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カナダの歴史と政治コミュのコロナ・ショック、政界を動かす

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 (1) 与 党
 トルドー首相の妻ソフィー・グレゴワール=トルドー夫人が3月12日、新型コロナウイルス検査で陽性となったことを発表したのを受け、トルドー首相は14日間の自主隔離を行い、自宅で政務を執った。
 シーマス・オリーガン天然資源大臣とメアリー・ン中小企業・輸出振興・国際貿易大臣も、トルドー首相とともにカナダ探鉱者開発者協会カンファレンスに参加したが、参加者の中に陽性感染者がいたため、自主隔離を行った。

 (2) 議 会
 コロナ騒動のため、連邦議会は先々週にいったん中断され、次は4月20日に召集される予定になっている。
 ほとんどの州議会も、中断されている。マニトバ州・サスカチュワン州・プリンスエドワード島州の州議会は、告知があるまで中断される。ニューブランズウィック州とケベック州の州議会は、4月まで召集されない。オンタリオ州議会は3月19日、ニューファンドランド&ラブラドル州議会は23日に召集された。
 連邦議会では与党自由党が、モルノー財務大臣によって発表された対策について審議するため、議会を一時的に召集することで野党と合意した。
 だが、国中至るところで野党はもはや反対することなく、与党に協力しているように見える。ニューブランズウィック州では、過半数割れの進歩保守党政権に対し、野党が予算案を不信任して倒閣するかどうかが注目されたが、結果は与野党協同で可決された。ノバスコシアでは、最大野党進歩保守党のティム・ヒューストン党首がツイッターで「議論を難しくするのを避けるため、オリジナルコンテンツの製作・発表は中止する」と述べ、州政府サイトのリンクを紹介した。
 コロナ危機の中で与党は頑張っていると評価されているとき、野党が与党に強く反発するのはリスクがありそうだ。レジェ・マーケティング社による世論調査は、自由党ルゴー政権のコロナ対策にケベック州民の85%が満足しており、不満なのはわずか10%であることを示した。意外にも、ルゴー政権を支持する声は野党支持者の間で高く、与党の対策に満足している人の8割は、野党の自由党・ケベック党・ケベック連帯に投票すると回答した。
 連邦政界においても、野党は与党批判を控えている。保守党ウェブサイトは、通常なら政府批判に余念がないが、今は政府による対策を紹介することに専念している。
 ケベック連合のブランシェ党首は先週、連邦政府の対策への支持を表明した。ただし、それが人々に届くまで時間がかかることを懸念すると語った。
 新民主党のシン党首はラジオ番組で、次のように述べた。
「人々が今求めているのは、協力する政治家であり、協力するリーダーだ。その圧力が、今は恐ろしい。」
「トルドー首相は、人々に歓迎される強い処置をとったと私は考えている。だが私が人々から聞いた重大な懸念は、それらの支援が4月末か5月初めまで人々に届けられないということだ。多くの人が、それまで持ちこたえられないだろう。」
 このような「デタント」は、いつまで続くだろうか。ドイツ軍が1914年8月にフランスへ侵攻すると、野党自由党のローリエ党首は「目の前に危機があるかぎり、我々は質問しない、批判はしない、例外はない」と述べ、保守党ボーデン政権を支援すると発表した。自由党は、保守党議員が作った欠員を埋める補選に候補を立てず、無投票で当選させ、1916年に予定されていた総選挙の1年延期にも同意した。
 だが与野党蜜月は、長くは続かなかった。ボーデン首相は自由党を分断し、徴兵制に賛成する自由党議員とともに大連立内閣を組織した。そして徴兵制に反対するローリエらのグループを、総選挙で惨敗に導いた。それは与野党蜜月が、野党がとうてい容認できないような政策を与党が採るまでは続くということを示している。

 (3) 党首選
 党首選を予定していた野党各党は、いっせいに延期を発表した。党首選に参入するには、新しい党員と資金を集めるため人々の間を駆け回らねばならず、ウィルスを蔓延させる原因になりかねない。
 ケベック自由党は20日、5月に予定されていた党首選の無期限延期を発表した。ケベック党は6月19日に予定されていた党首選を、8月28日に延期した。どちらの選挙も、感染を避けるため、投票は投票所ではなくインターネットなどで投じられる。
 ニューファンドランド&ラブラドル自由党は23日、党首選を延期し、立候補者は選挙運動を中断するよう要請した。新たな日程は5月1日に決定されるが、7月以降になる。ドワイト・ボール党首(首相)は2月17日、次の党首が選出されしだい辞任すると発表したが、しばらくは留任することになる。
 ブリティッシュコロンビア緑の党の党首選は6月に予定されていて、日程の変更はまだされていないが、党首選に関する全ての公開イベントは中止となった。党は23日、党員の署名はオンラインで集めることと、立候補のための資金の減額を決定した。
 連邦保守党は、党首選の討論会を無観客で行うことと、署名をオンラインで集めやすくするための規則の改訂を行った。だが投票日は6月27日で、立候補に必要な署名と資金は3月25日までに集めるという日程に関しては、延期を求める声が多かったにもかかわらず譲歩されなかった。そのため3人の候補が、撤退した。
 ラディ・ハスニー候補は、国民の健康と医療に重大な危機が迫るなか、献金を求めて回るのは間違っていると述べ、19日に立候補を取り下げた。リック・ピーターソン候補は、党に日程変更を拒否されると、20日に立候補辞退を表明した。マリリン・グラデュ下院議員も、要求された署名と資金を集めることができず、25日に失格と判定された。これで正式に立候補できたのは、ピーター・マッケイ元法務大臣、エリン・オトゥール元退役軍人大臣、デレク・スローン下院議員、レスリン・ルイス氏の4人となった。
 オトゥール候補とスローン候補は、延期を要請した。だが大本命のマッケイ候補は「最大野党のリーダーをできるだけ早く選任することで、議会制民主主義が機能できる」と述べ、延期に反対した。ルイス候補も延期に反対し、「次の党首は『バトル検査済み』となる」と語った。
 このように延期を求める候補たちは、本命ではないと一般に考えられている。世論調査で本命のマッケイ候補は、2番手のオトゥール候補に最大で31ポイントも差をつけている。スローン候補は新人議員で、彼を支持する現職議員はなく、ブラッド・トロスト前議員だけである。ケベック自由党党首選で延期を求めたアレクサンドル・キュッソン市長は、本命ドミニク・アングラード元副首相に苦戦している。ニューファンドランド&ラブラドル自由党党首選で延期を求めたジョン・アボット元厚生副大臣は、ジョージ・フューレイ上院議長の息子アンドリュー・フューレイ候補に大きくリードされている。
 コロナ危機と戦う政権を非難することが悪趣味と見られる以上に、野党議員どうしが激しく言い争う行為は、より醜悪と見られるだろう。コロナ渦中において党首選を戦うのもまた、難しい舵取りが求められる。野党党首の選任が遅れ、暫定党首を長く置くなら、それも与党に有利に働くことになる。

