ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

超宗派・仏教コミュのジェツン・ロレーパの物語

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ジュツン・ロレーパの物語



 ツァンパがいっぱい入った一組のショルダーバックを背負い、ジェツン・ロレーパは、セモの島に行くために、北方のナムツォという大きな湖へと旅した。
 しかし湖にはった氷は溶けていたので、島に行くことができず、彼は多くの漁師が住んでいる岸辺に滞在しなければならなかった。
 彼は島で修行するという強い決心を決めていたのだが、氷が溶けていたので、島に辿り着く方法がなかった。
 彼はグルに祈り、涙を流した。

 漁師の少年が、「若いお坊さん、何で泣いてるの?」と言った。

 ロレーパはこう答えた。

「わたしは、あの島で瞑想する誓いを立てたのに、氷が溶けていたから島に渡れない。だからわたしは悲しいのだよ。」

 漁師の少年は大声でこう言った。

「あなたの信は何と素晴らしいことでしょう! ぼくがその島へあなたを運んでいきましょう。」

 しかし、その少年の父はこう言った。

「この湖は塩水だ。苦行に励んでいる間、あなたを養う水はどこにもない。それに、もし湖が凍らなかったら、島から戻って来れなくなるので、あなたが持っている二年分の食糧じゃ、不十分だ。栄光なるガロとパドマカラを除いて、あそこで生き延びたっていう話は聞いたことがない。
 この少年は俺のただ一人の息子だ。俺はこの子より強いし、この湖のことをよく知ってる。あなたは偉大な信を持っているから、俺が今、あなたを連れて行こう。でも、俺たち二人とも死ぬかもな。そうだとしても、俺は今まで多くの魚を殺生することで、悪を犯してきた。もし死んだら、あなたが俺を解放してくれるかもしれない。」

 彼らは共に、土台として三枚の木を縛り、その下に、膨らませた皮の鞄を取り付けた。その上には、縄と薪で、格子をつけた。
 それから彼らは、ツァンパがたっぷり入った二つの鞄をその筏に乗せた。
 星が現れたころ、彼らは筏を漕ぎ始めた。
 真夜中、湖は轟音を立て、激しく荒れていた。
 湖の波は、男の身長の高さくらいまで達した。
 稲妻は空で煌き、大きな霰の嵐が降った。
 子ヤギの大きさほどの蛙が筏に飛び乗った。

 筏の漕ぎ手は、極端に脅え、こう言った。

「このままでは俺たち二人とも死んじまう。あなたには、カギューのグルのような、祈りをささげる者はいないのかい? 土地の神々に命令できないのかい?」
 
 ロレーパは、強烈な渇望と切望を持って、カギューのグル方に祈りをささげ、助けを請うた。

 彼はこの秘密の歌を歌った。

「グル・ヴァジュラダラと不可分であるダルマカーヤのサマンタバドラとコンソートよ、
 あなたの化身、衆生の守護者、グル・ティローよ、
 過失から解放され、善を完成させたグル・ナーローよ、
 大楽のダルマダートゥから、どうか、衆生をお守りください。

 師マルパ・チューキ・ロドゥ、やさしきグルよ、
 ヨーギーの偉大なる主、ミラレーパよ、
 慈悲と空を悟られたグル・タクポよ、
 無条件の光と空の領域から、どうか、衆生をお守りください。

 全智の衆生の守護者、グル・ヴァジュラの王よ、
 至高なるへールカ、栄光なるグル・リンチェンレーパよ、
 四つのカーヤの主、ダルマの主、衆生の守り主、尊者ドゥクパよ、
 どうか、概念を持たぬあなたの慈悲を持って、衆生をお守りください。

 自と他の恩恵を成し遂げられるダルマの真の主よ、
 慈悲深く衆生の恩恵を成し遂げられるやさしきリンポチェよ、
 慈愛の道のおいて賢く慈悲深きグルよ、
 どうか、この暗黒の時代の衆生をお守りください。」


 このように、ロレーパは祈った。
 
 彼らはセモ島の方向に、張られたテントのような形のたくさんの虹色の光を見た。
 また、永遠なる命の壷を手に持っているサンボーガカーヤの様相のツァンパ・ギャレを見た。

