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日記ロワイアルコミュのでたらめな歌

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お世話になっていた運送会社の方が亡くなられたとの事で、お通夜に参列しました。

まだ働き盛りの40代だったこともあり、急逝を惜しむ声と涙で、会場は埋め尽くされていました。




自分と故人とは15年ほどの間柄で、様々な思い出があります。

生前、彼はいつも色々と面白い話を聞かせてくれました。


仕事中にしゃっくりが止まらなくなり、なぜかラジオ番組のテレフォン人生相談に電話をかけ、止め方を電話口の弁護士に聞いたところ“水でも飲んで止めろ!”と、予想以上にこっぴどく怒られ、びっくりしてしゃっくりが止まった、という話。

ボクシングの渡嘉敷勝男さんにスパーリングで勝った事があるからという理由で、俺が死んだら戒名に“渡嘉敷”の3文字のどれかを入れてくれ、と家族に頼んだ話。

単身、トラックで海を渡り、魚を捕りつつ北朝鮮に行って英雄になった話・・・などの、突拍子も無い話がほとんど。


『いつもいつも、でたらめばっかりじゃないですか!?』

と俺が言うと、

『でたらめ?でーたーらーめー?』

と、爆チュー問題の“でたらめな歌”を振り付きで踊って、ごまかしていました。



今思えば、二回り近くも歳が下の自分相手に、頑張って話を合わせてくれていたんだなと、感謝の気持ちでいっぱいですが、当時はテンションが高すぎてちょっと苦手な人という印象でした。

今度は俺がでたらめな話を用意していたのに、今となっては、そんな彼とも話せません。





10月といえど、風は冷たく、夜ともなれば気温がぐっと落ち込み、葬場の外で焼香の順番を待ってる間は、早くもコートが欲しいくらいの寒さ。


そんな、寒空の下での焼香の順番待ちのさなか、列の前方から、女性の悲鳴のような声が聞こえた。


『あ゛ーーーーーーーーーーー!』

何事かと、皆一斉に声のする方を見る。


『にーしーおかーすみこだよーーー!こんな時間に電話をかけてくる淋しいブタ野郎はどこのどいつだーい?』


声は、列の先頭の30代の男性の携帯電話からだった。

あわてて電源を止めようとするも、こんな時に限ってなかなか電話が見つからない様子。


『あ゛ーーーーーーーーーーー!にーしーおかーすみこだよーーー!こんな時間に電話をかけてくる淋しいブタ野郎はどこのd・・』


静まり返った会場内で、無情にも、二週目の着ボイスが響き渡る。


何が起こったのか、状況を把握できない参列者は顔を見合わせ、騒然となった。


やっとのこと携帯電話が胸ポケットから見つかった男性は、電源を切り、気恥ずかしそうに、スイマセン、スイマセン・・・と、周囲の方々に深く頭を下げた。

バツが悪そうな彼が、親族の方を見たその瞬間、喪主である、故人の奥さんが立ち上がり、キッと男性に目を向け、こう声をかけた。


『主人は・・・お祭りやら、宴会やら・・・賑やかなことが何より大好きな人でしたから・・・気になさらないでください。こういう湿っぽい場は苦手だったでしょう?きっと、あの人も笑ってくれてますよ・・・。』


奥さんは、嫌味の無い笑顔をこちら側に見せ、席に着いた。

周囲もまた元のように静まり返り、何事も無かったかのように式は進んだ。




大事な人を亡くした失意の中、マナー違反の男性に気遣い、周囲の空気を自然な形でもとに戻した奥さん。

自分がもし親族の立場だったら、嫌な顔をしてその人を睨み付けていたかもしれない。

無理をしているとして、この状況で、こんなにも人は気丈になれるのでしょうか。

その凛とした姿勢に、でたらめに振るまっていたあの人を、陰で支えていたのはこの人なんだと、改めて感じました。


そして、その横にいるのは、奥さんと共に故人を支えたであろう、一人息子。

歳の頃は俺と同じくらいで、大手の電気メーカーで働く、超エリートコースを歩く男。

今回の件を機に、今年限りで会社を辞め、父の遺志を継ぎ、同じ運送会社に入るそうだ。

生半可な偽善や、同情を買いたいなどの気持ちでできる芸当では無い。

その思い切った決断は、他人の俺にすら、亡き父の偉大さがひしひしと伝わってくるよう。


『あれだけふざけて見せてたのに、家ではちゃんと父親やってたんじゃん。』


どこからともなく、そんな声も聞こえてきた。

みんな同じ気持ちだったのだろう。



自分の焼香の番が回ってきて、間近で遺影を見ると、故人は普段見せないようなめちゃくちゃ良い笑顔で写っていて、思わず笑い返してしまうほどだった。


『こんな笑顔はずるいわぁ。でもね、この写真、写真屋さんに加工してもらってんの。しわが8本くらい消えてんのよ。わかる?』

奥さんは写真を見ながら笑ってた。





しっかりした奥さんに、素敵な家族。

あきらかにいじられキャラで、人気者だったはずの職場。

にしおかすみこの声が響くヘンな葬儀。

結局“渡嘉敷”の三文字は入らずじまいの戒名。

そして、喪主のあいさつの時にかかっていた、生前に故人がカラオケでよく唄っていたというエレファントカシマシの“今宵の月のように”が、素直じゃなくて、不器用で、照れ屋で、でたらめな様に見えるけどホントは周りに気を使っている・・・そんな男にぴったり過ぎる曲で、そんなはずじゃなかったのに、思わず涙ぐんでしまいました。




そんな彼をとりまく全てが、少し羨ましく思えて、数人でその歌を口ずさみながら家路につきました。




くだらねえとつぶやいて

醒めたつらしてあるく

いつの日か輝くだろう

あふれる熱い涙

いつまでも続くのか 

吐きすてて寝転んだ

俺もまた輝くだろう

今宵の月のように・・・・いーーいーーーぃいいいおおおぉおおーーーぉぃいいいぃえぇえええぇ!





でたらめ?






でーたーらーめー?

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