コメント(23)

 カナダ保守党は3月26日、6月27日に予定されてた党首選を延期すると発表した。新しい日程は、5月1日に決定する。
 新しい党員の入党は4月17日が期限だったが、これも5月15日に延期された。4月に予定されていた討論は、全て中止となった。
 かなり多くの党員が、新型コロナ蔓延を理由に延期を主張していた。立候補を表明していたラディ・ハスニー候補、リック・ピーターソン候補、マリリン・グラデュ候補の3人は、必要とされる署名と資金を25日の期限までに集めることができず、涙を飲んで撤退したが、これら泡沫候補とされた3人を辞退に追い込んだ直後に延期が決定されたことに、関係者は驚きを隠せない。
 グラデュ候補のために運動していたジョーガン・バーク氏は、選挙管理委員会への怒りをあらわにした。
「あなたたちは、我が党を辱めた。みんな恥を知るがいい!」
 (1) 異様に高い与党と政権の支持率
 EKOSリサーチ社が3月19から26日にかけて、18歳以上のカナダ人2304人を対象に実施した固定と携帯の電話世論調査は、政党支持率を自由党40.4%、保守党28.6%、新民主党12.2%、ケベック連合8.6%、緑の党5.9%、人民党2.0%と示した。2019年の前回総選挙での得票率は、自由党33.1%、保守党34.4%、ケベック連合7.7%、新民主党15.9%、緑の党6.5%、人民党1.6%だった。
 ケベックでの政党支持率は、ケベック未来連合51.9%、ケベック自由党19.2%、ケベック党14.4%、ケベック連帯10.4%となった。2018年の前回総選挙での得票率は、ケベック未来連合37.4%、ケベック自由党24.8%、ケベック党17.1%、ケベック連帯16.1%だった。

 レジェ・マーケティング社が3月27日から29日にかけて、18歳以上のカナダ人1590人を対象に実施したオンライン世論調査によると、「連邦政府のコロナ対策に満足していますか」という設問に、「満足」は70%、「不満」は25%だった。
 「州政府のコロナ対策に満足していますか」という設問には、ケベック州では「満足」は92%、「不満」は5%。東部では「満足」は81%、「不満」は13%。サスカチュワン州では「満足」は81%、「不満」は16%。ブリティッシュコロンビア州では「満足」は77%、「不満」は16%。オンタリオ州では「満足」は77%、「不満」は20%。アルバータ州では「満足」は68%、「不満」は27%。マニトバ州では「満足」は64%、「不満」は32%となった。
 戦争や危機にあって、政権の支持率が上昇するのはよくある現象だが、それでもそれぞれの政権と与党は支持率が異様に高く、特にケベックでは顕著に高い。
 コロナ危機の初期に、トルドー首相が緩慢な動きを見せる間、ルゴー首相は歯切れのいい言葉で語り、支持率を上げていた。だがその後トルドー首相が、緊急措置を立法化するため連邦議会を召集し、カナダ人に「家に戻り家で待機する」よう呼びかけ、帰国者には隔離を義務づけ、休業補償を75%に増額すると発表すると、彼への評価は高くなった。いっぽうルゴー首相は、医療従事者のための防護資材の備蓄が底を尽きつつあると発表してから、支持率を低下させた。
 それでも与党ケベック未来連合とルゴー首相への支持は、圧倒的である。与党自由党とトルドー首相への支持も、前回総選挙より顕著に高い。次の総選挙は遅くとも、ケベック州では2022年10月まで、連邦では2023年10月までに予定されている。
 解散・総選挙を今行えば、過半数割れの自由党が容易に過半数を獲得しそうだが、そうはならないだろう。今投票所に人を集めることは、避けなければならない。アメリカでは大統領予備選が延期され、カナダでも党首選の多くが延期となり、サスカチュワン州とニューブランズウィック州で噂されていた解散・総選挙は実行されなかった。
 (2) カナダ人の意識調査
 EKOSリサーチ社の調査で、「新型コロナウィルスはここ50年にカナダが経験した最大の危機である」という設問に「同意する」は73%、「同意しない」は12%、「どちらでもない」は15%。緊急事態法施行には「同意する」は65%、「同意しない」は16%、「どちらでもない」は17%だった。

 レジェ・マーケティング社の調査で、「新型コロナウィルス感染を恐れていますか」という設問に対し、「非常に恐れている」は20%、「多少恐れている」は42%、「あまり恐れていない」は29%、「全く恐れていない」は8%、「すでに感染している」は0%だった。
 「新型コロナウィルスはカナダ経済にとって脅威ですか」という設問には、「重大な脅威」は92%、「多少の脅威」は7%、「脅威でない」は1%だった。
 「新型コロナウィルスは国民の健康にとって脅威ですか」という設問には、「重大な脅威」は77%、「多少の脅威」は2%、「脅威でない」は1%だった。
 「新型コロナウィルスは日々の生活にとって脅威ですか」という設問には、「重大な脅威」は73%、「多少の脅威」は25%、「脅威でない」は2%だった。
 「新型コロナウィルスはあなたの家計にとって脅威ですか」という設問には、「重大な脅威」は54%、「多少の脅威」は35%、「脅威でない」は11%だった。
 「最悪の状況はいつか」という設問には、「最悪の状況は過ぎた」は3%、「今最悪の状況にいる」は23%、「最悪の状況がこれから来る」は65%だった。
 「ここ7日間にどこで買い物をしたか」という設問では、食料品店が71%、薬局が31%、レストランでテイクアウトが20%、コンビニが17%、酒屋が15%、出前が15%、インターネットで食料品を注文が12%、上記のいずれもないは12%だった。

 イノベーティブ・リサーチ・グループ社が3月31日から4月2日にかけて、18歳以上のカナダ人1500人を対象に実施したオンライン世論調査は、ここ7日間の行動について、食料品店やドラッグストアに「行った」が77%、「行っていない」が20%。食料品店やドラッグストア以外に「行った」が43%、「行っていない」が54%。親族や友人と外で「会った」が28%、「会っていない」が70%。親族や友人の家に「行った」が20%、「行っていない」が78%。親族や友人と自宅で「会った」が16%、「会っていない」が81%。少人数で家に「集った」が11%、「集っていない」が85%。少人数と外で「集った」が13%、「集っていない」が84%。50人以上で「集った」が7%、「集っていない」が90%となった。
 「注意しないと他者を感染させるかもしれない」という設問には、「強く同意」が34%、「やや同意」が32%、「やや反対」が9%、「強く反対」が7%、「どちらでもない」が15%だった。
 「感染を予防できる人はわずかしかいない」という設問には、「強く同意」が5%、「やや同意」が10%、「やや反対」が25%、「強く反対」が48%、「どちらでもない」が10%だった。
 「他者と距離を置くことはさほど重要ではない」という設問には、「強く同意」が5%、「やや同意」が7%、「やや反対」が14%、「強く反対」が63%、「どちらでもない」が8%だった。
ノバスコシア州のスティーブン・マクニール首相が住民に語った“stay the blazes home”のフレーズが、作曲されて流行の兆しを見せています。
https://www.youtube.com/watch?v=XK6UnPoQhhA
 危機は往々にして、政権の支持率を上げる。レジェ・マーケティング社による最近の世論調査によると、トルドー内閣支持率は76%で、3月末から11ポイント増加した。政党支持率では、与党自由党は39%で、保守党に11ポイント差をつけており、差は3月から9ポイント広がった。
 ナノス・リサーチ社による「誰が首相にふさわしいか」という調査では、トルドー首相38%に対し、保守党のアンドリュー・シーア党首は17%だった。コロナウィルスが蔓延する前の3月上旬には13ポイント差だったのが、今は21ポイント差に広がっている。

