香港ノワール映画－英雄片－コミュの【香港ノワール／絶頂期】サンダードラゴン

原題：雌雄雙辣(Thunder Cops Ⅱ)
香港　ゴールデン･フレア･フィルムズ作品　91年(オリジナル版公開は89年)　97分　カラー　日本劇場未公開(DVD)

製作：ホイ･ウォン　監督･脚本：ジェフ･ラウ　武術指導：ユエン･チョンヤン
出演：サンドラ･ン／チャウ･シンチー／アン･ブリッジウォーター／シン･フイ･オン／ウー･ファン／ジェフ･ラウ／サニー･ファン／リン･シャオ･ロウ／エディ･コー

―解説―
麻薬組織のボスに父を殺された一匹狼の女刑事と組織に追われる若者が､共にボスへ闘いを挑む姿を描いたサスペンス･アクション。出演は『オカルト･ブルース』(90年､ソフトのみ)などのサンドラ･ン(吳君如)､『食神』(96年)などのチャウ･シンチー(周星馳)､『マイヒーロー』(90年､ＤＶＤのみ)などのアン･ブリッジウォーター(柏安妮)､『愛と復讐の挽歌』(87年)などのシン･フイ･オン(成奎安)､『奇蹟<ミラクル>』(89年)などのサニー･ファン(方剛)､『新桃太郎』(87年)などのリン･シャオ･ロウ(林小樓)､『孔雀王』(88年)などのエディ･コー(高雄)ほか。監督はジェフ･ラウ(劉鎭偉)が劇中出演も兼ねて担当。89年作。

―物語―
女性警官ラム(吳君如)は､凶悪犯パンサー(方剛)を追う父フォン刑事(高雄)の捜査に乱入､あげく父はパンサーに殺されてしまった。時が経ち､刑事となったラムは､父の仇を討つため麻薬中毒の女情報屋チャン(柏安妮)からネタを仕入れ､パンサーとセブン(成奎安)の取引現場に乗込むが逃走される。ラムは新人の女刑事サム(林小樓)を連れチャンの元へ向かうが､セブン一味に襲撃され､サムとチャンは殺された。ラムに敵意を持つタイガー警視(劉鎭偉)に陥れられサム殺害の罪を着せられたラムは､おじの協力を得て再度パンサーとセブンを追い始める。そしてパンサー一味に狙われたセブンの弟イン(周星馳)に接近するが…。

コメント(4)

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[1] mixiユーザー 09月10日 15:52

大分以前に当コミュでご紹介したディニー･イップ(葉德嫻)主演の『ソウル』(86年､映画祭のみ)以来となる女性が主人公の"香港ノワール"作品なんですが､非常に複雑な出自をはらんだ1作でもあります。
まず本作の国内版DVDを再生すると､スタッフのクレジット後｢Thunder Cops Ⅱ｣という英語タイトル(画像左)が表示されます。｢Ⅱ｣ということは｢Ⅰ｣､つまりパート１が存在するということです。コレはどんな作品かというと､かつて日本でもビデオ化された『チャイニーズ･ゴースト香港の幻』(89年､画像中)という本作とは全く毛色の違う映画がそれにあたります。更にこの映画には｢Operation Pink Squad Ⅱ｣という別の英語題があるんですね。これも｢Ⅱ｣というのは｢Ⅰ｣､パート１があるだろうとたどっていくと､やはり日本ではビデオ発売された『機動女戦士ハリケーン･コップ』(88年､画像右)という映画に行き当たるのです。つまり本作は､サンドラ･ン(吳君如)主演､準ヒロイン格でアン･ブリッジウォーター(柏安妮)､サンドラの上司役でウー･ファン(胡楓)が出演するシリーズの第3作目にあたるということです。３作ともジェフ･ラウ(劉鎭偉)監督ですが､本作は前述した第１･２作とのつながりはありません。

[2] mixiユーザー 10月22日 13:52

本作は元々｢流氓差婆｣という原題で89年に撮影され香港で公開されましたが､その後脇で出演したチャウ･シンチー(周星馳､画像左)が大ブレイクした為､若干改編した上で原題を替えチャウ･シンチー主演作の様な体にして91年に香港･台湾でリバイバル公開されました。日本でDVD化されたのもそのリバイバル版になります。
主演のサンドラ･ンは､ショウ･ブラザース傘下のテレビ局TVBの俳優養成所を経て､オールスター作品『七福星』(85年)で映画デビュー。コメディエンヌ的な存在として話題作に出演を重ねてきましたが､前項でご紹介したジェフ･ラウ監督との『機動女戦士ハリケーン･コップ』から本作に至る３部作で初主演を飾りました。第１･２作はコメディエンヌ的キャラでしたが､本作では一転して父親を殺した犯人を追い詰める女刑事を終始シリアスに熱演しています。彼女にとっても初めて演じる役どころで画期的ではありましたね。
サンドラ同様､本作で新境地といえる役に挑んだのが前半の準主役的存在だったアン･ブリッジウォーター(柏安妮､画像中)です。第１･２作ではサンドラと同僚の女刑事役をコミカルかつチャーミングに演じていましたが､本作ではサンドラに雇われた麻薬中毒の情報屋で､シン･フイ･オン(成奎安)扮する麻薬ディーラーの情婦でもあるという文字通りの"汚れ役"ですね。ヌードこそありませんが､シン･フイ･オン相手の濡れ場も見せるなど､元々アイドル女優としてデビューした彼女としてはコレ以上ないほどの体当たりの芝居で強烈な印象を残しています。
もうひとり､サンドラの相棒的存在である新任の女刑事として前半大奮戦しているのが､リン･シャオ･ロウ(林小樓､画像右)です。台湾出身の彼女は､幼少時から京劇を体得し子役として台湾映画に出演後､休業を経て20歳の時に主演したアクション･ファンタジー『新桃太郎』(87年)でノースタントのアクションを披露し､一躍注目を集めます。その後日本でも子供たちを中心に人気を集めたキョンシー映画『幽幻道士４』(88年､テレビ放送)にも主演し､日本デビューの話が持上がりますが立消えとなり､直後折からのアクション女優ブームに乗って､ミシェル･ヨー(楊紫瓊)やムーン･リー(李賽鳳)に続けとばかり満を持して本作で香港映画デビューを果たしました。しかしリン･シャオ･ロウの見せ場である格闘アクションシーンは香港公開時カットされてしまい､結局香港に居場所を作れなかった彼女は傷心のまま台湾へと戻っていきました。現在も彼女は､歌･演技･アクション､そしてバラエティをこなせる希少なマルチタレントとして､台湾の芸能界で活躍しています。

[4] mixiユーザー 11月16日 07:50

主演のサンドラと激しく敵対する警部役で劇中出演もしているジェフ･ラウ監督(画像左)は､数ある香港ニューウェーブの監督のなかでも数多くのヒット作･話題作を送り出し､プロデューサー･脚本家としても活躍してきました。本作でも原色を大胆に使った映像美やスタイリッシュなスローモーション撮影など､独自の映像感覚と演出が随所に光っています。
チャウ･シンチーの"偽装主演"作として､かなり偏見をもたれている本作ですが､女性を主人公とした"香港ノワール映画"として見ると､雑な部分も無くはなないですが､相応に面白く見られる１本と言えます。チャウ･シンチーも脇役ながら印象的ですし､オリジナル版の復刻も含めて再評価を望みたいですね。

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