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暇刊 巴mixiコミュの麦焼酎はあんまり好きじゃない。

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MS-09F

タイトル:街で拾った麦焼酎

2006年04月18日
00:48
MS-09F

なんと言うことはない。

女と喧嘩をして気まずい別れして、
そして次の日に風俗へいって憂さ晴らしをしたという話だ。

次の日も女は仕事で、
私は自分の用事をかたずけたあとに南に呑みに出かけた。
そしてしこたま呑んでぶらぶらして、
朝になったので腹が減った。

連れがなにか喰いに行くかというので、
私は女でも喰いに行くかと冗談めかして言った。
すると向こうはちょっと悪戯ぽい笑顔をして了承した。

なんということはない、
朝方のサービスタイムにペロペロにいこうというのだ。
そして私たちはペロペロへ向かった。

連れがお勧めの店は閉まっていた、
なので自分のお奨めの店に入った。
この店に来ること自体久しぶりだ、
二度とは来ないと思っていた、
しかし、またしても来ることになってしまった。

連れは慣れた様子で受付をすまし、
あっさり指名をオプションでつけた。
私もその流れにのり指名をつけた、
ただし、選んだのは、
加工バリバリの写真ではなく、
ポラの写真だった。
ありのままの可愛らしさ、
それをただ選んだ。



2006年04月18日
00:49
MS-09F

ポラを見る限り、
その性格の良さがよく出ている目元が気に入った。
なんとも甘く可愛らしい面差し。
まさにスウィート。

しかし、所詮は写真である。
実物はいかばかりのモノか、
期待はせずにエレベーターに乗り込む。
そして扉は開いた。

そこに立っていた女。
ピンク系統のOLの制服がいかにもで、
そして写真に違わぬ可憐さ。
「こりゃ参ったねどうも。」
「んん?どうしたん?なんで?」

そう言いながら私を見上げる彼女の表情。
掻き立てられるものがある。
そうしてキスをせがんでくるが、
まずはハマりは薄く、のたうつ女の舌先だけを味わう。

部屋に入って、
事務机の上で少し絡み合った後、
女は私の服を脱がせる。
あらかた剥かれながら少し会話をした。

「ねぇ、なにが参ったん?あたし嫌?」
「ちゃうよ」
「じゃあなにが参った?」
「まあええから、満足してるよ」
「ほんまに?じゃあシャワー浴びます」

そう女は言うが、靴下を脱がせることを忘れている。
「靴下忘れてるで」
「ああ!ごめんなさい」

緊張しているのか、それとも天然か、
さっきのキスの激しさ、
なにか必死だった気がする、
この女、勤めて間もないなと私は思った。


2006年04月18日
00:52
MS-09F

必死なキスは勢いをつけてなにかを忘れるために。
そんなものだと私は思っている。

新人の女ほどプレイが激しく執拗だ。
それは自分を売り込もうとしているのか、
それとも今の自分を忘れてただ燃えていたいのか。

その女は可愛らしいタレ目に似合わず、
激しいキスで私の言葉を奪う。
私は女の耳元でささやいた、

「もっと静かなキスでいい」

そして女を優しく抱きしめて、
その首筋に、耳に唇をできるだけ優しく這わせる。
「ピクンッ」と小さく震えてその後、女はふわっと力を抜いた。

金のスケベイスに座り、
愚息を丁寧に洗われる。
なんだか慣れない手つきで、
焦っているように見受けられた。

シャワーを浴び終わり、
そして体拭かれる。
女に向き直ってまたキスをする。
ピンク色のOL服のベストはぎ取り、
そしてブラウスを脱がせる。
女はノーブラで、程よいふくよかさの乳房には、
ちょっと大きめの乳首。
しかし、形が良いので嫌みがない。

立ったままで抱き合い、
そして少しその女の体に舌を這わせる。
乳首を唇に包んで舌先でなじると、
女は犬のように「きゃん!」と声を上げる。
なかなかの感度だ、

私は尚もちょっと大きめの乳首を責め立て、
犬歯を甘くその乳首に突き立てた、
するとひときわ声が高まり、
「あんん!痛いからダメ!」
とけっして痛そうにはない声で女は私を諭した。

