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作品・作りま見ま専科コミュの逆境の炎(十宮恵士郎)

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はじめましてトピにも書きましたが、改めて。
皆さん初めまして。十宮恵士郎という者です。バトルやコメディ等を主軸にした小説を書いてはあちこちの小説投稿掲示板に投稿したりしています。
このコミュニティにいらっしゃる皆さんはあまりそういう分野には関心がなさそうに見えるので場違いかとも思いますが、それでも私の投稿する作品で何かを感じていただければ幸いです。


さて、このトピックで投稿させていただく作品は「逆境の炎(ぎゃっきょうのほむら)」と言います。まだ書き始めたばかりなので方向性が定まっていないところがありますが、一応オリジナルの中国風ファンタジー戦記ものです。
ストーリーは、こんな感じです。

主人公・錬至道(れん・しどう)は大陸の七国の一つ「陵(りょう)」の大都市碧丘(へききゅう)に縄張りを持つ秘密組織「狼園(ろうえん)」の一員で、碧丘を占領している隣国「震(しん)」の軍の命令で、彼らに逆らう人々を始末する役割を負っていた。しかし彼には複雑な過去があり、いつか狼園を足抜けして碧丘を出、自分の目的を果たしたいという望みを持っていた。
そんなある日、至道は任務で捕獲し震軍に引き渡した貴族の娘・楊玉華(よう・ぎょくか)が実は行方不明になっていた陵の王女だという事実を知る。王女を連れて碧丘を脱走することができれば、彼女を利用して陵軍に保護を求めることができる。そう考えた至道は、ひょんなことから同行することになった傭兵・鶏嘉(けいか)と王女付きの部下・旒那(りゅうな)と共に碧丘からの脱出を試みる。彼らの計画は、成功するのか。そして、碧丘を出た彼らを待つものとは。

結構設定がややこしいですが、始めのうちはそんなに重要でもないので、スルーして読んでいただいても構いません。


では、どうぞ。

コメント(2)

「逆境の炎」序(前半)――――――――――――――――――――――――


例えどんなに傷ついても、悲劇の果てに心が砕けても。自分が選んだ道ならば歩き続けなさい。
歩み続けた道のりだけは、決して貴方を裏切らないのだから。



「炎は 滅びの力なり。
何人たりとも、敵うことあたわず。」

 何もかもが静止する闇夜に、少年の声が朗々と響く。

「炎は 滅びの意思なり。
何人たりとも、逃れることあたわず。」

 詩(うた)。
 一寸先が死というこの戦場で、彼が口にしたのは確かに詩だった。

「裏切り者を、血祭りに上げろ!!」
 猛る猟犬たちが吠え叫び、少年を餌食にしようと追いすがる。
 そんな中でも、彼は眉一つ動かさず。
 眼前の敵を見据え、詩を歌った。

「我、炎に命ず。
我が敵を、灰燼に帰せ。」

 それが、最後の句だったのか。
 少年はゆっくりと、掲げた槍を両手に持ち、それを地面に突き刺す。
 そして……“たった一つの”目をかっ、と見開いた。

「焼き滅ぼせ……“炎舞(えんぶ)”ッ!!」

 瞬間。槍から赤い光が迸り、
それに一歩遅れるようにして、橙色の何かが、視界を埋め尽くす。

「ぬ……うおおあああああああ!!!」
「ぎゃあああああああああああ!! 熱ぢ……熱ぢああああああああ!!!」

 飛びかかる猟犬たちが、炎に包まれた。
 否、槍から溢れ出た橙の炎が、猟犬たちを焼き払ったのだ。
 自らの体が、燃えている。
 そんな認識にすら至れずに、体を蝕む毒のような痛みにのたうち回る猟犬たちに向けて、彼は駆けだした。

「うわ……うわあああっ!!……はあうッ」
「はあぁ……くそ、やめ……がああッ!!」

 彼の斬撃は、正確だった。
 一人、また一人。立ち上がる隙すら与えずに、猟犬たちを槍の穂先で切り裂いていく。
 切り裂かれた猟犬たちの血で、地が紅く染まる。
 ……先程まで視界を埋めていたはずの闇の漆黒は、もはやどこにも見えず。
 目に映るのはただ、炎の橙と、血の紅のみ。

「はぁ……はぁ……この……糞餓鬼があッ!」
「……幸運だね、黄(こう)さん。“あれ”をかわしたのかい。」

 少年が、生き残ったたった一人の猟犬へと歩み寄っていく。
 その男だけは、炎をまともに浴びずに済んだようだ。裾の焦げた灰色の外套を脱ぎ捨て、長剣を構えて彼と対峙する。

「至道(しどう)ぉ!! てめえ、こんなことして許されるなんて思ってねえだろうな!! 一人流れていたところを親方に拾っていただいた恩も忘れやがって! この人でなしがあっ!!」
「確かに、そこは俺も後悔しているよ。明日にでも野垂れ死にそうな俺を拾って生かしてくれたのは“狼園(ろうえん)”だ。それに恩返しするどころか、こうやって刃を向けようっていうんだから、悔やむ気持ちはあるさ。
……だがね?」

