熊本から参加された林田紗綾主宰エストゥディオ・アレグリアスの「ソレア・ポル・ブレリア」。11名の一糸乱れぬシャープな踊りの中に、調和の暖かさが滲みます。松彩果主宰エストゥディオ・カンデーラ発「森の踊り子号」による「グアヒーラ」は、涼やかな風の中を優雅に闊歩していくしなやかな現代女性たちの群像劇。山梨から参加された新田道代主宰フラメンコ教室Arbol de Flamenncoの十代の姉妹による「アレグリアス」。シンクロした清楚な踊りが初々しい。今後の成長が楽しみです。鈴木眞澄主宰のフラメンコスタジオ・マジョールによる「パコの思い出」。14名が輪となる厳かな追悼の儀式。3人の男性がアイレを引き締める。パコを失った哀しみ、そして彼に捧げる祈りが優雅なスペイン舞踊から静謐に伝わって来ました。鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコスタジオの4名による「ファンダンゴ・ポル・ソレア」。完成度の高さは群を抜いていました。師である鍵田真由美の薫陶を受けた舞踊は、内側から放射状に花びらが開いていくように鮮やかで情感豊か。プロフェッショナルに鍛え上げられた彼女らの肉体は、内面のひだをあますところなく発露させ、その流れるような躍動美はストレートに胸に響きました。二村広美フラメンコ教室Las Flores Miasによる「セビジャーナス」。人生を謳歌する伸びやかな踊り。陽気な会話によって肩に入っていた力がふと抜けるような明るさに満ちていました。鍜地陽子フラメンコ舞踊団Las Azulindasによる「シギリージャ・イ・マルティネーテ」。力強い自律心に支えられた硬派のフラメンコ。結成時からたゆまなく歩み続けて来た意志がテアトロの空気を熱くしていく。彼女たちの確かな深化は未来に向かう勇気を与えてくれます。そして全国(沖縄、大阪、岐阜、東京、金沢、仙台)から集まった6名から成るHijas de Manzanillaによる「マルティネーテ」の気迫に圧倒されました。カルメン・レディスマの振付けはフラメンコの原点である黒い血を感じさせる。音楽、構成、すべてが彼女らの強靭な意志によって融合し、絶え間ない苦しみをはねのけて行く人間の剥き出しの強さを放っていました。多様な背景を持つ8団体の群舞、その色彩の豊かさは、日本のフラメンコが成熟して来たひとつの証といえるのではないでしょうか。
奨励賞を受賞したHijas de Manzanillaのメンバーの方の言葉が印象に残っています。
「本番ではお互いの顔を見て絶対大丈夫という確信があった。演技直前に皆の名前がコールされた時、このメンバーで舞台に乗れる幸せ、そして誇りを感じました。言葉は要りませんでした」
群舞の意味とは? と、よく問われることのひとつの重要な答えがここにあると感じました。時間を掛けて築き上げて来たからこそ生まれる仲間同士の信頼。その手応えを感じる歓び。独りでは決して得られないその想いの波動は、個を重んじるフラメンコだからこそ、より鮮烈に輝き、観る者の心をも打つのです。