 再び、ロレーパは祈った。

「おお、グルよ、三世とその息子たちの勝利者よ、
 どうか、わたしの心からの哀歌をお聞きください。

 グルとたくさんのヴァジュラの兄弟姉妹たちよ、
 教えを学び、戒を遵守し、無上の悟りに達した瞑想家たちよ、
 教えの門に入った慎み深きダルマの実践者たちよ、
 どうか、あなた方の心を合わせ、衆生をお守りください。

 この輪廻という恐ろしい炉の中で、
 どうか、蛾のようにうぶな衆生をお守りください。
 
 この底なしで無限の輪廻の海の中で、
 どうか、蜘蛛の巣のようにもろい衆生をお守りください。

 この輪廻という漆黒の奈落の中で、
 どうか、目が見えず、道に迷えし衆生をお守りください。

 この逃げることのできない輪廻という大いなる牢獄の中で、
 どうか、無防備な捕虜である衆生をお守りください。

 この輪廻という大いなる苦しみの有毒な穴の中で、
 どうか、目が見えず、気が狂った衆生をお守りください。

 この輪廻という無益な蜃気楼の中で、
 どうか、暑く、喉の渇いた野生動物である衆生をお守りください。

 この輪廻という見掛け倒しの夢と幻影の中で、
 どうか、悟りの欠如から長く苦しめられている衆生をお守りください。

 おお、守護者よ、ダルマの主よ、高低の一切の者たちの拠り所となってください。
 どうか、あなたの大いなる慈愛と最上なる熟考をもって、衆生をお守りください。

 グル方、勝者方、そして宇宙の至るところにいらっしゃる平和と憤怒の神々である彼らの息子たちよ、サマヤの守護者たちよ、
 マーラとその従者たちの妨害をお鎮めください。そして、衆生を幸福の中に確立してください。

 衆生とブッダを区別することなきグルよ、
 どうか、苦しめる衆生をお守りください。
 障害を制圧し、善を完成させたまえ。
 教えを繁栄させ、世界を浄化したまえ。」
 


 この祈りの祝福によって、その混沌は一瞬にして静まり、彼らは容易に島に到達した。
 漁師は、ロレーパがブッダ御自身であることを理解し、礼拝し、周りを回り、祝福を請うた。

 漁師が帰る前に、ロレーパはこう言った。

「あなたの心、ハート、胸を、三宝に明け渡すのです。それらはあなたを絶対に欺くことはありません。あなたは、障害なしに息子に容易に再会できるでしょう。」

 そして、漁師はもと来た岸に容易に戻った。

 ロレーパは、その場の性質を調査した。
 その湖は透明であり、瑠璃色をしていた。
 島の中心には、広くはないが、手の平のように平らな場所があった。
 その場の中心には、岩の層が、宝石のように積み重なっていた。
 その場の左右には、いっぱいに広げられた禿鷹の翼のように見える丘があった。
 その場の南の端には、美しく、透明で、自然に楽しく、サマーディを生じさせるナーガの洞窟と曼荼羅の洞窟があった。
 ロレーパは、ここは気を逸らすものと喧騒がなく、上弦の月のように経験と悟りが増大する修行に適した場所であると見た。
 彼は非常に喜んだ。

 ロレーパは、ツァンパでいっぱいの鞄の片方は来年用に蓄え、もう片方は今年の食糧とした。
 彼は、規則どおりに神々への供物とトルマを作った。
 二十五日の供養のとき、ロレーパは、氷砂糖の欠片を小さな供物の椀に溶かし、長いチャクラサンヴァラ・サーダナを行なっていた。

 ときには、若い魔術師の身なりをした偉大なるニェンチェン・タンラと、貴族の娘の身なりをしたドルジェ・クンタクマが、湖の女神たちと土地の神々たちの大集会に囲まれて、ときどき、ロレーパの教えと歌と聞きにやって来た。
 一切の神々と悪魔たちは彼の歌を楽しんでいたので、彼らは順番に集まって、「どうか、歌うか、ダルマを解説するかしてください。」と言った。
 ロレーパは彼らにダルマを解説し、多くの歌を歌った。


 翌年、その岸に住んでいる遊牧民のディタクが、
「去年、若き僧が多くの蓄えを持たずしてセモ島に行ったのだよ。彼がまだ生きてるかどうか確かめようじゃないか。」
と言った。
 そうして彼らの中の二人が見に行った。
 彼らは、修行の洞窟で祈っているロレーパの声を聞き、
「やつは狂っちまった。」
と言った。

