映画が好きコミュの「くちづけ」

陳腐な題名ながら号泣をお約束するつらい映画です

くちづけは娘が父親への愛情表現で　それは心の病によって閉ざされた日常の生活の中で。
くちづけは父親が娘への別離表現で　それは死の病によって共倒れになる事の覚悟の中で。

うーやんは知的障害者が集うひまわり荘に長年住む居住者ながら　３５歳になった彼は絶えず訪れる妹の結婚話に微妙な気持を抱き　医師の先生夫妻と高校生の娘が毎日顔を出す事で安心して暮らし　男子４人はアル中の炊事婦によって日々の食事は無事に済ませて　彼らの障害者年金によって一応は満足のいく普通の生活を維持し　そんな中に突然新参者が入居する事で彼らの心は何となく騒いで

マコちゃんは漫画家の父親を持つ知的障害者の３０歳の娘ながら　ひまわり荘に入り父はそこの雑用をこなしつつ本業の漫画を描き　ちょっと訳アリの娘は昔の事件によって健常者の男を極端に嫌い　だが天真爛漫のうーやんとはいつの間にか何の抵抗もなく仲良く　そして漫画家にくっ付いてきたタウン誌編集者も出入りし出して　更に定期的に顔を見せる巡査も加わりちょっと賑やかな感じにと

こんなひまわり荘の住民を　かなりテンポの速い会話と奇異な行動によって面白おかしく見せながら　そこに忍び寄るのは別れという悲しい現実で　住民のひとりは保護者によって障害者年金を横取りされたためにホームでの生活ができなくなって去り　うーやんは妹の結婚が彼の障害により破局して　何とか自立して二人で暮らすために妹はうーやん連れて出て行って　そして吐血した漫画家は肝臓癌になって　残された日々をマコちゃんと暮らすために出て行って･･･

うーやんはマコちゃんと１２月２５日にひまわり荘で結婚すると約束して　久しぶりに妹と一緒に訪れて待つのだが　来るはずのないマコちゃんは･････

何とも残酷で節なく可哀相で悲しく最早涙腺の堤防は垂れ流しで　この観方によっては暗く陰険そうになりがちな真っ黒なドラマを　全く救いのない八方ふさがりの中での選択肢なき泥沼のドラマを　決してお涙頂戴的な安っぽい人間ドラマでなく人間の生き方を問うて　決して障害者によって笑いを取るのではなくその中に果敢に入って　共に笑い共に悲しみ共に驚きながら共に活き活きと生きるサマを　悪意なき純粋な人らのひまわり荘の有り方こそ理想郷の社会かと