女を下着一枚まで裸にして、
私はベッドに女を導いた。


2006年04月18日
00:53
MS-09F

ベッドに横たわり両手を胸の前にかざす女。
恥じらっていることがその瞳からも伺える。
その両手を優しく開き、
そしてまた女の体に舌を這わせる。

唇から頬へ、そして首筋、耳、鎖骨、胸の中央から乳房、そして乳首へ。
それは時に強く、時に触れていることも怪しいほどに微かに。
敏感な場所は、その吐息だけでも触れていることを感じ取る。

「千鳥格子」
「あは、うんそうよ」

女の下着の柄。
千鳥格子の下着を脱がせ、私は女の脇腹にキスをした。
そしてへその近くに舌を踊らせ、
そのまま太股と下腹の継ぎ目あたりに滑り込ませる。
女は柔らかで無防備な肌を粟だ立たせて、
私の律動する舌の動きに反応している。
ザワ、ザワと肌がポツポツと粟立つたびに、
私は指を女の一番柔らかい場所へ近づける。
しかし、けっして触れはしない。

そして突然素早く動き、
舌をその柔らかな部分にねじり込む。
女は急激に声を高めて身をよじる。
私はちょっと力を込めて女の股を開く、
すると女は少し力を入れて閉じようとする。
しかし私はそれを許さない。
女が怯えないように注意を払いながら、
密が垂れているその肉をねぶり上げた。

「んん、あ・・ん」

一瞬、女は歯をくしばった。

厚みのある肉ビラはピッタリとその奥を隠している。
私はその肉ビラを指で両側に開いて、
そこに吐息をかける。

もはや抵抗を諦めている女は、
私の舌がその柔らかな部分を這いずり回ることを、
そこからやってくる痺れを拒否できない、
腰が自然と浮きあがり、ゆっくりとしたリズムでくねる。

「なんでそんなことしてくれるの?」

そういう女の目は半開きに据わっている。
私は女の内股に舌を登らせていく、
やがて膝の裏を尖らせた舌でそっと撫でて。

足の指先をピンッと伸ばし、
顔を横に背けて自分の指を思わず口元へ。
その仕草がなんとも初々しい。

「もう時間ないよ、お願い、私にもさせて」

そういって女は私の愚息を口に運ぶ。
そして激しく頭を振り、
自分から首をかしげて愚息を口にねじり込む。

2006年04月18日
00:53
MS-09F

「なあ、こっちも責めるから」
「え、はい・・・」

そういって女はふくよかで丸い尻をこちらへ向ける。
グッとその尻を引っ張り上げると、
アナルも何もかもが丸見えになった。
私はその両方の尻の肉を掴み、またしても広げて、
そして女のアナルにそっと触れる。

「あんん、ぐむぅ・・・」

愚息を懸命にくわえ込みながら、
突然に予期せぬ部位への刺激を受けて、
肌を紅潮させながら身をよじる女。

そして私は女のアナルも肉ビラもその奥も、
思う存分に激しくねぶり尽くした。
女は口から愚息を外し、
突っ張った腕を折って、
ベッドに肘をつき私の股間に顔を埋める。
女の声と吐息が私の福袋と菊門に微かな感触を与える。

「ねぇ、もうほんとに時間ないよ、どうしよう」
「まあええやん、気にすんな」
「だって、イッてないんやもん・・・」
「気にすんな、呑みすぎただけや」
「だって・・・。素股していい?ローションつかって」
「ああ、ええよ」

女は手にローションを馴染ませ、
愚息に塗り込んでいく。

「その言葉は、九州か?」
「うん!なんでわかったん?」
「分かるよ」
「そっか、あたし九州から学校はいるの大阪でてきたん」

そういいながら女は私の上に跨った。
そしてじんわりとぬめった股間を愚息に押し当て、
ゆっくりと腰を振り始める。
「はぁ」と息を吐くたびに切なく眉間にしわを寄せて。

