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二人の絆コミュの第一章「灰色」

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まずは、こんな書き出しで進めてみたいと思います。
アングラ的恋愛小説スタートです。
まったくの見切り発車ですが、みなさん奮って書き込んでください。


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 僕はいつもの小さな公園で煙草を吸いながら、高層ビルの街並みを見つめていた。
外国人の経営するバーで知り合ったボビーの、海外製の煙草は、焦燥感に駆られるこの曇天とコンクリートの壁の中で、
時間が過ぎていくという現実を一瞬忘れさせてくれる。
こうやって週に何回かは、誰を待つでもなく行き交う人間達をただ静観していた。
 いや、本当は待っていたのかもしれない。ここにいれば柚榎にまた会えるかもしれないと心のどこかでそう思っていた。あの時へ戻れたら、今度はしっかりと言えるだろうか。傷つくのは僕たちが間違っていなかった証拠なんだって。

右耳に付いたピアスが風に吹かれる度、またあいつのいない季節が来たと身を縮ませる―――――




コメント(7)

「あいつは冬が好きだったな。『冬生まれだから』って……」
 吐き出した息の白さに辟易する。僕は冬が嫌いだ。
秋から冬に向かって、木々の葉が落ちて、景色が色あせていくさまが、ひとが老いて死んでいくのを連想させて、どうしても好きになれなかった。
 冬になるころには、夏の暑さも、空の青さも、空気のみずみずしさも全部忘れてしまうんだ。死者がかつてこの世にいたことを忘れてしまうように。
 
 緩やかに移り変わることを、僕は恐れていた。四季が夏で終わりならいい。老いることなく死が訪れればいい。

「世界が終わればいいのに」僕は呟いたつもりだったが、ベンチ脇のゴミ箱をあさっていたホームレスが、ぎょっとした様子でこちらを覗っているのをみると、思いのほか大きな声だったようだ。
 あいつみたいだな、と僕は自嘲的に笑った。柚榎は口癖のように言っていた。「世界が終わればいいのに」
 
 結局、柚榎は自分で自分の世界を終わらせてしまったのだった。 
遠い空を見つめながら、ため息なのか肺の中から煙を押し出すためなのか、どちらともつかないような呼吸をする。
煙草1本吸い終わるのに何分もかからなかったが、もうホームレスは居なくなっていた。別のゴミ箱をあさりに行ったのだろうか。数分前まで彼があさっていた鉄製のゴミ箱へ、
行き場のない感情を捨てて、心の中で呟く。

「あの時願ってた未来はこんなものじゃなかった。」

ボロボロの服を纏った彼には、僕はどう映ったのだろう。きっと同類か、それ以下の目をしていたに違いない。滑稽な生き方をしているのは彼ではなく僕の方なのかもしれない。

もうすぐ仕事の時間が迫っていた。仕事といっても、僕はスーツに身を包んで戦うビジネスマンなんかじゃなくて、病院の偉そうな奴が用意してくれた清掃業の一時雇用みたいなものだ。最下層の人間がやるものだと、昔はそう思っていた。もともとスーツを着るような仕事には就きたくないと思っていたがここまで落ちぶれるとは思わなかった。
それに、この仕事は辛かった、陰鬱な病院の雰囲気も匂いも、今の自分にはよく馴染むが好きにはなれそうもない。大変なわけではない、退屈な単純作業ばかりで考えなくてもいいことばかり考えてしまうのだ。ぼーっとしていたのか上司に怒鳴られた、悪い人だとは思わない、いい人だというわけではなくただ興味が湧かない。あの時からもう何に対しても興味が抱けず、人と係わることを止めたのだ。だから未だに同僚の名前も知らない。

そして、今日も誰とも話すことなく仕事を終え、コンビニで弁当を買い部屋に帰る。パソコン以外には最低限の家具しかないこの部屋と病院を往復する僕の世界は閉じた世界だ、干渉することも、侵食されることもない世界。柚榎のように世界を終わらせることもできず、変わることなくただ存在するだけのモノクロの世界。

