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クトゥルー神話創作小説同盟コミュの押入れの隅にうずくまっているモノ

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 23時50分。もうそろそろ零時となる。そうなれば、相棒が動き出す時間だった。机の上にある時計を確認した後、椅子を回転させ後ろに振り向く。僕の後ろには押入れがあり、そこは少しだけ襖が開いていた。その奥の方から、ぼんやりと光るモノが2つある。それを見てるだけで思わず嬉しくなってくる。押入れの隅の方で、うずくまっているモノこそが僕の相棒だ。アレは実に優秀な存在だった。というのも、僕の恋人に言い寄ってくる男共を処分してくれるからだ。僕の恋人は、浮気性なのか、常に二股、三股などは当たり前だった。でも、僕は彼女を他の男共に手渡したくなかった。あの日、偶然、アレを手に入れてからはその心配はなくなった。大学の図書館で見つけた宗教に関して書かれた古い洋書。その間に一枚の草稿が挟まっていた。洋書自体は、キリスト教についてもっともなことを研究し、それを発表してあるだけで、特にこれといって目に惹くものはなかった。しかし、そこから出てきた草稿にはかなり魅力を感じた。こっそり、それを持ち帰ると自分で和訳してみた。大学で英語を専攻しているとはいえ、これには手こずった。なんせ、両面に細かくびっしりと文字が書かれていたからだ。苦労の末、翻訳してみたのを改めて読み直した時、正直その内容を信じることはできなかった。なぜなら、この草稿には、異界から「闇の住人」を呼び出し、それを使役する方法が書かれていたからだ。
 一枚きりの草稿には「闇の隅でうずくまるモノ」と呼ばれている、闇の住人を呼び出す「召喚の呪印」と目標を示す「生贄の呪印」について詳しく書かれてあった。そして、僕はなんの躊躇もなく「召喚の呪印」を実行した。使用方法は意外と簡単だった。召喚さえしてしまえば、あとは殺す相手にカードなどに「生贄の呪印」を書き、それをこっそりポケットなどに忍ばしておけば、零時には僕の相棒が始末してくれるのだ。

 23時58分。デジタル式の電波時計が音もなく時を刻む、あと2分。あと2分で、あの邪魔な男はこの世のからいなくなる。もうすでに3人を相棒は、始末してくれている。突然、3人が行方不明になっているためか、警察や大学でもかなり問題となっている。当然ながら、僕は一切疑われることはなかった。

 23時59分。急に携帯が鳴った。この音は・・・?
メールだった。いいところを邪魔されてしまった。憮然としたまま、メールを確認する。メールには、写真が添付されていた。僕はその写真を見ようとファイルを開いた。

 零時。携帯の写メールを見た途端、頭の中が真っ白になってしまった。
「あれ、なんだよ、これ・・・。」
 そうつぶやくの精一杯だった。微かに襖が滑る音が聞こえた。”ビクッ”と体を震わせ、僕は恐る恐る押入れを見た。丸く鈍く光る2つの目がこちらを見ていた。襖には影のような黒い手がかかっている。そして、そこから、のそっと相棒が出てきた。
 真っ黒な人間。そう表現するのが一番似合っていた。輪郭のぼやけた影、それが立体的になったような、そういうモノだった。顔には鈍く光る丸い目が2つ。こちらを見ていた。”カパッ”という擬音が聞こえてきそうなほど、その大きな口が無造作に開かれた。やけに甘く濃厚な花に似た香りが部屋一杯に拡がった。途端、僕の体は部屋の畳の上に転がっていた・・・。
 自分でも何が起こったか。全然理解できなかった。逃げ出そうと立ち上がった矢先、あの吐息を嗅いでしまった結果だった。
 黒い影は、押入れから這いでて来たままの格好で僕ににじり寄って来た。これから何をされるのか、僕はあの草稿でそれを知っている。だからこそ必死で逃げようとした。しかし、無駄だった。僕の体はまったく言うことを聞いてくれなかった。腕一本、指先でさえ動かない。えもいわれぬほどの恐怖が体中を巡る。黒い影は、僕の傍に来るとそらにその口を開き、右足にかぶりついた。
 (−−−−−−!!)
 激痛が一気に脳まで達した。僕は絶叫を上げた。いや、上げたはずだった。咽からは一切の悲鳴は発せられなかった。歯が喰い込む感触が伝わってくる。そして、僕の耳に筋肉を引き千切る音が聞こえてきた。
 (−−−−−−!!!!)
 その激痛で再び絶叫を上げた。だが、僕の部屋に響くのは、肉の咀嚼音だけだった。
 グチャグチャと肉を噛む音・・・
 ジュルジュルと血を啜る音・・・
 ガリガリと骨を齧る音・・・・・
 様々な音がおこるごとに、僕の脳に激痛が襲う。もう、気が狂いそうだった。黒い影は、右足を平らげると、今度は左足に取りかかった。再び足を食べる音が、僕の狭い部屋に聞こえてきた。体内からは、大量の血を流れ畳の上に血溜まりを作っていた。しかし、不思議なことに僕は生きている。いや、生かされているのだろうか・・・。
 そのこのとに気付いた時に、凄まじい恐怖が襲った。そう、やっぱり僕を生きたまま食べようとしているのだ。安らかに死ぬこともできず、ただエタイのしれない闇の住人に、激痛と恐怖にさいなわれながら、食べられていくのみなのだ。
 (いやだ、そのイヤだ、誰か、誰か助けて!!!)
僕は、泣きながら半狂乱になって助けを求めた。唯一動く眼球で必死になって周りを見回した。誰か僕を助けてくれる人はいないのか。そんな僕の目が場違いなもの見てしまった。
 
