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科学は愛ですコミュの医療過誤から患者を守るために―改革に向けた米外科医の提言

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医療過誤から患者を守るために―改革に向けた米外科医の提言
(How to Stop Hospitals From Killing Us:12月30日英語版配信分)


http://jp.wsj.com/public/page/0_0_WJPP_7000-519141.html?mg=inert-wsj
[WSJ日本版]

米国で航空機が墜落したら、たとえ小規模な事故であっても大ニュースになる。国による徹底調査が行われ、航空業界はしばしば惨劇から重要な教訓を得る。パイロットや航空会社はその反省を生かし、安全性の一層の強化に努める。

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Leonard Mccombe/Time Life Pictures/Getty Images

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 それに比べ、米国の医療界の状況はひどい。毎週、ジャンボジェット4機分の乗客に匹敵する数の患者が医療過誤で死亡している。しかし、こうした過誤は世間一般にほとんど知られることがなく、医療界がそうした教訓を生かすこともめったにない。回避可能な同じ過ちが何度も何度も繰り返される一方、患者にはどの病院の安全実績が他に比べて優れているか(あるいは劣っているか)を知る術がない。

 われわれは医師として、害を及ぼさないことを誓う。だが現場に入った途端、別の不文律を身に付ける。すなわち、同僚の過ちは見て見ぬ振りをせよというものだ。その影響は計り知れない。米国で外科医が間違った部位を手術する事例は1週間に40件起きている。すべての入院患者のおよそ4分の1は、何らかの医療過誤による被害を受けると推測される。もし医療過誤が一種の病気だとしたら、米国で6番目に多い死因ということになる(事故の次、アルツハイマー病の1つ上の順位)。さらに、医療過誤は米国の医療制度に年間、数百億ドルものコストをもたらしている。医療専門家らが自ら行った調査によると、すべての投薬、検査、治療のうち約20〜30%は不必要なものだという。これだけ多くの失敗を重ねる業界が他にあるだろうか。

 この現状を放置していいわけがない。新しい世代の医師や患者は医療制度の透明性改善に努めており、新たなテクノロジーがそうした取り組みの実現性を高めている。

 私が米国医療の呆れた密室文化を目の当たりにしたのは学生時代、ハーバード大学医学部のある高名な関連病院での研修1日目だった。まだ折り目が付いたままの真新しい白衣を身に付けた私は、廊下を歩きながら歴代の医師たちの肖像画に目を見張らせていた。その日の巡回の際、研修医チームのメンバーたちが「ドクターHodad」という有名な外科医の名前を何度も口にしていた。私はそのような名前の外科医を聞いたことがなかったので最後に尋ねてみると、「Hodad」はあだ名であることがわかった。仲間の研修医がささやいた。「Hands of Death and Destruction(死と破滅の手)の略だよ」と。

 間もなく私は、その手が行う施術の恐ろしさをこの目で見て、愕然とした。彼の手術スキルは軽率でぞんざいであり、多くの患者が合併症を患っていた。そもそも彼は患者に触れることを許されるべき人間ではなかったのだ。しかし、患者への接し方は抜群だった(実際、私も今日までそのやり方を見習っているほどだ)。魅力あふれる人物で、著名人たちからの執刀依頼も多かった。患者は彼を崇拝し、手術時間や入院期間が長引いたとしても、それは自分の運命のせいだと考えた。

 こうした話は、この病院に限られたことではなかった。研修中に他の病院を回ってみると、多くの病院に「ドクターHodad」が1人ずつ(場合によってはそれ以上)いることがわかった。評判がすべてのこの業界において、他の医師を密告する医師は逆に標的となりかねない。内部告発した医師が報復として、突然、緊急治療の担当を増やされたり、予算を減らされたり、中傷されたり、信用を傷つけられたりした例を私も見てきた。私自身も、もしドクターHodadのことを告発すればどうなるか理解していた。病院の院長室に呼び出されるなど、就職を希望する身としては最悪のシナリオである。新人の私は口をつぐむことにした。他の研修生と同様、週120時間の研修は将来外科医になるための通過点であって、医療界の文化を改革するためのものではないと自分に言い聞かせた。

 病院も全体的に説明責任から逃れようとする傾向がある。世間から一流と信用されている施設でさえ合併症の発生率が過度に高かったりする。自院の実績に関する統計を公表している病院がほとんどない状況で、患者はどうやって病院を選べばいいのか。私はこれまでに勤務した病院(ジョージタウン大学、ジョンズ・ホプキンス大学、D.C.総合病院、ハーバード大学など)で、患者たちに病院を選んだ理由を非公式に尋ねてきた。彼らの答えは、「家から近いから」「自分の父が死んだときこの病院で治療を受けたから」「ヘリコプターを持っているから良い病院だと思った」といったものだった。さらに、「駐車場」が決定要因だったと答えた患者の数を聞けば驚くに違いない。