そんなことを考えているとまたフラッシュバックが起きた、ここ最近、煙草の副作用で幻を見る。そしてその幻は決まって柚榎だった、幻の彼女は笑顔などみせず、無表情で何を考えているか分からない。思えばあいつが笑顔だったことなどなかったのかもしれない。それでも、写真も残さず、この世界から消えてしまった彼女と僕を繋ぐ唯一のものは、もうこのフラッシュバックしかない。だから煙草を止められず、幻の柚榎と会うためだけに吸い続けている。そんなあいつに俺は話し掛ける言葉が見つからない、守れなかった、幸せにしてあげたかった、何よりいつまでも一緒にいたかった。そんな溢れる思いを抱いて手を伸ばしても幻には届かない。

フラッシュバックから覚めると、パソコンが目に入った。このやり場のない気持ちを晴らしたかったし、特にすることもないので仕方なくパソコンを起動した。
 僕のパソコンには、インターネットサイトのお気に入りで、どうしても消せないものがある。"集まれ!自殺志願者"という掲示板サイトだ。ここのチャットルームで僕と柚榎は知り合った。僕が17、早生まれの柚榎が16のときだった。 
 同じ区に住んでいたこともあって、僕らはそれから程なくして、実際に会うようになった。お互いの境遇は違えど、僕らは良く似ていた。灰色の世界を生きていた。
 
 そうだ、あの頃の僕も、この灰色の世界を生きていた。
 薄暗いフィルターの中で、もがくことさえせずに、ただ、息を殺してうずくまっていた。だれかに、僕が呼吸していることを気付かれないように。
 
 いや、本当は気付いてほしかった。だから僕は、画面の向こうにそれを求めたのだった。
 あれから7年経った今でも、僕は同じように画面を見つめ続けている。だれもいないチャットルームを。
 煙草に手をつけようとして、それがないことに気付いた。少し値は張るけど、またボビーから買わないとな。吸えないことが分かると急にイライラしてくる。
 もういいや、もう寝よう。
 パソコンの電源を切ろうとしたとき、チャットの画面が更新された。

 ぽち子:はじめまして!リストカッターのぽち子です
 
時刻は、すでに午前3時を回ろうとしていた。
月の光で照らされた公園は妙に白々しくて、息をしているオレだけが不自然だった。
(ホントにくるんだろうか?)
何度となく自問してきた言葉を、再び頭のなかで繰り返した。
だが、さっきボビーから買ったマリファナのせいで、秒単位で数千個の脳細胞が死んでいく頭から、明瞭な答が帰ってくるはずもなく、問いは虚空へと消えていった。
(まあ、どちらでも同じことさ)
さっきみたいに、考えること自体を放棄した脳に酒の酔いに似た濁りが、墨汁のしみのように広がっていく。
オレは、三本目のマリファナに火を付けた。
横の茂みでは、禿げたオヤジのゲイカップルが、アナルセックスに励んでいる。風に乗って、マリファナの甘い香りが広がっていった。



ーーこんばんは、リストカッターのポチ子です。ーー
それは昨日の夜のことだった。
何気なくパソコンをいじっていたオレの目に飛び込んできたのは、ポチ子という女からのメッセージだった。
(こんなとこにまだ、カキコミする奴がいるのか)
そう訝しながらも、返事を書いた。会話にうえていたからかもしれない。
オレ達は、取り留めもない話しを延々と続けた。内容は、殆ど覚えていないが、回りのヤツラがどれだけ馬鹿だとか、最近あった焼身自殺がちょっとだけ素敵だったとか、そうゆう話だったと思う。

ーー明日、会えない?ーー
そうポチ子はきりだしてきた。明け方近くだった。

『OK。場所はオレが決めていいかい?オレ達にピッタリの所がある』

オレは、迷わず返事を書いた。場所はいつも公園。今のオレ達には、これ以上の場所はちょっとないだろう。
なぜ、こんなことをしたのかは、自分でもよくわからない。ポチ子にほんの少しだけ興味を持ったのかも知れないし、ただ、未だにこんなとこにカキコミする馬鹿を笑いたかっただけだったのかもしれない。それとも、誰か自分と少しでも似たところのあるヤツーーあの女のようなーーに会いたかったのかも知れなかった。
理由はどうあれ、オレは久しぶりに仕事以外で目的をもって外出することになった。
ポチ子に会うために。



