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映画を追跡コミュの「グッド・シェパード」鑑賞記

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2006 米
製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
監督:ロバート・デ・ニーロ
脚本:エリック・ロス
出演:マット・デイモン(エドワード・ウィルソン)
   アンジェリーナ・ジョリー(クローバー)
   タミー・ブランチャード(ローラ)
   ウィリアム・ハート(フィリップ・アレン、エドワードの先輩)
   ジョン・タトゥーロ(レイ・ブロッコ、エドワードの部下)
   アレック・ボールドウィン(サム・ミュラッハ、FBI捜査官)
   ロバート・デ・ニーロ(ビル・サリヴァン将軍)
   マイケル・ガンボン(フレデリック教授、イエール大教授)
   マルティナ・ゲデック(ハンナ・シラー、OSSの一員)
   ビリー・クラダップ(アーチ・カミングス、英国諜報員)
   ジョン・セッションズ(ヴァレンティン・ミロノフ、KGB士官)
   オレグ・ステファン(ユリシーズ/スタフ・シャンコ、KGB諜報員)
   ティモシー・ハットン(エドワードの父親)
   ジョー・ペシ(ジョゼフ・パルミ)


3時間近くもある大作で物語後半から私は疲れ果ててしまいました。CIAの20年=アメリカ現代史を描くのにここまでの内容を詰め込みたくなるのはわかるけれど的を得ていない脚本と無意味な技巧に走るカメラワークによって成り立つ映画は例えキャストが充実していようと悪い映画の典型である。映画監督を目指す若者はこの映画だけは真似してくれるな、と劇場からの帰り道思ったものです。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」+「アンタッチャブル」+「グッド・フェローズ」÷3=「グッド・シェパード」かと、こうも思いました。

けれど私は映画の内容を消化しきれなかった自分に腹を立てていたようです。飲み込みやすい流動食のようなテレビ番組が横溢している昨今、私の頭は一昔前より格段に悪くなっている。煩雑な物事を理解できなくなっている。劇場に足を運ぶのはわかりやすい感動に出会うためだけになっていたのでした。「泣ける」映画が流行するのはこのことと無関係ではないでしょう。

この映画は主人公エドワードの苦悩の過程を縦軸とし、横軸にCIAの歴史を絡ませています。この映画の弱点は縦軸が弱いことです。エドワードの悲しみは脚本の力によって伝わっては来ますが、マット・デイモンに中年男の悲哀を演じさせるのは酷だったのではないでしょうか。彼はやはり未だ“ジェイソン・ボーン”の域を出ない悩める青年であり、手段を選ばずして地位を得た男が飼い犬に手を噛まれて足元をすくわれる「失意」を演じるのには未熟な気がします。イエール大に通う息子がいるとは到底思えませんから。

さて、この映画の醍醐味は横軸なのです。イエール大のエリート集団から作られたスカル&ボーンズにエドワードが引き抜かれる。なぜ彼は拒否しなかったかと言えば、海軍高官だった父親は自殺して国家に忠誠を尽くせないまま死んでしまったから、自分は国の誠実な忠犬でありたいたいという純粋な思いからなのです。その後、OSS(戦略事務局)の一員としてイギリスに赴任することとなり、そこから彼の諜報員生活が幕を開ける。この「諜報活動」の人間関係の複雑さがありがちなスパイ映画とは一線を画して面白い。自分が国外追放したと思っていた人が同じ組織の人間だったり、時を経れば味方がいつの間にか敵になってしまっていたり、アメリカの諜報の対象もドイツからロシア、キューバに変わったり。この映画を楽しめるか否かはこの辺りの人間関係、時系列の複雑さをある程度理解しながら見ていくことだと思います。


ただ一つ理解できないのはエドワードをめぐる女たちの描き方。
まず、アンジー演じるクローバーがアル中に陥る過程。自分の兄や父を見ていれば夫の仕事なんて想像が付くと思うのだが、なぜエドワードによき家庭人を要求するのかが謎。エドワードを愛してはいたのだろうが、所詮は略奪愛。エドワードだって出世という言葉に目がちらついたから結婚に踏み切ったと言える。この夫婦、結婚できただけでも御の字だろうになぜ夫の元恋人の存在ごときに神経衰弱になるのか。元はエドワードに強引に馬乗りになって結婚を勝ち取った強気なお嬢様が戦争を経て急におとなしくなるのはなんか腑に落ちない。アメリカは戦勝国なのに。

かつての恋人ローラに至っては都合よく二回も捨てられます。その振り方も最低なんです、エドは。そして捨てられる女もまた都合よく受け入れるわけ。私はこのローラからエドワードは身を滅ぼすのかと思っていたがローラは裏切らなかった。そんな都合のいい女いるか!?ローラはエドワードの顔が変わるくらい殴る権利あると思いますが彼女はそれさえもせず黙って演歌の女のように去る。