 外出自粛を要請されている中で、総選挙を実施することは考えにくいが、韓国で今月実施されたケースは、危機と好都合な選挙日程が与党にどう作用するかを考える好例となろう。有権者は政府のコロナ対策に満足したらしく、結果は与党が5分の3の議席を獲得する圧勝で、1987年に民主的な総選挙が実施されて以来最大の勝利となった。

 だが危機が去ったあと、支持率が急落した例もある。イギリスのウィンストン・チャーチル首相は、ドイツがオランダ・ベルギーに侵攻した1940年に首相に就任し、ドイツ降伏を見届けたが、1945年7月の総選挙で敗北した。
 アメリカのリチャード・ニクソン大統領の支持率は、ベトナム戦争撤退を発表した1973年3月には69%だったが、1年後にウォーターゲート事件で弾劾訴追されたときは30%以下になっていた。
 ジョージ・H・W・ブッシュ大統領が湾岸戦争に勝利した1991年3月には、支持率が86%もあったが、景気後退は支持率を同年末に50%以下にした。翌年の大統領選時には40%以下にまで落ち込み、ビル・クリントン候補に敗れた。
 ジョージ・W・ブッシュ大統領の支持率は、2000年の就任時では平凡なものだったが、翌年9月の同時多発テロの後、88%にまで上昇した。これは、世論調査が始まって以来最高の数字となっている。彼への同情はその後少しずつ凋落して行き、2004年初めには50%を下回ったが、それ以下に落ちることはなく、同年11月に再選された。2期目の2007年5月には、支持率が最低の28%にまで落ち込んだ。
 1998年1月に着氷性暴風雨がケベックを襲い、5週間停電したとき、与党ケベック党は支持率49%で、最大野党自由党に8ポイント差をつけた。だが同年11月の総選挙では、ケベック党は過半数を獲得できたものの、得票率では自由党をわずかに下回った。
 1970年の十月危機で、ピエール・トルドー首相は戦争措置法に基づく戒厳令を施行して批判された。だが12月の世論調査では、与党自由党の支持率は59%で、最大野党進歩保守党に37ポイントも差をつけた。1968年総選挙での得票率は、自由党45.4%に対し進歩保守党31.4%で、14ポイント差しかなかった。だが支持率はその後じりじりと低下し、1972年初めには進歩保守党を下回った。同年10月の総選挙では、トルドー首相は過半数を失い、野党転落寸前となった。定数264のうち109議席しか獲れず、進歩保守党は107議席とわずか2議席差で、新民主党の協力でかろうじて政権を運営した。

 トルドーがもしも1972年総選挙で敗れていたら、1期で退任していたら、その後の1982憲法制定もなかったことになる。そうなると彼の息子ジャスティン・トルドーは、今のカナダを率いてはいないだろう。現在のところ世論は、未曾有の国難の中彼はがんばっていると評価しているようだが、それが今後ずっと続くという保障はない。
 保守党党首選に立候補しているデレク・スローン議員が、ウェブサイトでテレサ・タム(譚咏詩)公衆衛生局長を非難し、批判にさらされている。
 彼は4月22日、フェイスブックとツイッターに掲示した動画で次のように述べている。
「テレサ・タム局長は、カナダ人を過ちに導いた。タム局長は、辞めなければならない。カナダは、その決定について独立を保つ必要がある。国連、世界保健機構(WHO)、そして中国共産党のプロパガンダは、カナダの公衆衛生において二度と発言があってはならない。」
「いったいカナダのために働くのか、それとも中国のためなのか?」
 彼はさらに、カナダの保健行政トップが、中国共産党政権の虚報を宣伝するWHOの言い分を繰り返していると非難した。

 タム局長は英領香港に生まれ、イギリスで育ち、ノッティンガム大学で医学を学び、2017年にカナダ公衆衛生局長に就任した。中華人民共和国の国民だったことはない。彼女は、スローン議員の主張を無視した。
「私は、物事に集中するたちである。そして私は、本当に懸命に働いている。毎日20時間以上も。私が今集中していることは、このエピデミックを制圧するため同僚たちと働くことである。雑音のために、気をそらすわけにはいかない。」

 保守党のシーア党首は、コメントを拒否した。
「党首選立候補者の個々の発言や姿勢について、私がコメントすることはない。それは、彼ら自身が説明することだ。最終的に党員は、党首を選ぶときに決断するだろう。」
 なおシーア党首はすでに、WHOによる情報の正確性を疑う発言をしている。
 スローン議員の発言については、保守党内からも異論が出ている。ティム・アポール議員は、ツイッターでこう述べた。
「タム局長への個人攻撃は容認しがたいものであり、我が党を代表する意見ではない。」
 エリック・ダンカン議員は、タム局長の姿勢を評価した。
「このような、日々進化し試されるようなときにあって私には、タム局長とそのスタッフに対し、異論や建設的提案があるかもしれない。しかし私は、彼女のカナダへの忠誠と、カナダ国民に心からの最善を尽くしていることは決して疑っていない。」

 トルドー首相は、アジア系住民への差別が増加していることについて問われ、次のように述べた。
「非寛容と人種差別は、我が国に居場所はない。カナダはその多様性ゆえに、成功した。」
「我々は開かれた、歓迎する、敬意に満ちた国であると決意し続ける必要がある。そしてすべてのカナダ人が、それをあらゆる政治家に期待していると、私は思う。」
 新民主党のシン党首は、スローン議員だけでなくシーア党首についても非難した。
「この危機の初期の頃から、アジア系カナダ人、特に中国系が恐るべき虐待に直面しているのを聞いてきた。スローン議員によるタム局長への発言は、疑いなくこの種の人種差別を煽るものだ。シーア党首に、これを非難する必要があることは明らかだ。」

