FOOTBALL「欧州からの朗報」コミュの松井が今季４得点目　来季に向けて意味深なコメントも

◆松井が今季４得点目　来季に向けて意味深なコメントも


リーグアン最終節のニース対ル・マン戦は、ル・マンが２度リードを奪われながら、そのたびに追いつくという激しい展開となった。そんな中、３−３とするゴールでチームを救ったのが、ＦＷとして先発フル出場した松井大輔だった。松井は今季４点目のゴールで、厳しかったシーズンを締めくくった。

　父親を亡くし喪中のＧＫプレ、練習中に故障したセンターバックのバシャと、守備の主力を欠くル・マンは、ディフェンス面に弱さが見られたが、チーム最多得点者グラフィテをセンターフォワードに、松井をセカンドトップにした４−４−２は、攻撃面で巻き返す強さを持っていた。

　３０分に先制点を挙げたのは、ニース。バルモンに対するファウルでニースにＰＫが与えられ、ベリオンが決めて１−０。そのすぐあとに、ル・マンのアンツ監督は、ベテランＤＦのトマを下げてＦＷのバングラを投入した。挽回（ばんかい）するための攻撃強化だが、一方では守備の要を欠いたディフェンスをより危うくする交代策だった。そしてこの采配（さいはい）が、予想通り吉と凶の双方の結果を生んだ。３５分には入ったばかりのバングラが右サイドをドリブルで上がってクロスを通し、それをロマリッチがたたいて１−１としたが、４３分にはニースのバイルアがディフェンスの裏に抜けてゴールを決め、ニースがふたたびリードを奪った。

　松井は試合開始当初はコンビネーションのタイミングを欠いているように見えたが、ゴールが出たあたりから目だって動きが良くなり、敵を脅かす回数を増やし始める。試合後に本人が明かしたところによれば、「誰か交代するみたいだったんで、『やばい、代えられる』と思って。早く動いてチャンスを作らないと、と必死になった」。

４０分、松井はＦＫからゴール前に敵をひやりとさせるボールを送り込むが、コースがやや素直過ぎてＧＫレティジにキャッチされる。続いてニースの２ゴール目の直後、ロマリッチのＣＫから松井は枠内にシュートを放つが、ゴール前でバイルアにブロックされた。５２分、松井は２０メートル付近からシュートを放ったが、レティジは反応よく体を低くし、ライン際でボールを阻んだ。

　アンツ監督は、後半開始間もない４６分に、松井を左ウイングに移してＤＦのカマラに代えてアタッカーのサマサを投入した。大胆な采配だったが、ここでも裏面を見せる。ル・マンのディフェンスはドリブルで上がるベリオンを阻止できず、シュートを許して１−３とリードを広げられてしまった。
しかし、６０分にはグラフィテのアシストでバングラがゴールを決め、２−３に。６３分には、松井がゴールバーぎりぎりにヘディングシュートを放ったが、ＧＫに止められた。だが、ファンがため息をついたのもつかの間、６５分についに松井のゴールが出た。
　グラフィテのシュートをＧＫがはじき、これをゴール前にいた松井が反応よく右足で押し込み、ル・マンが３−３の同点に追いついた。
　その後、アンツ監督は決勝点を奪おうとアタッカーのデメロを入れ、目立つ動きのなかったサマサを外したが、不用意なパスなどから簡単にボールを奪われてボール保持率が落ち、逆に押し込まれる場面も増え始めた。
　双方が決め切れず、試合はそのまま３−３で幕切れとなる。しかし、松井にとってもル・マンにとっても、これはポジティブな後味を残す試合だったようだ。

　試合後の松井は、
「苦しい１年だったけど、終わり良ければすべてよし。勝てなかったけれど、最後をうまく締めくくれたんで、自分としては、ある程度納得できました」とコメント。「今季は、今までで一番、プレーについて考え、自分のプレーについて研究したシーズンだった。大変だったけど勉強になったし、自分のキャリアにとって、いい一年だったと思います」と今季を振り返った。

また松井は、

「ここに皆と立ってる時間は限られている、一日一日を大切にしたい、という気持ちで試合に入った。チームを去るやつもいるから、このチームでプレーできる時間ももう少ないかも。そう思って一瞬一瞬をかみ締めながら、ありがとう、とういう気持ちで臨みました」と、意味深な言葉も口にしている。何人かの主力やアンツ監督の引き抜きのうわさも絶えない中、ル・マンのような小さなクラブが同じメンバーでずっとやっていくのは簡単なことではない。松井自身、「もちろんここに残る可能性も大いにある」と言いながらも、「このチームでずっとやって行きたい」と言っていた昨年とはやや違った心境をうっすらと垣間見せた。