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「フリーライターにはまだ遠い」コミュの第11章 フリーライターとしての再出発

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 年が明けた初出社の日、私は会社に着くなり編集部のリーダーに呼び出された。時給制だった私の残業時間が多過ぎるので、日給にしてくれと社長に頼まれたという話だった。日給の金額は、それまでの時給に換算すると7時間分。入社以来、毎日10〜12時間は会社にいた私にとっては確実な減給だった。

 私はこの2ヶ月、頑張ってきたと思う。編集部の人達には頼りにされる存在になっていたし、残業だって無駄な時間は全くなかった。それなのに、そんな私の頑張りを社長は認めてくれていなかったんだ。会社にとって、私はたったそれだけの存在だったんだ。
 悲しさと悔しさでカーッとなり、頭の毛細血管がプツリと切れたような気がした。

「分かりました。でも私、あと1ヶ月で辞めさせていただきます」
 気付かぬうちに、口が勝手にそう言っていた。リーダーはすべてを納得したような表情で、
「分かった」
 とだけ言って、社長にそのことを報告しに行った。

 ちょうど良いきっかけだったのかもしれない。多分、これ以上この会社で働いていても何も得るものはない。たとえ何か得るものがあったとしても、それは私が望んでいるものではないのだろう。
 たった2ヶ月しか働いていないのに、辞めると言ってしまった自分に言い訳するようにそんなことを考えていた。得る物なんて、本当はまだまだいっぱいあることは知っていた。でもそれに気がつかないフリをして、ただ強がっていただけだった。
 それでも、私の気持ちはとても晴れ晴れしていた。

 それから辞めるまでの1ヶ月、記事を書く仕事はほとんどやらせてもらえなかった。コピー取りや倉庫の整理など雑用ばかりをこなす毎日で、まるで窓際族のような生活だった。辞めると言う前の2ヶ月よりもさらに針のむしろに座っているような毎日だったが、その1ヶ月はあっという間に過ぎて、私はまたしても無印の鮎川芽衣になってしまったのだ。


 さぁ、これからどうしよう。
 この会社に長く居られなかった原因を考えてみたが、やはりそれは書いていた文章の内容に問題があったのだろうと思う。書いていておもしろい文章を書きたい。やはり、それが一番だった。私は就職情報誌をめくりながら、興味のある雑誌を作っている編集プロダクションにいくつか履歴書を出した。

 この時に履歴書を出した会社で、面接に呼ばれなかった所はひとつもなかった。改めて経験ってすごいと感心しながら面接に通っていたが、実際に話を聞いてみるとあまりおもしろそうではなかったり、こっちがおもしろそうだと思っても最終面接で落とされたりを繰り返し、なかなか思ったように私の就職先は決まらなかった。

そうこうしながら広告代理店のアルバイトを辞めて半月ほど経った頃、突然、前の同僚であった営業の社員さんから電話があった。私が辞めてから、後任の編集部員も見つからないのに別冊のムックを作ることになってしまって人手が足りず、私にフリーとしてライターをしてほしいという話だった。何を今更と思ったが、新しい仕事が見つかるまでの小遣い稼ぎくらいの気持ちで引き受けることにした。

 会社に入っていた時に作っていた雑誌は、資料を見てリライトした文章にスナップ写真を添付する簡単な作りだったのだが、今回作るムックは社長もかなり気合いが入っているようで、きちんとカメラマンを連れて取材に行くということだった。私が任されたのは8件。簡単な取材をしてアルバイトをしていた時と同じような文章を書けば良いだけだったので、さほど問題もなく2週間ほどで全ての取材と原稿執筆を終らせた。
 そう、本当に簡単だったのだ。

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