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蝮☆千夜一夜コミュの週刊『機動戦士ガンダム ガイスト〜鬼の啼く宇宙(そら)編〜』第27話〜思いを染めて〜

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 どこにいけば?
 いつになれば?
 人はすぐに問いたがる
 地に縛られても
 宇宙(そら)を駆けても
 人間は人間だ
 たとえそれが
 新しい人類だったのだとしても
 ナイフ、その一突きで命は消える
 燃焼されて行く命に
 古いも新しいもあるまいに



 突撃する鐘鬼の側は、大佐の率いる機動隊と、ジョンの率いる狙撃隊とに分かれていた。前衛は大佐の隊が務め、やや後方から、ガトルの集めたデータなどを利用して、ジョンの隊が狙撃することで相手戦力を減らす作戦であった。
 対する連邦軍部隊は、ゴッドフレイ大尉率いるティターンズ隊が正面から鐘鬼に打って出る。ライヒとウッズはそこには加わらず、側面から回り込み、狙撃隊の方に向かった。

 ガトルからの観測データで狙撃するジョンとジョナサン。ゴッドフレイの部隊が大佐の隊と激突するまでに、数機が撃墜される。ジョナサンの対艦ライフルでは、さすがに一撃必殺とは行かないまでもかなりの損傷は与えられたし、ガトルのデータと直接リンクしているので、計測がかなり正確にでる分、命中率は高い。ジョンのビームバズーカにいたっては、直撃すればいかにクウェルといえども、耐えられるものではない。
「しかし、数が多すぎる!」
 ジョナサンがぼやいた。
「だが、やらなければやられるからな!」
 ガトルのアルニム機長がジョナサンのぼやきに答えた。ジョンのリックドム?は黙々とビームバズーカを撃つ。ただ連射できないので、定点射撃にしかならず、ビームの破壊力を最大限に生かせるわけではない。
 ジョナサンのザクスナイパーも、対艦ライフルのマガジンを取り替える。
「側面から、例のジムカスタムが来ます!」
 ガトルの索敵手・ガードナーが叫ぶ。
狙撃隊の護衛をしているミッチェルのザクが、狙撃隊とジムカスタムの間に割って入る。
 しかし、相手もスナイパーライフルを装備しているだけあって、ミッチェルのザクの射程外から狙撃してくる。その射撃は狙撃隊の動きを止める効果を発揮し、ゴッドフレイ大尉の部隊がその間に大佐の部隊と交戦状態になった。
「クッ!しまった、取り付かれたか!大佐・・・・」
 ジョンが舌打ちをした。数機を遠距離から仕留めたとは言え、敵は20機以上いる。一方の大佐の部隊は3機にすぎない。
 ジムカスタムの2機は、1機が前衛で、もう1機が後衛に回っている。ミッチェルの機体では到底、対応できるような相手ではない。推力的にも格段の差があるので、ミッチェルのザク?は簡単に振り切られてしまう。
 前衛のジムカスタムが、ジョナサンのザクスナイパーを狙って射撃してくる。ザク系なので仕留めやすいと踏んだのであろう。しかしジョナサンの機体はその射撃をかわしていく。ザク?がベースではあるものの、ジェネレータをリックドムのものに交換してあり、推力もアップさせていたからである。反対にジョナサンのザクがジムカスタムを狙う。しかし、対艦ライフルであるゆえ、動き回るジムカスタムを追いかけるのが精一杯であり、これも決定打に欠けた。その間に、ジョンのリックドム?が援護射撃して、相手を牽制する。
「アルニム!ジムカスタムの動きから未来位置を割り出してこっちに送ってくれ!」
 ジョナサンが叫ぶ。ガトルの解析で、相手の回避パターンから未来位置にライフルを撃ち込むことで、ケリをつけようというジョナサンの考えであった。
「よし!ジョナサン、送る・・・・」
 アルニムの声がジョナサンに届いたその瞬間、声が途切れ、ガトルの反応がロストした。