 スローン議員は立候補にあたり、「謝罪なき保守」をスローガンに掲げている。彼のウェブサイトには「カナダで今起きている言論の自由・信教の自由・思想の自由に対する損害は、看過できるレベルではない」と書かれている。
 保守党のデレク・スローン議員が、テレサ・タム公衆衛生局長の忠誠心を疑う発言をしたことに対し、シーア党首は4月27日沈黙を破り、保守党の見解とは異なると述べた。
「彼の発言と彼の立ち位置について、私は同意しない。それは、我々の幹部会の立ち位置とは異なる。」
「国家に対する誰かの忠誠を疑うのは、適切ではないと思う。それはあまりに深刻な告発であり、相当な証拠がなければならないと私は確信している。」
 だが、スローン議員の幹部会からの除名はありえるかと問われると、回答を拒否した。そして、トルドー首相がすぐに国境を閉鎖しなかったことを挙げ、タム局長がトルドー政権のスケープゴートになってはならないと述べた。

 ミシェル・レンペル・ガーナー議員はツイッターで、スローン議員の発言を強く批判した。
「こんなことを言わなければならなくなるとは思わなかったが、彼女はアジア系だ。中国とカナダのどちらのために働くのか、と言うとき、二つの忠誠があることが前提されている。二重忠誠デマは長い間、反ユダヤの文脈において、また人種差別を繰り返す目的で使われてきた。」
 いっぽう党首選に立候補しているレスリン・ルイス氏は、スローン議員へのバッシングは行き過ぎていると述べた。
「カナダのような自由で民主的な社会では、人種差別だと糾弾されることなく、WHOや政府や、あるいは政府高官に異議を申し立てることが許されるべきだ。」
 党首選本命のピーター・マッケイ元法務大臣と対抗馬のエリン・オトゥール元退役軍人大臣は、この問題にコメントしていないが、中国がウィルスを広めたと非難する声明に二人とも署名している。
 保守党議員の有志が、デレク・スローン議員を幹部会から除名するための署名を25人分集めたと、ハフィントン・ポストが5月8日に報じた。
 党則によると、上下両院議員からなる幹部会の20%の署名があれば、幹部会は秘密投票を行い、過半数の同意があれば除名される。現在下院121名・上院24名の計145名いるため、署名は29人分必要となる。
 幹部会は8日に召集されたが、投票は行われなかった。
https://www.jiji.com/jc/article?k=20200430040021a&g=afp
 英語とフランス語の2言語を公用語しているカナダで、新型コロナウイルス流行の巻き添えとなる形で「フランス語」がとばっちりを受けている。
 カナダでは、製品やサービスに2言語での表示を義務付けている。だが、カナダ政府はこのほど、新型コロナウイルス対策の特例として、英語の表示しかない輸入消毒剤の流通を許可する決定を下した。
 また、主要な生活必需品を新たな供給源からの輸入に頼らざるを得ない状況にもなっているが、こうした輸入品に2言語表示の義務付けは適用されない。
 ジャスティン・トルドー首相は28日、「今われわれが置かれているのは極限状態だ」とし「一定の状況下では、1言語だけで書かれた警告や表示も容認する用意がある」と述べ、この決定を擁護した。
 一方でトルドー氏は、「もちろんわが国の2言語主義は、カナダのアイデンティティーの問題だけではなく、消費者の安全性に関わる問題でもあるので、こうしたこと(1言語表示)は起きないことが望ましい」とも述べた。
 だが、この措置にカナダのフランス語圏選出の議員らは激怒し、「危険だ」と主張するとともに、数世紀にわたってフランス語を母語として保護するために闘ってきた人々への「敬意を欠いている」と批判。ルネ・コルミエ上院議員は、「どんな理由であっても、わが国の2言語公用制に敬意を欠くことは正当化されない。保健衛生の問題でもあり、安全の問題でもある」と述べた。
 また、カナダ公用語局のレーモン・ティベルジュ局長は、フランス語話者の人口が多い東部ニューブランズウィック州とオンタリオ州で、公衆衛生当局がフランス語を使って発表していないことは残念だと発言。特にカナダで約3000人が死亡している目下の新型ウイルス流行下においては、政府機関が発するメッセージはフランス語話者にも理解できるものでなければならないと指摘した。
 しかし、トルドー首相は、ここへきて製造内容を変更して医療装備や手指消毒剤を生産している全ての企業が、2言語を操るスタッフを擁しているわけでも、2言語表示を可能にする能力があるわけでもないと述べた。
 最新の国勢調査によると、カナダ人口3700万人のうち約4分の1が、日常的にフランス語を使用している。
 CBC(カナダ放送協会)が6月30日に発表した政党支持率調査は、自由党40.6%、保守党28.2%、新民主党15.6%、ケベック連合6.6%、緑の党6.2%、その他2.9%という結果になった。ここから導かれる予想獲得議席は、自由党188(155〜239)、保守党101(65〜121)、ケベック連合26(14〜39)、新民主党21(5〜38)、緑の党2(0〜7)、その他0(0〜2)(定数338議席、括弧内は最少値〜最大値)となる。
 ケベックでの政党支持率は、自由党40.4%、ケベック連合28.7%、保守党12.9%、新民主党10.4%、緑の党5.3%、その他2.3%だった。ここから導かれる予想獲得議席は、自由党41(34〜44)、ケベック連合26(22〜34)、保守党10(7〜10)、新民主党1(1〜3)、緑の党0(0〜0)、その他0(0〜1)(定数78議席)となる。

 与党自由党の支持率は、2月末には保守党を下回ったが、3月中旬には首位を回復した。ケベックでも2月末にはケベック連合を下回ったが、4月中旬には首位を回復している。保守党が首位の地域は中西部だけで、自由党はケベックのほかオンタリオ・ブリティッシュコロンビア・東部で首位に立っている。
 CBCは自由党過半数の確率を84%、自由党少数政権の確率を15%、保守党少数政権の確率を1%と算出している。自由党は最少値になっても、保守党の最大値を下回らない。今総選挙が実施されれば、自由党が容易に過半数を獲得することに疑いの余地はない。
 マギル大学大学院で政治学を学ぶアンガス・ブリッジマン氏と彼のチームは、2500人を対象にした調査を実施した。その結果、カナダ人の約16%が、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を新型コロナの最も主要な情報源とすることがわかった。
 だがSNS上では、様々なタイプの誤情報が飛び交っている。そのうちの一つに、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が新型コロナウィルスを開発したというものがある。フェイスブックの「ケベックにおけるマスク着用義務に反対」というグループには、2万2000人以上のメンバーがいた。
 世界保健機関(WHO)は、新型コロナ関連のデマを「インフォデミック」と呼んでいる。カールトン大学の研究チームが5月に発表した研究は、カナダ人の46%が次の4つの誤情報のうちの少なくとも1つを信じていることを示した。
・新型コロナは中国の研究室で開発された
・5Gは新型コロナを拡散する
・ヒドロキシクロロキンは新型コロナの治療に役立つ
・食塩水で鼻うがいすると感染予防になる

