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ゾイド バトルストーリーコミュのナカセ・インダストリーゾイド開発部員ビイの物語その2

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 「実験は成功だったわね。あれなら上の人も納得するでしょう。」
 実験場の廊下を歩きながらビイがエイに話し掛けた。
 「あれでか?あの程度の性能で開発が許可されるとは思えんが?」
 「いいのよ、性能も勿論だけど、むしろコストダウンやメンテの楽さが売りなんだから。」
 ビイが連れて帰ったエイの作ったブロックスゾイドはパワーでは従来の小型ゾイドとほぼ互角、機動性、反応速度はやや上という性能を発揮した。
 普通なら開発が許可される訳は無いのだが、第一線を退いた旧型ゾイドを再生使用できるコストの安さ、同じ胴体パーツを使用する事による生産性の高さ、メンテナンスの楽さでは従来のゾイドを完全に圧倒したのだ。多少性能で劣ったとしても数の原理で敵を圧倒できる。これは商品として立派に成立する。そう判断した上層部は開発を許可した。
 「大丈夫よ。これから向こうのチームが作ったパーツで強化するから、性能も今よりはずっとアップするから。」
 テストは持って来た機体がそのまま使用された。ジャンクパーツで構成された機体であの性能なら、機体性能の向上を担当していたチームが開発したプロセッサやアクチュエーターを移植すれば今より性能が向上するのは当然だろう。
 「それに、テストパイロットの評判もよかったみたいよ。」
 「本当か?何て言ってた。」
 「扱い易いって、特に火や爆風を全く恐れないって感心してたわ。」
 「まあ当然か、その辺も偽の認識を送る様にしているから、危険とは判断するが必要以上に怯えることは無い。」
 ゾイドも生物である以上、本能的に火や爆音などの大きな音を恐れる。ゾイドは全てコンピューターで制御されてはいるのだが、それでも機体によっては動きが鈍る事があった。
 「で、早速今度共和国軍が導入する小型ゾイドの入札に参加するから、それまでに機体を仕上げておくようにと社長からのお達しが下ったから頑張ってね。」
 「それ何月?」
 「うーんとね、10月の中頃かな。外で機体性能も見るから涼しくないとね。」
 「3ヶ月と少ししか無いじゃないか。」
 「心配しなくても私達も手伝うから。」
 「当然だ。」
 「で、あれをいじるには私達もブロックスシステムを理解する必要があるから、来週のミーティングまでに説明用の資料を完成させといてね。」
 「なんだ、資料を作るのもお前が手伝ってくれるのか、悪いな。まあいきなり資料を見せられるよりも、一緒に作ったほうが理解するのが人より早くなるからな。」
 「相変わらずヤな性格。」



 それからの3ヶ月は本当に忙しかった。開発部、部品製造部にブロックスシステムの説明、新規の部品の設計に製作、基本動作プログラムの書き換えと処理速度の向上、新たな装備の追加etc…。
 「私、2週間家に帰っておりません。」
 「風呂には入るように。」
 「完成するんでしょうか。」
 「神のみぞ知るんじゃないかな。」
 などといった会話が繰り広げられる中、ようやく昨日すべての作業が完了した。
 機体の外観は共和国製のシールドライガーを模した物になった。安全性を考えてコクピットは頭部ではなく、背部に変更された。コストダウンと、目的によって装備を変更する為に爪や牙以外の固定武装は尾のザンブレードのみという大胆な設計になった。突撃戦を想定してE-シールドを装備したというのも、外観がシールドライガーに似た原因の一つだ。
 連日の激務から開放されて人のいない格納庫で完成した機体を見上げているエイに、ビイが話し掛けた。
 「ようやく完成したわね。」
 「ああ、なんとか間に合ったな。」
 「パーツの変更で、性能的にも満足行く物に仕上がったわね。」
 「ああ、テストパイロットも褒めていたよ。」
 「大丈夫?」
 「ああ、何となく気が抜けちゃってな。」
 「もう今日は帰んなさい。明日も早いんだし。」
 「ああ、そうする。」
 「そう言えばこれ、名前は?」
 「試作2号機だろ?」
 「そうじゃなくて、通称とかよ。」
 「そうだな、ライオン型だから、レオン…レオブレイスかな。」