私はおもむろに腰を突き上げ、
女の腰を抱えてこちらにグッと引きつける、
「あぁ!!んん・・気持ち・・い・・入れてるみたい・・・」

女はのけぞって手をベッドについた、
私は女の手を取って指を絡ませて尚も腰を突き上げる、
女はたまりかねて私にしがみつきながら懇願した。

「お願い!もうちょっといっしょにいて、お願いだから」
「ええ商売やな」
「違うよ!そんなじゃない、あたしは・・・」

そういって女は黙ってしまった。

シャワーを浴びて服を着て、
時間がオーバー気味だったので二人ともいそいそと。

「ねぇ、お名刺渡してもいいですか?」
「いらん」
「そう・・・また来てくれる?」
「約束はできん」
「はっきりしてる、なんか侍みたいやね」

そういうと女は淋しそうに笑った。
そして帰り際に女が私の胸にそっと寄り添って、
「最後にキスして」と願った。
私は初めとは違う激しいキスで、
女の唇もその奥も愛した。

女はなんだか垂れた目に憂いを浮かべて渡しを見送った。
階段を下りるとき、ふとさっき交わした会話を思い出した。

「お酒呑んできたん?」
「ああ、芋焼酎呑んできた」
「そう、あたし麦焼酎が好きなんよ、だから名前ムギにしたんよ」


2006年04月18日
01:12
MS-09F

次の月。
身軽になった私は。
なんの臆面もなくまた店に顔を出した。

しかし、
それまでと違っていたことは、
目当ての贔屓がいたことだ。

いつか聴いた遊びの始末。

「遊ぶなら、同じ女は二度と買うな、
 そうでなければ、同じ女を買い続けろ」

俺はその金言の元。
初めて同じ女に会いに行った。

しかし、
その女はもう、
そこにはいなかった。


2006年04月18日


2006年04月18日
01:22
MS-09F

店のヒゲがダンディな蝶ネクタイ親父に聴いた。

「なあ、ムギはいてる?」
「え!?ああ、少々おまちください」

そういって親父は奥にすっこんだ。
その後しばらくして、
親父はバツが悪そうに待合のソファーまでやってきた。

「いや〜、ムギさんは今日お風邪を引いて休んでまして」
「ああ、そうか」
「よろしければ他の娘も出勤していますが?」
「いや、いい、これは賭けやったから」

同じ女がいないのならば、
この虚しさを埋めることはできまい。
この傲慢、欲深さをなだめることはできまいよ。

私は店を出て、
春だというのいまだ寒い朝焼けの中、
締まりない夜の欠片を酒に浸そうと、
上着の襟首を立てて歩き出した。

2006年04月18日
01:32
MS-09F

慌しく季節は流れる。

すべての優しき記憶と、
詮議ない自らの行いは時と共に。

歌い、踊り、言葉を交わす間に、
由なしごとは暮らしに埋もれていく。

ただ、
時に独り寄るに座るとき、
通勤電車に花の色を観るとき、
ふと自分が人であったときのことを思い出すのみだ。

クタクタになった振りをして、
そうしなければ自分を慰められないそんな時、
知った顔があれば、
ぶくぶくと空元気を吹き回し、
その夜をあたふたと正体のない言葉で踊りまわれる。

それもまた、言い訳なのか、
真実なのか、自分でも解らない。

行き所を探していた週末に、
馴染みのDJから連絡があった。

「おいっす!こないだのMIXのコピーありがと!」
「ういうい、どういたしまして」
「今日はツレのクルーが大阪でて来てるんよ」
「お、そりゃおもろそう」
「うん、一杯おごるしでておいでよ、イエローで待ってるわ」

私は思いがけず週末の夜に入り口を設けて、
いそいそと身支度をし、
ポータブルに充電が満ちていることを確認して、
ガポリとヘッドフォンを頭にかぶって街へと向かった。


2006年04月18日
22:37
MS-09F

地下へ降りる階段はどこか薄汚く、
しかしそれが私をどこか安心させた。

そこはまちがいなく私の場所で、
歩きなれた道だった。

店のの入り口には、
口ひげと立派なドレッドを垂れた初老の男が立っている。
これはこの店のオーナーで、
中は若いものに任せている。
オーナーはいつもドアーに立っていて、
私は不思議に思ったので
なぜいつもそうして外にいるのかと聞いたことがある。