 アレクサンドル・バリエ氏(29歳)は、ルゴー首相が定めたマスク着用義務に反対し、モントリオールの事務所前での抗議デモに参加した。彼はマスクを犬の口輪にたとえ、新型コロナの世界的流行を信じないと言い放った。
「我々は、自由に生きる。我々は、動物のように制御される世界にいない。」
 アントニオ・ピエトロニロ氏(65歳)は、新型コロナの世界的流行は「でっちあげだ」と言い、政府はマスク着用を義務付けた後、予防接種を強制するつもりだと警告した。
「ワクチンが安全だという証明なしに、政府は接種しなければならないと言うだろう。」
 ウェスタン大学で歴史学を教えるアリソン・ミーク教授は、新型コロナに関する陰謀論は、反予防接種運動と親和性があり、また80年代に広まったエイズ関連のデマにもよく似ていると指摘した。
「恐怖が広がるとき、人は容易に非難できる相手を必要とする。彼らは誰かを指して『あはは、あなたがそうなの?やらかしちゃった悪い奴がここにいる』と言いたいのだ。」
 新型コロナへの恐怖は、外出禁止からくる欲求不満と相まって、陰謀論を増大させた。彼女は、陰謀論は事実と証拠で検討される必要があり、人々が情報を得ている情報源について批判的に考えるよう奨励されるべきだと付け加えた。
「これらの陰謀論のため、人々が死に瀕している。我々はそれを止めなければならない。」
 保守党は1月20日幹部会で投票を行い、デレク・スローン下院議員を幹部会から除名した。スローン議員は無所属議員となる。彼は2020年党首選に立候補した際、著名なネオナチ活動家ポール・フロム氏から131ドルの政治献金を受けていたことで非難されていた。
 オトゥール党首は、彼が社会保守主義だから除名するのではないと説明した。
「我々は、多くの国民と同様に、議会において異なる性質を持つ議員たちを抱えている。」
「保守党は、あらゆるカナダ人を反映する大きな組織である。あらゆるバックグラウンドを持つ人が、我が党に居場所を持つ。」
「保守党幹部会は、特定の一行動ゆえでなく、1年以上にわたり保守党に対し無礼かつ破壊的言動を続けてきたことにより、デレク・スローンの除名を可決した。」
「これらの行動は、党を発展させる我々の努力と、我々がするべき任務に集中するのを逸らすものである。先週の問題は、単に最後の藁に過ぎない。」
 スローン議員は、献金は「フレデリック・P・フロム」名義で行われており、気づかなかったと主張した。そして、フロム氏が正式に入党し党首選で投票した事実を挙げ、党のやり方は偽善だと批判した。だが保守党広報のコリー・ハン氏は、フロム氏を入党させたのはスローン陣営であり、保守党は後に彼の党員資格を剥奪し、献金と党費を返金したと反論した。
 スローン議員はさらに、自分が追放された真の理由は、影響力があるからだと語った。
「『駱駝の背を折った最後の藁』(筆者注※「堪忍袋の緒が切れる」を意味する慣用句)というのは本当だ。党大会の開催が迫る中、私は多くの党員を獲得しているのだから。」
 3月に開催される党大会で、スローン議員は右翼的綱領を採択させるため、右翼や社会保守主義者を勧誘しており、党員名簿を入手し自動電話をかけた疑惑を持たれ、党が調査している。

 2020年党首選は、本命のマッケイ候補だけが左派で、ほかの3候補は右派だった。1回投票するごとに一人ずつ脚切りされるシステムにおいて、敗退した候補の票を獲得するには、オトゥール氏は右翼的政策を訴える必要があった。実際オトゥール氏は、スローン議員の数々の問題発言を、一貫してかばって来た。だが党首選は保守党員だけが投票するのに対し、総選挙は全国民が投票する。そこでオトゥール党首は、党首選では当選するため右寄りの政策を訴えても、総選挙では中道寄りに軌道を修正する必要があるだろう。
 スローン議員やルイス候補は、トランプ人気に便乗しトランプ・マニアの票を獲得するためわざと過激な主張をしていた形跡がある。だがトランプ氏は、議会暴動を扇動した疑いで弾劾訴追され、20日に退任した。一部の人々を熱狂させたトランピズムに終わりが見え、自由党が保守党にトランピズムのレッテル貼りを仕掛けるに至り、オトゥール党首はトランピズムとの訣別を宣言する必要に迫られた。彼は17日、議会暴動を「おぞましい」と非難したうえ、中絶容認・LGBTの権利・先住民との和解促進を宣言する声明を発表し「我が党に極右の居場所はない」と断言した。スローン議員の献金問題が報じられたのは、その声明発表の直前だった。