 患者に情報が知らされないこうした現状を放置しておく理由はない。以下に挙げる5つの比較的シンプル―だが極めて重要―な改革で変化を起こすことができるだろう。

オンライン・ダッシュボード

 すべての病院がオンラインの情報「ダッシュボード」を備え、感染症、再入院、手術による合併症、決して起きてはならない過誤(手術用スポンジを患者の体内に残すなどのミス)の発生率等を公表するべきである。ダッシュボードには、その病院が実施している各種手術の年間症例数(低侵襲的な方法で実施した割合を含む)と患者の満足度スコアも掲載する。

 ニューヨーク在住者に対するある調査によると、約60%の人はレストランを訪れる前にその店の「格付け」を調べるという。レストランガイドの「ザガット」や口コミサイトの「イエルプ」をチェックしなければ食事に行けないというのに、なぜ自分の命が懸かっているときに同じことができないのだろうか。

 病院を改善するには、こうした情報を公開するのが最も手っ取り早い。ニューヨークの病院に心臓手術の死亡率の公開が義務付けられた1989年、病院ごとの死亡率には1%から18%までと大きな開きがあった。ようやく有益なデータを手にした消費者は、こう自問できるようになった。「同じ冠動脈大動脈バイパス移植術を受けるのに、100人に1人の割合でしか死なない病院でなく、6人に1人の確率で死ぬ病院にかかる理由がどこにあるのか?」

 これを受け、死亡率が高かったニューヨークの心臓病院は大急ぎで改善に乗り出し、死亡率は6年間で83%低下した。病院の経営陣はようやく、治療の安全性改善策をスタッフに指示するようになった。一部の病院では、外科医が心臓手術を専門とする麻酔科医の必要性を指摘した。別の病院では、ナース・プラクティショナー(上級資格を持つ看護師)が採用された。スタッフの報告により、特定の外科医の手術能力が不十分であることが発覚した病院もあった。その外科医の死亡率は非常に高く、病院全体の平均値を押し上げていた。経営陣は彼に心臓手術をやめるよう命じた。「さようなら、ドクターHodad」というわけだ。

安全文化の重要性

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Corbis
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 外科医が患者の右肺から液体を取り除くため、胸を切開しようとしている状況を思い浮かべてほしい。突然、看護師の1人が沈黙を破る。「待って。切るのは右胸、それとも左胸? ここには左と書いてあるけど、右胸を切ろうとしているみたい」。実際、手術するべきは左肺であったのだが、研修医が誤って右側を準備していたのだ。実はこのときの執刀医は私である。あの看護師が、恐ろしい過ちからわれわれ全員を救ってくれた。どの病院でも同じように看護師が自信を持って声を上げられるとは限らない。だが、こうした文化的要因が安全にとっては非常に重要なのである。

 病院が安全かどうかを知っている人がいるとすれば、それはそこで働く人たちだ。私はジョンズ・ホプキンスの同僚らとともにJ・ブライアン・セクストン氏の主導の下、米国の60の病院で医師、看護師、検査技師、その他従業員を対象に匿名調査を実施した。その結果、全体の3分の1の病院では、従業員の大半がチームワークが悪いと考えていることが明らかになった。このような病院では誰も治療を受けたくないし、家族にも治療を受けさせたくない。これに対し、他の病院では、チームワークが良いと考えているスタッフの割合が99%と、素晴らしい結果が出た。

 こうした結果は、感染症の発生率や患者のその後の経過と強い相関関係にあった。チームワークの良い病院は、治療の安全性も高かった。米国中のすべての病院に関して、こうした情報が一般公開されなければならない。

カメラ

 患者にとっては意外かもしれないが、医師は医療現場で確立されたベストプラクティスを励行することがあまり得意ではない。『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌のある研究によると、必要なガイドラインを順守している治療は全体の半分にとどまっている。幸い、順守を促すのに効果てきめんなテクノロジーがある。カメラだ。

 カメラはすでに医療現場で利用されているが、通常、ビデオは作成されない。心臓カテーテル検査や関節鏡視下手術などの施術をテープで見直せば、医師同士のチェックによる品質改善が可能だ。ビデオは未来の医師のためのより実践的な記録にもなる。患者のカルテに書かれるメモは大抵短いため、ビデオのような形で治療を把握することはできない。

 世界で最も尊敬される胃腸科医の1人であるインディアナ大学のダグ・レックス医師は、自身の診療科の医師らが行う大腸内視鏡検査の徹底度を確認するためにビデオ記録を使うことを決めた。徹底的な大腸内視鏡検査では、結腸内の細部をくまなく隅々まで精査することが必要となる。医師はそれを性急に終わらせようとする傾向があり、その結果、多くのがんや前がん性ポリープが見落とされ、数年後により進行した状態で発見されることになる。

