ログインしてさらにmixiを楽しもう

コメントを投稿して情報交換!
更新通知を受け取って、最新情報をゲット!

あっちゃんの小説コミュのまっ白い冬の朝

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
なんだか眠れなくて、掛け布団と毛布の中にくるまってた。
あくびしすぎて涙が浮かんでる。
こじんまりした僕の部屋。
寒い季節はだいたい布団の中だから、リモコンとかコップとかぜんぶ手の届くところにある。
ほんの少しのカーテンのすき間から、やわらかい朝のひかりが差し込む。
オーディオリモコンの再生ボタンを押したら、POKKA POKKAが流れてきた。
カーテンの向こうのガラスの窓には、たくさんの露がついていて。
僕はその冷たい水粒ぬぐって小さな円を描いた。
小さな円から見えたのは、電柱と電柱を架ける黒い線。
一本の黒くて細い橋の上にスズメが3羽とまってたんだ。
冬ってとても寒いから、部屋の外は突き刺さるくらい冷たいはずなのに。
流れる音楽聴いていたら、心がポッカポッカ。
ためしに窓を少しだけ開けたら、外はあまりに寒すぎて、すぐに窓を閉めた。
三日前まではアスファルトの地面に雪が積もっていて、かわいい雪だるまもいたんだ。
氷になった水たまりの上で、女の人がステンって転んでいたよ。
女の人はあたりを見まわして、誰も見ていないのに安心してから、お尻を軽く叩いて何くわぬ顔で歩いていったけど。
なんか見かけてしまってごめんなさい。
僕も氷の水たまりを気づかずに歩いたら、普通にこけちゃいます。
なんとなくだけど、日本の冬ってそんな感じ。

まだ朝早いから君は部屋で一人、眠っているんだろうな。
僕はもう一度露のついたガラスの窓を丸くぬぐう。
一番小さなスズメが空に羽ばたいていったんだ。
はじめましての朝日に向かって飛んでいく小さなスズメ。
僕はベッドから出て、ホットカルピス口に含み、ぶ厚いパーカーとかめちゃくちゃ着こむ。
毛糸のマフラーを首に巻いて、手袋は2重。
流れるメロディを口ずさみながら、君に逢いにいくんだ。

ドアを開けて冬の空に出れば、まっ白い雲みたいな吐息。
それがいつもより白く感じるのは、カルピス飲んだからかも知れない。
土曜日の早朝だから、街に人影がほとんどないよ。
朝焼けの空の色は、淡いオレンジ色ともっと淡いピンク色とが混じり合っている色だったんだ。
半分雲に隠れている朝日を見つめたけれど瞳は痛くなくて、ゆるやかな風もいまは頬にやさしい。
ぼんやり三日月が沈むまえに、僕は使い古した自転車に腰かけてペダルを踏むよ。
移ろう景色にすれ違うのは、ケアン・テリアと散歩しているおじいさんとか、破れた靴下とか。
見上げる空を飛んでいる飛行機が白いってこと、その理由は知らないけれどうれしい。
僕は息を切らせて君の部屋の前に着いた。
普通に起こしちゃうじゃんって今更になって思い、躊躇とかしてたんだ。
でもピンポンを押してしまって。
しばらく待っていると、そっと静かにドアが開いた。
寝ぼけ眼をこすっている君がいて、寝ぐせのついた髪の毛は色んな方向むいてる。
まだ少し夢の中にいる君は朝日に目を細めてつぶやいた。
「ん…。
 どうしたの。」
特に驚きもせずに無表情なんだ。
「眠ってた、よね。」
やっぱり申し訳なくって、視線をおろす。
すごく迷惑なのに、君はロックをはずして玄関先に通してくれた。
部屋の空気はまだ眠っていて、蜃気楼みたいに佇んでいたよ。
「突然来てごめん。」
あくびをこらえて君は微笑む。
「いつもじゃん。」
早く部屋の中に入りなよって感じで、手をほいほいする。
「チャイ、飲む?」
君はキッチンに立って、冷蔵庫に手をかけている。
「ううん。」
僕は首を横にふった。
「映画観てもいい?」
ふつうに君はうなづく。
よくわかんない奴なのにね。
『鏡』っていう映画。
もう少し眠るねって、やさしい瞳をして君はベッドに入った。
画面には不安に潰されそうな青年の瞳が映し出されている。
僕は真っ直ぐにその映像を見つめていた。
薄暗い部屋は眠気に包まれていてやわらかい匂い。
何度も観ているロシアの映画。
「もしかしてさ。」
君は瞳を閉じたまま聴いてくれている。
「僕がいなくなったら…。
 泣く?」
ロシアの青年は音みたいな声を出している。

少しの間を置いて、君は僕に背をむけて笑った。
「あたりまえでしょ。」
一瞬だけ目を合わせたんだ。
そして君はまた穏やかな表情をして眠ったよ。
僕は君のすやすやと眠る寝顔を少しだけ見つめてた。
なんだろうね、よくわかんない。
本当に素敵な映画なんだ。
こんな瞳から、ずっとずっと涙がこぼれ落ちる。

誰も見ていないから、涙はこのままでいいやって思っていたけど。
スズメが見ているかも知れないね。
僕は微笑んで、涙をぬぐった。
まっ白い冬の朝。
ロシア映画を見つめている僕のそば。
君が眠ってる。







コメント(4)

ヒトのぬくもりってささやかなところにあるんだよね

冬の朝のコタツの中とか

彼女のきづかいいらない寝室とか
冬が好き

ピーンと張った朝の空気

お向かいの真っ白い屋根

ぷくぷく焼けるグラタン

葉っぱのない樹

ふたりでつくる

ポケットの中の

やわらかいあったかさ
ムシさん>大阪ではモモヒキのことをパッチって言うんですよねん♪

冬はいつもパッチ穿いてマス!!
こむさん>こむさんの、このふんわりあったかいの。

もったいないですよー!!

こむさんだけですもん。。

ログインすると、みんなのコメントがもっと見れるよ

mixiユーザー
ログインしてコメントしよう!

あっちゃんの小説 更新情報

あっちゃんの小説のメンバーはこんなコミュニティにも参加しています

星印の数は、共通して参加しているメンバーが多いほど増えます。

人気コミュニティランキング