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ゾイド バトルストーリーコミュのナカセ・インダストリーゾイド開発部員ビイの物語

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  「本当に、こんな所にいるの?」
 走破性の高さだけがとりえの古びた4輪駆動車を運転しながらビイはぼやいた。場所は、共和国首都から200キロ程離れた山岳地帯である。欝蒼と生い茂った巨木のせいで、涼しいのはいいが昼でもライトを付けないと危険なほど薄暗い道をすでに4時間以上は走っていた。しかし暗い。その辺から野生ゾイドが出てきても全く不思議ではないだろう。
 「まったく、手間ばっかりかけさせるんだから。」
 そうつぶやきながら、助手席の地図にクリップではさんである写真に目をやった。そこには、眼鏡をかけた色白の男とビイが並んで写っている。
 男の名前はエイ、ビーの元同僚であり、彼氏でもあった。優秀ではあったが、人付き合いや他人と争う事が苦手で、2年前にストレスで辞職した。相当参っていたらしく、連絡がつかなくなって心配したビイがアパートに行ったときはすでにもぬけの殻であった。
 そして現在、会社を辞めた後この山の中で一人で暮らしているという噂を聞き、そこに向かっている最中という訳である。よりを戻しに行く訳ではない。ビーが抱えている仕事でどうしてもエイの力が必要になったのだ。


 事は1年前まで遡る。ビーの勤めているナカセ・インダストリーが軍事用ゾイド産業に進出する事が決定したのだ。それまで工作用や土木工事用ゾイドを製造していたのでゾイドに関するノウハウはある。
 しかし、どの業界でも新規参入となると既存の物以上の性能やそれ以外での売りが要求される。今までの物と変わらないのなら信用のある今までの所と取引を続けるのが当然だからだ。
 そこで、2つの開発チームが作成された。一方は、既存のゾイド以上の性能を追及するチーム。もう一方は性能以外の売り、つまりコストダウンや生産性の高さを追及するチームになった。
 そして当時開発部員だったビーは、性能以外の売りを追求するチームに配属された。

 「もうこれ以上どうしろって言うんだよ!!」
そこにいる誰もがそう思っている台詞を怒鳴っているのはビイが所属しているチームリーダーのシイだった。開発ははっきり言って行き詰まっていた。  既存のゾイド以上の性能を出すという問題はある程度解決していた。新開発のプロセッサとアクチュエーターで処理能力を向上させ、パワーとスピードを出すと言う物だった。
 問題なのはコストダウンや生産性の高さだった。機械とは言えゾイドは生命体である以上、部品は種によって異なり、使いまわしが効かないというのが主な原因であった。それに加えて、向こうのチームに差を付けられている焦りも余計シイを苛立たせていた。
 「やっぱり、使う材料を見直した方が早いと思う。」
 部品の製造にかかる手間やコストの試算を担当していたディがその日の会議で発言した。
 「種が違う以上、同じ部品、例えば手や足を使う訳にはいかない。ゾイドの種の数だけ生産ラインは必要なんだ。そう考えた場合、やはり部品に使う材料を見直すと言うのが1番の近道だと思う。」
 「安い材料を使うとなると信頼性が問題になるし…。」
 「手や足が違うというのは仕方ない。せめて胴体の内部だけでも使い回しができれば。」
 「しかし、自然の状態からあまりにも違う形にすると拒絶反応が出る可能性が高くなります。」
 ゾイドコアには体の形状や動かし方に関する記憶の様な物が存在する。そこからあまりにもかけ離れた体型にすると制御できなくなったり、拒絶反応が出たりするというのは今までの経験で分かっていた。体内の構造もしかりで、自然の状態になるべく近い設計にされていた。そこを使い回すというのは、爬虫類の内臓を哺乳類に移植するのに近いだろう。
 全員怠けている訳ではない。しかし、考えれば考える程袋小路にはまり込んだ様な気分になり、最初にチームリーダーが叫んだのと同じ台詞が誰もの口から出るのであった。
 今までのやり方では駄目だ、何か新しい方法を考えなければと誰もが考えていた時にふとビイが思い出したのが、昔エイに見せてもらった古代遺跡の中の大学らしい遺跡から盗掘してきたという論文だった。


 「何ですか、そのブロックスシステムっていうのは?」
 興味を持った開発部員の後輩がビイに聞いてきた。
 「一言で言えば、ゾイドの体を徹底的にブロック化する事により生産性、メンテナンス性を飛躍的に向上させるというシステムね。」
 「へえ。」
「で、その論文の中で主に語られていたのが手足よりも胴体部分のブロック化、共有化だったの。陸上用や水中用といった違いはあるけれど、陸上用ゾイドならすべて同じ胴体ブロックを使用する。同じブロックを使用するからコストも下がるし、万一破損しても破損したブロックだけ交換すればいいからメンテナンスも楽になるという訳。」
 「それはすごいですが、そんなことをやってゾイドコアの拒否反応は出ないんですか?」
 「まともにやれば出るはずなんだろうけど、その論文を書いた学者は抑える事に成功したらしいの。けどね…」
 「けどね?」
 「古代遺跡から盗掘してきた論文だから、保存状態が酷くてその辺りがそっくり欠落していたの。あの人はその欠落部分を復元しようとしてゾイドに関するノウハウが豊富なこの会社に入ったらしいんだけど、復元する前にストレスで体壊して退職したの。あのまま続けていればひょっとしたら復元に成功したかもね。」
 「で、その人は今どこに?」
 「知らない。もう連絡もとれないし、どこでどうしているやら。」
 それだけなら単なる休憩時間の雑談で終わる所だったのだが、その話をどこからか聞いた社長が興味を示した。今のままでは開発は進まない、ひょっとしたら使えるかもしれない。見つけ出して話だけでも聞いて来いという命令が社長直々にbに下った。
 で、足取りを追った結果、どうもこの山岳地帯に住んでいるらしいという情報を入手し、現在そこに向かっていると言う訳であった。


