日記ロワイアルコミュの甘い火

このところ四、五日、急に話すようになった同い年の人がいる
散々遊び倒してきたらしく「お互いさあ」みたいな感じで
同意を求められるのだけど
そんなに遊んでないからよく解んないまま
「うん」
とか返事しちゃってたりすんだけど
そんな話の中で

「初恋で最後の相手になりたいね」
という
ムリパネエ設定のシュミレーションをここんとこ熱入れて話してた
まあ彼の理想はこの歳で (二、三年したら四十だよｵｲ)
学ランとセイラー服でのプラトニックなデート
らしいのだけれど
僕としては
プラトニックはいつでも歓迎だけど嘘だけど
学ランとかはわかんないやって。

んで可愛かったり切なかったり、え！現実？なエピソードを彼の経験の中で聞かされてるうちに
僕も色々思い出してしまったということです。

今の自分がかつて、本当にあんなふうに時間を過ごしたのか
信じられないほど遠くなっちゃった。
それでもいいんだもん、誰も信じてくれなくても大切なんだもん。
と思えるほどには歳をとったっつー話。

初めてお付き合いした女の子は
とても厳しいお家に育っていて
門限とか六時で
それはどんな場合でも揺るがなかった。

僕らは高校三年だった。
夏休みの始まる日、図書館の近くの喫茶店で待ち合わせしてた。
その店は窓際に日差しを遮るものが無くて
僕は自分が光って見えることを期待して、異様に明るい席に座った。

勉強してくるといって家を出たのに
それどころじゃない。
でも
一応良心がとがめるから図書館に自転車を止めておいた。

口半開きで「じーん・・・｣という気持ちでお冷を凝視してたら
一分もしないで彼女が大汗かいて現れた。

強過ぎる冷房と、窓越しにうるさい蝉の声が
向かい合って何も喋れないでいる僕らに、
ことさら静けさをのしかけて
何をいったらいいのか
たくさんシュミレートしたなかで
恥ずかしながら一番無難な天気の話を切り出そうと
僕は顔を上げた

見ると
アイスティーについてきたガムシロップを
指先でコマみたくクルクル回しながら
彼女はテーブルに涙をぽとっと落とした。

彼女が店に着いてからこの間約五分。

僕はちょっとビックリして
いや凄く動揺して
「あの」
と言った。

「なんで泣くの？」

「だって」

「なんか傷つけてしまった」

「そじゃない」

「僕はとても君が好きだから、泣かれるのはつらいです。
　理由を話してくんないかな、スカしてるみたいだけんど」

彼女は笑い顔と泣き顔が二重写しみたいで、見てらんないほど可愛かった。

「いま、今二人で逢ってるってことはあと何時間か、夕方には絶対家に帰らなくちゃいけないでしょ。
それまでの時間しか一緒にいられないならなんか、逢わない方がよかった」

「そんなこと言わない」

「だって、どんなにアンタと楽しい時間を過ごしても、たった短い時間だけで、家に帰って思い出しても、全部ウソか夢みたいにしか思えない。そんなんだったら、はじめから逢わなきゃよかったと思うし、もしあんたと会えないような人生が自分のものだったりしたらと思うと、涙くらい出る」

早熟な感じが、僕にとって魅力だったのか
はっきりと強い性格に引っ張られていたのか
その時僕には返す言葉が無く

また、一言一句忘れることもないだろうと
今日まで忘れてた。

並んで歩きながら喋ってても
互いの肩が触れるだけで、
会話が止まって相手の顔が見れなくなる。
映画も遊園地もいらない、極めてエコなお付き合い。
手をつないだはいいけれど、離せなくなるのが怖くて
じゃんけん始めちゃったりして。

別れた理由はもちろん思い出せない。
その後一度も会ってはいない。

ただ、別れる時に最後彼女が

「ありがとうございました好きでした。たまに思い出します」

と言ってくれたのが
なんか正直で未だに好ましいのです。

夜中に甘い火が舌の上にのって
どうでもいいことを制服プレイのマニアに話すことがある。