 しかし彼らが近づくにつれて、彼らはロレーパがツァンパでいっぱいだった鞄の中身の半分も使っていないにもかかわらず、すこぶる健康的に見え、彼の修行が進歩していたのを見た。
 彼らは驚嘆し、信が増大した。
 彼らはそのとき、ロレーパに島から出るように請うたが、ロレーパは、
「まだツァンパが半分残っている。わたしはここにとどまる。」
と言ったのだった。

 ロレーパは、さらに丸一年とどまった。
 それから彼は、冬になり、氷が湖にはったら、シャモ島に行こうと思った。
 しかし、土地の神が蠍の姿で現れ、洞窟の入り口で、一つの針を床に置き、もう一つの針を天井に置いて、彼の行き先を塞いだ。
 よってロレーパは、概念的な心を超越する九つの決意の歌を歌った。

 すると土地の神は、二十歳の乙女に変身して、礼拝し、こう言った。

「わたしは、あなたを害しようとしたのではありません。あなたに去ってほしくないのです。あなたが思いとどまらないだろうとわかったからには、わたしはあなたがシャモ島に滞在する間、あなたに奉仕します。」

 そして彼女は消え、ロレーパはシャモ島に行き、そこにとどまった。

 あるとき、ロレーパの父母は、息子に会いたくなり、衆生の帰依処であるツァンガ・ギャレのもとへと行った。彼は自らの従者であるゲンドゥンダルをガイドとして彼らに与え、彼らはロレーパを探しに出発した。
 ちょうど湖に氷がはっていたので、彼らはシャモ島に渡ることができ、ロレーパに会うことができた。父母はロレーパを抱きしめて、喜びで涙を流した。
 数日間、ロレーパはダルマを解説し、歌を歌い、奇跡を行なって、両親を満足させた。
 それから彼は、両親を故郷へと送り返した。

 ゲンドゥンダルはロレーパの弟子となってその後もロレーパのもとにとどまり、自らも修行しながら、洞窟で修行するロレーパの食事の世話をした。ロレーパはその一部だけを食べ、残りは乾燥させた。

 七年の月日が経ち、ゲンドゥンダルはロレーパにこう言った。
「ツァンパは完全に底を尽きました。湖には氷がはっていないので、食料を調達に行くこともできません。」

 ロレーパは彼に、乾燥させて取っておいた食物を与え、
「これをスープにしなさい。それをわたしのもとへ持ってきて、いくらかを自分で飲みなさい。」
 と言った。
 ゲンドゥンダルは言われたとおりにした。
 ロレーパは、
「もしまたツァンパが底をついたときに、氷がはっていなかったらどうなるであろうか?」
と考え、スープの残飯を密かにまた取っておき、乾燥させた。
 
 再びゲンドゥンダルが、「乾燥した食物も底を尽きました。氷もはっていません。」と言ったとき、ロレーパは、「これを調理しなさい。」と言って、スープの残飯を乾燥させたものを差し出し、こう言った。
「これをスープにし、それをわたしのもとに持ってきて、いくらかを自分で飲みなさい。」

 その後しばらくして、ゲンドゥンダルは、「また食糧が尽きました、氷もはっていません。」と言った。
 ロレーパは、「鞄を広げて振って、出てきたツァンパのカスを、パン生地にして丸めなさい。」と言った。
 言われたとおりにゲンドゥンダルがツァンパのカスを丸めると、それは、ほんの親指ほどの大きさしかなかった。
 ロレーパはそれを使って、ガナチャクラと観想法を行った。
 それからロレーパは、土地の神が浜辺に鹿の死骸を持ってきたことに気づき、ゲンドゥンダルに、「何か驚くべきものが浜辺にある。」
と言った。
 ゲンドゥンダルは浜辺に行き、そこにあった鹿の死骸を細かく切って、いくらかをロレーパに施し、わずかを自分で食べた。
 このようにして、八年が過ぎていった。

 その後、ゲンドゥンダルは、「鹿の肉も尽きてしまいました。」と言った。
 ロレーパは、
「わたしの靴と瞑想帯、お前の靴と瞑想帯、そしてツァンパの鞄を煮なさい。」
と言い、彼の靴と瞑想帯をゲンドゥンダルに投げた。
 ゲンドゥンダルはそれらをよく煮て、ロレーパにささげた。
 
