これちょっととっておこうかな、みたいな(笑)。 それがソロに入った『Let Me See Your Smile』や『Goodbye To You』だったんですね。それがあったのでひょっとしたらできるかなと思ったのが、去年の終わりくらいだったんです。で、去年のツアーのときに坂東(慧)くん(ドラム)と僕(ギター)と(川崎)哲平くん(ベース)のトリオで遊んでいたんですよ。DIMENSIONの曲なんかもやりながらね。そのとき「あ、ギターだけのものもいいな」って。 勝田くんも「カッコいいじゃん!」って言ってくれてたんですよね。キーボードには頼らないけど、ジャムセッションっぽくない、ある程度構築されたものをやるのもいいかなって、そういう自信がついたのも同じ時期だったんです。
僕は根っからそういうタイプではないんですが、内向的になったというか。周りの人たちが伏し目がちになってしまったし、被災地の人たちはみんながんばっているのに、僕らが外からがんばろうがんばろうって言っても、と。 心のギャップを感じてしまって今は出すべきじゃないなと。自分が望んでいる温度差じゃないときに出したくないと。それで延期してもらうように自分が仕向けたんです。もうそれ以上の作業をやらないようにしたんです。 その後『In and out』というホントにシンプルな発想で、ギターだけで、牧歌的なこの曲が書けたんですね。タイトルはどうしようというときに、人生はまさに"In and out"だと思っていたので全然派手じゃないけど、最後に書けたこの曲を、ということにしたんです。
こんなにギター弾かなくてもいいだろうみたいな。でも言うほどそんなにたくさんは弾いていないんですけど、セッションだったらグッと抑えているところを、ギターはこういうふうに響くものだってところは抑えないで弾くことができましたね、このアルバムは。 自分が思うギターの世界とか、たとえば『Goodbye To You』だったらこういうふうに歌いたいなってのを、僕はジェフ・ベックが好きで、あこがれていたのでこういうふうに弾きましたってのを出したし、『Let Me See Your Smile』は、絶対ラリーだったらこういうふうに弾いてほしいっていう気持ちをそのまま素直に出したんですよ。もう恥ずかしさもなく。 速いフレーズとかいうよりは、今こういうトーンを出せる年令にもなったし。だから自分のわがままをすべて出せたっていうか、それはDIMENSIONではできなかったことですね。
2曲目『Let Me See Your Smile』はポップスの曲を作るようにアコースティックギターでカッティングをやりながらリフをやって、あとはどう歌うかというんでこの曲は使うギターをスゴく吟味したんですね。今ね、とにかく家に帰ってギターを弾くのがとっても好きなんですよ。レスポール、ストラトキャスター、サドウスキー、ジョン・サーなどが自分の周りにあってね。そのときどきでいいなと思うポイントは違うんですけど、すべてのギターでボリュームをどんどん絞るのが自分のなかでブームなんです。 ようするに歪みをどんどん取っていってしまうんです。
ある日、フェンダーのカスタムショップでショアラインゴールドのストラトキャスターをゲットしたんですね。それはジョン・クルーズっていうビルダーが作ったものでフェンダーの本にも載っているんですが。弦を買いに行ったら眼に入ってしまい、「ああ、やばいやばい」と(笑)。弾いたらスゴくよくって。それからなるべく歪まさない方向へ向かって行ったんです。 たまたまこの曲を持っていたせいか、イメージがそっちに向かって行ったんです。「これで弾くとすごくよさそうだ」と。で、弾いてみたら枯れ過ぎていたんですよ。なんか違うなと。もっと太くなきゃいけないと。それでレスポールで弾いてみたらすごくマッチしたんですけどね。レスポールはスゴく歌いやすいと。で、『Fly Like The Wind』もレスポール。『Goodbye To You』はそのショアラインゴールドのストラトで弾いたんです。あれはブリッジのピックアップポジションで、トーンを思いっきり絞ってあるんですよ。ボリュームだけで歪みをコントロールしているんですよね。だから実はノイズがけっこう乗っているんですけど、もうあんまり気にしかったですね。表現を優先しました。
僕はジャーマンロックも好きで、実は1曲目は僕のなかではウルリッヒ・ロートなんですよ。違うよ、って言う人もいるかもしれなけど、そうなんです。あとよく言われるのは「ゲイリー・ムーア好きでしょう?」って。僕は昔のコロシアムIIのころとか『YOU』(G-Force)のゲイリーが好きなんですよ。 アコースティックギターを弾くとエドガー・ハードとかパット・メセニーになっちゃうんですよ、スゴく好きだから。そういうのを意識してやった訳ではありませんが、そういう意味でも(タイトルの)『In and out』っていうのはちょうどいいかなぁと。 全部が今までのソロ2作品に比べると、売れようとかそういう意識なしに作りましたね。こんなに好き放題やってもいいのだろうかってくらいにね(笑)。