 鐘鬼の母艦、「スカーヴァティー」を任されたティドウィルが、僚艦であるムサイ級軽巡洋艦「ディーパンカラ」のルドファー艦長と交信していた。
「ルドファー艦長、それは無茶です!」
「ティドウィル、しかし、こうしなければ、三艦とも沈んでしまうかもしれん。それだけは避けなければ。」
 ルドファー艦長が静かに答える。その回線に、もう一方のムサイ級軽巡洋艦「メーガ」のジョーンズ艦長が割って入る。
「ルドファー艦長、その役は私がやろう。」
「ダメだ。ジョーンズ艦長、貴官のムサイは損傷から戦闘力も低下したままだ。それこそ無駄死にだ。ガトルがやられた今、急がなければ、大佐の部隊も窮地に陥る。私の艦が囮になるから、その間に逃げろ。わかったな。」
 ルドファー艦長は、そう言うと「ディーパンカラ」を前線へと向かわせた。
「ジョーンズ艦長・・・・」
 ティドウィルがジョーンズ艦長に支持を仰いだ。このままルドファー艦長についていくのかどうか、それはジョーンズ艦長が決めねばならない。しばらく目を瞑っていたジョーンズ艦長は、目を開けると、
「これより鐘鬼残存艦隊は戦場を離脱。エウーゴ艦隊との合流地点を目指す!」
と命令し、しばらく天を仰いだ。モビルスーツ隊は、上手くいけば後退できるであろうが、ムサイでは無理であろう。これが長年、共に戦った戦友の最期の姿であろうことを、ジョーンズは理解していた。前線へと向かう「ディーパンカラ」に向かって、ジョーンズ艦長は静かに敬礼した。

 ガトルが撃墜されるという事態に、ジョン率いる狙撃隊は一瞬混乱した。感傷に浸っている暇などないのだ。しかし・・・・・
「チっ!敵は初めから、ガトルを狙っていたのか!」
 ジョンが呻いた。うかつであった。相手のジムカスタムは、前衛が囮となり、後衛のジムカスタムでガトルを狙っていたのだ。直撃を受けたガトルの生存者はなかった。
「ジョナサン、ミッチェル!こいつらを仕留めるぞ!」
 ジョンは叫んだ。こいつらをどうにかしないことには、大佐の援護すら出来そうにない。

 一方、乱戦になっている大佐の隊。
 ゲルザクとマザ・Eが主力になり、ウェイヴェルのザクGが援護に回るというフォーメーションで対応するも、相手の数が多すぎて、回避するのに精一杯になる。狙撃隊の援護が停止したのはかなりの痛手であり、ガトルによる戦場のコントロールも不可能な今、個人の超人的努力に期待するより他なかった。しかし、それは、あまりにも絶望的な努力とも言えた。
「このカシラッス・ムレノも舐められたもんだな!」
 ムレノはそう強がって、クウェルに相対する。相手が3機同時にこちらに向かってくる。うち、2機はジムライフルで、残り1機がビームライフルのようだ。ムレノのマザ・Eはビームライフルを装備するクウェルに突進する。相手のビームをかわし、撃つ。その間にジムライフルを数撃食らうが装甲を頼みに、ほぼ無視する。正面のビームライフルのクウェルが逃げ腰気味に回避したが、マザ・Eのスピードからは逃げられず、コクピットをビームライフルで貫かれた。
「まず1機!!」
 返す刀でムレノは、残りの2機を仕留めにまわるが、別の方向からの射撃を受け、それをかわす。そして射線が来た方角にビームライフルを連射すると、爆発が起きた。まぐれでもいい、ともかく2機目の撃墜のようだ。
「うわああ!!」
 その瞬間、機体に衝撃が走る。左脚部にまたしてもジムライフルの被弾。殺傷力は低いとはいえ、命中率はよく、厄介な兵器である。
「まだまだ行くぞ!秋水!!」
 ムレノはマザ・Eを愛称で呼び、取りこぼしているジムライフルの2機に向かう。だが、続いて衝撃、そして閃光。マザ・Eのライフルを持った右腕が吹き飛んだ。
「く!ガンダム頭かよ。」
 ムレノの目に映ったのは、ゴッドフレイ大尉の乗る、ガンダムの頭をしたクウェルであった。ガンダム頭は容赦の無い射撃をマザ・Eに仕掛けて来る。片腕を吹き飛ばされながらも回避し続けるマザ・E。反撃されないと知るガンダム頭は、徐々にマザ・Eに接近し、間合いをつめていく。確実に仕留めようというつもりなのだろう。
「舐めるなよ!」
 ガンダム頭が十分に近づいたのを見計らって、マザ・Eは腰から予備のライフルを左手に構え、そして撃った。
「落ちろ!」
 だが、ガンダム頭には命中しなかった。
「ちっ!さすがに左腕じゃ照準も何もねえな。」
 ムレノは悪態をついたが、威嚇にはなったようだ。ガンダム頭は少し距離をとるようになった。

 この時点で大佐の隊は、大佐とウェイヴェルの組と、ムレノ単体の二手に分断されていた。ゴッドフレイの指揮はさすがと言うべきか。
「大佐、ムレノが!」
「わかってはいるが!!」
 大佐たちも囲まれていて、ムレノを助けに行くことができない。
「このー!」
 クウェルの1機に、大佐のゲルザクがショルダータックルを食らわせる。離れ際にビームライフルで撃ち抜く。ようやく1機撃墜。
「いつまでも、このままじゃあ・・・・」
 必死で回避しながら、ウェイヴェルが叫ぶ。その時だ。
「全機に告ぐ。これから送る座標上の機体は、即刻退避せよ!援護する。」
と通信が入ったかと思うと、いきなり六筋の光が戦域を横切っていく。
「・・・・・っ!早すぎるっつうの!!」
 ムレノがぼやくが、退避する間もなく、メガ粒子砲のビームが切り裂いていった。その閃光の中で、クウェルが1機、巻き込まれて消滅していった。
「ルドファー艦長!!」
 大佐は思わず叫んだ。
「大佐、お供しますよ。」
 静かに笑うルドファー艦長は、ニッと片目を瞑ってウインクする。ばかもん、死に急ぎよって・・・・大佐は心の中でそう思いながらも、なんとも言えぬ表情で、モニターのルドファー艦長に笑いかけた。

 もう一息のところを・・・・ゴッドフレイは唇を噛んだ。ライヒの隊が狙撃隊を牽制しているおかげでうまくいっていたのが、このムサイの援護によって振り出しに戻ってしまう。鐘鬼の艦は三隻とも戦場を離脱すると読んでいたのが、まさか一隻がこうやって自殺行為にも等しい行動を取ろうとは。おそらくは死を賭しての行動であろう。敵ながら天晴れである。
 ゴッドフレイはこれ以上、隊を分けることをためらった。これだけの数を投入しても、まだ互角なのである。ムサイに対して分派などすればバランスが崩れてしまうだろう。このまま押し切るより他になかった。

 「さて、行くか。」
 ネザル中尉はそう言うと、カクタス伍長に目配せする。ブリッジには出撃するとだけ伝え、新しい機体である「ゴルゴン」に乗り込んでゆく。
「いいですか、くれぐれも無理をしないでくださいよ。対艦戦ならともかく、混戦した宙域では味方を巻き込みかねませんから。」
 技術者が念を押す。ネザルは小うるさそうに、相手の顔も見ずに手をヒラヒラさせて応え、
「グラバー、てめえはここで待機だ。船を守ってろ。」
とグラバー軍曹に命令しながら、小太りの身体を窮屈そうにコクピットに沈めていく。
「さあて、こいつの初陣と行くかぁ!ゲラゲラゲラ!」
 下品な笑いを浮かべながら、ネザルはこの禍々しいオーラを発する機体で飛び出していった。

 ムサイの援護により、鐘鬼のモビルスーツ3機は再び合流して戦えるようになった。ゴッドフレイはそのことが面白くない。犠牲を払い、せっかく分断に成功したというのに・・・・味方艦からの援護射撃を期待するには、連邦の艦隊からは距離がありすぎる。
「おい、ゴッドフレイ。困っているようだから助けてやらぁ。ゲラゲラ〜」
 不愉快な声がゴッドフレイの耳に聞こえてきた。ネザルのやつめ・・・あの禍々しい兵器で出てきたのか。
「といっても、まずは、あのS.O.Gの野郎からだがな!」

