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片手の魔術師(小説)コミュの片手の魔術師第20話

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片手の魔術師 第 20話  時 と 空間 と 切り裂く剣

岩を背にかこまれているエルリック。
そのエルリックを囲むルアスの兵士達。

だが、先ほどの魔法を警戒してか一気には攻めるにいたってはいなかった。
一歩一歩、じりじりと間合いをつめる。

シルバーグは、持っていた盾をすて、重い剣を両手に持ち替えた。
するどく光白い剣は スワードロングソード といわれる剣だ。
素材は オリハルゴン それを何年もかけて鍛え上げた剣といわれており、この世界には数本しか存在しないといわれている剣。
とても重いために、力を持っていないと振り回せない代物でもある。

もちろん切れ味はよい。

そんな緊迫した状況のなか、先頭のシルバーグがエルリックに質問をした。

「・・・・なんで貴様も一緒に逃げなかった」

「君達を足止めするためさ。僕の仕事はロビンをあの金髪の賊にあわせること。」

「仕事だ?」

「あぁ。彼らは会うべき二人。会わなければこの世界が終わるんだ。」

エルリックは真剣なまなざしでシルバーグを見る。
同時に、その言葉に翻弄されたかのように聞き入るシルバーグ。言葉の裏がとれないその発言。
あまりにも漠然としすぎている。

「ここでお前が死んでもよいというのか?」

「・・・この世界をまもるためだ仕方ないこと。」

エルリックの細い目がかすかに開く。黄色く鋭い、その眼光・・・シルバーグを圧倒する。


「話が大きすぎてわからないが、オラが貴様を倒すことにはなんらかわりのないこと。覚悟してもらうぞ。」

「(・・・僕の魔法は人を傷つけないために生まれた魔法だ・・。最大活用してやる。)」

エルリックは重い空気のなか、右手にもっていた赤い本を開いた。
ぱらぱらとかってにめくれ、エルリックの左手が赤い本に置かれると、赤い光が一直線に上に飛び出した。
次第に、その赤い光は次々と戦士達にそそがれるのだが、戦士達はその赤い光につつまれるだけで、まったくダメージを受けている気配はない。

「な、なんなんだこれは!?」

ルアスの兵士達が得体のしれない物体に、どよめきだした。

エルリックは持っていた本をみながら、ぶつぶつと呪文を唱えだした。
次々と赤い光がふりそそいでいく。戦士達は逃げることしかできず、あたりに散る。

シルバーグだけは、その攻撃をよけながら、その場にとどまっていた。
それもそのはずだ、ダメージがないとわかれば怖くはない。だが、同時に何かあると思っているのでその魔法をよける。

「・・・ウィザードゲート!!オーープン!(魔空間 【開】)」

エルリックが何かの呪文を唱えたようだ。
本の真上にあがった赤い光が次第に、白い光と変化していき、そして、大きな円となった。

すると、赤い光につつまれていた兵士達は次々と宙にまいだした。

「うぁぁああああ!!???!?!」

兵士達は状況がよみこめていないようで、シルバーグも仲間達が宙に浮いている光景をみて、動揺せずにはいられなかった。

「まずは、この場から消えてもらうよ!!テレポーテーション!」

エルリックの持っていた本が、赤々と燃え始めると同時に、白い円状の光に兵士達はどんどんすいこまれていく。

抵抗しようにも、体に力がはいらないのにか、そのまますんなりと吸い込まれていく。

シルバーグは、その様子を見ているしかなく、エルリックに攻撃できないでいた。
エルリックの眼光はつねに、シルバーグにむけられていたからだ。ようするに隙がないのである。


赤い光に包まれた兵士達が完全に白い光の中に消えたとき、エルリックの持っていた本は灰となり、その場に散っていった。


「これで、君だけになったね。」

「な!!?オラの仲間達をどこにいったんだ!?」

「僕の作り出した、魔空間の中にいるよ。ただし、僕の魔法で作り出した本は消えてしまったから、もう彼らはここに戻ってこれないけどね」

エルリックが平然と、シルバーグに挑発をかけるかのごとく言葉を発する。

「この悪魔が!!!!」


シルバーグが怒りに身をまかせて、もっていた スワードロングソード でエルリックに攻撃をしかける。
エルリックは、横に逃げる体制で、シルバーグの剣をよける。
シルバーグの剣は岩にあたっていないにもかかわらず、岩は真っ二つに切れている。
その後も、地面をえぐり、すさまじい威力をエルリックにみせつける。

この攻撃にはエルリックも驚いたのか、攻撃をよけきれたことにほっとしていた。
だが、怒りに身を任せているシルバーグがたった一撃終わるはずがない、縦にふってきた剣を次は横に振ってきた。

