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観世流コミュの芦刈の和歌

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 僕は能、芦刈「笠之段」の次の文句が大好きである。時々、湯船の中で、時々口ずさむ一番のものである。

「あれ御覧ぜよ御津の浜に、網子調ふる網船の、
えいやえいやと寄せ来るぞや。
名にし負ふ難波津の、歌にも大宮の内まで聞ゆ網引すと
網子調ふる、海士の呼声とよみおける。
古歌をも引く網の、目の前に見えたる有様、あれ御覧ぜよや人々
面白や心あらん。面白や心あらん。人に見せばや津の国の。
難波わたりの春の景色。おぼろ舟こがれ来る沖の鴎磯千鳥。
つれだちて友よぶや海士の小舟なるらん。・・・・」

 この文句を湯船でうなる度に、昔、難波の風情は素晴らしかったのだろうと想像する。昔、山本富士子さんが日経新聞の「私の履歴書」で読んだのが、彼女は1931年に大阪の和泉市でお生まれになったのだが、その頃の和泉市は高度経済成長の前であり、海を眺めると、その風情が本当に美しかったと書いておられたと記憶する。その時も、この笠之段の文句を思いだした。この笠之段に出てくる「御津の浜」は大阪の心斎橋あたりの御津八幡宮のあたりだという。昔はこのあたりまで、海がきていたのだろう。

 さて笠之段でいう古歌とは

   おおみやのうちまできこゆあびきすと
     あごととのふるあまのよびごえ

で万葉集にある歌だ。鉄斎翁の絵のように御津の浜の風情を彷彿とさせる。
また、次の古歌も、

   心あらん人に見せばや津の国の
     難波わたりの春の景色  (後拾遺集 巻一春上)

この後拾遺集の和歌は西行の新古今集にある歌を思い起こさせる:

   津の国の難波の春は夢なれや
     葦の枯れ葉に風渡るなり

 この歌も能「芦刈」に引用されている。

 
難波の美しさを歌った歌を以下に掲げる:

    住吉の松の木間よりながむれば
      月落ちかかる淡路島山 (頼政 長明無名抄)

 この歌は能「弱法師」にも引用された和歌として有名であり、僕はこれが非常に気に入っている。この和歌は素晴らしい一幅の絵画を提供してくれる。

 古今和歌集よりいくつか

    わたつ海のかざしにさせつしろたへの
      波もてゆへる淡路島山    (雑歌 911)

    難波潟潮みちくらし雨衣
      たみのの島にたづなきわたる (雑歌 913)

    ほのぼのと明石ん浦の朝霧に
       島がくれゆく舟をしぞ思う  (羈旅歌 409)


古今和歌集以外の歌からも

    夕暮れに難波の浦を眺むれば
      霞に浮かぶ 奥の釣舟 (圓源阿闍梨)

    夕なぎに由良のと渡るあま小舟
      霞の内漕ぎぞ入りぬる (俊恵)

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