 「まったく、何でこんな所に住んでんのよ、炭焼きか陶芸家にでも転職したのかしら。」
 惑星Ziには戸籍というものが存在しない。そこで聞き込み調査の結果や地図などと照らし合わせ、この辺りで人が住むならここだろうという見当をつけたという訳だ。しかし、都会暮らしのビイが思っている以上に山は広かった。
 とうとう夜になってしまい、今日は出直そうかと思った時に気がついた。なにか気配を感じる。見たくないけど見ないともっとひどい事になる。でも見たくないのでミラーで確認する。いた。ゾイドだ。野生ゾイドには詳しくないが4本足の肉食動物系の体つきをしている。ゾイドが本気になればこんな車など一たまりもない。エンジンを切って通り過ぎてくれるのを待つ。
 1分、2分と経過するが、まだ行かない。それどころか、こっちに近づいてきた。窓ガラスからこっちを覗き込んでいる。口を開けた。もう駄目だ。
 「なんだ、ビイじゃないか。何やってるんだ。」

 
 「あんなもんに乗っていれば誰だってびっくりするにきまってるでしょう!!」
 場所は移動してaの住んでいる山小屋である。住居に使用しているログハウス部分の隣にはその数倍はあろうかと思われる格納庫が存在した。おそらくさっきのゾイド用だろう。
 「そうは言っても、こっちもまさかお前だとは思ってなかったんだ。」
 久し振りに見るエイは日焼けして少し太ったようだった。服も昔の趣味ではなく、山男風の赤のチェックのシャツなどを着ている。
 「で、あれは何?」
 あれとは、さっきエイが乗っていたゾイドの事である。さっきは暗くて解らなかったが、明らかに人の手の加わったゾイドだ。しかし、ゾイドを開発しているビイですら見たことがないタイプだ。とすると、エーのハンドメイドだろう。
 「あれか、あれは俺が復元した論文の実践結果だ。ブロックスシステム採用ゾイド試作1号機。」
 「あなたが昔見せてくれたブロックスシステムね。」
 そのゾイドの手足には明らかに他のゾイドの部品が使用されていた。部品の共有が難しいゾイドではそれだけでも驚嘆すべき事なのだが、ビーが驚いたのは胴体部分だった。胴体は黒いブロック状の同じ物体が連結する事で構成されている上にゾイドコアまでもが同じブロック状に加工されている。明らかに自然の姿形を考慮した設計ではない。
 「どうやって拒否反応を抑える事に成功したの?」
 「別に抑えた訳じゃない。動作命令を変換しているんだ。」
 自分で淹れたコーヒーを飲みながらエイは答えた。
 「大異変以前の実験では人工ゾイドコアを使用していたらしいんだ、拒否反応が絶対出ないから。でもさすがにそこまでは再現できなかった。」
 「でしょうね。ここの設備じゃ。」
 「そこで考えたのが動作命令の変換だ。通常、手や足を動かす指令はゾイドのコアから直接手足に行く、それを1回コクピットを通す様にしたんだ。コアから来た動作指令をコクピット内部のコンピューターでその体に合った指令に変換する。」
 「拒否反応は?」
 「あれは、自然の状態からかけ離れているとコアが認識するから出るんだ。だったらコアがそう認識しないようにコンピューターから偽の認識を送ってやればいい。それだけのことだ。あのゾイドだって使用しているのはゴドスのコアだ。このシステムを使用すれば、第一線を退いた旧型ゾイドを再生する事も可能になる。」
 「それはたしかに凄いけど。で、性能としてはどの程度?」
 「性能か、あれはブロックスシステムの実験用にジャンクパーツで作った機体だから大した事はない。勿論、ゴドスやモルガ程度のゾイドなら勝つだろうが、ダントツの性能差で勝つという訳じゃないな。」
 「ありあわせのパーツで作ってもその位の性能はあるのね?」
 「ああ、ゾイドの動きや反応速度はゾイド本来の動きや闘争本能が影響するのが当然なんだが、そこは使用するプロセッサの処理速度や基本動作の制御に使っているコマンドウルフのデータで何とかなった。まあ反応速度で4割増という所かな。」
 「あなたも単なる趣味でこんな物を作っているという訳でもないでしょう?だいぶお金もかかったでしょうし。」
 「完全にするまでは公表したくなかったんだ。で、会社は幾らで買うと言ってる?」
すべてお見通しらしい。
 「それはあれを持って行ってお偉いさんの前で動かしてから決めましょうか。」
 外のゾイドを見ながらビイは言った。このゾイドが数年後両軍の編成を変えるとも知らず。
END

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