 2020年4月には、中国系のテレサ・タム公衆衛生局長に対し「カナダと中国のどちらのために働くのか」と問うて、党内で除名騒ぎに発展したが、このときは除名されなかった。
 だが12月には、連邦議会でオトゥール党首が政府に「コロナ・ワクチンの配布が遅い」と批判していたとき、スローン議員はワクチンの危険性を訴え、党首の面目を丸つぶれにした。
図:「女性差別」「ホモ差別」「人種差別」、3つ揃うと保守党から除名。ほかの議員たちは一つか二つなのでセーフwwww
「クイズ100人にききました」風のクイズ番組。自由党チームと保守党チームに分かれ、互いに相手陣営を貶している。
「カナダ共和国国家元首兼最高司令官」ロマーナ・ディドロ氏、COVID-19ワクチン排除を命令
https://twitter.com/mayun8322/status/1400304243915911169
https://news.yahoo.co.jp/articles/f8ba0569f6c16e3c54751860dd90309d6b7e8f9d
前回「カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック」を書いたのが3月1日。【m(カナダ在住ブロガー)】
あれから3カ月、カナダでも東京オリンピック・パラリンピックの報道は増加した。その殆どが「開催されるか否か」「安全か否か」だ。
既に大会まで2カ月を切っているのに、いまだに開催されるかどうか安全かどうかがuncertain(不確実)なのだ。
カナダでも「パンデミックなのにオリンピックをするのか?」という疑問と葛藤が存在している。
2020年3月、ICOのアスリート委員であるヘイリー・ウィッケンハイザー氏(6回オリンピックに出場し金メダルを4個持つ元アイスホッケー選手。2021年5月にメディカルコースを修了し'ドクター'となった)は自身のtweetで「この危機(コロナ禍)はオリンピックより巨大です」「IOCがオリンピックを強固に進めると主張しているのは、人類の今の状況を考えると無神経で無責任なことだと思います」と述べ開催延期のきっかけを作った。しかし、IOCや周囲はこの彼女の発言に「ハッピーではなかった」らしい。
陸上競技のチャールズ・フィリベルト=ティブートット選手はウィッケンハイザー氏の発言を受けて「人々は、本当に打撃を受けている。事業を営んでいる人たち、解雇される人たち... それなのにIOCは『まだ大会を開催する』と言っている。無神経だと思う」、「もっと大きな問題は、人々の健康や安全をIOCはあまり配慮していないところだ。選手は苦労しているが、私たち以上に苦労している人はたくさんいる」と選手という立場でありながら、コロナの危機に際してオリンピックは最優先されるべきではないことを指摘。[参照: 'Insensitive and irresponsible': Hayley Wickenheiser calls out IOC decision on Olympics|Global NEWS]
結果としてカナダIOCが「2020年の夏に予定通りに開催されるのであれば参加しない」と発表、これに賛同する国が現れ、開催延期の運びの糸口となった。
そして2021年の4月、再びヘイリー・ウィッケンハイザー氏は「オリンピックの決定は、IOCではなく(オリンピックの利権に関わらない)医療の専門家であるべきだ」と発言。大会に注ぎ込まれたトレーニング、準備、資金は理解できるが、最終的には「安全性と公衆衛生を重視すべき」、「大会を開催するのであれば、非常に明確で透明性のある説明がなされるべき」とCBC(カナダの公共放送局)に語っている。[参照: Hayley Wickenheiser again sounds alarm, saying wrong people making decision on Olympic Games|CBC]
5月19日にはトロント大学の感染症疫学者であるコリン・ファーネス氏は「世界的なパンデミックの際の最悪な行動は、世界中から大勢の人が一箇所に集まり、密集して混ざり合い、また戻ってくることだと思います」と発言。[参照: 'Risks just too high': Calls grow to cancel Tokyo Olympics amid Japan's COVID-19 surge|Global NEWS] オリンピック開催は、まさにこの『最悪な行動』に当てはまる。
つまり、カナダはパンデミックの中でオリンピックを行うことにかなり懐疑的だ。
一方でIOC委員のディック・パウンド氏は、IOC会長のトーマス・バッハ氏が6月の日本訪問を中止したにもかかわらず、「東京オリンピックは予定通り開催される」と述べている。[参照: IOC's Dick Pound says Tokyo Olympics to move ahead despite pandemic concerns|CBC]
同じIOCでもアスリートから選抜されたICOアスリート委員でありヘイリー・ウィッケンハイザー氏は医学の知識とサイエンスに基づき人々の健康と命のリスクを考慮した発言をしている。一方で、古参IOC委員のディック・パウンド氏は「菅首相が中止求めても開催」「アルマゲドンない限り五輪開催」など傲慢な発言を繰り返している。まさに対極である。カナダで圧倒的支持を誇るのはヘイリー・ウィッケンハイザー氏だ。日本では森元会長を辞任に追い詰める一端となったtweet「この人を絶対に追い詰める」が有名。同時に彼女の『政治的意図を無視する姿勢』は利権絡みの人々からは疎まれやすい。ディック・パウンド氏のオリンピック強行開催発言はカナダ国内でさえ「傲慢なIOCの象徴」「カナダの恥さらし」と嫌悪感を示す人が多かった。一方で彼の発言はIOCの横柄さを表しているのでメディアには重宝されているように思う。
5月中旬に行われた東京オリンピックに対するカナダの世論調査によれば、「東京オリンピックにカナダの選手は出場すべきではないと思う」と答えた人は42%、「参加すべきだ」と答えた人は39%だった。「東京オリンピックへの出場は安全だと思うか」という質問に対しては、46%の人が「いいえ」、35%の人が「はい」、19%の人が「わからない」と回答。『行くと決めても、行かないと決めてもOK』という『どうでもいい』感が漂う結果となった。調査を実施した会社は結果にショックを受けたことを認め「オリンピックはテレビで大きな視聴率が取れるので、オリンピックを楽しもうという意欲がもっとあると思っていた」と語っている。[参照: Canadians divided on sending Olympic athletes to Tokyo: poll|CBC]
カナダ国内でもオリンピックに対する情熱や熱狂が滑り落ちてしまっている状況を感じずにはいられない。
さてカナダが日本に対して抱く大きな疑問が幾つかある。

<何故、東京オリンピック・パラリンピックをキャンセルしないのか?>
「非常事態宣言下で国民の60〜80%が反対しているのに、何故、キャンセルしないのか?」「何故、強行開催するのか?」「開催するなら何故明確な説明がないのか?」
誰もが安全なオリンピックに疑問を持っている中で、それを実行する価値があるのか?延期した去年よりパンデミックの状態はさらに悪い。それにもかかわらず開催姿勢を見せる。
非常事態宣言下でワクチン接種率が2%台という中、開催する意義と価値があるなら、それは何なのか?
例えIOCが決定権を持っていたとしても国民の殆どが反対している中で、日本政府がIOCに提言もしないというのは何故なのか?
去年の延期決定時よりもパンデミックとしてはより酷い状況となっている。延期は先があるが中止は後がないということなのだろうと推測するが、果たしてそれが医療逼迫の悪化を招いてでもすることなのであろうか?
IOCが頑なに開催を望むのは放映権による収入のためであることがいくつかの報道で指摘されている。
そうであるなら、日本政府が開催を望む理由は何なのか?
開催キャンセルによってIOCから賠償金を請求されるにしても、パンデミックという特別な理由がある訳だし、法外な違約金や賠償金を日本に請求することはオリンピック開催都市の立候補を妨げる行為となり兼ねない。なので交渉の余地はあったはずなのだ。なのにそれをしなかった。IOCと日本政府は強行開催の姿勢を見せているが、日本国民は反対しており、コロナの感染状況も思わしくなく、ワクチン接種率も低い。
特定の利権やお金目当てであるなら準備段階でそれなりにお金が回ったはずである。既にそれなりに政府が懇意にしている企業にはお金が流れているはずだ。開催キャンセルによって巨額の損失になろうともパンデミックを終息させて経済を回復させた方が損失は低いとの見方もある。よって開催の理由は不透明だ。
開催するなら開催するで、それこそ『明確で透明性のある説明』が必要なはずだが、IOCからも日本政府からも、それらはされていないままである。「オリンピック開催が医療逼迫の悪化を齎すのでは?」という問いにも明確に返答はされていない。開催を強固に表明しておきながら、開催への安全性を証明する科学的な数字やデータによる裏付けはない。
この後に及んでも、開催も安全性もいまだにuncertain(不確実)なのだ。
<何故、ワクチン接種が日本は飛び抜けて遅いのか?>
「オリンピック開催国なのに何故ワクチン準備を怠ったのか?」「準備が遅れた時に、何故、然るべき対策を立てなかったのか?」
日本はワクチン接種開始がG7の国では一番遅かった。それでも『ロジスティックには優れている日本だから、あっという間に接種を終えるのかも』という予測もあった。しかし、5月31日時点でワクチン接種完了者は2.7%、1回目の接種完了者は7.7%(データ: Our World in Data)である。
ワクチン供給、予約や接種実行で躓くのは他国でもあった。しかし他国では数週間程度で解消されてきた問題が日本では解消されていない。日本人であれば『トップダウン方式や自治体との連携問題などで初期に時間がかかるのであろう』と問題の原因と背景は何となく想像がつく。しかし、他国からすれば「1年延期されて準備期間があったのに?」「オリンピック開催国なのに?」と疑問でしかないようだ。
カナダでは既に殆どの州でワクチン接種対象者が12歳以上全員になっている。よって、州が定めた順番に従って1回目の接種を終えているオリンピック選手が多い。オリンピック選手がワクチンを打つことは『特権』ではなくなっているのだ。2月にカナダIOCが「オリンピック選手を優先してワクチンを打つ」案を掲げた時は大きな反発があり、その案は却下された。しかし数カ月でそれを特権と感じさせないワクチン接種率をカナダは達成した。
日本は医療従事者や高齢者のワクチン接種でさえ完了していない。こういった事情から日本が開催国としての努力を怠ったようにみえてしまう感は否めない。

