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神奈川県茅ヶ崎市香川

公民館館報 『かがわこもれび通信』37号より(07/11/27)
http://www.city.chigasaki.kanagawa.jp/newsection/shougaku/kou_kagawa/pdf/komorebi37.pdf


●●●「この人」-木に潜む命を彫る●●● 彫刻家 棚田康司さん


「芸術家に会うのって緊張するね。でもアトリエは見たいよね」

ということで香川在住の新進気鋭の彫刻家をお訪ねすることになりました。



「蕾の少年」というタイトルの彫像が一体、完成に近づいていました。

若々しい肌の質感、涙が表面をうっすら覆っているような遠いまなざし、

動くか動かないかの不安定な姿勢。



傍らには、彫りの進み具合が異なる荒削りの木像が数体、

違う木肌を見せて立っています。作業机には鑿などが20のみ本近く並べられ、

足元にはチェーンソーも置かれていました。

かすかに床剤の塗料が匂うアトリエはもう“棚田ワールド”です。



☆[そもそも何で彫刻なの!?]☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


中学一年生のとき、両親が仕事で渡英しました。

離れて日本で過ごした一年間、初めて“孤独”を体験しました。

この頃から始まった自己への問いかけは、高校時代に描いた自画像によってさら
に深まり、

彫刻による表現の世界へ、美術大学の進学へと向かいました。



大学院生時代の京都・奈良での実習やその後のドイツ留学で見た木像は、

日本や自己を足元から見つめなおす契機になりました。



1本の木からしっかり人体を彫ろうという意識が芽生えたそうです。



☆[何故、彫り続けるの!?]☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「制作は自己と対峙するところから、祈りと似ている。

木像はそのためのツールメディア。

色々なものをつぎ足すのではなく、

制約のある1本の木から自分の感性を信じて彫る、たどり着く、そこに作品が生まれる。

9割の苦しみの後に光が見えてくる」。



1本の木から彫り出す作家は少ないということです。

材質の違う木との出会いを大切にし、探り当てたときの手応えを語ってくれました。



夫人の故郷である香川に住んで14年あまり。

夫人とご子息の三人家族です。

生活にも創作にも家族はとても大切。



大学で同じ道を志していた夫人は、

棚田氏の作品が自分の創りたいイメージとぴったり一致すると

夫を理解しサポートしています。



ご子息は

「本能の固まりで、リアルな人間そのもの、そして未来を予感させる実体」

として作品にも反映され、創作の合間には一緒にテニスを楽しみます。



香川の辺りは昔、七堂伽藍という大きなお寺があったと伝えられています。

「歴史もあり、富士山も見える。

子どもから若者、お年寄りと幅広い年代層の人が住んでいる。いいところですね」。



香川の自然と人との交流の中で、

日課である夕方の犬の散歩中に作品のタイトルを思いつくこともあるとか。



好きな音楽家は武満徹、そしてビートルズ。


固定化していた芸術家のイメージはすっかり消えていました。

たどたどしい取材にも分かりやすく丁寧に答えてくださって、



「彫刻をすることで普通でいられる」という言葉に

私も自然に頷いていました。



12月の公民館講座では、

若い人たちに「手作りの方向を目指すことは大切」

というメッセージを送りたいとのことでした。(H19.11.27取材)


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