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カナダの歴史と政治コミュの遺伝子差別禁止法案の修正案が否決

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 遺伝子差別を禁止するS-201号法案の修正案が、3月7日下院で採決され、超党派の反対で否決された。
 この法案はもともと、あらゆる契約・合意の条件として遺伝子検査あるいはその結果の開示を求めることを違法とし、罰則として5年以下の禁固または100万ドル以下の罰金を定めたものである。
 カナダは公営無料医療・国民皆保険が実施されているにもかかわらず、G7で唯一遺伝子差別を禁止する規定がない。それゆえ多くのカナダ人が、結果を悪用されることを恐れ、検査を受けようとしない。その結果、ある種の病気の罹りやすさやを知り、それを予防することができない。
 2015年の総選挙では、自由党・保守党・新民主党の三大政党全てが、遺伝子差別禁止の法制化を公約した。S-201号法案は、「無所属自由党」のジム・カウアン上院議員(当時、現在は引退)が2015年12月に上程した個人法案(※党幹部会で採択されず、党議拘束がない)で、2016年4月に上院で可決され、12月に下院法務委員会を満場一致で通過した。ところが保険業界が激しいロビー活動を行った結果、自由党政権は法案の換骨堕胎を図るようになり、2月以降いくつかの修正案が出されることになった。7日に採決された修正案は、自由党のランディ・ボワソノール議員によって提出されたもので、雇用者が就職希望者に遺伝子検査を受けさせることの禁止と罰則規定を削除するものだったが、党議拘束のない自由投票で、自由党から大量の造反者が出たため、保守党と新民主党の反対で否決された。

 カナダ生命・健康保険組合は、S-201号法案が修正なしに成立すれば、保険料の高騰と保険金の削減につながると警告し、保険契約を除外するよう強く訴え、これまでに73回もの陳情を行っている。同組合は今年1月、保険契約者の85%にあたる、保険金25万ドル以下の契約においては遺伝子検査の結果通知を要求しないというガイドラインを定め、2018年1月1日から実施することを決めていたことを強調した。
「25万ドルの上限設置は、遺伝子検査を通して重要な健康リスクを知った顧客が、これを通知することなく異常に巨額の生命保険契約を申し込むことができないようにするものだ。さもないと、契約者全員の保険料が高騰し、保険金を得る人は少なくなる。」
 だがカウアン元議員は、遺伝子差別が法で禁止されているアメリカ・イギリス・フランス・イスラエルにおいて、巨額の保険金詐欺が起きていない事実を指摘した。
「知っての通り、彼らの論点は、法案が保険業界を壊滅させるというものだ。だが同様の保護法のある国々で、そんなことが起きただろうか。我々が知る限り、保険業界はうまく行っている。」
 自由党のロブ・オライファント下院議員は、引退したカウアン元議員に代わり、S-201号法案の支援者となった。
「カナダにおいて、人権問題を大企業の自主規制に任せるわけにはいかない。」
「子供たちの遺伝子検査を、医師が行いたいのに、将来の差別を恐れて親が拒否することが毎月のようにある。これは特定の病気に対処する医師への足枷であり、最善の治療を受ける子供への足枷である。それは、親がするべき決断ではない。」

 いっぽうジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は、連邦議会による法制定は州の権限を侵害するおそれがあると考え、諸州に手紙を送り、意見を求めた。するとマニトバ・ケベック・ブリティッシュコロンビアの3州が、全ての州の意見を聞きたいので法案は保留にしてほしいと回答した。ところが、法務委員会に召致された4人の憲法学者のうち3人が、法案は違憲ではないと答申した。そこでウィルソン=レイボールド法務大臣は、別の憲法学者の意見をさらに求めたが、反応はなかったという。新民主党のドン・デービス下院議員は、自由党政権が始めた憲法問題について「煙幕以外の何ものでもない」と吐き捨てた。またカウアン元議員は、自由党政権が総選挙で公約したにもかかわらず反対していることを「興味深い」と語った。

 政府の依頼により、もう一つの修正案が3月8日に投票にかけられる。この日は奇しくも、国際女性デーである。
 BRCA遺伝子に異常がある女性は、乳癌になる確率が85%、卵巣癌になる確率が60%とされている。異常のない女性では、それぞれ11.7%と1.4%である。特にヨーロッパ系ユダヤ人(アシュケナージ)の女性は、BRCA遺伝子に異常を持つ人がそうでない人の10倍いるとされている。こうして発癌リスクの高い女性は、職場で昇進する芽を摘まれるかもしれない。また、悪い遺伝子を持っている可能性とその開示を強要されるリスクを回避するため、遺伝子検査を回避し、その結果早期の治療を受ける機会を逃すことがあり得る。
 遺伝子差別を禁止するのは、女性に利するところが多いだろう。法案の骨子を骨抜きにする修正案は、おそらく超党派の反対で否決されることだろう。

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 遺伝子差別を禁止するS-201号法案が、3月8日下院で採決され、222対60の大差で可決された。法案は近日中に、総督の勅裁を得て成立する。
 S-201号法案は、カナダ人権法で保護する対象として遺伝子の特徴を追加し、あらゆる契約・合意の条件として遺伝子検査を求めたり、その結果を開示することを禁止し、罰則として5年以下の禁固または100万ドル以下の罰金を定めている。
 保険業界の陳情を受け、自由党政権はこの法案に反対し、これを骨抜きにする修正案を提出した。大臣全員と政務次官のほとんどは修正案に賛成投票し、かつ法案に反対投票したが、党議拘束がなかったため、自由党平議員のうち4人を除く全員が党首脳に造反し、野党の保守党・新民主党と連携して修正案を218対59で葬り、返す刀で法案を可決させた。

 採決を受けて、カナダ生命・健康保険組合の広報ウェンディ・ホープ氏は声明を発表した。
「カナダ生命・健康保険組合は、S-201号法案が大きな修正なしに本日下院を通過したことに、大いに失望している。いくつかの州と首相と法務大臣によって表明された、法案の主要な要素が違憲であるという見解に、当組合は同意するものである。」
 ジョディ・ウィルソン=レイボールド法務大臣は、法案は保険事業を管轄する州の権限に抵触すると考えたため、州や憲法学者に何度も諮問し、違憲立法の言質を取ろうと試みたが、うまくいかなかった。また自由党政権は、保険契約の除外を企図し、カナダ人権法の禁止条項に遺伝子の特徴を追加する条文以外を削除する修正案を提出した。それは、法案が人口の6%程度にあたる連邦政府職員だけに適用されることを意味するものだったが、8日夕方に超党派によって否決された。
 トルドー首相は、採決の直前に下院で演説した。
「政府は、上程された法案の要素の一つが違憲であるという立場に立っている。政府の立場は法案に反対投票することであり、議員たちにもそのように推奨する。」
 法案を支援してきたロブ・オライファント議員(自由党)は、カナダがG7で唯一遺伝子差別禁止法を持たなかったことについて、この法案はカナダの州と準州が十数年間実現できなかったことへの、連邦の適切な対応であると誇った。
「私は、あらゆる州と準州による補完的な立法を歓迎する。本心だ。私は、そうするなとは言わない。あらゆる州と準州の人権法を改正するがいい。我々には想定内だ。だが我々には、それを上回る連邦政府の権限がある。」

 この日は国際女性デーで、市民団体「平等の声」は下院本会議場に、338の全選挙区から選ばれた338人の18歳から23歳までの女性を送り込んだ。彼女たちは、党派を超えてS-201号法案を可決したことに拍手を惜しまなかった。

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