<データに基づく具体的なベンチマークや詳細がないのは何故なのか?>
「何故、データや数字がないのか?」「ベンチマークによる可否判断がないのは何故なのか?」「詳細がないのは何故なのか?」
通常、他国ではベンチマークが設定され「感染者数がこの数字に達したら規制強化/緩和」「ワクチン接種率がこの数字になったら規制緩和」と前もってアナウンスされるのだが、日本は具体的な数字を出さない。
オリンピックは開催すると繰り返し言いつつも、日本ではベンチマークとなるワクチン接種率や新規感染者数などを出さない。オリンピックの開催条件もキャンセル条件もない。まさに強行開催であり、サイエンスやデータには基づいていないのだ。なし崩し的とも言えるし、行き当たりばったりとも言える。
日本国民がオリンピック開催に反対している理由は医療逼迫を含むパンデミックの悪化を懸念しているからである。オリンピック自体に反対なのではない。本当に安全なオリンピックが約束されるのであれば、現時点でワクチン接種率も新規感染者数もそれなりに説得力のあるものであるはずだ。しかし、そうではない。
IOCにとって、日本は扱いやすい従順な開催国といえる。しかしながら、国民の声を無視しオリンピックというスポーツイベントのためにパンデミック下で国民を危険に晒すという行動は賞賛されないし、むしろ疑問視されている。
そして矛盾が多すぎる。
不特定多数の接触を避け、限定されたバブルを心がけると言っておきながら、選手村においてアルコールの持ち込みは可能。選手の交流は認める。選手村の選手と一般国民の接触はほぼないと言っておきながら、都道府県にキャンプや合宿予定が入っているので交通機関を使って移動することになる。
加えてコンドームの配布など誤解を生む行為の頻発。パンデミックの中でコンドーム配布。「啓発の一環で持ち帰るためのものである」と主張したところで、わざわざ持ち帰る必要性は甚だ疑問である。選手間での濃厚接触を促す行為だと思われても仕方がない。ワクチンを接種していてもウイルスを他者に感染させてしまうことはあるそうなので、キスなどはしない方がいいそうだ。
今まで日本は『技術大国でコロナも程々にうまく抑えてきた国』というイメージがあった。なので余計に、新規感染者が増え、非常事態宣言下でワクチン接種も進まず、国民の60〜80%が開催反対を唱える中、強行開催するという行為の異様さが際立つ面もある。
<カナダは静観する>
前回記事の「カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック」でも書いたが、2020年と違い、カナダは表立った表明はしないと思われる。開催に反対もしないし開催キャンセルに反対もしないだろう。
既に一部の選手やチームは選考辞退や最終予選に行かない決定をしている。参加に関しては個人やチームに任せるというスタンスをとっているように思う。
IOCと日本が既に開催すると言っているのであれば、選手たちはベストを尽くすだけだろう。開催をキャンセルするというのであれば、選手たちはそれを苦痛を伴って受け入れるだろう。
既にオリンピックはスポーツイベントとしての楽しさよりも、お金が絡むイベントの醜悪さをまざまざと見せつけてしまった。オリンピック・スピリッツはなく、原義は説得力のかけらもなく消え失せ、お金への執着と汚さを浮き彫りにしてしまった。
カナダは東京オリンピック・パラリンピック開催に懐疑的である。開催可否よりも、開催が人間として正しい行為なのかどうか疑問を呈する人が多い。『オリンピック開催よりパンデミックの沈静化を優先させるべき』と思っている人は多いように見受けられる。しかし、カナダは開催国ではないのだ。医療逼迫のさらなる悪化やワクチン接種の遅れがあっても、オリンピック開催を声高に唱えているのは日本なのだ。開催で引き起こされる問題は端的に言ってしまえば『他国ごと』だ。
カナダの選手は粛々と準備するであろうし、ベストコンディションも保つ努力をするであろう。チームや選手が参加が安全なものでないと判断したなら、出場辞退することもあるだろう。
障害飛越競技のエリック・ラマーズ選手は体調不良を理由にオリンピック代表選手選考辞退を申し出た際にこう言っている。「オリンピックはアスリートの祭典ですが、東京では本当の意味での祭典にはならないと思います。祝うべき時ではないのです」(参照: Show jumper Eric Lamaze won't compete at Tokyo Olympics due to health concerns|TRONTO SUN)
アスリートたちに葛藤と苦痛を精神的にも身体的にも与えるオリンピックという点では、東京オリンピック・パラリンピックは突出しているかもしれない。
 トラック運転手らが米加国境などを封鎖する「フリーダム・コンボイ」が長期化するにおよび、トルドー首相は2月14日、事実上の戒厳令に当たる非常事態法の施行を宣言した。同法施行により国民の権利の制限が可能となるため、抗議活動者の資産を凍結し、抗議者の実力排除・トラックの強制撤去が目的と見られる。
 同法施行は、1988年の制定以来初めてとなる。同法の前身である戦時措置法は、第一次大戦・第二次大戦のほか、1970年にラポルト労働大臣が誘拐され殺害された「十月危機」で施行された。最後の例は、現首相の父ピエール・トルドー首相によるものである。

 国境を越えてカナダに入国するトラック運転手は、ワクチン接種を義務付けられた。これに反対するトラック運転手が1月29日、オタワで抗議行動を開始し、いくつかの国境をトラックで封鎖した。なおカナダのトラック運転手の大多数は、ワクチン接種済みである。
 抗議者が全てトラック運転手というわけではなく、政府にテロ組織認定されたスリー・パーセンターズのような右翼団体や、ワクチン懐疑論者などもいた。抗議者の一部は鉤十字を掲げたり、カナダの国旗を上下逆さにしてテリー・フォックス像に貼りつけたり、貧民に給食する慈善団体「良き希望の羊飼い」に食事提供を要求し、暴力を振るった者さえいた。
 カナダ保守党のオトゥール党首(当時)は、抗議活動を支持しない方針を打ち出し、運転手たちの話を聞きたいと語ったが、実際には(直後に党首解任されたため)何もしなかった。キャンディス・バーゲン副党首やピエール・ポワリエーブル議員など、何人かの議員は抗議活動支持を表明した。マイケル・クーパー議員は抗議活動に加わったが、その姿をテレビで映されたとき、背景に鉤十字を掲げている人が映っていた。2月10日にマニトバで3つ目の国境が封鎖されると、暫定党首になっていたバーゲン氏は、封鎖を解き帰宅するよう呼びかけた。
(※カナダ在住日本人のブログ「カナダ人ニュース」は、これらについて意図的に触れていない。)