オレは、三本目のマリファナを吸い終わろうとしていた。
隣のゲイカップルは、いよいよ熱くなってきたらしく発狂した豚のような下品な声を上げている。
(よく続くな・・・)
ぼんやりとした頭でそんなことを考えていると、突然、後ろから叫び声が上がった。
みると、19かハタチくらいだろうか、長い黒髪に赤い縁の眼鏡、地味だが今風のかっこうをした大学生風の少女が、ホームレス風の男に絡まれている。
(馬鹿だな。こんなトコを女が一人で通るなんて)
きっと、何か用事があって遅くなってしまって、急いで帰ろうとでもしたのだろう。たまに何も知らずにここを真夜中に通ろうとする奴がいる。それが女だったりすると、大なり小なりこうゆう運命が待っている。
勿論、助ける奴など誰もいない。そうゆう、暗黙の了解みたいなものがここにはある。第一、誰だってゴタゴタに巻き込れたくないのだ。

オレは目を逸らし、四本目のマリファナに火を付けようとした。
その時だった。
西瓜を棒で叩いたような、くぐもった音が響いた。続いて人の倒れる気配がする。
振り返ると、そこには、一人の女が立っていた。
嫌にシルバーが目立つ派手な服装と、二色に分けられた髪が、月の光を浴びて薄ぼんやりと浮かんでいた。手には、ボコボコにへこんだ金属バットが握られている。回りには、後頭部を殴られたのか、頭を押さえて倒れているホームレスと、突如降り懸かったことに反応を示すことすら忘れている少女が、その場にへたりこんでいた。
ホームレスは、自分の身に何が降り懸かったのか理解するのに時間がかかったようだったが、正気にもどると、血走った目を女に向ける。
だが、女はそんなホームレスを一別すると、すぐさま男の顔面に蹴りをいれた。再び、くぐもった音がし、今度はホームレスは、顔面を押さえてしゃがみこんだ。鼻骨が砕けたらしい。
女は、なおも無表情でそれを眺めている。
きっと殺されると思ったのであろう、ホームレスはよたりながらも一目散に遁走していった。
女は、それを暫く凝視していた。そして、先ほどホームレスに絡まれていた少女のほうを振り返った。
少女は暫く呆然としていたが、我に返ると自分を助けてくれた女にぎこちなく礼を言った。
「あ、ありがとうございます」
礼を言われている女は、ただ無言でそれを眺めている。
少女の言葉が終わるかどうかというときだった。女は無表情のままゆっくりバットを頭上に振り上げた。
またも、公園中に鈍い音が響く。
女のボコボコのバットは、少女の鼻の下を捕らえていた。プロにだってそうはいないほどの見事なスイングだった。
少女は殴られた衝撃で、思いきり地面に倒れ込んだ。何が起こったのか理解しきれていないのか、不思議そうな顔をして女を眺めている。
やがて、自分の身に何が起こったのか理解したのか、とさつされる前のニワトリみたいな悲鳴を上げて走り去っていった。
少女が走り去ったあとには、無数の血痕と、砕けた歯の破片がキラキラと輝いていた。
オレは、それをただ呆然と眺めている。
女は、オレにきずくとゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
月明かりの中、くっきりと浮かび上がる女は、この季節だというのに半そでだった。むき出しの腕には、手首のところに生々しい傷跡があくつもある。
そして、返り血を手のひらでこすりながら初めて声を発した。
「あなたがアキラ?」
それは、この女には似つかわしくないひどく澄んだ声だった。
おれは、返事をすることができなかった。
女は、そんなオレの眼を覗き込むようにしながら澄んだ声で言った。
「ねえ、世界を一瞬で消しちゃう方法って知ってる?」
その顔は、光の加減のせいなのか、少し青ざめてみえた。

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