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エッセイストコミュのエッセイ翻訳:「HELP! 最強知的“お助け”本」(東邦出版)

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私の先輩翻訳者の下隆全さんの翻訳本:「HELP! 最強知的“お助け”本」が発売され、大変人気があるようなのでご紹介します。

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「HELP! 最強知的“お助け”本」(東邦出版)
オリバー・バークマン/著 下隆全/訳
http://www.7netshopping.jp/books/detail/-/accd/1106382506/
参考書評:
http://smoothfoxxx.livedoor.biz/archives/52143873.html
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下記に拙いながら私自身の書評をご紹介します。

<書評:「HELP! 最強知的“お助け”本(オリバー・バークマン/著 下隆全/訳)>
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邦訳され出版さたばかりの、オリバー・バークマンの「HELP!」という本を読んだ。原著は2011年に英国ガーディアン誌に連載されベストセラーになったという若手気鋭作家の力作である。

本の帯には「これまでの自己啓発本で幸せになれた人は読まないでください」と書いてある。さっそく内容をざっと通読すると、どうも本著は「幸せになるためのマニュアル(自己啓発本)を読んでも、幸せにはなれないことを伝えるマニュアル」であり、この著作の内包する自己矛盾が逆に面白くて一気に読んでしまった。

著者自身はこの矛盾は百も承知した上で執筆しているようで、従来の自己啓発本(例えば、「情熱探し」とか「まずはゴールを設定せよ」とか「完璧な生活をめざすには」というような趣旨の本)は、快刀乱麻を断つごとく痛烈に批判しているが、一方で本著の目指すものは著者が序文に記しているように、「幸せについての何か大きな原則を発見しよう」というものではない。

個人的な意見だが、神ならぬ身の人間が真理というものに辿り着けないとしたら、「何が正しい(真理である)かを述べるのではなく、何が正しくないか(真理でないか)かを正確に述べる」のが良書の判断基準となり、そういう面から本著はまさに良書と言える。

具体的には本著には、従来言われている自己啓発にからむ96もの事例が挙げられ、それを評価、批判しているが、各事例が「正しくない」ことを「(存在するかも知れない)正しいこと」から振分けるフィルターとなっており、辛抱強く読んでいくと目から鱗が落ちる部分が多くある。

ただ一方では、一見総花的に見えるこれら多数の事例の中にも、著者の一貫した信念というものも垣間見えるのが本著の魅力でもある。従来の自己啓発本を例えるとするとどちらかというと「西洋医学風」の対症療法で、例えば血圧が高くて「血圧を下げる薬を服用したら、肝臓障害が起き、肝臓の薬を服用したら今度は腎臓に副作用が起き、腎臓の薬を服用すると今度は胃腸薬が必要になる・・・」というのに対し、著者は対象療法というよりもより全体的なバランスを重んじる漢方薬的な見方を重視しているようにも伺える。

ある会社の研修会で、主催者曰く「この研修を受ければここいる皆様は全員トップセールスマンになれる」という現実には起こりえない笑い話が引用されている。そもそも世の中は多様な人間のバランスで成り立っているのだから、ある一面だけを取り上げて、それで物事や幸福を評価するというアプローチ自体が非常に偏狭で不自由なものになり却って解決や前進を妨げることになると著者は各所で述べている。そしてその反例として、禅とか森田療法など、一見非論理的、受動的、他力的に見え実際は実利的な東洋的なアプローチを対比させている。

幸せの中にはお金は欠かせないものかも知れないが、本著でも欧米ではかつてより所得水準が3倍になったが人々の幸福感は増大していないと書かれているし、また例えば年収500万円の家庭と年収2000万円の家庭の幸福度は変わらないという統計もある。

世界中の人が全員「トップセールスマン」になったり、年収2000万円以上になったりしてもおそらく人々の幸福度はあまり変わらず(著者は「幸福に飽きる」という表現をしている)、その一方では世の中の資源が急速に消費されていくことになるのかもしれない。

著者にはこういった全体性を見極めるという大局観があるからこそ、序文にあるように「幸せについての何か大きな原則を発見しようとする」よりも、むしろ控えめに少なくとも「正しくないアプローチを排除する」ためのテクニックやツールを挙げている。

最後に改めて原著の副題 “HOW TO BECOME SLIGHTLY HAPPIER AND GET A BIT MORE DONE(少しだけより幸せに、そして少しだけ前進していくために)”を眺めてみると、著者の謙虚さとともにその意気込みが感じられ、今後オリバー・バークマンの他の著作も順次邦訳されてより多くの日本人の眼に触れていくことを心から願うものである。
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アマゾン等はもちろん、結構書店に並んでいるので、気が向けば手に取ってみてください!

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