(3) 「連合カナダにおいて」 さて予告されていたアルバータ主権法だが、提出された法案の正式名称は「連合カナダにおけるアルバータ主権法」(The Alberta Sovereignty within a United Canada Act)だった。法案は、連邦政府に対する独立宣言と受け取られるリスクがあり、党内で相当な反対があったものと思われる。 これは、2006年の「カナダの中の国」騒動を彷彿させる。ケベック連合が連邦議会に「ケベック人は国を構成する」(Quebeckers form a nation)という動議を提出した。この動議は実態としては意味がなく、自党はケベック独立のために努力したが他党が反対したというポーズを取ることで、ケベック州において自党は支持を集め、他党には失わせるという策略だった。そこで与党保守党は「ケベコワは連合するカナダの中で国を構成する」(The Quebecois form a nation within a united Canada)という修正案を作成し、野党自由党と新民主党の同意を取り付け、265対16でこれを可決させるとともに、ケベック連合の動議を否決した。 自由党は保守党案に賛成投票することに決めたが、元ホッケースターのケン・ドライデン議員が造反し、反対投票した。彼は採決に先立ち、下院で騒動の全てを非難した。 「こうでなければならないというほど深刻な感じではないので、これは間違っていると感じる。これはたちの悪い、印象操作的な、ご都合主義的なゲーム、政治的なゲームのようだ。これら全てのゲームと操作が、みんなのためというわけではない。」 カナダの歴史は、ケベック独立主義者に妥協した者は例外なく破滅することを示している。妥協案だったミーチレイク協定は、与党進歩保守党の消滅とケベック連合躍進を招き、政界再編をひき起こした。独立ブラフを使ったチキンゲームは、舵取りを誤ると思わぬ結果をひき起こしかねない。