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中国史コミュの『淮南子』人間訓 10−1

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或無功而先舉,或有功而後賞。何以明之。昔晉文公將與楚戰城濮,問於咎犯曰、為之奈何。咎犯曰、仁義之事,君子不厭忠信。戰陳之事,不厭詐偽。君其詐之而已矣。辭咎犯,問雍季。雍季對曰、焚林而獵,愈多得獸,後必無獸。以詐偽遇人,雖愈利,後無復。君其正之而已矣。於是不聽雍季之計,而用咎犯之謀。與楚人戰,大破之。還歸賞有功者,先雍季而後咎犯。左右曰、城濮之戰,咎犯之謀也,君行賞先雍季何也。文公曰、咎犯之言,一時之權也、雍季之言,萬世之利也。吾豈可以先一時之權,而後萬世之利哉。

功無くして先に舉げらるること或り。功有りて後に賞せらるること或り。何をか以て之を明かにせん。昔、晉の文公將に楚と城濮に戦わんとし,咎犯に問いて曰く、「之を為すこと奈何せん。」咎犯曰く、「仁義の事は,君子、忠信を厭わず。戰陳(陣に同じ)の事は,詐偽を厭わず。君其れ之を詐るのみ。」咎犯を辭して,雍季に問う。雍季對えて曰く、「林を焚きて獵すれば,愈々多く獸を得るも,後に必ず獸無し。詐偽を以て人に遇えば,愈々利すと雖も,後に復すること無し。君其れ之を正しうせんのみ。」是に於て雍季の計を聴かずして,咎犯の謀を用う。楚人と戰い,大いに之を破る。還歸して功有る者を賞するに,先雍季を先にして咎犯を後にす。左右曰く、「城濮の戰は、咎犯の謀なり。君、賞を行うに、雍季を先にするは何ぞや。」文公曰く、「咎犯の言は,一時の權(はかりごと)なり。雍季の言,萬世の利なり。吾豈に以て一時の權を先にして、萬世の利を後にす可けんや。」

<語釈>

愈  ― “愈”の字を“偸”に通じ、“かりそめに”と訓ずる説が一般的なようだが、私は普通に“いよいよ”と訓じ、益々の意味に解釈するほうが、次の“多”の字との関係がよいように思う。

城濮の戰 ― 第9章の解説参照

戰陳 ― 戦陣と同じ

<通釈>

功績も無いのに、最初に抜擢されることがある。功績があるのに恩賞が後回しになることが有る。何によってこの事を明らかにしようか。
昔、晉の文公が楚と城濮に於いて戦わんとした時,家臣の咎犯に尋ねた、「楚と戦うのに、如何にしたらいいだろうか。」咎犯は答えた、「仁愛や正義に関する事ならば,君子は忠義や信頼を大事にいたしますが、戦場に於いては,嘘や詐も大事でございます。君におかれましては、楚と戦うに詐り有るのみでございます。」文公は咎犯を去らして,雍季に尋ねた。雍季は、「林を焼いて獵をすれば,より多くの獸を得る事が出来ますが,後には必ず獸がいなくなります。詐偽を用いて人に接すれば,より利益を増すことがありますが,後には二度とそこから利益を挙げることは出来ません。君におかれましては、ただ正攻法があるのみでございます。」と答えたが、文公は雍季の計を聴かずに,咎犯の謀を用いて、楚人と戰い,大いに之を破った。文公は凱旋すると、この戦いの論功行賞を行ったが、雍季を先に賞して、咎犯を後にした。左右の者は申し述べた、「城濮の戰は、咎犯の謀により勝利したのに、君、賞を行うに当たり、雍季を先にするは如何してでございましょうか。」文公は答えた、「咎犯が述べたのは,一時の権謀で、雍季が述べたのは,後世にまで続く利である。余がどうして一時の謀をを先にして、萬世の利を後にすることが出来ようか。」

<解説>

この章全体の解説は次回に譲るとして、ここで述べられている城濮の戰は第9章の解説でも述べたように、春秋時代の最も代表的な戦いであった。晋の文侯もこの戦いに勝利したからこそ、春秋の覇者になれたのである。
ここでの趣旨は、“余がどうして一時の謀をを先にして、萬世の利を後にすることが出来ようか。”に尽きると思うが、分かりやすく言えば、目先の利益に捉われず、長い目で見ることが大事であるということである。今日の会社経営に於いても、最も重要視されることである。残念ながら日本の企業に於いて、この事をよく理解して実践しているトップは非常に少ない。優秀な社員がいて、長期的な経営戦略を提案しても、目先の利益に捉われて、それを評価できないトップのいる会社は、今日のグローバル化の中では、確実に潰れていくであろう。
トップの資質は、頭脳の良し悪しでなく、長期的展望にたって物事を考えられるかどうか、と言うことである。晋の文侯を是非見習って欲しい。

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