 それは一人の少女だった。黒を基調に白いフリルのたくさんついたゴシック調の服を着ていた。黒い髪、白い肌、赤い瞳、そしてその無表情さ。まるで人形と見間違うような少女は、なぜか、僕の傍に立ち。じっとこちらを見つめていた。
 (お願いだ、助けてくれ!!)
 僕は、なぜそこに少女がいるのかそんなことを考えもせずに懇願した。しかし、僕の咽からは声は出ない。何度も何度も少女に助けを求めた。そして、彼女は始めて言葉を発した。
「ホント、世の中は便利になったものね」
 (え!?)  何を言っているのか理解できなかった。少女が畳に転がっていた携帯電話を拾い上げる。
 そして、画面を僕に見せた。そこに写っているのはメールと共に送られてきた写真。それは「生贄の呪印」だった。
 (ま、ままま、まさか、お前が送ったのか!?)
怒りでカッとなった。
 (お前のせいでこんな目にあっているんだぞ!!)
声も出ないのに、その罵ってやった。だが、彼女は鈴のような声で言った。
「自業自得」
 冷たい赤い瞳が僕を見下している。たって、それだけで、怒りは冷め再び恐怖が戻ってきた。
 (頼む、助けてくれ、もうこんなことはしないよ。)
僕にできるのは、ただ少女に懇願するのみだけだった。
「安心して・・・」
その言葉に一瞬期待感が湧きおこる。
「あなたが死ぬまで、ちゃんと見ててあげるから・・・」
期待感は、一転して絶望感へと突き落とされてしまった。再び激痛が襲った。本当に痛みで気が狂いそうだった。闇の住人は、両足を喰い尽すと、今度は僕のぶよぶよの腹に歯を突き立てていたのだ。両手で僕の臓物を腹の中から引っ張り出すと、そいつは嬉しそうに大きな口に放り込み、グチュグチュと噛み始めた。
 すっと、少女が動いた。そして、机の上に置いてあった英文の草稿を取り上げ、一瞥する。
「エイボンの書。その一部の写し・・・。まさか、こんなところにあるなんて・・・。」
 どことなくうんざりしたような表情で鈍い鈴のような声であった。少女が机から離れた、不思議なことに手に持っていた草稿はもう持っていなかった。机の上にも、存在はしていなかった。
 少女がそうしている間にも、僕は食べられ続けた。徐々に痛みを感じなくなってきていた。頭の神経が激痛で切れたのか、痛みに慣れてしまったのか、それとも別の僕の理解のできない力が働いているのか、まったくわからなかった。それでも、耳だけははっきりと聞こえていた。
 グチャグチャと肉を噛む音を・・・
 ジュルジュルと血を啜る音を・・・
 ガリガリと骨が齧る音を・・・・・
それは今だに聞こえていた。
 (いつになったら終わるのだろうか・・・。)
ぼんやりとした頭で考えていた。もう痛みが薄れくると現実感がなくなりつつあった。なにか、悪夢を見ているのではないか、目が覚めたらなにごともなく布団の中にいるのではないのだろうか。そんな気がした。
「もう、終わるよ。ほら見て。」
僕は、少女の声にハッとなった。そして、眼前にあったのは、影のように輪郭のぼやけた顔と丸い目が2つ。
 僕の体は、もうすでに無かった。あるのは、この首だけ・・・。それでも、僕は生きている。闇の住人は、僕を両手で挟むようにして持っていた。そして、これから、何がおこるのか、それは簡単に予想できた。恐怖で顔が強張る。怯え切った目が見たのは、これ以上ないというぐらい大きく開いた黒い口だった。そこからは、あの甘く濃厚な花のような香りがした。
「さようなら、よい悪夢を」
少女から鈴のような言葉が鳴った。それが合図だったかのように、僕は口の中に放り込まれた。暗い暗い口の中で、グチャグチャと肉を噛む音。そして、ゴリゴリと頭蓋骨を噛み砕く音。そして、ブチュという脳を潰される音を聞いた時、僕はやっと死ぬことができた・・・。




コメント(4)

こんばんわw え〜あっくすです。
小説第二弾です。なんかやたらと長くなってしまった・・・。
短編小説のはずなのに @(;・ェ・)@/反省…

自分でも、正直書いていてワケがわからなくなってきていたので、あんまりできは良くないと思っておりますが、読んでいただけると嬉しいですw

今回でてきた「闇の隅にうずくまるモノ」の設定を「クトゥル神話邪神魔導製作所」に載せてあります。あんまり、詳しくはないですけど・・・w

こちらになります↓
http://mixi.jp/view_bbs.pl?id=11287593&comment_count=26&comm_id=1421815
>ハスターさん
 ご感想ありがとうございます^^
 
 今回のは、なんか怖いより気持ち悪いって感じだったので、もっと怖さを伝えられるよう精進しますw
押入れから・・・というのが怖いですね。何処か都市伝説的な怖さも感じられました。

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