。
この子意外と胸あるな、と。

コメント(76)

泣いたのにー(´・ω・`)笑

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