超宗派・仏教コミュの準備段階の修行について

準備段階の修行について


ディルゴ・ケンツェー・リンポチェ






☆一般的な準備修行



　『究極の如意宝珠のエンパワーメント』には、こう説かれている。


「まず、空のヨーギーの偉大なる主であるグル・サマンタバドラは、きわめて深い献身と揺らぐことのない信があり、速やかに完全な悟りを得ることを熱望する弟子を、受け入れるべきである。」


　このように、資格ある卓越した師（栄光ある守護者）は、解脱を渇望するふさわしい弟子を受け入れるべきである。
　まず師は、道に対する準備としてエンパワーメントを通して彼らを成熟させるべきである。そうすれば彼らは、完全な解放という永遠の至福を得るためのあらゆる手段の中で究極的に迅速な道、つまり八万四千のダルマの本質、九つの乗り物の頂点である、ゾクチェンの最も深遠な意味を修習できる。



　『究極の指導マニュアル』には、こう説かれている。

「そのとき、エンパワーメントを通してあなたの存在を十分に成熟すること。」


　このように、準備修行を始める前に、エンパワーメントが、伝統に従って遂行されるべきである。

　エンパワーメントは、あなたが深遠な意味を聴いたり、読んだり修習することを可能にする許可を単に受け入れることである。しかし、あなたの存在の流れにおけるエンパワーメントの生命力を維持するのは、サマヤである。

　根本テキストには、こう説かれている。

「教戒を守ることによって、あなたの心の流れを純粋に保ってください。」


　このように、自分の心の流れを純粋に保つために、自分の目を守るように、一般には個人の解放、菩提心、秘密のマントラなどの誓い、そして特別には、一般的な、特別な、そして最高のサマヤの根本と支分を守ることが大切である。


　次に、道のための一般的な準備修行に関しては、放棄の態度を発生させること、現世から出離すること、菩提心、ヴァジュラサットヴァ、マンダラ供養、そしてグルヨーガ、七つの支分の供養などがある。


　これらによって、無明を浄化して、功徳の蓄積を集めるために、精進しなさい。


　雪山、洞窟、森林に一人でこもり、快適な座に座り、あなたの師に一心に懇願し、慈悲や無常の教えで自分自身を鼓舞しなさい。


　まさに修行を始めるとき、次のように熟考しなさい。

「私は修行によって、何ものも、この世界もまた衆生も、永遠に続くものはないという真理を、自分自身に熟知させよう。
　輪廻は空であり、あらゆる輪廻的な行いは何もないが、しかし同時に、悪業を原因として惨めな悪果が生じるという真理に対しての疑いを晴らそう。」

「そして私は、自由と幸福をそなえたこの人間の身体は、ダルマの修習を容易にする、神々よりも優れた完璧な状態であると認識する。
　このような条件を見つけることは難しいと認識し、そしてこの現在の人生の無意味な活動にそれを浪費せず、私は、本質的なダルマの修習に集中しよう。
　ダルマの修習の基礎として放棄の心を持ち、ダルマの修習の大切な柱としてはカルマの法則に対する信を持って、あらゆる思考、言葉、行為を善なる行いに適用させることに、私は、最大限の努力をしよう。
　死は警告なしにやって来て、その状況は不確かであるので、私は未来に対する計画にのめり込まない。」

「意味深いこの道は、至福（つまり貴重なる解脱の状態）に至るための優れた道である。したがって私は、他の事はさておき、徳の高い思考、言葉、および行為の実践に精進する。　
　これを達成するための方法について、そして、何を適用し何を捨てるかについて、私は師に従って、師の言うとおりに正確に行なうことによって、解脱への道に誤りなく入るだろう。」


　このように考えた後、あなたの前の空間に、栄光ある守護者であり根本グルと同一であるサマンタバドラを観想する。静寂と憤怒の神々の集会も、侍者とともに空いっぱいに現れる。かれらの面前で、あなたと他のあらゆる衆生は身体、言葉、および心に一致して、行動する。
　いちずな信と献身で彼らに完全に帰依し、今から悟りに至るまで彼らを避難処とすることは、相対的で、臨時の避難処といわれる。
　それらは皆、自己存在の認識（精髄・本性・能力から成る智慧）から根本的に分けられないことを認識することによって、非二元的な見解の連続性を維持することは、究極的な、結果的な避難処といわれる。

　これら二つを統一して、このように述べられる。


「ナモー
　空の精髄であるダルマカーヤの中で、
　光輝く本性であるサンボーガカーヤの中で、
　多種多様の能力であるニルマーナカーヤの中で、
　私は悟りに至るまで、避難する。」


　この詞章を、何度も繰り返して唱えなさい。



　そして、あらゆる道への門を開くために、次のように熟考しなさい。

「我々は、非二元的なダルマターという唯一の状態の中で、根本的に悟っているにもかかわらず、あるがままの本性を認識せず、迷いとカルマの結果によって苦しむ衆生を、慈悲によって、誤りのない究極の状態に連れて行こう。」


　そして、次のように唱えなさい。

「ホー
　すべての衆生を、空なるブッダフッドに導くために、
　私は、大いなる完成の教えを通して、自己存在の認識というダルマカーヤを悟ろう。」


　このようにして、道の生命力として、悟りに向けての決意を、しっかりと保ちなさい。



◎ヴァジュラサットヴァの瞑想と懺悔

　瞬間瞬間の概念的な無明が浄化されないなら、あなたは、自己存在の覚醒という自然な顔を見ないだろう。したがって、四つの力の懺悔をおこないながら、あなたの頭上にグルと同一であるヴァジュラサットヴァを観想し、甘露の降下と浄化の観想をおこないなさい。ヴァジュラサットヴァの百音節と六音節のマントラを、できるだけ多く唱えなさい。
　この懺悔の修習は、あらゆる無明や障害を取り除く方法である。