 少年が大きく槍を振りかぶり、男に振り下ろす。
 男は手慣れた手つきでそれを捌き、少年の懐に飛び込もうとした……だが、遅かった。
「がふ……ッ!!」
 先に少年の方が、男に肩から突進してきていたのだ。少年の勢いに押され、倒れこむ男。少年は素早く槍を構えなおすと振りかぶり、その穂先を倒れる男の左胸に突き刺した。

「ああ……ああああああッ!!」
「……だがね。あんたらごときに人でなし呼ばわりされる覚えはないさ。
飼い主のご機嫌をとるしか能のない、犬風情に、ね。」

 男の断末魔が勘に障ったのか。少年は男から離れると、その体を持ち上げて、間近の壁に叩きつけた。男は完全に沈黙する。
「逆境の炎」序(後半)――――――――――――――――――――――――


 しばらくそのまま立ち尽くしていた彼だったが、やがて痺れをきらしたようにこちらに振り向いた。
 橙の光に照らされ、彼の左眼を覆う眼帯が映し出される。

「どうして……離れなかった。
“危ないから離れていろ”。そう言った筈だ。」
「……………………。」
「だんまりか。フン……まあいい。下手に騒がれるよりは好都合だ。
走るぞ。早いとこ門に辿り着かないと、連中に追いつかれちまう。」

 少年の言葉に、頷く。
 確かに……いつまでもこうして立っているわけにはいかなかった。
 囚われの身である私が逃げ出したとなれば、必ずや彼らは追っ手を差し向けてくれることだろう。
 弓兵はその追っ手が来るまでの時間を稼いでくれる、とは言ったが、それとて無限ではない。一刻も早く、私はここを離れなければいけないのだ。
 ……なのに。

「……どうしたんだ、姫さん。さっさと来いよ。
何をいつまでもぼさっと突っ立っているんだ! 持ちかけたのは俺でも、逃げると言ったのはお前だろう?
足を動かせ……早く!」

 逃げる。
 この閉じられた都市から逃げる。
 それは確かに私の望みだ。
 けれど……たった今見た凄惨な光景に気圧され、足一つ満足に動かせない。
 そんな私の心情を感じ取ったのか、少年が顔がみるみる険しくなっていく。

「どうした姫さん? いつもみたいに優しく奉仕して欲しいかい? 痛々しいモノを見せられた自分の心を察してほしいってかい!?
残念だったね……俺はあんたの家来でもなければ小間使いでもない。
あんたの命を護ることは約束したが……あんたの心なんかを護る気はさらさらないんだよ。
逃げたいなら足を動かせ。そうでないならそうと言え。お前の意思一つで、取るべき行動は変わって来る。」
「……なぜ?」
「……あ?」
「なぜ…………なぜあなたは、こんな風に。人を無残に壊せるのですか。」

 険しい表情でありながらも、まだ取り繕った顔をしていた少年の顔が、歪む。
 さっきまでの、無駄のない動きと言葉はどこに行ったのだろう。足音も荒く私に駆け寄り、胸倉を掴んで持ち上げる。

「……いい加減にしろよ、お前。
姫だか何だか知らないが、こんな大事な時になってまで識者ぶりやがって!
こっちが下手に出てるからって嘗めてんじゃないぞ……今回は勘弁してやるがな。今度ふざけた世迷言を口にしてみろ、口から謝罪の言葉しか吐けないぐらい痛めつけてやるから覚悟しておけ!!」
「……あなたの言うことに、逆らうつもりはありません。
ちゃんと走ります。走りますから放して下さいまし。」
「……なんだ、ちゃんとわかってるんじゃないか。それなら」
「ただ……その前に一つ、聞いておきたかったのです。
なぜ、あなたはそこまで冷酷になれるのですか。」

 獣のような唸り声。それを認識した途端に、私は跳ね飛ばされていた。
 頬に走る、鋭い痛み。頬を張られたのだと知る。
 倒れ伏した体を起こし、よろよろと立ち上がる。目の前に立つ少年の顔は、もはや先程の面影などどこにもないと言えるほどに怒りに満ちていた。
 顔を歪ませ、右眼を大きく見開いて、少年は吼える。

「わかった。ああわかった! お前が俺に従う気なんぞさらさらないことがよくわかったよ!!
お前がそういう態度をとるなら構わん。力づくで連れて行かせてもらうぞ!!」
「そうは参りません……私は自分の足で走ります!」
「……目だ。その反抗的な目!! その目をやめろ!
聞こえていないのか!! その目をやめろと言っているんだ!!!」

 血走った一つの目で私を睨みつけ、吼え猛る少年。
 私は目を逸らすことなく、真っ直ぐに彼を見据え続ける。

「私は……自分の意思で、ここから逃げます。」
「その目をやめろ!! その目で見るな!!
やめろ……そんな目で、俺を見るんじゃないッ!!!」

 橙と紅の世界を背に怒りを叫ぶ彼は、しかし何故だろう。
 どこか……泣き叫んでいるようにも見えるのだった。



逆境の炎
第一章「鳥籠の外」

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