するとオーナーは答えた。
「ここにいれば誰が来て誰が帰ったのかが解る」
「それを調べてるのか?」
「いや、来た奴に感謝を、帰る奴に感謝を、始まりと終わりに」

私はそれからこの店を贔屓にしている。
その日、
フロアは熱いダンスでのぼせていた。

私がフロアに入ると、
セレクターがすぐに飛んできて、

「おお、待ってたで!まずは一杯!」

そういって酒を振舞ってくれる。
私は空腹に酒を流し込み、
こみ上げるゲップをかみ殺して、
タバコに火をつけた。

アルコールとニコチンのシナジー効果が、
疲れた脳みそに良く効く。
セレクターのツレだというDeeJayがタタタと夜を昇る。
草原をかき分けるように歌い、
空を焦がすようにオーディエンスは踊る。

心地よいヴァイブスに私は酔った。
それは体感として痺れるほどに。

その時、
店に幾人かの客がなだれ込んできた。
そして、
その客たちは博多から来たというDeeJay達と挨拶を交わしている。
きっとこっちにいる仲間なのだろう。

女も何人かいる。
豪儀なことだ。

私は関せぬことに目を外そうとした、
その時、一人の女に目が止まった。
女はこちらを見ている、
それはなにか驚くような瞳で。

ムギだった。

彼女は私を見て少し退き、
爆音響く薄暗闇の中こちらをみた。
その瞳の輝きが解った。

そして入り口を向いて歩き出した。

私は彼女を追いかけて、
そしてその手を掴んだ。



2006年04月18日
23:12
MS-09F

店の外まで追いかけて、
彼女の手を掴んだ。

そのときの顔は忘れられない。
それは罪なのか咎なのか。
あの薄暗い部屋の中でみた顔とは別の顔。

「離して・・・」
「逃げるなよ」
「離して」
「お前が逃げる必要はない、俺が帰るから」

私は彼女の手を引いて店の中へと送り込んだ。
そして私はオーナーに頭を下げて階段に向かった。

地上へと向かう途中、
誰かが俺の服を引っ張る。
「待って、帰ることないよ」

ムギはそう言ってさっきよりは目元を垂れて、
私を見上げていた。
その柔和な視線が、
いまさっきの静かな修羅場を収めた。

彼女の孤独と苦しみは、
私の預かり知らないところで育ち。
私は彼女を買って、
ひと時の温もりを得た。

それが私たちの間にある関係のすべてだった。

2006年04月19日
23:51
MS-09F

いい男の振りをして、
そのことを腹に隠して、
私は賭けに勝ったのだ。

きっとこの女は、
こう言えば私を引き止めるだろう。
そう思っていた、解っていた。
酩酊した頭に、
悪魔的な思考が駆け巡ったのだ。

二人は店に戻った。
だがしかし、
二人は他人だ、それだけだ。

時々に視線を交し合うが、
それがどれほどの意味を持つのか。

私は次第に自分の悪事に嫌気がさしてきて、
酒を煽り、音に溺れていった。

深い夜に響くサウンドシステムは、
テキーラに痺れる脳をさらに揺さぶって、
彼女を金で買った自分の姿を、
ジリジリとぶれさせる。

なんてことはない。
必要な者同士が、
必要なモノを交換しただけのこと。

その時できるだけ、
上っ面になにがあろうと、
私は彼女の心に向かい合おうとした。
しかし、
それは言い訳にしか過ぎない。
どれだけ重ねても。
言い訳は、いいわけだ。

