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愛しき空コミュの愛しき空(加那) 5

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鏡の中には、涙でずぶ濡れになった私の顔。

どれくらいの雨を降らせたら、空に虹がかかるのだろう。
私の雨はお天気雨のように気まぐれだから
虹なんて架かりはしないんだろうな。

マイナス思考はループする。そのループに一度入ってしまうと
なかなか抜け出すことが出来なくなってしまう。
泣きすぎたせいで、体は疲れているのに、頭の奥は冴えていて
なかなか眠りにつくことが出来なかった。

やっと眠りについたのが、朝方だったせいで、起床したら
空が暗くなっていた。

寝ぼけながら、コーヒーを入れる。
ぼーっとしているのをシャッキリするために。
と言っても、夕方に起きた時点で、一日丸つぶれだから意味ないんだけどね。

コーヒーを飲みながら、携帯に目をやると、メール受信の文字。

「じゃあ餃子代は俺が出すよ。俺は暇人だからいつでもいいよ。」

空からだった。

昨日の彼からのメールが入るまでは、空とラーメンを食べる気満々だった。
それを思い出したかのように、私のおなかの虫がギューっと鳴った。
ああ、ラーメンが食べたいな。

「じゃあ無性にラーメンが食べたい!明日の夜はどう?」
と返信すると、すぐにメールが返ってきた。

「OK。時間は決めていいよ。」
「日曜の7時に迎えにきてくれる?」
「りょーかい!」

あーあ。おなかが空いたし、今ラーメン食べたいけど
空と食べるラーメンまで我慢するか。

寝すぎたおかげで、体がだるくて食事を作る気になれなかったので、
即席スープで空腹を紛らわし、眠りすぎたおかげで
眠気が止まらなかったので、再び眠りにつくことにした。
きっと、眠り姫もこんな感じだったのかな・・・

沢山睡眠をとったおかげで、日曜の朝には自然に目を覚ました。
目覚ましナシで目が覚める時はスッキリしている。

よーし。昨日の休日を取り戻すぞ。
ということで、約束の夜まで買い物するべく街へ出ることにした。
イヤなことがあった時は気分転換しなくちゃ。
服や靴やアクセサリーを新調すると、気持ちも新しくなる。

デパートに行ったりすると、人ごみに酔ってしまう私は
行きつけのお店にしかいかない。
いつも行くお店はデパート街から少し外れた場所にある
インポートショップで、私好みの商品がセレクトしてあるのだ。
今回は、MIUMIUの新作のつま先にストーンのついている
トゥパンプスに一目ぼれしてしまった。
61,000円とちょっと高かったが、このパンプスを履いて
ウキウキと街を歩く自分の姿を想像してしまったために、即購入。

今日の夜はコレを履いていこっと。
あ、でもラーメン屋行くのにオシャレして行くのってどうなのかしら。
ま、久々に空と会うんだし、少しはオシャレしていくか。

7時に間に合うように、一度帰宅することにした。
他にも買い物を色々としたので、荷物が多かったしね。

化粧を直し、トゥパンプスに合うようなコーディネートに着替えた。
まるで、今からデートに行くみたいだなと思うと笑えてきた。
だって、相手は空で、今から行く場所はラーメン屋なのにね。

そうこうしているうちに、予定の時間になり、空からのワンコールが。
こうやって、空が迎えにくる時の到着の合図はワンコールなのだ。

一目ぼれしたパンプスを履き、外に出る。
少し風が冷たくなったかな。空はすでに暗くなっていたのに
足元は明かりを照らしたように光って見えた。

運転席には久々に見る空の顔があった。
相変わらず変わっていない横顔。なんだか安心する。
助手席のドアを開け、乗り込むと空がすぐに
「腹へった?」
と聞くので
「うん!とっても!」
とチカラを込めて言った。

念願のラーメンはいつもより美味しく感じた。
「やっぱここのラーメンは美味しいね。」
と私が言うと、空は笑って「だろ。」と答え
少年のようにスープをすすり ニコッっと笑った。

空は好きなものはずっと好きでいるタイプで、熱しにくく冷めにくいって感じなのかな。
でも、よくも飽きずにずっと通っているもんだ。

会計をすまし、ドライブをすることに。これもお決まりコース。
そして、行き先も決まっているのだ。

私が一番落ち込んでいた時に連れてっていってくれたあの場所。
街が見渡せる高台になっていて、夜にはキレイな夜景が見える。
空の秘密のお気に入りの場所を教えてもらったのだ。
実は、あの時に泣いたのは、悔しかったり悲しかったりという感情もあったが
空の私に対する思いやりや優しさが、心に染みて泣いたのだ。

この場所で、空と色んな話をした。
ま、私の愚痴話が一番多いかもしれないけどね。
でも、色んな感情がこの場所には詰まっているんだ。

私たちのいつもの専用駐車場に車を止め、いつも座るベンチへと歩いた。
久々の夜景に見とれて、二人とも黙ってしまった。

その沈黙を破ったのは空で
「昨日、あの時間にメールなんて、なんかあったの?」
確信をついた一言に、私は心臓を針でチクっと刺された気分になった。
「う、うん。実はね・・・」
と、昨日の事、彼の事を色々と話した。
空は、いつものように、うんうんと頷いて聞いてくれた。

暗闇に浮かび上がるキラキラとした光の集まりたち。
キレイな夜景が、こんな話で台無しになってしまうのが
イヤになったので、話を変えようと質問してみた。
「空は昨日何してたの?」
「映画借りて見てたよ。」
「へーなんて映画?どんな内容?」

映画はSweet Novemberというラブストーリーで
キアヌ・リーブスとシャーリーズ・セロンが主演。
内容は「ネタバレしたら、つまんないだろ。」ということで
少しだけ教えてくれた。

広告代理店に勤める男性と自由奔放な女性が出会う。
女性には自分で決めた掟があった。
それは、一ヶ月ごとに恋人をかえるというものだった。
女性は男性に「11月の恋人 November guy」にならないかと提案し、一ヶ月限定の恋人になるというものだった。

「おもしろそうな映画だね。今度借りて観てみるよ・・・」

それを観るのは一人なんだろうけどね。


強引に話題を変えてみたものの、気分は変わらない。
キラキラと光るネオンたちがフィルターを通したようにぼやけていく。
空に、こんな話をしたいわけじゃなかったけど、この話をしないと
気分が変わらない気がしたので、思い切って彼のことを話してみることにした。

「実は、彼。女の子と遊んでばっかなのね。どうしたらいいんだろう。」
「それはさ、お前に男っ気がないからじゃない?」
「ん?どうゆう意味?」
「だからさ、お前に男の影があったら、彼氏も心配するよ。
 お前に対して安心してるから、そうゆう風なんだよ。」
「んじゃどうしたらいいのよ・・・」

男の影って言ったって、今の時期は忙しくて合コンに行く暇もないし、どうしたらいいんだろう・・・
未来は絶望的に思われたが、ひとつの光が差し込んできた。
つまり、いいアイデアが浮かんだのだ。

「ねぇ空。私たち、一ヶ月限定の恋人にならない?」

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