 アバカス・データ社が1月31日から2月2日まで、1410人の成人カナダ人を対象に実施した世論調査は、抗議活動に共感する人32%に対し、共感しない人は68%だった。支持政党別に見ると、共感する人は人民党支持者で82%、緑の党で57%、保守党で46%、自由党で25%、新民主党で23%、ケベック連合で19%と、人民党支持者に顕著に多かった。
 2月14日に緊急事態法が発動されると、「フリーダム・コンボイ」抗議者の強制排除・逮捕が始まった。首謀者と見られるタマーラ・リッチ容疑者とクリス・バーバー容疑者は、17日に逮捕された。

 連邦議会では、緊急事態法を発動した与党自由党と、これに賛同した新民主党への批判の声が高まっている。保守党のメリッサ・ランツマン議員は16日、連邦議会でトルドー首相に質問した。
「総理は、不当に緊急事態を煽っています。」
「総理はいつ、分別を失くしたのですか?」
 トルドー首相は、これに過敏に反応した。
「保守党議員は、鉤十字を掲げる人々の横に並ぶことができる。彼らは、南部連合旗を掲げる人々の横に並ぶことができる。」
「我々は、仕事に取りかかろうとする、そして生活を取り戻そうとするカナダ人の横に並ぶ方を選ぶ。違法な抗議は、止めなければならない。そして彼らは、そうすることになる。」
 ランツマン議員は、激しく反論した。
「私はユダヤ人で、ホロコーストの生き残りの子孫です。今日という日を除いて、これほど侮辱されたことはありません。総理は、私が鉤十字の横に並んだと言うのですか。謝罪して下さい。」
 ここでアンソニー・ロタ議長から「議会では挑発的な言葉を使用しないよう」注意が入った。
 「フリーダム・コンボイ」支持をいち早く表明し、次の党首本命と目されるピエール・ポワリエーブル議員はSNSで、首相の発言を批判した。
「最低のコメントだ。たとえトルドー氏の発言であっても。」

 保守党のキャンディス・バーゲン暫定党首は17日、連邦議会で「歴史は新民主党には寛容でない」と演説し、緊急事態法施行に賛成した同党を批判した。
 彼女は「大鉈」(sledgehammer)という語を用いたが、これは現首相の父ピエール・トルドー首相が1970年に戦時措置法を発動したとき、これに反対した新民主党のトミー・ダグラス党首が「ピーナッツを割るためにsledgehammerを振るう」と語ったことを意識したものだろう。ピエール・トルドー首相は「ケベック解放戦線はピーナッツとは違う」と反論した。
 新民主党のシン党首は逆に、バーゲン党首に尋ねた。
「我が国の民主主義を攻撃し、市民を困らせている運転手たちを支持したことを後悔していますか?」
 バーゲン氏は党首に就任する前、オタワの公道を占拠する抗議者たちのところに行き、ともに写真を撮らせていた。
 トルドー首相は2月23日記者会見で、緊急事態法の適用を無効にしたと発表した。
「状況は、もはや緊急事態ではない。」
「我々はいまや、既存の法律と条例が人々の安全を保つのに十分であると確信している。」
 サイモン総督も同日、緊急事態法の無効化に署名した。
 連邦議会下院は21日に投票を行い、14日の緊急事態法発動を自由党と新民主党の賛成で承認していた。上院では23日、緊急事態法発動について審議していたが、無効化を受けて中止した。
 ブレンダ・ラッキ連邦警察(RCMP)長官は2月15日、辞意を表明した。3月17日に辞任する。
 2022年の緊急事態法発動は、野党などから強く批判されている。これに関する公聴会で彼女は証言しているが、その対応について辞任を迫られていた。公聴会についてのルロー判事による報告書が、近日公表されることになっていた。

 彼女は2018年4月16日、女性では初の長官に就任した。連邦警察は、元女性警官による2件のセクハラ訴訟を起こされ、ボブ・ポールソン長官(当時)が公式に謝罪し、その辞任を受けてラッキ副長官が昇格した。彼女は、連邦警察には有毒な社風があると認め、その改善を約束したが、それには時間がかかると語った。

 連邦政府がカナダに入国するトラック運転手にワクチン接種を義務づけたのに対し、運転手らがトラックで道路や国境を封鎖する抗議行動「フリーダム・コンボイ」に打って出たが、政府は2022年2月14日緊急事態法を発動し、これを強制排除した。
 緊急事態法の発動は適切だったかどうかについて公聴会が開催されたが、ラッキ長官は発動の1日前にメンディチーノ公安大臣に「既存の法律を通じてすでに利用可能な全ての手段をまだ使い切ってはいないというのが私の見解です」「今起きているさまざまな刑法上の犯罪に対し、既存の権限で告発できる場合があります」「これらの既存のツールは、我々の既存の計画で考慮されており、必要に応じて適宜使用されます」という電子メールを送っていたことがわかった。彼女は13日と14日の閣議に出席しているが、「発言するよう招待されていなかった」ため、緊急事態法発動なしに既存の法律の範囲で解決する計画の具体的内容については、伝えなかった。なおカナダ安全保障情報局(CSIS)は13日、フリーダム・コンボイは国家安全保障に対する脅威ではないと答申している。
 アルバータ州のタイラー・シャンドロ法務大臣は、長官の解任を要求した。
「非常事態法に訴えるという決定の前に、彼女は利用できる全ての法の執行オプションを連邦内閣に知らせることを怠った。」

 保守党のグレン・モーツ議員は、ラッキ長官の辞任について次のように述べた。
「私が思うに、彼女はこの政府や大臣の思惑に引っ張られすぎた。不運だったと思う。」
「彼女が退任して、元気に過ごしてくれたらいいと願っている。」
 新民主党のピーター・ジュリアン議員は、ラッキ長官の退役生活が幸福であるよう願うとともに、制度的人種差別と責任の欠如は彼女の任期中に解決しなかったと強調した。
「次の長官がこれらの問題に対処し、連邦警察がこれらの問題の解決を始めることを確実とするよう、連邦政府が考慮することを望んでいる。」
 彼女は2020年、連邦警察に制度的人種差別はあるかと問われ、「言葉を選ぶのに苦労した」と語ったことで批判された。

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