フロアで汗をかく男と女。
ダンサーが天地をひっくり返して、
匂いたつ天国を皆にさらけ出す。

私はしたたか酔っぱげて、
夜気に救いを求めて店を出た。

入り口にはオーナーがにこりと好々爺。
「おやお帰りかい?」
「ああ、ちょっと涼んでくる」

そう言ったとき、
オーナーのドレッドのすえた匂いを吸い込んだ。
激しき吐き気と共に顔は青ざめ、
私は動悸を止めない胃袋と口元を押さえ、
階段を足早に昇った。

昇りきったところで、
私は我慢しきれず鉄の格子が張ってあるドブに、
思うさま嘔吐した。

胃は痙攣を止めなくて、
空になってもうごめいている。
私はヒキガエルのように、
ゲボッっと泣いて、涙を流してうずくまる。

とたんに、
今まで抑えてきたものがこみ上げる。
体はアルコールの過剰摂取で熱を失い、
思考は高速で回転し始める。

思い出したくもないこと、
忘れていたこと、
いつかこういうことがあったななんて、
雨の日の思い出。

今はそれよりも、
一つでも多く呼吸をして、
数mlでも早くアルコールを血中から消費することに集中する。

息が冷たい。
壁に寄りかかり、
きっと視線は狂人の相であろう。

その時、
ふっと背中に誰かが触れた。
温かな手。
ムギだった。

2006年04月23日
21:24
MS-09F

口元によだれをたらし、
惨めで正気を失った目で私は彼女を見ていた。

「大丈夫?」

柔らかく垂れた目が、
掛け値なしの慈愛を流す。
しかし、
私はいま誰にも触れられたくない。

「俺は大丈夫やから、触らんとってくれ」

それどころではなかった、
生きるか死ぬかの瀬戸際に思えた。
彼女の優しいその手は、
その時、私にはわずらわしいものでしかなかった。

目をつぶり、
また一人アルコールと戦う。
彼女にすまないという想いと、
混濁した記憶が交じり合って、
行き場のない今に、
涙が流れた。

惨めで、所在無い。
雨が降ってきた、それは心地よく、
私の体温をなでてて包んだ。

フロアからかすかに聞こえる暖かい音。
夕暮れ時に聴こえるようなレゲエ。

いくぶん落ち着いて、
世界がこの手に帰ってくる。
ふと表の道を見ると、
深夜に傘をさして歩く人々、
傘も無く駆けるバッドボーイ。

私は立ち上がり、
壁に寄りかかった。
すると、
すっと目の前にミネラルウォーターが差し出された。

「飲んで」
「ああ、今日は俺、金ないで」

すわっ、ムギの平手が飛んできて、
私の頬と耳を思い切り張りびしゃいた。
鼓膜に響き渡る金属音。
差し出されたままの水。

2006年04月23日
21:55
MS-09F

彼女はどうやらずっとそこにいたらしい。
雨降るなか、
うずくまる与太郎の背中を見ながら、
彼女はなにを想ったのだろう。

私は金属音が消えないままに、
その水を受け取り、
うがいをしてから飲み、
そしてハッと息をついた。
彼女はその様子をじっと見ている。

「もう大丈夫やで、パーティーに戻ってよ」
「うん、いっしょに帰ろう」

そういうと彼女は私の手をひいて地下への階段に向かう。
女というものは、時に予測不能の行動をとる。
それが母性なのか、それとも。

さっきよりもゆっくりとしたスカが流れるフロア。
サウンドは柔らかに。

カウンターに二人で座って、
私は酒を頼んだ。

「芋焼酎ロックで」
「まだ呑むの?あかんて」
「ええやん」
「あかんて、もう・・・」
「ほな麦焼酎、水割りで」

彼女は少し驚いた顔をした。

「覚えててくれたん?」
「ああ、覚えてるよ」
「じゃあ一杯だけあたしも付き合うよ!」

彼女が笑った。
今日始めての笑顔だった。
女は笑っているのがいい、
それが一番いい。

私とムギが笑っていると、
彼女の仲間が寄ってきて、
いろいろ挨拶を交わしたり、
共にライターに火をつけてをかざしたり。
無闇に楽しく時間は過ぎる。

しかし、
私はそんな瞬間が重なるたびに、
なんともいえない気分がこみ上げた。
時計は二時を回っている。

「そろそろ帰るわ」
「そうなん?家?」
「いや、適当にどっか入って寝る」
「どこに?」
「マンガ喫茶でもどこでも、もう眠い」
「そうなん?大丈夫?」
「ああ、大丈夫、それともお前のところに泊めてくれるんか?」

一瞬、ムギの表情が曇る。
それは社交辞令と淡い期待の板ばさみ。
私は席をたってドアに歩き出した。
足元はおぼつかない、
ミラーボールは二つ回っている。

夜はこれからだ、
また一人流れれば、
そこに私の居場所がある。

ひと時の温もり、
彼女はそれをこの夜に投げてくれた。

「まってよ」

左腕のすそを引っ張られる。
さっきまでカウンターに座っていた彼女が、
いまはすぐ後に立っている。

「ええよ、うち行こう」

2006年04月23日
22:36
MS-09F

私は彼女を店の外で待っていた。
ドレッドのマスターは日本語以外の言葉で黒人と話しをしている。
とても聞き取れない、
喧嘩でもしているのかと思うと、
肩を叩き合って笑っている。