 その後、ゲンドゥンダルは、
「これらも尽きてしまった。もしわたしが死んだとしたら、私の死体はグルの生命を保つ栄養となるだろう。」
と考え、こう言った。

「グルよ、浜辺に人間の死体があります。それは食べてもよろしいでしょうか?」

 ロレーパは「よろしい。」と言った。

 そこでゲンドゥンダルは、首をつって死のうと思い、浜辺に行った。
 ロレーパは神通力でゲンドゥンダルの心を知り、すぐに彼のもとへ向かった。そしてゲンドゥンダルの手をつかみ、こう言った。

「息子よ、そのような過ちを犯す必要はない。わたしは飢えて死ぬかもしれないが、わたしに後悔はない。ダルマのために、わたしは苦行を実践してきたのだから。」


 その夜、ロレーパは、衆生の帰依処ツァンガ・ギャレが、多くの土地の神々の従者たちに囲まれて、浜辺に張られた白いテントの中にいるのを夢で見た。
 夜明けに、ダマルの音が空に鳴り響いた。
 ロレーパは、「あれはなんだ?」と思った。
 彼はまた、五人のジュニャーナダーキニーのヴィジョンを見た。
 ダーキニーは、
「兄弟よ、あなたは長い間、過度な負荷をかけ過ぎました。今あなたはウへ行くでしょう。わたしたちはあなたに、氷の表面の上を歩いていくよう請願します。」
と言って、虹のように消えた。

 ロレーパは、
「ゲンドゥンダルよ、起きろ。夢のお告げに従って、湖に氷がはっているかどうか確かめに行くぞ。」
と言った。
 
 ゲンドゥンダルはこう思った。
「今は夏だ。冬に氷がはっていなかったのに、夏に氷がはっているわけがない。」

 しかしグルの命令だったので、確認しに行った。
 すると湖には、腕尺ほどの深さ、矢が飛ぶほどの幅で氷がはっていた。
 その表面には適度な雪が積もり、キツネの足跡があった。
 強烈な歓喜とロレーパへの計り知れない信仰と愛が彼の中に生じた。
 ゲンドゥンダルはこう言った。
「氷がはったのだから、ここから去りましょう。」
 ロレーパは、「本と個人的な所有物を鞄に入れ、持ってきなさい。」と言い、そして彼らは旅立った。

 ロレーパはゲンドゥンダルに、「おまえが先に行きなさい」と言い、ゲンドゥンダルはグルの前を歩いて湖を渡っていった。
 ゲンドゥンダルが岸に到着したとき、ロレーパは彼の後を来ているかどうかと思い、後ろを振り返った。
 するとダーキニーたちが、彼らが歩いた絹のスカーフを急いで集めた。しかしロレーパはまだ岸に到着していなかったので、彼の下半身が水に浸かってしまった。

 ロレーパはゲンドゥンダルこう言った。
「もしお前が後ろを振り返らなかったら、そっちのほうが良かった。土地の神々を見ることは有毒だ。よって、お前の寿命は短くなるだろう。
 わたしがお前を祝福すれば、お前は長く生きられるだろう。しかしそうすると、来生でわたしと会うことはないだろう。
 息子よ、長生きをお望みかな? それとも、来生でわたしと会うことをお望みかな?」

 ゲンドゥンダルは言いました。
「この人生に何の喜びがありましょうか? わたしは来生、あなたと出会うという喜びを選びます。」

 このようにして、彼の寿命は短くなったが、その次の生、彼は陶器職人として生まれ、再びグルと出会った。


 さて、三人の牧童たちは、ロレーパと彼の弟子ゲンドゥンダルが、湖の中心からやって来るのを見ていた。
 彼らのそれぞれは、二人を普通とは異なった姿で見て、驚嘆した。
 ロレーパとゲンドゥンダルが岸に着いたとき、牧童たちは礼拝し、ツァンパとネギを捧げて、こう言った。

「あなた方、お師匠様とお弟子さんは、シッダに違いありません。あなた方がこの季節に水を渡って来たのは、なんと驚くべきことでしょう。僕らは、あなたにダルマを説いてくださるよう懇願します。」

