NavKatze（ナーブカッツェ）コミュのNAVの思い出　「おじさん」編

それはNAVがはじめて大宮フリークスに出演した晩であった。
自ら”東京ローカルバンド”と称していた彼女達だけあって、埼玉県大宮市（現在のさいたま市）の新参ライブハウスは客入り少なめだった。

その晩の対バン（NAVより先に出演）の名は「アベックス」と書かれていた。全く知らない名前のそのバンドは、若くもないがオバサンと呼ぶには失礼にあたるビミョーな女性がヴォーカルをとっていて、他のメンバーはいかにも寄せ集めの”バックバンド”といった感じだった。
ロックでも流行のPOPでもなくて「夜のお酒の友」、といった感じの音楽を冗談なんだかマジなんだかわからない調子で演奏している。けだるい感じのその女性ヴォーカリストをテレビで見かけるようになったのは数年後だ。ちなみに、その人の名は「内田春菊」。

アベックスの演奏を暇つぶし半分に見ていた私だったが、やがて客席で周囲から浮いている一人の男に目がとまった。
こちらの方は”オジサン”と呼んでも決して怒らないであろう中年男性で、グラス片手に一人でノリノリだ。別にアベックスのファンという訳でもなさそうで、酒のついでに生演奏を楽しんでいるみたい。なんでもよかったのだろう。終始リラックスしまくりのおじさんであった。

アベックスの演奏が終わり、お待ちかねのNAV登場。おじさん、あいかわらずグラスとつまみでお気楽モードであったが、NAVの演奏を1、2曲聴くと大きな声をあげた。「おおぉ、イイよぉ！イイよぉ！(喜喜)」。浮きまくりである。
浮きまくりではあったけれど、決して嫌な感じではなかった。「おじさん」とはいっても割りとスマートだったし、人の良さそうな感じ。始終ご機嫌で、結果的にはライブを盛り上げてくれた。
NAVがかなり気に入った様子だ。何気なく入ったライブハウスで思わぬ見つけものをした、って様子。演奏終了後も「イイヨぉ～」とか連発してた。
その後、NAVのライブ会場では毎回そのおじさんを見かけるようになる。雑誌のインタヴューでもファン層について「年齢層は広くて、上は４０代の方とか居るんですよ(笑)」みたいなNAVコメントが見受けられた。

たまたまある晩、NAVライブ会場でそのおじさんと隣り同士の席になった。良く覚えていないのだけれど、その晩のライブは節目的なもので会場も大きめ。ワンマンだったと思う。
今夜のおじさん、いつになくお洒落だ。表情もやや緊張している。ちょうど自分の娘の卒業式とか入学式とかに立ち会う父親の表情。
向こうが私に見覚えあるかは判らないけど、私はおじさんをよく見かけている。しばらく迷ったのだけれど、話しかけてみることにした。ドキドキしながら、、、。
「いつも来てらっしゃいますよね」、とか有体なことから話し出したと思う。NAV以外に好きな音楽なんかについても話した。私も話ベタな方なので、つまらぬことを話していたけれど、良く覚えているのは、おじさんがライブハウスに居た理由だ。
「昔ね、淀川長政さんが”私は毎日映画を観る”って言ってたの。それ聞いて俺も毎日は無理だけど、毎週本読んだり、ライブ観たりしようと思ったんだよ。そうすれば自分がこう、なんか豊かになれるんじゃないかってね。」

おじさんに妻子があったのか、或いはやもめだったのかは分からない。決して変な人ではなかった。どちらかというと男前でもあったし、根のまじめそうな人だった。
あれから時は流れ、当時学生だった私も年齢を重ねている。NAVも居ない。まだあの時のおじさんの年齢には至っていないけれど、毎週ライブハウスに通うなんてこともない。全ては忘却の彼方だ。
おじさん、今頃何処で何をしているのだろう？

コメント(6)

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[1] mixiユーザー 09月23日 16:59

当時、Switchレーベルってのがありまして、
そこのレコードを幾つか買ってるうちに
発見遭遇。チロリンと共に当時の俺の
好きな女の子バンドの双璧でした。
残念ながらLIVEは未見（哀・・

[2] mixiユーザー 09月23日 17:51

主水さん＞
初めまして～エエ話し聞かせてもらいました。
初めて「夕なぎ」を聴いた時の様にグッときました。
また、エエ話し聞かせて下さい。

[3] mixiユーザー 09月24日 00:33

ねこまちさん、毛魔愚列さん、ありがとうございます。

>当時、Switchレーベルってのがありまして、

そうですね。当時switchのレーベルメイトだったカーネーションもNavのライブで知った(対バンだった)アーティストのひとつでした。

毛魔愚列汚連痔路さん、いやぁ難しい名前ですね。後半は”オレンジロード”と読めばよいのでしょうか。つまらん話ですみませんでしたが、先日実家から当時のNAV資料を回収してきましたのでもうすぐ紹介できると思います。
目玉はライブ生録テープおよびライブ会場やファンクラブ会員のみに配布されたカセット音源。最も精力的にライブ活動を行っていた87～88年のライブ９本が残っていました。一切レコーディングされていない曲や、後にレコーディングされたものとはかなり異なる演奏が多々含まれています。UPまでにはもう少々時間がかかりそうですが、見捨てずにお待ちください。

（写真はライブ会場でマネージャーさんにせびって貰った「OYZAC」発売時ポスター）

[4] mixiユーザー 09月24日 01:33

主水さん＞
こんばんわ～
つい先日、毛まぐれオレンジロードに改名したばかりです。
「NAV資料」って響きがエエですね。
こちらこそ宜しくお願い致します～

[5] mixiユーザー 09月25日 01:55

＞主水さん
　ご丁寧にご挨拶頂きまして、ありがとう
　ございます
「Oyzac」懐かしいですねえ。一番良く
　聴いた　アルバムです。
　色々、懐かしいものを、また拝見させて
　頂けると楽しみにして居りますので、
　よろしく御願い致します。
　また、後期は殆ど縁が無くなってしまった
　ので、その辺りの情報も、こちらで得られ
　れば・・と思います　

[6] mixiユーザー 10月16日 22:14

はじめまして。

主水さん、nav の貴重なお話してくださり本当に嬉しい限りです。

mixiに参加できて本当によかったと思ったのは、navの話ができることでした。

高校の時に深夜のラジオ番組で偶然聴いた歓喜の中の曲達にすっかり魅了され、１７年くらいずーっと私の絶対音楽のような存在です。誰かとこの魅力について語り合いたい、と思っていてもなぜか積極的に誰にでも聴かせられないような気がして、余計に一人で抱えていました。

音楽性？というのか音がどんどん変わっても、そのたびにへえ、いいなあ、と思わされてきました。

nav の曲はなんとも言いようが無いくらい、私を侵食しているような、私の心の見えない部分を増やすような感じがして、怖くもあり嬉しくもある、変な感じがします。

おじさんがいいよーと言ってたのがすごくほほえましく、いいな、と思い読ませて頂きました。

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