ムギが出てきた。

「ええんか?」
「うん、ええんよ、会いたい人には会えたし」

会いたい人、
それになにか引っかかるものがあったが私はそれ以上聞かなかった。

御堂筋にでてタクシーを拾う。
行き先を彼女に尋ねると、
「弁天町」
とだけ答えた。

難波を回ってタクシーは雨上がりの夜を走っていく。
私はもはや浮き膨れる体を持て余し、
気の利いた言葉を吐くほどの気力もなかった。

「仕事はまだ続けてるのか?」
「ううん、もうやめたん」
「そうか」
「やっぱり長くは続けられんかった、根性ない」

恥ずかしそうに笑うそのほのかなえくぼ。
にじむ視線の先に幸福が揺れる。
さきより私はよく口が回る、
なにを話したのかは覚えてはいない、
しかし、
彼女の垂れ目がよくよくかわいらしいことだけを覚えている。

いつしかタクシーは止まり、
そこは栄えた振りだけしている寂しい海にほど近い街。
精一杯に足元を整え、
軽口を叩いて二人歩く。

やがて少し古いマンションにたどり着く。
ナースの専門学校に通うという彼女の、
ここが裸の寝床なのだ。

「ちょっと待ってね、すぐに片付けるから」

決まり文句だ。
予期せぬ客であるのだから当たり前だが、
私は鉄の扉に寄りかかり、
晴れた夜空の星を数えながら待った。

グッと背中に圧力、

「もう、なんで開かんのよ!」
「ああ、ごめんごめん」

広くも狭くもないワンルーム。
必要なもの以外は何も無い。

三合炊きの炊飯器。
ピンク色のプラスチックでできたビーズのカーテン。
フリーペーパーとSTUDIO VOICEがマガジンラックに刺してある。
MDのコンポからはラヴァーズ。

「ゆっくりして、なんかのむ?」
「ああ、麦焼酎」

彼女は「了解」といってキッチンからグラスを持ってきた。
私は勃起している。

2006年04月26日
01:27
MS-09F

時計が気になる。

時間が時間だ。
私は酩酊から少し冷めて、
目は明らかに彼女の四肢を捕らえている。

それすらも馬鹿らしくなる瞬間が、
一呼吸ごとにやってくる。
酩酊の向こう側に睡魔の誘い。

どうにでもなれという今と、
貪欲な肉欲の狭間で、
私は口に焼酎を運ぶ。

「お風呂入る」
「うい〜」

そういうと彼女は台所と寝間を遮る扉の向こうに消えた。
スリガラスの向こうにかすかに影。
チャラチャラと揺れ鳴る風呂場のカーテン、
薄暗いキッチンの光、
湯の爆ぜる音、
静かにラヴァーズ。

