日記ロワイアルコミュの赤い液体　～僕の弱さ～

＊先日連続投稿禁止を忘れて数時間だけ投稿してしまい、
　気が付いてすぐに削除させて頂きました。
　その時に投票頂いていた方本当にゴメンなさい。
　それからありがとうございました。
　あらためて…。

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僕は車をバックさせる。

自転車が目の端に留まったが
気のせいのような気がして
車をバックさせる。

ガシャっと
何かが車に当たる。

時が止まって
急に頭の中が静かになり
心臓の音が聞こえる。

体が動かない。

暫く経って
何かから解放された僕は
車を飛び出した。

そこには

人が倒れている。

目がかすむ。

急いで走り寄るが
その人は白目を剥いている。

じわりじわりと
頭から僕の方へ向かって
赤い液体が流れてくる。

相変わらず
心臓の音だけははっきりと
聞こえる。

「大丈夫ですか！！」

と声を出すも自分の声でないような
遠くから声が聞こえる。

赤い液体は
じわりじわりと僕の足下まで
流れてくる。

流れてくるといっても
ある程度の粘度をもって
何かの生き物みたいに
僕の足にからみついてくるようだ。

携帯を取りだし
急いで１１９番を押す。

こんな時でも意外に
冷静でいられる自分に
少し驚いている。

そうはいっても現在地の住所は
うまく言えない。

初老の男の人は
相変わらず白目を剥いている。

「大丈夫ですか！！」

何度も何度も声を掛ける。

目を覚まさない。

脈を取る。

脈はある。

冷静に脈を取る自分がいるが
それはもはや僕ではなく、
僕はどこか遠いところから冷静に
この光景を眺めている感覚だ。

モノクロの景色の中で
赤い液体だけがやけにはっきりと見えた。

突然！
男性が「ビクッ、ビクッ」と痙攣をする。

そして白目を剥いていたはずの目は
静かに閉じられてしまった。

「殺してしまった」

その後は
パニックになってよく覚えていない。

脈が取れなくなり

気が付けば
僕は味わったことのない恐怖の中で
「ごめんなさい」と何度も何度も
謝っていた。

遠くで見ていた自分は
再び僕の中に入ってきて
僕の体は僕の物になったが
僕の言うとおりには
動かなかった。

何度も何度も謝った。

何の為に謝っているのか
分からないのだが、
自分で出来ることは
今はそれしかないということだけは
はっきりと分かっている。

遠くから救急車のサイレンが聞こえる。

その時、

男性が目を覚ました。

男性は、
「涙が出てるから拭いて欲しい」と
何度も僕に言った。

僕は、
「血が目に入ってるんです」
と言って男性の血を丁寧にワイシャツで拭いた。

やがて救急車が到着して
男性を乗せて走り去ってしまった。

心臓は相変わらず
僕の体の中心をドクドクと
大きな音を立てて鳴っていた。

赤い液体は
その所有者を無くし
アスファルトに
深く深く沁みこんでいた。

という夢を見た。

と言いたいところだが
これは本当の話だ。

もう2年ほど前の辛い出来事。

自分が殺人者になるという恐怖は
僕が味わったどんな怖い体験とも
レベルの違う恐怖だ。

人を殺してまで僕は生きていけない。

恐らく、
この恐怖を味わった事のない人が
想像しようとして想像できる
数百倍の恐怖がそこにある。

逃げたい！

正直にそう思った。

これでも僕は自信を持って
真っ直ぐ生きてきたと思う。

ひき逃げなんて卑怯な真似を
するはずが無いと思っていた。

絶対に逃げ出さなかったか
100％逃げ出さなかったかと聞かれたら
逃げ出す可能性がその時の僕にはあった。
しかも高い確率で。

怖いものから逃げ出したい本能の部分だ。

結果から見ると
それでも最後は理性が勝ったのだろう。

そう思いたい。

あの時人が見ていなかったら？
夜だったら？

僕はどうしただろう？

はっきりと自信を持って答えられない。

先日の梅田のひき逃げ事件。
夜のニュースで古館が
例の世の良心の代弁者みたいな顔で
「考えられません」と言った。

彼が人を轢いたら
彼はどうするだろう？

絶対に逃げないと彼は言うだろう。

轢いた人が頭から血を流して
白目を剥いているのを見たとき
全てを失う恐怖に彼は勝てるだろうか？

体験した事の無いことは言わない方が良い。

僕はあの自分の弱さを
一生忘れない。