エルリックはその場に転がり、斬撃を交わす。

「(なんて威力だ・・。すれすれでしか攻撃がかわせない!!仕方ない、魔力を大量に使うから、この本は使いたくなかったが)」

「虹色の本 タイムスリップ!」

エルリックがそう叫ぶと、手に黄色の本が現れた。先ほどの赤の本とは違い模様に 稲妻 の模様がある。
その本に、シルバーグは警戒しすこし冷静になる。

「(・・・やつは魔法を唱えるさい、あの本が必要らしい)」

せめて、せめての攻撃をしていたシルバーグは、エルリックからすこしだけ距離を置く。

「気づいたようだね。僕の魔法は、この本によって作り出されている魔法。というよりも、本を出さないと魔法を唱えられないんだ」

と、エルリックが次々と自分の魔法について答え始めた。
まるで、シルバーグに何かを教えるかのように。

「そして、僕は魔力を上げるために自分の 視力 と 足 失いそして、魔法の発動のタイミング、順序を決めることであげている。そうしなければ僕の魔法は使えないからね」

「な、なぜ今頃そんなことを話す!?貴様と戦っているのはオラだぞ?」

シルバーグの動揺を誘っているのか、ただその言葉を発しているのか、シルバーグは確実に混乱している。
べらべらと自分の弱点、魔法の使い方まで丁寧に言われ、余裕さをただ見せているだけなのかもしれないとまで、考える。

「そして、僕は自分の空間 魔空間 を作り出すことに成功し、時間を操る能力を得た。この意味が解るか?」

ごくりとつばをのむシルバーグ。エルリックのその語りに完全に耳を貸してる。
剣を持っている手に力が入らない。

「その魔空間っていうのは、まぁ 簡単に言うと 溜り場 なんだ。その中では僕が 時間 になっている。んー、まぁ要するにみんな無事ってことだよ。彼ら自体目が覚めたら自分の故郷にいるようにしてあるし」
「あーーー!!意味の解らないことばかりいいやがって!!何がいったい言いたいんだ!!!?」

ついに痺れをきらしたシルバーグ。
たらこの唇がぶるるとゆれる。

「・・・長々と話してしまったが 僕ら魔法使いがルアスのおえらいかたに煙たがられる理由があるんだ。」

「・・・?貴様の 過去 魔法の発動の条件 を話すことが、煙たがられるというのか?」

「いや、そういうことじゃない・・・。僕ら魔法使いは 何かを代償に能力を得る種族 なんだ。まぁ、中には例外もいるがだいたいは何かを代償にしている。」

「俺たちだって、力を得るために働く時間や、労力を代償に修行をしてきた!それと何が違う。」

「そう・・それと同じだ。ただ、僕らの中でルアスに煙たがられるもっともの理由がそこにある。その最大の代償  古代魔法 エンチャント に手を出す恐れがあるからだ。」

「え、エンチャント?聞いたことがねぇ・・・。」

「この、古代魔法 エンチャント に手を出してしまったら、この世界は終わりに向かうんだ。」

「なぜ、貴様にそんなことがわかる!」

「僕が タイマー だからだ。簡単に言うと 時を操る魔法使い。魔力を極限に高めた状態で、たった数十秒だけど 未来 をみた。」

エルリックがいままでにない、真剣な顔で敵 シルバーグ に語る。
だが、その目は敵をにらむ目ではなく、なにかを訴えるような目だ。
その目が、シルバーグに耳を傾けさせる。

「・・・・時を操る魔法使い。貴様がそうだというのなら・・・、その証拠を見せてもらう!」

「・・・なるほど。僕と同じで実践派か。そのまえにひとつだけ話しておくよ。僕はもう敵じゃない。カレワラは敵ではないということだ。」

「え??どういうことだ・・?」

「すでに時が動いている。エンチャントのありかを知ったものが、動いている・・・。カレワラでも、ルアスの中でもない、何かが動いているんだ。」

「でも、俺たちはこの国をつぶすためにきたんだぞ?」

「じゃぁ、なぜ僕達を襲う?この戦いが そのエンチャントを狙う モノ達のしわざだとしたら?」

シルバーグは黙るしかなかった。
確かに、自分達は カレワラの魔法使い 達を排除するために鍛え上げられ、部隊まで結成し今日のこの日に至っている。
しかし、理由と言うものが カレワラの魔法使いの排除 そのまんまなのだ。
実は理由などなかった。
ただ、ひとつの仕事、自分の誇りとしてこの戦いを勝利へと導きたかった 自己満足 でしかなった。

ルアスの偉い方達の中にもそれだけしか思ってない人々多いと思う。
それなら・・尾を引いているやからがいるのか・・。

「深くは考えないでほしい。僕の魔法は神経、体力を大幅に使う。覚悟しておいてほしい。」

エルリックの真剣なまなざしが、シルバーグを納得させる。
シルバーグは額に汗をにじませながらも、小さくコクッとうなずく。


「それじゃ、いくよ!!」

先ほどの赤いほんのように、左手を本にのせると、本にうつった手形が光り始め、虹色の光が一直線にシルバーグに向かってきた。

「目をつぶって、集中するんだ。自分が今どこにいるなど考えてはいけない。自分というものをこの世から排除するんだ。それだけを思って集中してくれ」

「(うっへーー・・むずかしいこというなこいつ。)」

虹色の光がシルバーグを完全につつみこんだ。シルバーグが暖かいぬるま湯にはいったように感じていた。

「・・・ タイムスリップ!(時空間移動)」



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