 そこでロレーパは、少年たちのために、「五つの仏国土」という歌を歌った。

 少年たちはこう言った。
「この丘を越えると、僕らの野営場があります。どうかそこへ行ってください。僕らは、羊と牛たちをいつもより早く集めて、そこへ向かいます。」

 このようにして、ロレーパと彼の弟子はキャンパという野営地へと向かったが、彼らはテントから少し離れた場所にとどまった。
 ゲンドゥンダルは、野営地に入っても良いかどうかをロレーパに尋ねた。
 ロレーパは、「腹が減っているなら、ツァンパとネギを食え。修行せよ。」
と言った。
 ゲンドゥンダルは、「ダルマの主よ、あなたが行かないのであれば、わたしが行って、何か食べ物をもらってきましょう。」
と言った。
 ロレーパは、「野営地に行っても、われわれがシャモ島から来たことをしゃべってはいけない。」
と注意して、ゲンドゥンダルを送り出した。

 ゲンドゥンダルが野営地に着いたとき、彼はたくさんの犬を見つけた。
 そこには、若い無法者たちの一団もあった。
 彼らは「お前、どこから来た?」と問いただしてきた。
 ゲンドゥンダルは気が動転して、うっかりシャモ島から来たと口走ってしまった。
 彼らは、「湖は何年も凍っていないので、シャモ島から来れるはずがない。お前は山賊の長に違いない。」と言い、彼をボコボコにした。

 ゲンドゥンダルが戻ると、ロレーパは、何か施し物をもらえたかどうかと尋ねた。
 ゲンドゥンダルは、「何ももらえずに、ボコボコにされました。」
と答えた。

 ロレーパは、「だから、ここにとどまり、修行せよと言ったではないか。さあ、修行しなさい。」
と言った。

 さて、三人の牧童たちは、夕暮れに野営地に着き、両親たちにロレーパについて話した。そこで両親たちはやって来て、彼らを野営地に改めて招待した。
 彼らはこう言った。
「われわれの野営地に来てください、われわれはあなたに奉仕しましょう。先ほどはわれわれは、あなたがロレーパの従者であると気がつかなかったのです。どうか、われわれをお許しください。」

 こうしてロレーパとゲンドゥンダルは、約七、八日間、そこにとどまった。

 それから、彼らはこう言った。

「ここ数日間、あなたは絶えず、自然に、われわれにダルマを説いてくださいました。しかし、われわれは十分には理解できませんでした。なので、どうか、聖なるダルマを、旋律素晴らしき歌に乗せて説いてください。」


 そこでロレーパは、心に無常の理解をもたらす、この六つの修行の励みの歌を歌った。



 この心は、
 白き氷河の山に立ちこめる霧のよう。
 人は、霧が消えるときを知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 それが消えるのは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。

 四つの元素から成るこの幻影の身体は、
 朽ちた木の根のよう。
 人は、木が倒れるときを知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 それが倒れるのは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。

 負けず嫌いの先祖によって建てられた所有地は、
 魔術師の幻影のよう。
 人は、それが崩壊するときを知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 それが崩壊するのは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。

 貪欲によって集められた富は、
 蜂によって集められる蜜のよう。
 人は、蜜を楽しむ者を知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 他者がそれを楽しむのは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。

 心地よく、愛情深い親類縁者は、
 市場に集まる旅人のよう。
 人は、旅人が散り散りになるときを知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 彼らが散り散りになることは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。

 血を分けたあなたの息子たちは、
 百歳の老いぼれのよう。
 人は、彼らがあなたを助けるかどうかを知る由もないのだから、修行に頼りなさい。
 彼らはあなたを助けないことは間違いのないことなのだから、聖なるダルマに頼りなさい。



 このように、ロレーパは歌った。

 大いなる信が彼らの後援者に生じた。

 その後、ロレーパが北のウリに住んでいたときに、このときの三人の牧童たちと、カルレクという女性の後援者と、他の数人がそこにやって来て、髪を切り、名を変え、僧、尼僧となった。
 彼らはロレーパから教えと伝授を受け、空性の瞑想と、けがれのない光明であるマハームドラーの聖なるダルマの見解を与えられた。
 このようにして、遮られることなき経験の遊戯が彼らの中に生じた。
 この修行だけを為すことで、彼らのうちの何人かは、隠遁所から隠遁所へと気ままにさまよい、悟りを得て、智慧の確信を確立した。



 

コメント(0)

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

超宗派・仏教 更新情報

超宗派・仏教のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング