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Jazz Bar K's Caseコミュのアラトーリ氏への異論

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アラトーリ氏のタイム・プログレッション理論について

上記の理論は、ジャズの即興演奏におけるスウィング感の生成過程でおきる時間的なずれに注目したものだと思われる。これは、私が日頃考えている領域に近いところなので、“反論”ではなく、“異論”を以下に述べることにする。

 彼は自らのサイト上で、上記の理論について、グラフを用いて説明しておられるのだが、一読しただけで理解するのは難しい。要するに、基本のリズムから徐々に時間的にずれてゆくことにより、ジャズ独特のスウィング感が醸成される、と言っておられると勝手に推察しているのだが。(間違っていたらどうかご教示願いたい)これはつまるところ、ひとつの事態をその始まりから考えるのではなく、結果されたものをベースにして、それについての一般法則を見つけ出そうとしているのではないか。これはつまりインダクション、――帰納法である。あるいは、リバース・エンジニアリングだ。

 翻って、これまでの私の理解では、ものごとの始まりから考える、つまり通常の思考法でいけば、以下の知見が、すでに私ではなくいろいろな人々によって述べられている。そのニ三を紹介すると、

1) ごく最近(2006年)、丸山繁雄というジャズのボーカリストで、ジャズ研究家が「ジャズ・マンとその時代」という包括的なジャズの解説書を書いたのだが、その最初の章で、彼は、スウィング感は、アフリカン・アメリカンによる英語の同化現象によるものであるという論を展開されている。その中で注目されるのは、ジャズのシンコペーションは、英語を基本にしている、と言う点である。というのも、英語だけが、世界でほとんど唯一子音が二つ以上重なって言葉を形成する言語であるというものだ。またもちろん、文節における英語のイントネーションが、ジャズのフレーズをかたちづくる上で重要な要素になっていることについても彼は解説している。
2) ブルースの解説書で有名なイギリスのポール・オリバーも、アフリカの黒人が奴隷としてアメリカ大陸において、白人と接触することにより、自らのリズム感はそのままに、英語を体得してゆく過程を説明している。その過程そのものがフィールド・ハラー、そしてブルースのルーツである。そしてそれらが、ジャズのフレーズのルーツであることは論を待たない。
3) 1976年、黒人でハーバード大医学部の学生であったC.O.シンプキンズが、史上初めてジョン・コルトレーンの伝記を書いた。彼はその中で、アフリカの伝統を説明するのに、カウント・ベーシー楽団のメンバーであったレスター・ヤングが以下のようなテクニックを駆使したと述べている。それらはすなわち、
      オーバートーン(倍音)
      スクリーム(叫び声)
      ホンクス(クラクションのような音)
      リーピング(跳躍する音)
  
   彼(シンプキンズ)は、また別の箇所で、ジャズのフレーズは、西アフリカの部族の言語にあるニュアンスを、楽器で表現しているようだとも述べている。

従って、これらの事柄を理解、体得しないとジャズの演奏は出来ないと言ってしまうのは言いすぎだろうか? 私は自らもサクソフォンを演奏するので、くちはばったいのであるが、日本人のプレイヤーには、これが解っていない人が多いような気がしてならない。これは日本人だけではなく、ヨーロッパ人のジャズも同様である。例えば、最近澤野工房から出ているフランスのピアニスト、ルネ・ユルトルジェの演奏を聴くと、もちろんそのテクニック、ジャズ独特のフレーズ、情感等素晴らしいのであるが、肝心のスウィング感が平板なのだ。サイドのベーシスト、ドラマーとのインタープレイにしても、どこかクラシック音楽の正確さがあって、真にリラックスしないのである。もちろんこういうテイストが好きなリスナーがいることも私は十分承知しているが。

 話がそれてしまったが、計測不能であるような領域に挑戦しているアラトーリ氏には興味深いものがある。妙なたとえだが、それはまるで、これまで一見不可能であるかのような課題を与えられて、それを克服してしまう日本人の姿に重なってしまうのである。それは例えば、電車の無人改札機や、高速道路の自動課金装置等々。
 

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