「お待たせ」

そういってムギは部屋着に着替えて帰ってきた。
細くも無く、太くも無いグレーのボーダーキャミソール。
タオル地のホットパンツにフロントジップのパーカー。

なんだそれ?
油断なのかそれが普段の姿なのか?
こういう意味不明のチョイスに私は、
言いようも無くなぜか心動かされる。

「めちゃくちゃなチョイスやな」
「なにが?」
「そのかっこう」
「え?おかしい?楽よ?」
「寒くないのか?」
「暖房入れてるし、それに」

そういって彼女はホットカーペットの電源を入れた。
そして丸まったブランケットをそっとヒザにかけた。

「それって意味無くないか?」
「暖かいよ」
「いや、ズボン履けよ」
「冷え性ちゃうもん」
「そういうもんなんか」

春は近いがまだ寒い。
ホットパンツはまだ早い。
ブランケットは仕舞い時。

「歯ブラシあるか?」
「ないよ」
「あそ」

私は洗面所にいってうがいをして顔を洗った。
鏡に映るのは酔いとぼけた顔。
目は半開きでだらしが無い。
回転する妄想は瞳孔の中に。

戻ると彼女はMDを換えている。
突き出した尻は、
言うまでも無いだろう。

何も見ていないことにして、
私は席に戻る。
深夜、週末のTVは見知らぬアニメ。
アニメ、レゲエ、ホットパンツ。
垂れ目の女と麦焼酎。

平衡は失われる。

「大丈夫?もう寝る?」
「ああ、毛布ないか、横になる」
「そこで?」
「ああ、ここでいい」
「あかんよ、寒いし、風邪ひくし」

待ってましたといわんばかり、
しかし、その時、
私はいつもの悪い癖がでた。

「大丈夫や、鍛え方が違うから」

どこをどう鍛えているというのだろうか?
普段は不摂生の塊で、
夏にもろくに太陽の下には出ない。
あるのは根拠のない自信だけ。
そして今あるのは根拠の無いやせ我慢だけだ。

「そう、ちょっとまって」

据え膳喰わぬは男の恥と古人は言った。
しかし、
据え膳の見分け方までは教えていない。

据えられていたと思ったら、
それは食券が必要だったなんてこともしばしば。



2006年05月27日
02:03
MS-09F

蛍光灯がチリチリと音を立てて消える。

暗闇にはブラウン管の光。
音はできるだけ小さく。
それは緊張を静かに高める。

彼女はベッドにもぐりこんだ。
衣擦れの音がその早さと共に押さえきれない感情をもたげる。

頭の中はムギの肌に触れることで満たされる。
どう言い訳をしてその横に潜り込むか。
そのためのシュミレーションで30手先まで読む。

なんて考えているともようしてくる。
トイレに立ち手を洗い、
元の場所に戻ってくる。

ため息を一つつく。

そのままベッドに入った。

壁に向かってこちらに背中を向ける彼女に、
寄り添うように横になる。
しばらくはそのうなじに唇を寄せて、
そのまま眠る。

少しの沈黙。
このまま眠れるならばそれもいい。

「・・・!ん、どうしたん?」

ヘタな嘘だな。

「やっぱ寒いからこっちで寝る、あかんか?」
「うん、ええんよ」

キスをする。
初めは少しだけ、少しだけ。
暗闇の中で至近距離の瞳が光を反射して黒に浮かぶ白い影。
どっちが先にまぶたをを閉じるのか。

柔らかに閉じ、垂れ目がよく見えた。

わき腹に添えていた手を腰に回して、
そのまま体勢を入れ替える。

唇は離れて、
一瞬、
言葉が挟まれない程度の一瞬だけ目を合わせてまたキスをする。

もはや押さえるべきものは何も無い。
言葉ではなく、熱がお互いを開いてゆく。
触れ合う舌先は探りながら、
やがてその奥までも貪るように。

離れようとしたときに彼女の手に力が入る、

「もっとして」

キスは続く、
もっと新しいキスを、いま、いまもっと欲しい。


2006年06月14日
21:40
MS-09F

味など無い彼女の舌と粘膜を確かめる。
どこかで慣れた自分に気がついて気持ちが鎮まる。
どうすれば支配できるのか、
そんなことを考えた時に、
ふいに私は目を開けてみた。

彼女も目を開けていた。
私たちはこれ以上ない距離でお互いの瞳の奥を覗き込んだ。
私たちの唇と柔らかさは離れ、
薄く糸で繋がっている。

「どうした?」
「なにが?」
「別に」
「続きはしないの?」
「・・・したいのか?」

突然その肌は醒める。
冷たく、乾く。

私は彼女の傍に体を横たえ、
頬杖をついて彼女の横顔を見つめた。
言葉はなかった、
見つからなかったといえばもっと正確だろう。

覗き込んだ瞳。
それはすべての答えを擁していた。
必要なものはなんだったのか。
キスは刻々とその色を変え、
二度とは同じ色に戻ることはない。

ただ、唇だけが、
薄い唇の皮膚の感触が、
チリチリと痺れている。

彼女は壁に際に背を向けて眠ってしまった。
私はその背中を見つめていた。
できるだけそのまま、
その背中を見つめていた。

深く息を吸い込んで、
彼女が眠りに落ちた頃、
私はそっとベッドを抜け出して、
小さな彼女の部屋を出た。

唇はまだ熱い。
しかし、
それも時がたてば醒めていく。
ただ、忘れはしないだろう。
ただ、忘れはしないだろう。

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