ローラは聾唖だった。そしてベルリン赴任時代にOSSが雇っていた通訳の女性も耳が不自由で補聴器を付けていた。だからまたエドワード、恋をする。彼、聾唖フェチ、補聴器フェチなんです。ここはよくできていると感心。


また、英国諜報員と、とある事件で袂を分かつことになるのだけれどその際の別れ方が何となく同性愛を示唆している感じがあるのだとか。インテリジェンスにはホモが多いので、これもなかなか良くできていますね、なんて穿った見方をするのは起訴休職中の佐藤優氏であって私ではありません。

あとは、疑惑のテープが何度も繰り返されるのは鬱陶しかったです。ああやって音声解析やっているのはよくわかりましたけれども必要でしょうかねえ…。

と、不満はあるものの細部までよく練ってあるよい脚本でした。

演技賞はウィリアム・ハート(「蜘蛛女のキス」や「アクシデンタル・ツーリスト」「ブロードキャスト・ニュース」も好きだけれど去年の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」も良かった」)とジョン・タトゥ―ロ(コーエン兄弟作品の常連他「耳に残るは君の歌声」なんかも忘れがたい)とマイケル・ガンボンですね。

時を経てもう一度見たくなる作品でした。
一回だけでは消化できなかった私、映画はじっくり見るものだと言い聞かせて次回映画鑑賞に備えます。

アカデミー賞にノミネートされなかったのはただ単にデ・ニーロがスコセッシに遠慮してあまりキャンペーンをやらなかったからではないでしょうか??

最後にこの映画で一番印象に残った台詞はこれです。

「CIAになんでtheが付かないのか知っているか?それはGodにtheが付かないのと同じさ」

(★★★★)

コメント(3)

これは女性と男性でかくも印象が違うかとびっくりしましたよ。
まず補聴器フェチではなく、「善き人のためのソナタ」の女性はユリシーズが綿密に調べあげた彼の接点から近付いてきたスパイであり、それはあの時代あの階級においては異端とも言うべき資質なのでしょう。子どもができたから結婚して堕胎という殺人を回避した結婚であり、彼らが当たり前に公使してきた特権階級の正義に則った結婚ではないのです。彼の心はつねにローズにあり、略奪愛であっても肉慾にまけて交合したという悔恨につねにつきまとう結婚…父としての義務が夫としての愛情などよりはるかに大きい家庭生活なんですよ。
彼がマザーと呼ばれているのも、そんな弱さと強さを合わせもっていることへの両面的評価だろうと感じました。
ジョリーが崩れていくのは彼でなければ自分がこれほどまでにないがしろにされることはないからで、家柄も金も美貌も性格も彼女が育った世界の正義が満点なのに夫は貧しい障害者の女性に心を置き去りにしたまま夫婦としては寄り添うことがないのですから、夫にのみ認めてもらえない人生です。
すべてが受動的な決断で歩んだ男の人生で、しかしやるときは完膚なきまでにやっつける。そんなキャラクターはアメリカ映画史上稀なもので、アメリカ人にとって勇壮なCIAストーリーを期待した奴等からは嫌われたことでしょうね。
はじめまして。なかなかのシナリオで感心した作品です。夫よりも父親としての地位と仕事を選ぶ彼には、共感を得られないでしょうが、非情な世界に生きるスパイが巧く表現されてると思います。たくさん盛り込みすぎたのかな。好きな映画です。一年以上前に見たので細部は、忘れてます。
えーと、取りあえず女性ですが、北京波師匠に全面的に同意です。
フェチというより、通訳女性の補聴器は、ローラに対する自責や感傷を呼び起こしたんだと感じました。

私も主人公は父親であることを最優先した人だと思います。
アメリカって夫婦単位でものさしを図る事が多いでしょう?
それなのにアメリカには珍しく、夫婦のみ出かけるという場面はなく、必ず息子を同伴か連席させるシーンを使い、アンジー妻の孤独を上手く浮き彫りにしていたと思います。

それと実父の自殺。
彼の人生をひも解くキーワードはこれだと思うので、私は主人公の取った行動に疑問はありませんでした。

ローラは出世していく恋しい人に、「本当に私でいいの?」と聞いていましたよね?
聾唖であることに引け目を感じていた発言ですが、この時代はそれが女性らしい控えめな包容力に通じる思考ですし、
だからこそ主人公は、そんなローラが忘れられなかったんじゃないですかね?
なのでここでローラが主人公を殴ったりしたら、私的には興覚めしたかもなぁ。

しげさん、DVDでご覧になったんですよね?
スクリーンで観たら、登場人物が語りかけてくる内容が、また違ってくると思います。
私はその落差が激しいので、劇場派なんです。
時間がもっとあるといいね。


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