備後の歴史を歩くコミュの神社と廃仏毀釈

　神仏習合していた時代、格式の高い神社は境内にお寺を建てた。これを神宮寺という。また神社を管理下に置いた有力なお寺もあった。別当寺とも称する。明治時代になると明治政府は神仏を分離し国家神道を唱えた。廃仏毀釈により神社が持つ仏的要素は、寺院に建てられた神的要素と共に悉く破壊されていった。

　神社境内に建てられたお寺の本堂を本地堂と称する。これらは一番先に破壊された。明治政府開府の立役者となった薩摩(鹿児島県)では廃仏毀釈は徹底的に行われ、国の文化財に指定された寺院伽藍は一棟もなく、また仏教美術品で文化財指定された物も一件もない。廃仏毀釈は地域性があった。

　広島県内で神社境内に遺った本地堂は、広島市「東照宮」と福山市新市町「素盞鳴神社（早苗山天龍院天王寺）」の二棟だけである。東照宮のは奇跡的に原爆の被害を免れて御輿蔵に転用され、素盞鳴神社のは天満宮本殿として内部を一部リフォームし破壊を免れた。

　鐘楼は寺院のシンボルである。神宮寺を持つ神社にも鐘楼は建てられていたはずだが、これも容赦なく破壊された。それでも遺った鐘楼がある。備後では府中市「南宮神社」に遺った。当初の梵鐘は福島正則に没収され、2代目は幕末に供出。それ以後吊されることはなかったが、平成16年に3代目が鋳造されて吊された。

　「岡山県近世社寺建築緊急調査報告」には、新見市豊永赤馬に鎮座する式内社「日咩坂鐘乳穴神社（ひめさかかなちあなじんじゃ）」と岡山市「足守八幡神社」堂宇の中に鐘楼が記載されていた。山口県では下関市「住吉神社」に天文8年(1539)、毛利元就が拝殿と共に修造したという鐘楼が遺っている。岡山県は池田光政による藩政時代に独自の神社保護による神仏分離が行われ、それは寺院経営に甚大な影響が及んだ。特に日蓮宗寺院は弾圧され壊滅的被害が出たはずであるが、番神堂などが多く現存している事実は見逃すことはできない。

　楼門は特に格式の高い社寺に神門・山門として建立されているが、その二階部分に梵鐘を吊したのを鐘楼門と称する。本地堂が遺った新市町「素盞鳴神社」には明治維新まで立派な鐘楼門が存在していた。しかし、神社に鐘楼門の存在は認められず、福山市神辺町道上「護国寺」に移築されたのが現存している。立派な鐘楼門である。

　鞆「沼名前神社」には、かつて御輿蔵の上に鐘楼があったし、備後一宮「吉備津神社」古図にも鐘楼や本地堂、また仏塔の記載がある。廃仏毀釈をかいくぐり遺された神社における仏的堂宇は、遺された意味も含めて重要である。それらを見つけるために、これからも社寺を歩いてみようと思う。　

コメント(3)

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[1] mixiユーザー 01月13日 10:34

写真

右：府中市栗柄町
「南宮神社」鐘楼

地図
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中：岡山県新見市豊永赤馬
「日咩坂鐘乳穴神社」鐘楼

地図
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右：山口県下関市
「住吉神社」鐘楼

地図
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[2] mixiユーザー 01月13日 10:41

写真

本地堂

左：福山市新市町
「素盞鳴神社」

地図
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右：広島市東区二葉の里
「東照宮」

地図
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