 レックス医師は、他の医師らに告げることなく、彼らの施術をビデオで確認し、時間を測定した上で、その出来を点数で評価した。100件の施術を評価した後、彼は医師らに対し、今後は各医師の施術をビデオに撮り、時間を測って点数を付けるつもりだと発表した(実際にはすでにそうしていたのだが)。すると一夜にして状況が激変した。施術にかかる平均時間は50%伸び、点数は30%上昇した。医師たちは、誰かに仕事をチェックされていると知ってパフォーマンスを改善したのだ。

 手洗いに関して同様の手法が用いられたケースもある。ニューヨーク州ロングアイランドのノースショア大学病院では数年前、手洗い順守率が10%未満と、ひどい状況にあった。だが、手洗い場にカメラを設置すると、順守率は90%を超え、以後もそのレベルを維持した。

 レックス医師はカメラ調査に続き、今度は患者に施術ビデオのコピーが欲しいかどうか尋ねてみた。すると81%もの人が欲しいと答え、64%はそれに対してお金を払っても良いと答えた。患者は透明性を切望しているのだ。

メモの公開

 あるとき、スーという若い会計士が腹痛を訴えて私の診療室を訪れた。彼女は何が原因か確信がなく、さまざまな理由を並べ立てた。「ホットヨガのせいかしら?」「夜中にアイスクリームを食べたのがいけなかった?」「避妊しないでセックスしたことと何か関係ある?」 私はその間、メモをとり続けた。診療が終わると、彼女はそのメモを疑わしそうに見てこう聞いた。

 「私のこと、何て書きました?」

 彼女は、自分が変人かアイスクリーム中毒だと思われているのではないかと気にしていたのだ。また、私は彼女に超音波検査を勧め、その理由も説明したつもりだったのだが、その後の会話のなかで、彼女がその理由をはっきり理解していないこともわかった。

 それ以来、私は診療の最後にメモの内容を患者に読んで聞かせることにした。ある高齢の患者は「私には高血圧もあります」と、修正を入れてきた。別の患者は「やっぱり、前回の手術は左側じゃなくて右側でした」と言った。私の話を遮り、「いいえ、リピトール錠を20ミリグラム飲んでいると言ったんです。25ミリグラムではありません」と指摘する患者もいた。患者が医師のメモを文書で確認することができれば、もっといいかもしれない。ウェブなどを使って患者自身がコメントを加えられれば、さらに便利だろう。

 ハーバード大学の医師兼研究者のジャン・ウォーカー氏とトム・デルバンコ氏は、ハーバードとボストンのベス・イスラエル病院で「公開メモ」を採用している。また私の故郷、ペンシルベニア州のガイシンガー・メディカル・センターでは、患者が医師のメモをオンラインで確認できるようにした。今のところ、患者からも医師からも好評だ。

発言禁止命令の撤廃

 医療の透明性が高まりつつある兆しが多く見られる一方、後退する動きも一部にある。受診しようとする患者に対し、発言禁止命令に署名し、オンライン等のいかなる場でも医師に関する否定的な発言を一切しないと誓約するよう求める例が増えている。また、もしあなたが医療過誤の被害に遭った場合、病院の弁護団は、あなたが被害状況を一切公表しないことを和解の条件とするだろう。

 医療過誤をめぐる対話はもっとオープンにすべきであり、その逆であってはならない。この手の発言禁止命令を法律で禁止すべきだと提案しても、行きすぎではないだろう。こうした動きは患者の知る権利や、過ちから学ぶという考え方に完全に反している。

 政治的党派に分かれて、医療制度改革における政府の役割を議論してもいいが、官・民いずれのアプローチにせよ、機能させるには透明性が必須条件となる。透明性を有効なものとするためには、政府が役割を担い、公正かつ正確な情報の一般公開を推進すべきである。そうすることで、自由市場の威力が発揮され、患者が自分で自分の治療を管理できるようになる。どんな病院も、安全尺度に基づいた競争を余儀なくされれば、患者へのサービスを改善するはずだ。

 透明性は、国民の信用回復にもつながる。多くの米国人は、医療業界はますます秘密主義になり、傲慢にさえなったと感じている。透明性を高め、それに伴い説明責任を果たせるようになれば、われわれはコスト危機に対応するとともに、より安全な治療を提供できるようになり、サービスを提供しているコミュニティーからの評価を改善することができる。今後、害を及ぼさないために、われわれは過去に及ぼした害から教訓を得なければならない。

(筆者のマーティ・マカリー氏は、ジョンズ・ホプキンス病院の外科医。世界保健機関で採用された「手術安全チェックリスト」のまとめ役の1人。著書に『Unaccountable: What Hospitals Won't Tell You and How Transparency Can Revolutionize Health Care』<Bloomsbury Press>がある)


  [英語原文記事]
   http://online.wsj.com/article/SB10000872396390444620104578008263334441352.html

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