  
 それからも忙しかった。今までの常識を覆す低価格、生産性の高さで軍への導入が決まり、それに伴う旧ゾイドの解体、生産工場の建設、既存の工場のラインの変更、現場の教育、やることは山ほどあった。
 今までとは桁違いの生産性を誇るこのゾイドで部隊数を一気に増やそうとする軍も大忙しだった。パイロットが足りないのだ。その為、訓練場の教官だけではなく下士官までもがゾイド指導教官に駆り出された。強襲戦闘隊所属のエフ軍曹もその一人だ。
 こんな促成栽培が役に立つのかよと内心思ってはいたが、なにしろ今は人手が足りないのだ。軍の大部分は暗黒大陸に移動してしまい、本国の守りはがら空きという状態なのだ。今攻め込まれたらひとたまりも無いだろう。
 その日、エフ軍曹が担当したのも若い兵士だった。純粋で祖国を守りたいというただそれだけを思っている目だ。fは知っていた。戦場ではこういう奴から死んでいくと。
 「ゾイドに今まで乗った事はあるか、農作業用でもなんでもいい。」
 「いえ、ありません。軍に入って初めて触りました。」
 「だったら戦い方を今すぐ覚えろ。お前みたいな奴が戦場で1番先に死ぬんだ。」
 「はい!」
 死ぬかもしれないというのにやたら返事だけはいい、エフはこの任務に就いてから酒の量が増えた。担当する兵士の大半が自分の息子と同年代というのも原因の1つだ。
 「教習で1通りは動かせるんだろう、早速俺が相手をしてやる。」
 「え、教官殿がですか?」
 「当たり前だ、10分後に始める。15番機に乗って野戦エリアで待ってろ。」
 「了解しました!」
 兵士と別れたエフはここに来てからの自分の愛機に向かった、新型ゾイドレオブレイス教官機。教習生が乗っている物とカラーリングが違うだけで性能はまったく同じだ。シートに乗り込みシステムを立ち上げる。まだ3ヶ月程しか乗っていないがいい機体だと思っている。自然界に存在しないゾイドらしいが、そんなことはどうでもいい。あいつらを1人でも多く守ってくれるなら。その為に自分にできる事は、あいつらを鍛えて鍛えて鍛え抜いて1人前のゾイド乗りにする事だけだ。
 「あいつらを1人でも多く生きて帰す為にはお前の力が必要なんだ。頼むぜ。」
 そう呟くと、あの新兵の待つ野戦エリアに向かった。
 「いいか、センサーやモニターの情報だけを当てにするな、ゾイドの感覚と1体化するんだ。」
 「はい!」
 「ゾイドが感じている風の匂い、敵の気配をお前も感じろ。お前ならできる。」
 「解りました!」
 「いくぞ!」
 野戦エリアは1辺が約10キロの正方形に近い形をしている。他のエリアに比べれば比較的平坦だが、岩山もあれば林もある。教習は教官と教習生が向かい合って始める訳ではない。エリアに入る場所は別、会話は無線のみ、どこから相手がくるか解らない限りなく実戦的な教習だ。これで生き残れないようなら到底見込みは無い。
 「さあて、小僧どこにいる?」
 教官用レーダーを見る。ズルではない、少ない時間で効率良く教える為だ。その為教習生が100m以内に入ると効かなくなる。2キロ程南にいた、岩山の影だ。山を背にして背後からの攻撃に備えているらしい。教習本通りだ。
 「甘いな。」


 
 いくら拭っても、操縦桿を持つ手が汗で滑る。敵がどこからくるか解らないというのがこれほど心身を疲労させるのかとその新兵は初めて自覚した。相手は百戦錬磨の教官だ、そう思ってせめて後ろから襲われないように山を背にして移動しているのだが、肝心の教官が見つからない。
 「おい、そんなのろのろ移動してたんじゃ、レオブレイスの性能が生かせないぞ。」
 突然、スピーカーからエフ教官の声が響いて来て飛び上がりそうになる。
 「そ、そんなこと言っても、相手がどこから来るか解らない場合には、うかつに動かず出方を待てと教本に…。」
 「馬鹿野郎!!、教本にそんなのろのろ動きながら待てと書いてあったか!!それに、お前の集中力はそんなに持たない、集中力が切れた瞬間を襲われればそれでお終いだ。それならいっその事積極的に攻めた方がまだましだ。」
 「は、はい!」
 「もう遅い、俺はお前のたった50m以内にいるんだぞ。」
 慌ててセンサーに目をやる。
 「センサーを見るな、気配を感じろ。」
 すべて読まれている。あたりに目を配りながら耳を澄ます。
 かすかな音が聞こえた。その方向に機首を向ける、しかし、何もいない。
 「音のした方向に機首を向けたのがお前の敗因だ。」
 教官の声が無情に響き渡る。次の瞬間、何か当たったと思った時には機体が宙を舞っていた。
 「まだ寝るなよ、これからが始まりなんだからな。」
 教官の声が聞こえる。これを乗り越えて初めて1人前のゾイド乗りになれるのだ。

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