画像左 Leonard Mccombe/Time Life Pictures/Getty Images
close イメージ . それに比べ、米国の医療界の状況はひどい。毎週、ジャンボジェット4機分の乗客に匹敵する数の患者が医療過誤で死亡している。しかし、こうした過誤は世間一般にほとんど知られることがなく、医療界がそうした教訓を生かすこともめったにない。回避可能な同じ過ちが何度も何度も繰り返される一方、患者にはどの病院の安全実績が他に比べて優れているか(あるいは劣っているか)を知る術がない。
私が米国医療の呆れた密室文化を目の当たりにしたのは学生時代、ハーバード大学医学部のある高名な関連病院での研修1日目だった。まだ折り目が付いたままの真新しい白衣を身に付けた私は、廊下を歩きながら歴代の医師たちの肖像画に目を見張らせていた。その日の巡回の際、研修医チームのメンバーたちが「ドクターHodad」という有名な外科医の名前を何度も口にしていた。私はそのような名前の外科医を聞いたことがなかったので最後に尋ねてみると、「Hodad」はあだ名であることがわかった。仲間の研修医がささやいた。「Hands of Death and Destruction(死と破滅の手)の略だよ」と。
(筆者のマーティ・マカリー氏は、ジョンズ・ホプキンス病院の外科医。世界保健機関で採用された「手術安全チェックリスト」のまとめ役の1人。著書に『Unaccountable: What Hospitals Won't Tell You and How Transparency Can Revolutionize Health Care』<Bloomsbury Press>がある)