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良忍の融通念仏と浄土教仏教コミュの融通念仏と物象化論

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 私の家の宗旨は融通念仏宗というかなりマイナーな仏教だ。関西でも大阪、京都、奈良以外ではほとんど知られていないだろう。むろん新興の仏教系宗教ではなく、平安時代後期に始まり、浄土宗や浄土真宗に先行する浄土教系の仏教である。
 開祖は天台宗の僧侶で、京都洛北の大原で天台声明を完成した良忍(聖応大師)であり(大原の「音無しの滝」は良忍に関係したもの)、現在の大阪市平野区の大念仏寺を総本山とする。
 私は迂闊にも、父親が死ぬまでは家の宗旨が融通念仏宗とは知らなかった。法事の際に来る僧侶が「南無阿弥陀仏」と念仏を言うことや、私の出身高校の上宮が法然の浄土宗系の学校だったことなどから勝手に浄土宗だろうと思いこんでいたのだった。
 融通念仏宗は日本における浄土教系の仏教のはしりだが、それゆえに後の浄土宗や浄土真宗などとは異なり、華厳教の教えが中枢にある。つまりすべては縁起であり、関係の網の目であるというわけであり、関係の第一次性を物象化論として提唱した廣松渉が評価する世界観を持っている。融通念仏とは、一人の念仏と万人の念仏が融通して一つになるということだが、簡単にいえば念仏の大合唱であり、踊り念仏の音楽版とでもいえるかもしれない。すべては縁起であるとする華厳経的な宇宙に響く念仏の大合唱的な関係ということだろうか。その意味で融通念仏(大念仏)とは、華厳経でいうところの円融の一つの展開といえるかもしれない。
 今でこそマイナーな仏教だが、当時は盛況を極めており、京都の寺の多くは融通念仏になったとされ、その痕跡を示すものとして、嵯峨の清涼寺の嵯峨念仏狂言や壬生寺の大念仏狂言がある。これは融通念仏の僧の円覚が、念仏の教えを広めるために作り出したパントマイムであり、融通念仏の産物にほかならない。
 では、なぜ、融通念仏は、いってよければマイナーな仏教宗派となったのだろうか。注意していただきたいのは、最初は「融通念仏宗」と書いたが、その後は、「宗」の字の無い「融通念仏」と書いていることだ。つまり、融通念仏は、当初は仏教の宗派ではなく、浄土教系仏教の形態のようなものだったといえよう。それが融通念仏宗として宗派的に独立するのは江戸時代になってからだった。それゆえ、融通念仏の法統は、同じく浄土教系の仏教でも永らく浄土宗や浄土真宗のようには確立されておらず、浄土宗や浄土真宗が党派的存在とするなら融通念仏はノンセクト的存在だったといってもいいだろう。そのため融通念仏の寺院は、事あるごとに浄土宗や浄土真宗、さらには古巣の天台宗によって浸食されたのだった。たとえば開祖の良忍の墓は大原の来迎院にある。来迎院は良忍が再興し、融通念仏の寺だったが、現在は天台宗の寺だ。前記の清涼寺は現在は浄土宗であり、壬生寺は律宗である。
 むろん、それだけではなく、浄土教仏教初期ゆえの、華厳経的な教義の難解さも影響しているといえるだろう。浄土教系仏教は、易行を軸とすることにより民衆への布教を広めた。まず法然の浄土宗が念仏を唱えるだけで良いと教え、さらに親鸞の浄土真宗はいわばすべてを良しとした。そして一遍の時宗の踊り念仏においては信仰心さえも問わないアナーキーさを見せた。それは、宗派をくぐっての融通念仏的な初期形態への回帰ともいえるが、融通念仏には、難解な華厳経的世界観と、時宗の踊り念仏に近いアナーキーな信仰形態が、日本の浄土教系仏教史の視点からすれば、その初期性と天台から浄土への過渡性ゆえに同居していたともいえる。
 融通念仏を一個の独立した宗派として確立したのは大念仏寺の第46代目の住職で、融通念仏再興の祖とされる大通で、彼がまとめた『融通円門章』が、現在の融通念仏宗の教義となっている。
 私の家の菩提寺は、親戚の家と同じく、住吉大社近くの源信(『往生要集』の著者。恵心僧都)の創建と伝える寺であり、法事の際は、そこから住職かその代わりの僧が来て読教して帰るが、当然ながら小難しい話はしたことはない。それゆえ現在の融通念仏宗において華厳経はどの程度のウエイトを占めているのかはつまびらかではないが、ややもすると疎外論的な浄土宗や浄土真宗に対して融通念仏宗の面白さは、この言ってよければ物象化論的な華厳経的側面にあるのではないかと思われる。

※Mixiの私の2010年01月24日の日記より転載。

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