 ライヒの目論見どおり、ガトルを落としてから鐘鬼の連携は悪くなった。
「しかし、このリックドム?、前のドムとは動きが違う。」
 戦いながら、ライヒはそう感じた。機体が違うせいもあるだろうが、やや押され気味になる。それにビームバズーカの威力にも警戒が必要で、それだけでもかなりのプレッシャーになっていたことは間違いない。だが・・・・
「ふん!どうやら、ビームバズーカもエネルギーが切れたようだな。調子に乗んなよ、いつまで、も!」
リックドム?を捉えようとするライヒ。そのとき、
「うわ!大尉ぃ!」
トーマス・ウッズ中尉の声だ。ウッズはザク2機と戦っていたのだが、接近戦に持ち込まれ、よりにもよってザク?の体当たりを食らい、その隙に羽交い絞めにされてしまったようである。
「トーマス、お前ぇ、何やってる!」
 ライヒが怒鳴る。その目には、ザクスナイパーがライフルをウッズのジムカスタムに向ける光景が写った。間に合わない・・・・
「どいてろよ!オラー!!
 そう叫ぶ声がしたかと思うと、閃光が走り、ジムカスタムを羽交い絞めにしていたザク?を吹き飛ばした。爆発するザク?。そのザク?の腰には、まだ未使用のドラムラインがセットされたままになっていて、その小型ミサイルすべてが誘爆し、ウッズのジムカスタムを包んだ。爆発に巻き込まれ消し飛んでいくウッズのジムカスタム。
「トーマス!!」
 ライヒは叫んだ。
「ゲラゲラ〜、なんだ?巻き添えか?運が無かったなー。ま、所詮、旧ザクなんぞに羽交い絞めにされる程度の腕だ、仕方ねえわな。」
「なんだと!キサマ!!」
 ライヒはゴルゴンの方を向いた。しかし、リックドム?がそれを阻む。
「どけ!あの野郎を!」
 ライヒは味方であるはずのゴルゴンに向かって行こうとする。すると、ゴルゴンのネザルは、
「ぎゃははは!文句は後から聞いてやるぜ。こっちが先なんでな。ゲラゲラゲラ〜」
ライヒをあざ笑いながら、ネザルのゴルゴンは戦場を駆け抜けていく。目指すは鐘鬼の「ディーパンカラ」であった。

 「ジョナサン、ここは俺が抑える!ジョナサンは、あの化け物を追いかけて、ディーパンカラを頼む。」
 ジョンはライヒのジムカスタムと戦いながら、ジョナサンに言った。ミッチェルを失った悲しみに浸っている暇などない。いくら悲しくとも・・・・ここは戦場。
「わかった・・・・ジョン、死ぬなよ!」
「ああ、ジョナサンもな!」
 ジョナサンのザクスナイパーが、ゴルゴンを追って行く。それを見送りながら、
「さあて、前回のお返しだな。」
 ジョンはそう呟いた。

 「艦長、2時の方角より正体不明の敵接近!モビルアーマークラスと思われます!」
 ムサイ級軽巡洋艦「ディーパンカラ」のブリッジで、オペレーターが叫ぶ。
「対空ミサイル用意!いいか、一分でも長く浮かんでいるのがこの艦の使命だ!ヤツを近づけるな!!」
 ルドファー艦長が命令する。
 ディーパンカラより多数のミサイルが発射され、迎撃するが、ゴルゴンの突進力が早く、捉えられない。
「ひるむな!第二斉射いそげ!」」
 その時だ、ゴルゴンの口のように見える開口部から閃光が煌き、ディーパンカラに向かって伸びたかと思うと、強烈な衝撃にブリッジは襲われた。
「な、なんだ?」
「右舷に被弾!1、2番砲塔沈黙!直撃です!!右舷のミサイル発射口もダメです、被害甚大!」
「くっ!なんて威力だ・・・もう1、2撃食らうと危ないぞ・・・」
 ディーパンカラは必死の回避運動を行う。ゴルゴンも自らの突進力を持て余して、ディーパンカラを飛び越えてしまったため、大きく迂回して、攻撃態勢に再び入ろうとしていた。
「艦長!コムサイからです!」
 オペレーターがルドファー艦長に叫ぶ。
「なんだ?つなげろ!」
 モニターにコムサイからの映像が入る。
「艦長、コムサイの発進許可を。行きます・・・今しかないでしょう。」
 緊迫した空気がブリッジを流れる。ルドファー艦長も一瞬沈黙するが、
「・・・・わかった。本当は必中距離まで運びたかったが・・・・」
「自力でも動けますから・・・・では、艦長、長らくお世話になりました!」
モニターでコムサイのクルーがブリッジに対して敬礼した。ルドファー艦長も敬礼で応える。
「艦長!例の化け物が戻ってきます!!」
「よし、迎撃急げ!コムサイを発進させろ、それまでは沈んではならん!」
 ルドファー艦長が叫ぶ。
 ゴルゴンの開口部が再び妖しく光る。
「コムサイ、出ます!」
 その瞬間、ゴルゴンから放たれたビームがディーパンカラを直撃した。爆発に包まれるブリッジ。ディーパンカラは誘爆を繰り返し沈んでいく。その炎の中で、先端からコムサイが飛び出していった。

「隊長!コムサイが脱出していくようですが?」
 カクタス伍長がネザル中尉に報告する。
「んなもん、放っておけ。このまま前進して、例の二隻も食っちまうぞ!きゃははは!」
 ゴルゴンのビーム砲はたいしたもんだぜ・・・・ネザルは、その強力な力に魅入られていた。

 沈みゆく「ディーパンカラ」の映像を「スカーヴァティー」のクルーが見て、静かに敬礼した。
「セガール、行くのね・・・・」
「ああ。ディーパンカラが沈んだ以上、行かなきゃ。」
 ハンガーでザク?のコクピットに乗り込むセガールにターニャが話しかけた。イズ部長もコクピットまで来て、セガールに話す。
「セガール、ジョンのリックドムのビームバズな、あれを受け取れ。」
 セガールにはどういうことか理解できない。あれはもうエネルギー切れなのでは・・・
「リックドムにとってはエネルギー切れなだけじゃ。じつはあのビームバズには、ザク?につなぐコードがあってな、それを接続すると、ザク?のジェネレータからビームバズへとエネルギー供給が行われて、発射できる上に、連射もできるんじゃよ。じゃから、ジョンのヤツにはかわりに実弾のバズーカでも渡しておいて、セガールがあれを使えばよいのじゃ。ジョンにはあれを捨てるなと言ってあるから、大丈夫じゃろ。コードの場所じゃがな・・・・」
 そんな仕掛けがしてあるとは。セガールはザク?にハイパーバズーカを両腕に装備させることにした。
「わかりました、部長。では、行って来ます!」
「うむ、皆を頼むぞ。セガール。」
「セガール・・・・・・」
 ターニャの目に涙が浮かぶ。セガールはそれを振り切るように、ハッチを閉め、
「セガール、ザク?、出ます!」
と叫び、ザク?を宇宙(そら)へと放った。

 どれぐらいぶりだろう・・・モビルスーツに乗るのは・・・
セガールはそんなことを思いながらザク?を操っていた。ゲルググとは機動性がまったく違う感じがする。それだけではない。操縦する感覚も。いや、操縦というものとは、また、違う次元のもののような感じである。
「これがザク?・・・・」
 恐ろしく軽く感じる。感情のエネルギーに反応するという話であるが、あながち嘘でもなさそうな気にさせてくれる。出力も格段に違うので、あっと言う間にディーパンカラの沈没地点に近づいた。そのとき、
「セガールか?」
通信が入った。
「ジョナサン!」
「やっぱりそうか。セガール、お前は真っ直ぐに進んで、そのまま敵艦隊を潰せ!」
「いや、しかし、あの化け物を・・・・」
「あれは俺に任せろ!ぐずぐずしてると、前線の隊が全滅しちまう。あいつらの艦隊をぶっ潰して、こっちが後退するための隙を作るんだ。」
 セガールは思った。あの化け物を、ザクスナイパーでやれるのだろうか?
「ジョナサン、あの化け物に勝算はあるのか?」
 セガールは思わず聞いてしまった。
「・・・そんなもんあるわけねえ・・・だがな、命に換えても船は守る。もう、これしか方法はねえ。棒倒しと同じだ。先に倒したほうが勝つ!だから、セガール!」
 これしか方法はない・・・・・・セガールは意を決した。
「わかったよ、ジョナサン!頼んだよ。」
「そうそう。兄貴の言うことはそうやって素直に聞くもんだぜ。任せとけ。」
 セガールはザク?を前線に向かわせた。
 ジョナサンのザクスナイパーはそのまま「スカーヴァティー」らが退避しつつあるほうへと向かう。そして、ジョナサンはゴルゴンを捉えた。
「ヤツめ、まだ、はっきりとはスカーヴァティーを発見したわけではなさそうだな・・・」
 幸いこちらの位置も探知されてはいないようだ。
「ミッチェルの仇だ!」
ジョナサンは、対艦ライフルをフルオートでゴルゴンに向けて発射した。

 かすかな衝撃とともに、ゴルゴンの計器類に赤いパイロットランプが点滅した。どうやら数発被弾したらしい。
「隊長!食らいましたよ!!7時の方向、ザクみたいです。」
 カクタス伍長が叫ぶ。
「わかっとるわ!」
 さすがに重装甲だけあって、戦闘そのものには差支えがないようだ。
「あの野郎、ザクの分際で!」
「隊長、こいつ、徹甲榴弾ですよ!中で炸裂してしまってまずぜ。」
「なに?そんなビーム全盛の時代に時代錯誤な・・・・被害は?」
「戦闘は大丈夫のようですが、Iフィールドジェネレータが損傷してるようですぜ。」
「使えないのか?」
「今のところ、やってみないとわからんようです。使用できなくはないようですが。」
 ネザルは、ゴルゴンをザクスナイパーに向けた。旧式モビルスーツの分際で・・・思い知らせてやる・・・・
 ザクスナイパーは、先ほどの射撃で、ライフル内の弾を撃ちつくしたようで、マガジンを換えようとしていた。そこにネザルはゴルゴンをぶち当てるようにして乗り込ませ、その左腕のクローアタックによって、ザクスナイパーの胸部上端から頭部にかけて突き刺し、引っ掛けた。引き回すようにして、ゴルゴンは再び、鐘鬼艦隊を目指す。ザクスナイパーの中にいたジョナサンは、猛烈な衝撃によって、意識を失った。
「隊長、このザク、どうするんすか?」
 カクタス伍長がネザルに聞く。
「ぎゃははは、なあに、このままアイツらの船にぶつけてやるのさ!」
 ネザルは下品な笑いを浮かべてそう言った。
「俺たちに楯突いた報いだ。」
 そして、ゴルゴンの視界に、逃走していく二隻の鐘鬼艦隊が見えた。
「コロンブスのほうをやるぜ。たしかコイツが旗艦だったはずだからな!」
 ネザルはカクタス伍長にそう命じた。
 大口径ビーム砲をチャージする。
「さーて、何撃耐えられるかな・・・連中は。」
 ネザルは狙いを定めながら、ニタリと笑う。

 ザクスナイパーのコクピットで気を失っていたジョナサンは、モニターから零れてくる光量で意識を取り戻した。いったい、何が起きているのか一瞬わからなかったが、どうやら、あの化け物に捕まっているらしいことまではわかった。その瞬間、ゴルゴンがビーム砲を放ち、「スカーヴァティー」に命中させた。
「!」
 ジョナサンは必死でこの化け物を止めようとしたが、対艦ライフルがない。どうやら、クローアタックを食らったときに無くしたらしい。武器と呼べるものは、ヒートホークしかない。
「糞!これだけでは・・・・・は?!」
 ジョナサンは思いついたように、ザクの腰に残っていた、最後のマガジンを手にする。ゴルゴンは2回目の射撃に入るようで、エネルギーをチャージし始めていた。まだ、ザクスナイパーの動きには気がついていない。
「チャンスは一回。腕の届く範囲までフルスロットルで一瞬近づき、お見舞いするしかねえ・・・」
 ジョナサンは意を決した。
「もう、お前の好きなようには・・・・させん!」
 そう叫んで、ザクスナイパーをゴルゴンの開口部まで突進させるようにスラスターを吹かす。クローが突き立てられたザクの装甲が激しくめくれて行く。
「いまだ!思い知れ!!」
 ジョナサンは絶叫すると、マガジンを開口部に押し込んで、その上からヒートホークを叩き付けた。閃光とともに、ザクスナイパーが吹き飛ぶ。
「な、なんだ??カクタス、何が起きた??」
 ネザルは何が起きたのか理解できない。
「隊長、ザクです、ヤツが自爆しやがった!」
 チャージしたエネルギーがなくなっていく。
「隊長、大口径ビーム砲、使用不可。左のクローも吹き飛んでます!」
 ネザルはワナワナと震えた。怒りと、そして、死をも恐れぬザクのパイロットの行為に。
「ネザル中尉、帰還してください!艦隊が!」
 母艦からの帰還命令だ。どうやら艦隊が危機に陥ったらしい。
 敵艦を目の前にして、たった一機の旧型ザクのために・・・・・ネザルは悔しさの中で、
「カクタス・・・・戻るぞ。」
それだけをやっと言うことができた。


 刻まれる命の叫びには
 与えられる報酬はあるのか?
 散らせた命が星になるなら
 まだいくらか浮かばれよう
 そう、わかっている
 俺たちの命が生み出すものは
 どうせ新たな憎悪だけ
 そして
 与えられる報酬は
 愛する人の
 涙だけ

〜つづく〜

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