◎マンダラ供養

　十億のスメール山の王国（つまり、汚れなき豊かさの大海、光輝なダルマダートゥの智慧の自然な形相）という完全な宇宙を、あらゆる方角にいらっしゃる三つのカーヤの静寂と憤怒のブッダのマンダラに供養するマンダラ供養は、シンプルで効果的な、道の強化法である。これを何度も繰り返しなさい。



◎サマンタバドラと同一であるグルの観想

　あなたの心の連続体において、真実の原初の覚醒の正しい経験を得るには、グルの祝福に頼る以外にない。
　よって、あなたの前の空間に、コンソートを伴って、輝かしく深い青色で、裸で、そして虹の光線に包まれ、蓮華と月の座の上に結跏趺坐で輝かしく座っているサマンタバドラとして、グルを観想しなさい。
　自分の心を信と献身で満たし、あなたの全存在を完全に明け渡して、懇願をしなさい。



◎七つの支分と五体投地

　功徳の集積は、生まれ持った本性の中に根本的に完成されているにもかかわらず、功徳を集積することと悪業を浄化することは、それを十分に実現する重要な方法である。よって、七つの支分に対する一点集中した態度とともに、次の詞章を繰り返し唱えなさい。

「私は、輝ける空（そら）のような、偉大なるグルと如来に対して、礼拝いたします。
　偉大なるグルと如来に、私は供物を捧げます。
　偏在するグルと如来に、私は懺悔します。
　グルと如来の祝福は永遠であり、決して妨げられないので、私は歓喜します。
　輪廻とニルヴァーナを超える、法輪を回してください。
　そしてすべての衆生が偉大なる覚醒に至るまで、この世におとどまりください。
　この功徳によって、すべての衆生が、最高の境地に達しますように。」


　また、あなたが、七つの支分と結びついた五体投地を十万回成し遂げるなら、それはきわめて良いことである。



◎グルヨーガ
　
　最後に、あなた自身の生まれ持った三つの扉から、グルの三つのヴァジュラの偉大なる歓喜の智慧とともに、四つのエンパワーメントを受け、あなたの心とグルの心を混ぜ合わせ、この根本的に純粋な状態の中で安らぎなさい。
　これがグルヨーガの瞑想であり、とても効果がある修行である。よって、結果のサインが現れるまでこれを努力することは、修行を完成させるための序章となる。
　これによって、主要な経験と悟りは、困難なく生じるだろう。


　したがって、口頭の指示をおこなう決心をし、正確にそれらを実践しなさい。それを行うために、雪山や洞窟、森林のような、人々から離れた場所にとどまりなさい。それらは、散漫さやにぎわいから解放されており、瞑想修行の完璧な場所である。







☆特別な準備修行



　最近では、道に沿って徐々に進むための多くの整えられた教えがあるので、十分な数のマントラを唱えながら、まずは、静寂と憤怒の神々の一般的な修習マニュアルに基づいた生成の段階という手段によって、心の集中を成し遂げることが大切である。


　精巧な方法においては、マンダラ、甘露、トルマなどを用いるが、シンプルな方法においては、観想だけで十分である。
　どちらの方法をとるにせよ、成就のための土台は、完全に純粋で究極の存在であるサマンタバドラであり、静寂なヴァジュラダートゥの智慧のマンダラの形であらわれる。
　光輝のこの自発的な現れは、サンサーラ（つまり、混乱した欲深い思考）の源を破壊する、勇猛な憤怒のへールカの形で現れる。
　これらが成就のための土台である。

　成就の方法は、生成と完成の統合であり、それは念正智によって完成される。そしてそこではサマヤと智慧は非二元であり、現われ、存在するあらゆるものは、土台の現れである。
　これを通してあなたは、ダルマカーヤの状態（根本的な純粋な空間）、そしてルーパカーヤの状態（輝かしい意識）を、究極的に悟り得る。


　このように、この方法（生成と完成の統合）は、悟りの三つのカーヤの活動という決して終わることのない装飾のレベルを悟るためには不可欠なのである。よって、寂静と憤怒の神の修習マニュアル（サーダナ）に正確に従い、明確な形と安定した誇りを含んだ生成の段階の観想を純粋に念想することに励みなさい。




　生成の段階を強化するために、寂静と憤怒の神のマントラの読誦をできるかぎり多く（４０万回以上）行ないなさい。
　満月と新月のそれぞれ十日目に、そしてリトリートの始まりと終わりには、祝宴の供養を行ないなさい。
　そして毎日、法の守護者たちへの懇願・供養をおこないなさい。
　もしあなたが身体的なサーダナを伝授され、実践するならば、その修習を成就したとき、様々なシッディが生じるだろう。
　さらに、あなたがこの生成の段階の修習を終えたあと、それを見解や瞑想、テクチューの修行の徹底的な修習と結びつけることは、生成と完成の自己充足的な道となるだろう。
　したがって、努力のいらないトゥーゲルの道をまだ実践することができない者にとって、このような方法による実践は、実質的で素晴らしい道となるのである。




　これらの教えが、系統のグル方の誤りなき伝統であることを理解しなさい。